台湾の人情食堂

台湾の人情食堂

#69

漢字一文字で台湾料理を見分ける方法〈1〉

文・光瀬憲子

 台湾が人気の渡航先として上位にランクインする理由のひとつが食べもの。台湾の場合は、看板やメニューが日本人にもなじみ深い漢字なので、店やメニューを選びやすいのもうれしいところだ。

「雞肉飯」と書いてあれば「鶏肉とご飯だな」、「牛肉麵」なら「牛肉が入った麺かな」と見当がつく。

 今回はそんな台湾グルメにもっと詳しくなれるメニュー見極めのコツをお教えしよう。

 

 

→正月に食べるモチじゃない

 〇○飯はご飯物、△△麵は麺類。それくらいは見当がつく。だが、メニューでよく見かける「餅(ビン)」はどういう意味だろう?

 日本語で考えれば、もちろんお正月に食べるお餅だが、台湾の「餅」は丸くて平べったいものの総称だ。日本で言う「餅」は、台湾では「糯米(ヌオミー)」というまったく別の漢字が使われている。

 甘いものでも、塩味のものでも、丸くて平べったければ台湾では「餅」。そして、たいていは小麦粉が使われている。

 

01鹿港の老街で食べた牛舌餅。牛タンのような形状からこう呼ばれる

 

 たとえば「蔥油餅」は葱(ネギ)を練り込んだ丸い生地を油で揚げたもの。甘くないおやつで、小腹の空く午後には絶好の間食なので、部活帰りの台湾の中高生に人気だ。

 

02花蓮の人気店で食べた蔥油餅。丸いのを二つ折りにして袋にいれてくれる 

 

 さらに、夜市などでよく見かける「潤餅」は、薄いクレープ生地のようなものに野菜や肉をたっぷり包んだ料理。これも平べったくて丸いもので包むのでこの名前が付いている。

 

03台南、國華街の人気店で食べた潤餅 

 

04嘉義、東公有市場で食べた野菜たっぷりの潤餅

 

 一方で、「月餅」、「太陽餅」などのお菓子にも「餅」の名前が使われる。中に甘い餡が詰まった丸くて平べったいお菓子だ。日本人旅行者にも人気の「胡椒餅」は厳密にはあまり平べったくないが、粉物の皮のなかに肉が詰めてある丸い食べもの。

 

 

→四角く蒸し固めたもの

 一方、たいてい四角い形をしているのが「糕(ガオ)」という漢字が使われた食べもの。

 日本人が「大根餅」と呼んではばからない、白くて四角いモチモチした料理は、台湾では「蘿蔔糕」と呼ぶ。「糕」は日本語の「餅」のような意味で使われる。粉状から練って四角い型で蒸し固めたもの、というイメージだ(四角くない場合もある)。

「年糕」は新年に食べる四角いもの、そう、日本で言う「お餅」である。

 

05日本ではなぜか「大根餅」と呼ばれている「蘿蔔糕」

 

 

→子供も大人も大好きな食材

 もうひとつ、知っておくと便利な漢字が「蛋(ダン)」だ。日本ではほとんど使わない漢字だが、台湾では「タマゴ」を意味する。

 たとえば「蛋糕(ダンガオ)」はたまごを蒸し固めたもの。そう、カステラのようなケーキである。さらに「蛋餅(ダンビン)」は丸い薄皮とたまごをフライパンで焼いてくるくるっと丸めた料理。豆乳店でおなじみの卵巻きである。

 

06台湾の朝ごはんとして一般的な蛋餅

 

 

→円い食べもの

 形状が名前の由来になっている料理は他にもある。「圓(ユェン)」だ。日本語の「円」とほぼ同じ意味で使われる。日本の通貨を表すときも「圓」と書く。だが食べものに使われる場合は丸い形のものを指す。

 台湾の摩訶不思議グルメの上位に食い込む「肉圓(ロウユェン)」は、丸くてぷよぷよふした生地の中にひき肉などの具材を詰めたもの。

 

07生地が透けていて具が見える肉圓。台湾語のバーワンのほうが一般的な読み方

 

「湯圓(タンユェン)」はお湯の中で丸い団子を茹でたもの。白玉団子に似た料理で、甘いスープの中に入れてスイーツとして食べたり、または塩味のスープの中に入れて食事として食べたりする。

 

08

冬至にスイーツ的に食べる湯圓

 

 芋圓や地瓜圓もスイーツの一種で、タロイモ(芋)やサツマイモ(地瓜)のペーストを丸めて茹でたものだ。九份には芋圓スイーツの専門店がある。

 

 

→台湾人が大好きなトロッとしたもの

「○○湯」と言えばスープを指すが、「○○羹」または「○○焿」のようになじみない画数の多い漢字で書かれているのはどんな食べものだろう?

 読み方はどちらも「ゲン」。あんかけという意味だ。水溶き片栗粉でとろみを付けた料理で、スープに近い。

 台湾人は、冷めにくく、美味しさをとろみの中に閉じ込めておけるあんかけが大好きだ。「肉羹」「魚羹」というメニューは魚や肉の塊が入ったあんかけスープ。「湯」の料理と「羹」の料理はかぶるので一緒に頼まないように注意しよう。

 

09

肉の塊が入ったあんかけスープ、肉羹。台北近辺では北投に人気店が多い

 

 

→士林夜市で大人気

「排(パイ)」という字は日本語でも押して開く、という意味がある。台湾料理にこの漢字が使われた場合、その形状が押して開いたように平たいもの、という意味だ。

 その代表、雞排は鶏胸肉や腿肉を開いて平たくし、カリッと揚げたもの。士林などの夜市では、大きな鶏の唐揚げが人気だ気が、あれは炸雞排と呼ばれるもの。

 

10夜市で人気の炸雞排

 

 牛排、豬排も肉の種類が変わるだけで、平たく押し開いた形は共通している。要はステーキ状のものだ。排骨は骨付きのステーキで、通常は豚肉を指すことが多い。

 

 

→これが上手くできればいい奥さん

「滷(ルー)」という字もよく見かける。

「滷」と「魯」はほぼ同じ意味で、いずれも醤油煮込みを指す。日本人旅行者にも人気の台湾を代表する小吃、ルーロウファンは、「魯肉飯」または「滷肉飯」と書く。「滷蛋(ルーダン)」は日本で言う味玉。「滷味(ルーウェイ)」は醤油で煮込んだ肉や豆腐類などの総称だ。

 

11手前中央が滷蛋

 

 台湾は外食産業が盛んで、1日3食外食ということも珍しくない。女性もあまり料理をする習慣がないのだが、かつては「滷味」、つまり煮込み料理ができる人はいい奥さんになれる、と言われていた。くやしいが、私はいい奥さんにはなれなかった(笑)。

(つづく)

 

 

*11月3日(土)、東京五反田で光瀬憲子のトークイベントが行われます。第1部では、映像翻訳家として活躍する光瀬が韓流映画やドラマの吹き替え翻訳の仕事について語り、第2部では、鉄道やバスを使って台湾を一周する楽しさとコツをお教えします。お申し込みは下記で。

https://t.pia.jp/pia/ticketInformation.do?eventCd=1844311&rlsCd=001&lotRlsCd=

 

 

*双葉文庫『ポケット版 台湾グルメ350品! 食べ歩き事典』が好評発売中です。旅のお供にぴったりの文庫サイズのポケット版ガイド、ぜひお手にとってみてください!

 

ƒshoei

ポケット版 台湾グルメ350品! 食べ歩き事典

発行:双葉社 定価:本体648円+税

 

 

*単行本『台湾の人情食堂 こだわりグルメ旅』が、双葉社より好評発売中です。ぜひお買い求めください!

 

台湾カバー01

『台湾の人情食堂 こだわりグルメ旅』 

定価:本体1200円+税

 

 

 

*本連載は月2回(第1週&第3週金曜日)配信予定です。次回もお楽しみに!

 

 

taiwan_profile_new

著者:光瀬憲子

1972年、神奈川県横浜市生まれ。英中日翻訳家、通訳者、台湾取材コーディネーター。米国ウェスタン・ワシントン大学卒業後、台北の英字新聞社チャイナニュース勤務。台湾人と結婚し、台北で7年、上海で2年暮らす。2004年に離婚、帰国。2007年に台湾を再訪し、以後、通訳や取材コーディネートの仕事で、台湾と日本を往復している。著書に『台湾一周 ! 安旨食堂の旅』『台湾縦断!人情食堂と美景の旅』『美味しい台湾 食べ歩きの達人』『台湾で暮らしてわかった律儀で勤勉な「本当の日本」』『スピリチュアル紀行 台湾』他。朝日新聞社のwebサイト「日本購物攻略」で訪日台湾人向けのコラム「日本酱玩」連載中。株式会社キーワード所属 www.k-word.co.jp/  近況は→https://twitter.com/keyword101

紀行エッセイガイド好評発売中!!

taiwan00_book01

台湾一周! 安旨食堂の旅

taiwan00_book02

台湾縦断! 人情食堂と美景の旅

isbn978-4-575-31183-9

台湾の人情食堂 こだわりグルメ旅

ISBN978-4-575-71470-8

台湾グルメ350品! 食べ歩き事典

台湾の人情食堂
バックナンバー

その他のアジアの人情グルメ

ページトップアンカー