台湾の人情食堂

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#68

長い夏の終わり、そして秋の訪れ

文・光瀬憲子

01台湾の秋を象徴する南東部の稲穂の絨毯(11月初旬撮影)

 

 日本の旅行者にはあまり知られていないことだが、桜とともに入学、進学する日本と違い、台湾の新学期は9月に始まる。6月に授業が終わり、長く暑い夏を終えた学生たちは、少し湿気を帯びた秋風のなか、制服に着替えて学校生活を再開する。

 台湾はで9月といえば台風の季節だが、日本と同じように夏の訪れが早かった今年は、台風の季節もすこし前倒し。そろそろ秋の風が吹いている。

 よく台湾旅行を計画している人に「何月に台湾に行くのが一番いい?」と聞かれるが、10月~11月、もしくは3月~4月と答えている。真夏は炎天下のなか歩き回るのが大変だし、真冬(台北など北部では1月~2月)は意外と寒くて雨が多かったりするので、台風シーズンが終わった10月から寒くなるまでの11月がもっとも台湾旅行に適している。

 現地の空港を出た瞬間に感じる「もわっ」とした湿度の高い空気も、10月や11月はそれほど不快ではない。台湾の秋は冷え込みが弱いので、昼間はTシャツ1枚、朝晩に1枚薄手の長袖シャツやパーカーを羽織れば十分だ。

 10月~11月は快適に外遊びを楽しむチャンス。早起きして早朝の台北に繰り出せば、青空市場が心地よく迎えてくれる。夏の間は冷房の効いた部屋でじっとしていた地元の人たちも、秋になると朝から元気だ。

 

 

台北の朝市で秋を感じる

 大都市台北で秋風を感じるには雙連の朝市がおすすめだ。遊歩道の両脇に並んだ果物や雑貨の屋台、朝市の中央で市井の人々を見守る廟の威容、美味しい朝ごはんなどが楽しみ。屋台で肉まんやフルーツを買ったら、そばの芝生に腰掛けて食べながら、市場を行き交う人々を眺めるのも楽しい。

 雙連市場の北側に、小さいけれど気さくなご夫婦が経営する豆乳店がある。ここの蛋餅(卵巻き)は朝ごはんにぴったり。

 

02MRT雙連駅から民権西路駅にかけて伸びる雙連朝市。台北では珍しい完全な青空市場で、早朝から地元民で賑わう(9月末撮影)

 

03民権西路駅のそばにある小さな『雙連豆漿』の看板メニューはたまごクレープとの異名を持つ蛋餅(ダンビン)。甘辛いタレでいただく

 

 

夕立を気にせず、屋外でビール

 夏の台湾を旅していて、ゲリラ豪雨に襲われた経験のある人も多いだろう。昨今では日本でも突然の雷雨に見舞われることが多くなったが、台湾の夏にスコールはつきもの。このため、折りたたみ傘は必須だ。

 しかし、秋の気配が感じられる頃には夕立はほとんどなくなり、安心して屋台で飲み食いすることができる。台北市内の涼州街にある慈聖宮は、廟の境内で存分に飲み食いできる飲ん兵衛の聖地。大きなガジュマルの木が木陰を作り、廟を取り囲む屋台群がおいしいつまみを提供してくれる。仲間が2、3人集まればそれだけで楽しい宴の始まりだ。旅行中なら時間を忘れ、平日の昼間から神様の前でビールを飲む快楽を体験してほしい。

 

04週末ともなれば昼前から大賑わいの慈聖宮。すべての席で酒が飲めるわけではないのでテーブルの張り紙をチェックしよう(9月末撮影)

 

 夜市でもビアガーデンが大盛況なのが秋口の台湾だ。夜が長くなればそれだけ夜市の時間は長くなる。そろそろ長袖のシャツを羽織りたくなる夕暮れどき、路地のビアガーデンはすでに始まっている。台北市内にある艋舺夜市の梧州街には、リーズナブルな海鮮を囲んでビールが飲める星空屋台が軒を連ねる。ご近所さん、職場の同僚、同級生など、数人のグループで時間を忘れておしゃべりに興じる時間だ。

 

05艋舺夜市の梧州街は知る人ぞ知るリーズナブルなビアガーデン。地元の人たちで埋め尽くされる

 

 

秋の風物詩

 台湾の人々が秋になると浮足立つのは、新学期と気候のためだけではない。9月、10月は大型連休が控えているからだ。9月の半ばから下旬にかけては中秋節という、旧正月の次に大きな祭日がある。

 旧暦の中秋節は毎年変動するが、9月の終わりに連休となり、多くの人々が帰省する。手土産にするのはもちろん、月餅だ。台湾の月餅はまん丸の球体のものが多い。鶏のたまごくらいの大きさで、外はパイ生地、中にはあんが詰まっているものが主流。街のパン屋さんやケーキ屋さんなどが月餅作りに忙しくなる。日本のお中元に当たるようなところがあり、取引先、学校の先生、親戚の家などにも贈ったりする。まさに中華圏の風物詩だ。

06秋の風物詩とも言える月餅。中秋の満月を思わせる可愛らしいスイーツだ。日本へのお土産にも最適

 

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中秋節の2週間から1週間前に月餅作りのピークを迎える街の伝統菓子店。家族総出で量産中

 

 

台北郊外や地方で感じる秋

 秋は台北だけでなく、地方への旅もおすすめ。気候がよければ電車の旅、船の旅もぐっと楽しくなる。近場でアウェイ感を楽しむなら、MRTで40分ほどの淡水へ出かけ、そこから淡水河を八里へ向けて渡ったり、大稻埕の埠頭から淡水河をクルーズする船に乗ってみるのもいい。

 

08大きな淡水河で優雅に水上の旅。この豪華客船は団体客がメインだが、月に1、2度だけ個人客も乗船できる。次は9月29日、10月は20日と28日

 

 さらに遠くまで足を伸ばせるなら、台湾東部への旅がおすすめだ。10月には台東県池上の田園が黄金色に色づく。台湾の米どころである池上では、収穫前の2週間ほどがサイクリングに最適の時期。秋風になびく稲穂を眺めつつ、自転車で優雅に風を切ろう。

 

09収穫を間近に控えた台東県池上の田園。黄金の稲穂のなかをサイクリングできる

 

10池上駅そばの人気肉まん店『好朋友肉包』の肉まん。駅で自転車をレンタルしたら走り出す前に腹ごなし

 

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台東の釈迦頭が美味しくなるのも秋。見た目は大仏の頭のようだが、熟れると甘いミルクの味がするフルーツ

 

 そして、お腹がすいたらもちろん、池上弁当が待っている。冷めても美味しい、もっちりした池上米と色とりどりのおかずが、昔ながらの木箱に収まっている。コンビニ弁当とはひと味もふた味も違う、昔懐かしい素朴な味を堪能できる。

 

12サイクリングのあとはご褒美の池上弁当が待っている。バランスのよいおかずと冷めても美味しい池上米は、帰りの電車の中でいただこう

 

*今秋、首都圏で筆者のトークイベントがいくつか行われる予定です。具体化しましたら本コラムやTwitter(https://twitter.com/keyword101)でお知らせします。

 

 

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*本連載は月2回(第1週&第3週金曜日)配信予定です。次回もお楽しみに!

 

 

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著者:光瀬憲子

1972年、神奈川県横浜市生まれ。英中日翻訳家、通訳者、台湾取材コーディネーター。米国ウェスタン・ワシントン大学卒業後、台北の英字新聞社チャイナニュース勤務。台湾人と結婚し、台北で7年、上海で2年暮らす。2004年に離婚、帰国。2007年に台湾を再訪し、以後、通訳や取材コーディネートの仕事で、台湾と日本を往復している。著書に『台湾一周 ! 安旨食堂の旅』『台湾縦断!人情食堂と美景の旅』『美味しい台湾 食べ歩きの達人』『台湾で暮らしてわかった律儀で勤勉な「本当の日本」』『スピリチュアル紀行 台湾』他。朝日新聞社のwebサイト「日本購物攻略」で訪日台湾人向けのコラム「日本酱玩」連載中。株式会社キーワード所属 www.k-word.co.jp/  近況は→https://twitter.com/keyword101

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