韓国の旅と酒場とグルメ横丁

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#69

庶民の生活圏を走るマウルバスの旅〈3〉

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東大門駅前から03番マウルバスで駱山公園へ

 1号線東大門駅の4番出口をのぼって歩道に出る。そのまま100メートルほど歩くと、右手に小さなセブンイレブンが見えてくる。そこから視線を左手の大通りに移すと、車道の真ん中に停留所がある。東大門駅と駱山(ナクサン)の頂上にある駱山公園を往復する鍾路03番マウルバスはそこから乗れる。

 

01東大門駅4番出口から歩道を進み、右手のセブンイレブンを背にしたところから、道路中央のバス停留所が見える

 

 乗客が多く、道路事情も悪くないため、この路線ではマイクロバスではなく、市内バスと同じ大きな車両が使われている。

 

02東大門駅を出たバスが東廟アプ駅の交差点にさしかかる

 

 朝、03番に乗り込むのは女学生が多い。彼女たちの嬌声で姦しいバスは東廟(トンミョ)アプ駅前の交差点を左折してゆるやかな坂道を北方向にのぼっていく。少し行くと右手に激辛冷麺で有名な『キッデボン』が見える。むしゃくしゃするとき、ここの冷麺を食べると頭がスッキリする。

 

03昌信駅の4番出口と3番出口の中間辺り。東峰望トンネルの手前でバスは側道に入る

 

 6号線の昌信駅4番を過ぎ、真正面に東峰望トンネルが見えてくる。ここでバスは大通りから外れ、ヘアピンカーブを右に曲がるように進む。この辺りから景色が住宅街に変わる。道はいったん下りになるが、すぐにまたのぼりになる。空がだんだん近くなる。

 

ヘアピンカーブを曲がった辺りで、駱山公園から戻ってきた同じ03番バスとすれ違う

 

 バスが今度は左へ左へと進む。車内放送が「次の停留所は青龍寺(チョンリョンサ)です」と告げる。住宅地の中の寺は韓国ではちょっと珍しい。南無~。この辺りが駱山の中腹だ。先ほど迂回したトンネルを交差するようにくぐり抜ける。少し行くと今度は大きな教会(崇仁教会)が現われた。ア~メン。

 

駱山公園が近づいてくる。カーブ、しかも坂なので、スビードを抑えるための黄色いハンプ(凸舗装)が多く、バスが大きく縦に揺れる

 

 

駱山公園から眺めるソウル

 街路樹の緑が目立ち始め、空がさらに近づくと、終点の駱山公園だ。

 展望台には朝から人が集まっている。私と同じようにバスでのぼってきた人もいれば、登山服姿の中高年グループもいる。

 今でこそ漢江の北側も南側もソウルだが、かつては東西南北の四つの大門で結ばれた城郭の中だけがソウル(漢陽、漢城)だった。城郭を時計にたとえれば、駱山公園は2時のあたり、北方向に位置している。

 

06駱山公園からの展望。北方向に北岳山が見える

 

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城郭の内側にある駱山公園から南方向を眺める。中央に見える高いビルが東大門市場のドゥータ、その下にデザインプラザ。右手には南山とソウルNタワーが見える

 

 駱山の標高は120メートルほどなのだが、ずいぶん高く感じる。ここからは北に北岳山、南に南山が一望できる。西を見下ろすと日本人旅行者にもおなじみの大学路(テハンノ)の街が広がっている。東大門駅前からバスに乗ること15分で、こんな景観の変化が味わえるとは、ソウルも捨てたものではない。

 

 

駱山公園からの360度のパノラマ

 

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時間があれば、城郭沿いを散歩してもいい。カップルが歩いているところが城郭の外

 

 

帰りは歩いて

 下界とはひと味もふた味もちがう空気を吸った後、再び03番バスに乗って来た道を戻ることもできるが、運動がてら歩いて下るのも悪くない。

 

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駱山公園から来た道を戻る03番マウルバス

 

 私が好きなのは、バスに乗った東大門駅の停留所方向へショートカットするように、南方向に駱山を下り、ミシンの音が聞こえる縫製マウル(本連載バックナンバー#04参照)を抜け、昌信市場(チャンシンシジャン)まで歩いて行くルートだ。

 駱山公園から東大門市場のドゥータのビルや東大門デザインプラザが見えるので、だいたいその方向に歩いていけば間違いない。くねくねとした舗装路をただ下って行ってもいいし、家と家の間の狭い階段を、迷いながら降りて行くのもおもしろい。

 駱山を下る途中、小さな家々を屏風のように取り囲んでいる絶壁に出合う。日本植民地時代、当時、京城と呼ばれたソウルに西洋式のビルを建てるために石材を供給した採石場の跡だ。

 

11路地から東方向を見ると、向こうに採石場跡が

 

 駱山公園から10分ほどゆるやかな下り道を行くと、途中から坂が急になる。ふらつく膝に年齢を感じる。私の横をすり抜けていくスクーターは後ろブレーキをかけながら、滑り止めの溝が掘られたくねくね道を慎重に下っている。前ブレーキなどかけようものなら転倒しかねない急こう配。“嵐峠”と呼ばれるゆえんだ。

 

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坂道に慣れている地元のライダーでも用心深く下っていく急坂

 

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筆者はこのY字路の右手の道から下ってきた。カメラの背中の方向にセブンイレブンがあるので、そこを左折してしばらく行くと昌信市場に出る

 

 ふらつきながら平地に戻り、左手にセブンイレブンが見えると、下界に降りてきたという気がしてくる。この角を左りに曲がると、急に商圏となり、人の多いほうへ多いほうへとぶらぶら歩いて行けば、昌信市場にたどり着く。安くて旨い食堂が多いので、賑わっている店があったら入ってみるといいだろう。外国人労働者が多いため、中国東北部やインド、ネパール料理の専門店も目立っている。ここから東大門駅はすぐ近くだ。

 

14昌信市場は細い路地を中心とした小さな市場だが、外国人が多いのでアジア感がすごい!

 

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豚足に激辛ソースをかけて網焼きしたメウンチョッパルが昌信市場の名物。店先で目にしみる煙を出している店を見つけたら入ってみよう

 

 ふだん鍾路3街(チョンノサムガ)辺りで、飲み屋のネオン看板や屋台の灯りばかり見ているせいか、駱山公園から見る秋空はじつにすがすがしかった。住み慣れたソウルの今まで気づかなかった一面を見せてくれるマウルバスの旅を、これからも続けていこと思う。

 

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鍾路03番マウルバスの路線図(下り路線は鍾路5街駅方面を一周して、再び東大門駅停留所に戻ってくる)

※クリックすると大きくなります

 

 3回に渡ってお送りしてきたマウルバスの旅。今回が初級コースだとしたら、バックナンバーの#67(西大門駅発)が中級コース、#68(弘済駅発)が上級コースといったところだろうか。お金も時間もかからないが、韓国庶民のサラムネムセ(生活の匂い)が感じられる。ソウルリピーターにぜひ体験してもらいたい。

 

 

 

*【お知らせ】11月10日(土)、東京・大塚のホテル『星野リゾート OMO5 東京大塚』で、筆者の『TABILISTA』トークイベント supported by『星野リゾート OMO5 東京大塚』~鄭銀淑(チョン・ウンスク/紀行作家)『韓国の旅と酒場とグルメ横丁』​~が開催されます。 

SOLD OUT!

本当にたくさんの方からのお申し込みをいただき、ありがとうございました。
おかげさまで定員に達しましたので申込みは締め切らせていただきます。
イベントの模様は、本連載の中でお届けする予定です。

 

 

イベント用プロフィール

 

●日時:11月10日(土) 
●会場:星野リゾート OMO5 東京大塚『OMOカフェ』
●概要:チョン・ウンスクさんによるトークショー(1ドリンク付き)
    テーマ:「ソウル鍾路3街の街歩き」  


*会場の都合により先着30名様限定とさせていただきます(完全予約制)。
*当日、会場受付にて現金でのお支払をお願いいたします。
※定員になり次第、締め切らせていただきます。

 

*本連載の一部に新取材&書き下ろしを加えた単行本、『韓国ほろ酔い横丁 こだわりグルメ旅』が、双葉社より好評発売中です。ぜひお買い求め下さい!

 

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定価:本体1200円+税

 

*本連載は月2回配信(第2週&第4週金曜日)の予定です。次回もお楽しみに!

 

 

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紀行作家。1967年、韓国江原道の山奥生まれ、ソウル育ち。世宗大学院・観光経営学修士課程修了後、日本に留学。現在はソウルの下町在住。韓国テウォン大学・講師。著書に『うまい、安い、あったかい 韓国の人情食堂』『港町、ほろ酔い散歩 釜山の人情食堂』『馬を食べる日本人 犬を食べる韓国人』『韓国酒場紀行』『マッコルリの旅』『韓国の美味しい町』『韓国の「昭和」を歩く』『韓国・下町人情紀行』『本当はどうなの? 今の韓国』、編著に『北朝鮮の楽しい歩き方』など。NHKBSプレミアム『世界入りにくい居酒屋』釜山編コーディネート担当。株式会社キーワード所属 www.k-word.co.jp/

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