韓国の旅と酒場とグルメ横丁

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#79

群山写真館〈前編〉

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 この1年間で、全羅北道の群山(クンサン)を三度訪問する機会に恵まれた。群山は植民地時代、日本に送る韓国産米の積み出し港だったところだ。今から15年前、『韓国の「昭和」を歩く』という本を書くために訪れて以来、常に気になる街であり続けている。

 また、群山では旅心を刺激する情緒的な映画がたびたび撮影されている。言葉で説明するのが難しいが、なにか特別な匂いを発している街なのだ。

 今回から2回に渡り、写真を見ながら群山の魅力をお伝えしよう。

 

 

鉄路の変化 

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2010年2月に撮影した京岩洞チョルキルマウル(レール村)。

今のように観光地としては注目されていなかった。当時はかつての貧民街の印象が強く、冷たい雨に打たれるトタン屋根がもの悲しかった。もともとは日本時代の末期、製紙工場に原料を運ぶために敷かれた2.5キロの工場線で、この写真を撮った年の2年前まで貨物列車が通っていた。

 

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現在のチョルキルマウル。

ここ数年で、群山観光の顔となった。週末は観光客が多く、哀愁とは縁遠い雰囲気に。線路の両脇にレトロテイストなカフェやみやげ物店が並んでいる。モデルはおそらく台湾の平渓線だろう。

 

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観光地化が進んだチョルキルマウルだが、端から端まで歩けば、まだ絵になる場所は見つかる。

 

映画が撮りたくなる街 

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『将軍の息子』『タチャ イカサマ師』(旧・広津家)、『ペパーミント・キャンディー』(群山港)、『傷だらけのふたり』(京岩洞)、『群山』(永和洞、月明洞など)。

パッと思いつくだけでも、これだけの印象的な映画が群山で撮られている。筆者は映像関係者ではないが、群山が映画を撮りたくなる街であることはよくわかる。その大きな要因として、年季の入った日本家屋や蔵が多く残されていることがあるだろう。ここ数年は日本家屋の多くがカフェやペンションに改装されたため、もうひとつ情緒に乏しいが、くまなく歩けば上の写真(2004年撮影)のような街並みに出合えるだろう。

 

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群山近代歴史館から大通りを隔てた向かい側のブロックにあるカフェ『TEUM』。日本家屋が多い永和洞(ヨンファドン)に位地する。レンガで補強されているためわかりにくいが、もともとは日本式の米蔵。天井が高いので半2階もあり、開放感がある。

 

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名作『八月のクリスマス』が公開されてからはや20年。当時は韓国人より日本人からこの映画の感動を伝えられることが多かった。この少しあと、日本よりも韓国でブレイクした日本映画『ラブレター』(岩井俊二監督)はその逆パターンといえる。日本の映画ファンからすると、『八月のクリスマス』は韓国映画のイメージを大きく変えた作品だそうだ。

この写真は主人公(ハン・ソッキュ)の写真館のセット。撮影後、一度撤去されたが、同作が数年前の調査で「もう一度見たい映画」の1位になったり、昨今の懐古趣味ブームの盛り上がりもあったりして、再度組みなおされた。

 

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『八月のクリスマス』の劇中、ヒロインのタリム(シム・ウナ)が木陰でハンバーガーをほおばっているところに、主人公がスクーターで通りかかり、次のような言葉を交わす。

タリム(シム・ウナ)「아저씨가 시장에 가요?(おじさんが市場へ?)」

チョウォン(ハン・ソッキュ)「나도 음식 잘 헤요(けっこう料理上手なんだぜ)」

微笑ましい場面を覚えている人も多いだろう。ここは、海望窟(ヘマングル)というトンネルを出たところで、左手には興天寺(フンチョンサ)という寺院がある。

この近くでは、主人公と旧友(イ・ハヌィ)が酔っ払って、「술 먹고 죽자!(酒飲んで死のう!)」と気炎を挙げるシーンも撮影されている。

 

1999年に公開され、ソル・ギョングの熱演で強烈な印象を残した映画『ペパーミント・キャンディー』(イ・チャンドン監督)。3月15日から東京のアップリンク渋谷、アップリンク吉祥寺でリバイバル上映されることもあり、再び注目されている。

劇中、刑事役のソル・ギョングが群山の酒場の女と一夜を過ごした翌朝、女がさびしげにフェリー乗り場にたたずむ場面は群山港で撮影されている。

 

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『将軍の息子』(1990年)や『タチャ イカサマ師』(2006年)の撮影に使われた日本時代の旧・広津家(新興洞)。前者では当時の朝鮮人を圧迫した日本人ヤクザの親分(シン・ヒョンジュン)の住まいとして、後者では伝説のいかさま賭博師(ペク・ユンシク)の住まいとして使われた。現在は群山を代表する日本建築として内部も公開され、週末は大変なにぎわいだ。

 

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ソウルから群山への移動はソウル駅(写真)または龍山(ヨンサン)駅からKTX山川(サンチョン)に乗って益山(イクサン)まで行き(所要1時間20分)、益山駅から在来線かバスで群山まで30分程度。

 

 

取材協力:

群山市文化芸術課

全羅北道 国際協力課 国際交流係

 

 

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紀行作家。1967年、韓国江原道の山奥生まれ、ソウル育ち。世宗大学院・観光経営学修士課程修了後、日本に留学。現在はソウルの下町在住。韓国テウォン大学・講師。著書に『うまい、安い、あったかい 韓国の人情食堂』『港町、ほろ酔い散歩 釜山の人情食堂』『馬を食べる日本人 犬を食べる韓国人』『韓国酒場紀行』『マッコルリの旅』『韓国の美味しい町』『韓国の「昭和」を歩く』『韓国・下町人情紀行』『本当はどうなの? 今の韓国』、編著に『北朝鮮の楽しい歩き方』など。NHKBSプレミアム『世界入りにくい居酒屋』釜山編コーディネート担当。株式会社キーワード所属www.k-word.co.jp/ 著者の近況はこちら→https://twitter.com/Manchuria7

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