韓国の旅と酒場とグルメ横丁

韓国の旅と酒場とグルメ横丁

#77

写真で語る、全羅北道の魅力〈前編〉

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 先日、私の事務所の日本人男性スタッフ(56歳、初訪韓は1989年)が、韓国南西部にある全羅北道(以下、全北)の視察旅行に参加してきた。

 全北は雄大な穀倉地帯と西側の海(黄海)が産する豊かな食材を使った料理が発達したところで、その中心地・全州はビビンパの故郷といわれている。

 また、観光資源が豊かで、地方都市としてはもっとも早く内外からの観光客誘致に成功した街としても知られている。

 今回は、そのとき撮った写真を見ながら、日本人スタッフに全北の魅力を2回に分けて伝えてもらおう。

 

 

『アウォン ミュージアム&ホテル』 

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移築した築200年以上の伝統家屋(写真)、コンクリート打ちっぱなしの空間、

全州市を取り囲む完州(ワンジュ)の豊かな自然が不思議な調和を成す『アウォン ミュージアム&ホテル』。

全羅北道完州郡所陽面大興里356 入場料10000ウォン ※ドリンク(コーヒーまたは五味子茶)1杯付き 年中無休 11:00~17:00(平日) 11:00~18:00(土日)

 

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窓外の光や色を意識しながらデザインされた客室。時間ごと、季節ごとの表情の変化が楽しめる。まさに美術館に泊まる感覚。

※客室の見学は12:00~16:00

 

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水を効果的に使っているのがこのミュージアムの建物の特徴。冬場の凛としたたたずまいもいいが、初夏の新緑や秋の紅葉も楽しみ。

 

ミュージアムスペースのホールは、天井が高い広々とした空間。音楽が流れるなか、のんびりとお茶が楽しめる。そこに突然、マスコットのチャウチャウ犬(雌)が姿を現す。彼女もこのリラックス空間の演者のひとり。

 

『孤独のグルメ』に登場した大衆食堂『土房』

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昨年、人気番組『孤独のグルメ』に登場した『土房(ドバン)』は、全州市中心部からクルマで15分ほど行ったところにある、ありふれた大衆食堂だった。番組登場以来、日本からの団体観光客がバスで大挙してやってくるので、予約は当面受け付けていないそうだが、午前の開店まもなくの時間や夕方の開始時間前に並ぶ覚悟で行けば、利用できる可能性はある。

全羅北道全州市完山区平和洞1街727-1 10:00~15:00、17:00~21:30 日曜定休

 

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『孤独のグルメ』では、五郎さんが6000ウォンのペクパン(日替わり定食)を頼み、主菜や副菜をごはんにかけてビビンパのように食べる韓国人が好むスタイルを真似ていた。好みなので、もちろんそうしてもいいが、好きなおかずを少しずつつみながら白飯をそのままいただいてもいい。筆者が美味しいと感じたのは、番組でクローズアップされていたチョングッジャン(韓国式納豆汁)ではなく、写真のテジプルコギ(豚の甘辛焼き)だ。9000ウォン出せば、テジプルコギを主菜とした定食(テジプルコギ・ペクパン)が食べられる。じつは、"食都"と呼ばれる全州を中心とした全北で、この水準のマッチプ(旨い店)を見つけるのはそう難しいことではない。地元の人の口コミを頼りに食べ歩きを楽しんでもらいたい。

 

 

群山近代歴史博物館、群山近代建築館 

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日本が韓国最大の穀倉地帯・全北から収奪した米を集め、船で日本に送る役割を果たしていた西側の港町・群山(クンサン)。歴史だけを見れば日本人にはけっして居心地のよい場所とはいえないのだが、『群山近代歴史博物館』で無邪気に写真撮影に興じる女子高校生たちの姿を見ていると、少しだけ心が軽くなる。

全羅北道群山市蔵米洞1-67 入場料2000ウォン(成人) 09:00~18:00(3月~10月)、09:00~17:00(11月~2月) 月曜定休

 

『群山近代建築館』の1階フロアは群山のデジタル地図になっている。

全羅北道群山市蔵米洞1-67 09:00~18:00(3月~10月) 09:00~17:00(11月~2月) 月曜定休 料金500ウォン(成人)

博物館の周辺は徒歩圏内に税関や銀行、寺院、日本家屋を改装したペンションなど日本時代の遺物が多く残っているので、散歩のしがいはある(心境は少々複雑だが……)

 

映画『八月のクリスマス』撮影地 

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群山で撮影された韓国映画『八月のクリスマス』(ホ・ジノ監督)の撮影地。ハン・ソッキュが乗ったスクーターや、シム・ウナが乗った軽自動車などが展示されている。『八月のクリスマス』は、『グリーン・フィッシュ』(イ・チャンドン監督)や『シュリ』(カン・ジェギュ監督)と並ぶ、韓流以前、日本人に人気のあった作品。

 

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『八月のクリスマス』が本国で封切られたのは1998年だから、もう21年も前のことになる。当時は、韓国映画がかつての陰鬱なものから、娯楽性のあるもの、情緒性のあるものへと多様化が進んだ頃。同作品は、写真館の主(ハン・ソッキュ)と違法駐車取締官の女性(シム・ウナ)との淡い恋物語。2013年、韓国のロッテシネマが「あなたがもう一度観たい映画」の調査をしたところ1位となり、同年、再上映された。韓国映画の再上映としては最大規模。

 

80年代風サムギョプサル『スジョン会館』 

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全州市内の人気焼肉店『スジョン会館』のサムギョプサル(1人分180グラム、12000ウォン。注文は2人分から)。今でこそ、冷凍していない生の豚肉を焼いて食べる店は珍しくないが、1980~1990年代までは写真のような冷凍肉をカンナのような機械で薄くスライスして出すのが主流だった。最近の韓国の懐古ブームは食にも影響を与えているようだ。薄切りの豚バラ肉は腹を満たすというより、冷えたソジュを美味しく飲むための肴と言ったほうがぴったりくる。肉の端に残っている軟骨の食感もどこか懐かしい。

 

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筆者は全北を旅行中、風邪気味だったのだが、地元の方に「これを飲みなさい」と言われて、『スジョン会館』で何杯も干したのが写真のメウンコチュ(激辛青唐辛子)を入りソジュ。さらに全北名物の母酒(アルコールを飛ばした韓方ドリンク)を燗して飲み、布団をかぶって汗をたっぷりかいて眠ったら、翌朝はかなりラクになっていた。

 

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サムギョプサルだけでは飽きるという人には、豚肉のプルコギ(1人分180グラム12000ウォン。注文は2人分から)がおすすめ。コンチチゲというサンマの鍋物(小が20000ウォン)も人気。

全羅北道全州市完山区全州客舎1ギル12-6 24時間営業 無休

 

 

全州式大箱 “角打ち”『ジョンイル・シュポ』 

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全州を中心とした全北に何度も通っている筆者にとっては、もはや日常的な飲み屋だが、初めての人のために全州式大箱 “角打ち”『ジョンイル・シュポ』の仕組みを説明しよう。全州では大変な有名店なので、街のどこからタクシーを拾ってもこの店を知らない運転手さんはいない。店の外観はよくある食料雑貨店風……。

 

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中に入ると、インスタントラーメンやタバコなど食料雑貨が並んでいるが……。

 

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足元では練炭ストーブのようなもので、怪しげな物体が炙られている。

 

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冷蔵庫には数種の瓶ビールと母酒。客はここから勝手に酒を持って行って、会計は店の人がテーブルの空き瓶を数えてくれる

 

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店の入口近くで炙られていたものの正体はファンテ(寒冷地で昼夜干された大きな鱈)。これをつまみにビール(中瓶2500ウォン)を飲む。鱈はよく叩かれているので、千切るとふわっと粉を吹くほど。これを食べると口中の水分が一気に奪われる。そこにビールを流し込むのが醍醐味。手前の激辛タレにつけて食べると、さらにビールが進む。

 

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ファンテに次ぐ人気干物メニューがカボジンオ(紋甲イカ)の干物。こちらは香りが鱈より濃厚

 

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ケランマリと呼ばれる大きな卵焼きもおすすめ。中にはネギやニンジン、細切り唐辛子が入っていてヘルシー

 

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全州が観光地として成功したため、外部からの観光客も多いが、地元の人たちの日常的な酒場としても定着している

 

 

*全羅北道 道庁公式HP(日本語)http://jp.jeonbuk.go.kr/index.jeonbuk

*取材協力/全羅北道 国際協力課 国際交流係

 

*4月21日(日)、本コラムの主筆チョン・ウンスクが名古屋の栄中日文化センターで韓国文化講座(2時間×2コマ)を行う予定です。詳細は本連載の次回以降、もしくは筆者twitter(https://twitter.com/Manchuria7)で。

 

*著者の近況はこちら→https://twitter.com/Manchuria7

 

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紀行作家。1967年、韓国江原道の山奥生まれ、ソウル育ち。世宗大学院・観光経営学修士課程修了後、日本に留学。現在はソウルの下町在住。韓国テウォン大学・講師。著書に『うまい、安い、あったかい 韓国の人情食堂』『港町、ほろ酔い散歩 釜山の人情食堂』『馬を食べる日本人 犬を食べる韓国人』『韓国酒場紀行』『マッコルリの旅』『韓国の美味しい町』『韓国の「昭和」を歩く』『韓国・下町人情紀行』『本当はどうなの? 今の韓国』、編著に『北朝鮮の楽しい歩き方』など。NHKBSプレミアム『世界入りにくい居酒屋』釜山編コーディネート担当。株式会社キーワード所属www.k-word.co.jp/ 著者の近況はこちら→https://twitter.com/Manchuria7

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