台湾の人情食堂
#80
台湾vsアジア 似たものグルメ対決
文・光瀬憲子
先日、カンボジアとベトナムで食べ歩きを楽しんできた。
東南アジアの国々でも華僑は存在感があり、特に中国に近いベトナム北部のハノイには中華系の食べ物も多かった。一方で、カンボジアとベトナムはかつてはフランス領だったため、フランス料理の要素も多分に含んでいる。
今回は台湾グルメと東南アジアグルメを比較してみたい。
朝ごはん編
ベトナムの街は朝ごはん屋台が多い。台湾でも豆乳専門店をはじめ、粥、米粉などさまざまな朝食店が早朝から営業しているが、ベトナムの都心では屋台型から店舗型まで、3軒おきに朝食店が並んでいる。種類も肉まん、フォー(ライスヌードル)、バイン・ミー(サンドイッチ)、丼モノ、粥など多彩だ。
そのなかのひとつ、肉まん屋台に立ち寄ってみた。大きくふかふかの肉まんの中にはうずらの玉子が入っていることが多い。さらに、ひき肉、春雨、キクラゲなどもプラスされ、盛りだくさんで約50円。総合的に見て台湾のほうが肉がぎっしり詰まっており、皮もモチモチしている気がするが、安さはベトナムに軍配が上がる。
ハノイの朝ごはん。バイン・バオ(肉まん)は具だくさんで1個50円程度が相場
台湾でよく見かける肉まん
ベトナムで次に見つけた朝ごはんは中華系。白米にさつま揚げ風の煮物、腸詰め、揚げ卵がのったもので、お値段はおよそ200円。茶碗のサイズ感や白米の量は台湾の魯肉飯や控肉飯(角煮乗せ飯)とよく似ており、味付けも醤油煮込系だ。腸詰めは台湾よりもベトナムのほうが甘めの味付け。
また、煮玉子の代わりに薄い衣を付けて揚げたゆで卵が添えてあるところもおもしろい。ひき肉の煮込みがたっぷりのった魯肉飯が30元前後(約110元)であることを考えると、台湾のミニ丼のほうがコスパはよさそうだ。
ハノイの人気朝食店のミニ丼。さつま揚げ、腸詰め、揚げ卵に煮汁がたっぷりかかっている。おかずの下はもち米なので腹持ちがよい
サンドイッチ編
カンボジア人もベトナム人もサンドイッチが好きだ。フランスパンにハムや野菜の漬物を挟んだもので、カンボジアではヌンパン、ベトナムではバイン・ミーと呼ばれる。日本でも最近よく見かける。
具材もタレもカンボジアとハノイではだいぶ違うので、ひとくくりにすることに抵抗はあるが、これらと台湾の揚げパンサンドイッチ、栄養三明治とを比較したい。
カンボジアとベトナムのものが、植民地時代のフランスパンをベースに変化を遂げたものであるなら、台湾の栄養三明治は日本時代の名残りではないだろうか。コッペパンを揚げたものに、煮玉子、ハム、トマトを挟んだ定番夜市フードの栄養三明治は港町・基隆がその発祥だと言われている。
日本との交流が深かったこの地で揚げパンサンドイッチが生まれたとなれば、なおさら日本との関わりを疑ってしまう。値段はヌンパンが1つ60円程度なのに対し、栄養三明治が約180円だ。
カンボジアの人気朝食屋台。ヌンパンを待つ若者たちで人だかりができている。1つ約60円
基隆名物のひとつ、栄養三明治(サンドイッチ)
スイーツ編
そして、いよいよスイーツ対決。マンゴーかき氷や豆花など、独自の伝統スイーツが豊富な台湾だが、カンボジやベトナムも負けてはいない。カンボジアは暑さをしのぐために冷たいスイーツが豊富で、ベトナムにも独自の趣向を凝らした楽しいスイーツが存在する。
だが、両国ともココナッツ味をベースにしたものがほとんどで、味のバリエーションが乏しいことは否めない。ベトナムにも豆花は存在するが、台湾のように独自の地位を確立しておらず、スイーツ店の1メニューに過ぎない。
カンボジアの屋台スイーツ。とにかく暑いので氷入りであることが絶対条件
ベトナムのスイーツはココナッツ味のものが多い。中華料理の影響か、スイーツに白玉団子が入っているパターンも
具だくさんの台湾豆花
チマキ編
台湾ではチマキと言えば肉粽か菜粽のいずれかのことだ。蒸すか煮るかの違いはあるものの、基本はもち米に具が入った三角タイプだ。
一方、カンボジアにはバナナ入の甘いチマキが存在し、ベトナムにはもち米と緑豆で作るバイチュンというチマキがある。
だが、こうしたチマキ以外にも、ベトナムではあらゆるものを葉で包む食文化があるようだ。道端に座ったおばちゃんがせっせと包むのは米とコーンの粉で作ったおにぎりのようなもの。笹の葉ではなく、バナナの皮で包んでいる。
バナナの皮でいろいろなものを包んで食べるベトナムの人々。居酒屋のピーナッツもバナナの皮で包んである
フルーツ編
台湾はマンゴーをはじめ、パパイヤやバナナなど安くて美味しいフルーツ天国だが、さらに南のカンボジアもフルーツでは負けていない。台湾のように街のいたるところにドリンクスタンドがあり、果物が積み上げられ、その場でシェークにしてくれる。マンゴー、パイナップル、バナナ、スイカなど、どれも1ドル(110円)でシェークになる。
日中の気温が40度近くまで上がる乾季のカンボジアで飲む濃厚なマンゴージュースの美味しさは世界一ではないだろうか。
気温が40度近くまで上がる乾季のカンボジアでは水分補給が必須。ぜいたくなマンゴー100%のジュースで喉を潤す
一方、タピオカミルクティーや緑豆シェークなど、素材の味プラスひと工夫が光るのが台湾のドリンクだ。
台湾の北東部、宜蘭で飲んだ緑豆ミルク
ベトナムやカンボジアも外食文化が発展しており、台湾に負けていない。アジア各国の食べ物を通して改めて台湾グルメを見直してみるのもおもしろい。
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著者:光瀬憲子 1972年、神奈川県横浜市生まれ。英中日翻訳家、通訳者、台湾取材コーディネーター。米国ウェスタン・ワシントン大学卒業後、台北の英字新聞社チャイナニュース勤務。台湾人と結婚し、台北で7年、上海で2年暮らす。2004年に離婚、帰国。2007年に台湾を再訪し、以後、通訳や取材コーディネートの仕事で、台湾と日本を往復している。著書に『台湾一周 ! 安旨食堂の旅』『台湾縦断!人情食堂と美景の旅』『美味しい台湾 食べ歩きの達人』『台湾で暮らしてわかった律儀で勤勉な「本当の日本」』『スピリチュアル紀行 台湾』他。朝日新聞社のwebサイト「日本購物攻略」で訪日台湾人向けのコラム「日本酱玩」連載中。株式会社キーワード所属 www.k-word.co.jp/ 近況は→https://twitter.com/keyword101 |