韓国の旅と酒場とグルメ横丁

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#66

15年ぶりの関西出張で感じたこと〈後編〉

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 残暑お見舞い申し上げます。韓国で日本で猛威をふるった夏もようやく力尽きてきたようで、ほっとしています。

 今回は中断していた関西出張レポート(フォトエッセイ風)の後編をお送りします。

 

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鶴橋駅のホームで涼む筆者。このエリアには日本最大規模のコリアンタウンがある

 

 

駅弁大国

 新大阪駅の構内に駅弁専門店を見つけました。日本が弁当先進国であることは韓国でもよく知られていますが、東京駅ならともかく大阪駅にも専門店があるところに日本文化の厚みを感じます。店内は駅弁博物館さながらで、素材や産地を見て歩くのが本当に楽しかったです。

 

02新大阪駅構内では、駅弁専門店をいくつか見かけた


 関西で出合った弁当のなかでも私がとくに気に入ったのは、奈良県五條市の『柿の葉すし』。発酵食品なのですが、サバ、サケ、タイ、アジなどの魚にとがった酸味はなく、とても上品な味わいでした。保存が効くので、おつかいものに重宝するようです。環状線・京橋駅のホームにも専門の売店があるあたり、その浸透ぶりがうかがえます。

 

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韓国に戻った今でも恋しくてしかたがない『柿の葉すし』。その産地は奈良県五條市。昨年観た韓国映画のなかでもとくに印象に残る『ひと夏のファンタジア』の撮影地でもあった

 

 売店の女性に聞くと、外国のお客さんは多くはないとのことでした。韓国は発酵料理の国ですから、認知されれば柿の葉すしは大いに受け入れられると思います。ただ、塩気が足りないと感じる人が多そうなので、やはりキムチとともにいただきたいですね。

 

 

鶴橋駅前の路地裏で

 鶴橋駅前の狭い路地にある市場は、まさにリトル・コリアの趣。元々は在日コリアンの町ですが、この十数年でニューカマーも増え、あちこちでソウル弁や慶尚道訛りを聞きました。

 

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鶴橋の路地裏の雰囲気は、ソウル南大門市場のC棟とD棟の西側ブロックのようでもあり、大邱駅近くの長屋街のようでもあった。東京で新大久保観光をしても、韓国観光の代わりにはならないと思うが、鶴橋駅の周りなら高い代理満足が得られそう

 

 鶴橋では念願のキムチサンドイッチも食べることができました。もっとキムチが主張している味を想像していたのですが、そこは和をたいせつにする日本。キムチの味は控えめで、他の具材とみごとに調和していました。

 

05キムチサンドで有名な喫茶店『ロックビラ』

 

06キムチが、タマゴやキュウリ、ハムなどとみごとに共存していたキムチサンド

 

 

生野コリアンタウンのはずれ、お好み焼き屋さんでオモニの味

 日傘がほしくなるような強い陽射しの中、鶴橋駅からぶらぶら歩いて行ったのが生野コリアンタウンの御幸通り商店街。かつては朝鮮市場と呼ばれていましたが、この十数年間、韓流の影響を受け、もうひとつの新大久保と化していました。

 メインの通りは避けて裏道に入り、どう見ても地元の人しか来ない感じのお好み焼き屋さんへ。韓国によくある、居間なのか店なのかよくわからない空間で60代後半くらいの女将さんと向き合いました。

 

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家族のことでも料理の秘密でも、歯に衣着せずなんでもざっくばらんに話してくれる女将に強く韓国を感じました

 

 日本の人だろうと思ったら、お父さんは慶州出身、お母さんは日本人だそう。私がソウルから来たというと、待ってましたとばかり、韓国式のパンチャンを出してくれました。

 白菜キムチのせ焼きそば、切り干し大根のキムチ、らっきょうのキムチ……。韓国では一般的ではない総菜が日本でどのように生まれ、変化してきたのか、とても興味深いですね。

 

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焼きそばはソースの味がとがった関東のそれとちがって甘味(旨味)があり、キムチとよく合った

 

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白眉はらっきょうのキムチ(ナムル)。清涼感があり、カリカリッとした食感がこぎみよい。韓国では刺身店で日本風の味付けのらっきょうがよく出るが、キムチ風の味付けのものとは出合った記憶がない

 

 

お酒が身近にある

 東京とソウルを比べると、ソウルはどこに行っても飲み屋がある印象です。駅前だけ見ても、それは東京の比ではありません。しかし、大阪は東京以上に飲み屋、それも大衆酒場が目立つと感じました。

 

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環状線、天満駅前の立ち飲み屋さん。天満には古くから食材市場があり、その周辺は大阪でも指折りの飲み屋街になっている

 

 とくに駅前の立ち飲み屋。昼間からやっている店も少なくありませんでした。東京にも立ち飲み屋はありますが、流行りだからやっているような感じがします。その点、大阪の立ち飲み屋はもっと地に足が着いているように見えました。

 それについて、地元の人が興味深い話をしてくれました。

「大阪は東京と比べ、現役稼働中の市場(いちば)が多く、朝、昼、晩さまざまな時間帯に一杯やりたい人がいるから飲み屋が不可欠」

 この説の真偽はともかく、韓国でも市場と酒文化は密接なつながりがありますから、一度調べてみたいテーマですね。

 

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天神橋筋商店街の路地裏にあった畳1畳分ほどのたこ焼き屋さん。ビールや日本酒もあったが、これは観光客向け?

 

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左上は関東ならモツ煮込みに当たる、どて焼き(牛筋の甘い煮込み)、その下はタコわさび。関西ではタコの存在感が東京より大きい

 

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裏天満(うらてんま)と呼ばれる天満駅北側の飲み屋街で見かけた看板。「もう帰るの?」なんて言われたら、終電など気にせずもう一杯いってしまいそう

 

 

楽しい環状線の旅

 私のようなビギナーが大阪という街の全体像をつかむために、環状線一周の旅はとても有意義でした。うれしかったのは、環状線はホームで1、2本見送れば、2人、または4人がけのクロスシート(車窓に対して横位置に座る席)車両に乗れること。これが旅行気分を盛り上げてくれました。大阪から京都に向かう列車もこのタイプでしたね。

 

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大阪駅から鶴橋に向かうときに乗った環状線(外回り)のクロスシート

 

 次回の大阪出張のときは、昼間、空いている時間帯に缶ビール片手に環状線に乗りたいと思っています。

 

 

*秋以降、首都圏で筆者のトークイベントがいくつか行われる予定です。具体化しましたら本コラムやTwitter(https://twitter.com/Manchuria7)でお知らせします。

 

 

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紀行作家。1967年、韓国江原道の山奥生まれ、ソウル育ち。世宗大学院・観光経営学修士課程修了後、日本に留学。現在はソウルの下町在住。韓国テウォン大学・講師。著書に『うまい、安い、あったかい 韓国の人情食堂』『港町、ほろ酔い散歩 釜山の人情食堂』『馬を食べる日本人 犬を食べる韓国人』『韓国酒場紀行』『マッコルリの旅』『韓国の美味しい町』『韓国の「昭和」を歩く』『韓国・下町人情紀行』『本当はどうなの? 今の韓国』、編著に『北朝鮮の楽しい歩き方』など。NHKBSプレミアム『世界入りにくい居酒屋』釜山編コーディネート担当。株式会社キーワード所属 www.k-word.co.jp/

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