ブーツの国の街角で

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#66

番外編:夏の定番イタリア家庭料理 *簡易レシピ付き*

文と写真・田島麻美

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ヨーロッパ各地で記録的な猛暑が続いている今年の夏。ローマも例外ではなく、かつての涼しく快適な地中海性気候がまるで幻だったかのような蒸し暑い日が続いている。気持ちも体もバテ気味の毎日で心配になるのが体調管理。暑さで食欲も減退気味だが、しっかり食べないと体力が持たないというジレンマに陥っている。イタリア料理、特にローマ料理といえばすぐに思い浮かぶのがカルボナーラやアマトリチャーナなどこってりソースが特徴のパスタだろうが、こんなヘビーな食べ物をこの暑さの中で食卓に並べる家庭は少ない。では、イタリア人は夏はどんな料理を食べているのだろうか? 
そんな声にお応えするべく、今回は一般的なイタリア家庭の食卓に並ぶ夏の定番料理を5品、簡易レシピ付きでご紹介しよう。出来るだけ火を使わず、簡単に作れるだけでなく、冷たくすると一層美味しくなるので一度にたくさん作って冷蔵庫で保存しておくこともできる。具材のアレンジも自由自在な料理ばかりなので、ぜひ日本のご家庭でも試してみて欲しい。

 

 

1. Pasta Fredda / パスタ・フレッダ(冷製パスタ)
 


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イタリアの食卓に上る頻度がとても高いのが「パスタ・フレッダ」。海に繰り出す家族づれは、必ずと言っていいほどタッパーにたくさんのパスタ・フレッダを詰めて出かける。作り方もとても簡単。トマトやオリーヴ、モッツアレッラ・チーズ、バジリコ、キュウリなど、好きな食材を細かく切ってオリーヴ・オイルと塩で和え、そこに茹でたパスタを加えれば出来上がり。コツは茹で上がったパスタを即座に冷水で冷やすこと。お湯から上げたままにすると余熱でパスタがぐにゃぐにゃになってしまうので、冷水をくぐらせてアルデンテを保つようにする。パスタの種類はペンネやファルファッレが定番。最も一般的な具は、トマト、バジリコ、モッツアレッラ、オリーヴ、ツナ缶だが、ファンタジーの数だけアレンジも広がるのがこの料理の楽しいところ。シーフードのマリネを加えたり、日本の夏野菜と合わせたり、ご自宅の冷蔵庫と相談しながら創意工夫でオリジナルの一皿を作ってみてはいかがだろう。

 

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*参考レシピ* <材料:二人分>・ショートパスタ(ペンネ、フジッリ、ファルファッレなど)160〜200g ・トマト150g ・バジリコ4枚 ・モッツァレッラチーズ100g ・黒オリーヴの実 適量 ・ツナ缶1・塩少々・オリーヴオイル大さじ2(お好みで香りづけにニンニクを加えてもOK)

 

<作り方>1・鍋にたっぷりのお湯を沸かし、塩を入れてパスタをアルデンテに茹でる 2・パスタを茹でる間、ボウルに好きな具材をサイコロ大に切って入れ、塩とオリーヴオイルで下味を付けておく。ニンニクで香り付けをしたい場合は、事前にニンニク一欠片を半分に切ったものをオイルに浸し、味付けの際にニンニクを取り出しオイルだけ使う 3・茹で上がったパスタを冷水で冷やし、水をよく切って2のボウルに入れて混ぜれば出来上がり
 

 

 

2.Insalata di Riso / インサラータ・ディ・リーゾ(ライスサラダ)

 

 

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1のパスタ・フレッダと同じくらいの頻度で食卓に登場するのがインサラータ・ディ・リーゾというお米のサラダ。これもアレンジ自在の一品で、カットした生野菜と和えても良し、シーフードや鶏肉、ツナやサバ缶などとも相性がいい。パスタ・フレッダのパスタをライスに変えて、味付けにリンゴ酢を少し加えるだけでOK。お米は時間を置いても芯が残る「アルボリオ米」を使うのがベストだが、なければ日本米を研がずに少し固めに茹でるか、タイ米などでも代用できる。アルボリオ米とはリゾット用の米としても知られているイタリアの短粒米で、調理してもコシが強いのでアルデンテの歯ごたえが楽しめる。お米は洗わずに芯が残る程度まで茹でてから冷水で洗ってぬめりを取り、1と同様に用意しておいた具材と合わせ、オリーヴオイル、塩、酢で味を整えれば出来上がり。イタリアのスーパーで売られているライスサラダ用のコンディメントがあれば更に簡単で、お米を茹でて混ぜるだけで完成する。スーパーには種類豊富なコンディメントがたくさん売られているので、旅行の際にはぜひのぞいてみて欲しい。

 

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*参考レシピ* <材料:二人分>・アルボリオ米150g・トマト80g ・パプリカ40g ・オリーヴの実 適量 ・コーン、グリーンピース、チャイブ、人参、キュウリ、ツナ缶、鯖缶などお好みで ・塩少々・オリーヴオイル大さじ2・リンゴ酢大さじ1

 

<作り方>1・鍋にたっぷりのお湯を沸かし、米を洗わずにそのまま入れてアルデンテに茹でる 2・お米を茹でる間、ボウルに好きな具材をサイコロ状に切って入れ、塩・オリーヴオイル・リンゴ酢で下味を付けておく。甘酸っぱさが欲しい場合はリンゴ酢に砂糖を少々加える。ピクルスや玉ねぎの酢漬けなどをそのまま切って使ってもOK 3・茹で上がったお米を冷水で洗ってぬめりを取り、水をよく切って2のボウルに入れて混ぜれば出来上がり
 

 

 

 

3.Pomodori ripieni di Riso / ポモドーリ・リピエーニ・ディ・リーゾ(トマトのライス詰め)

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夏のマンマの味の代名詞「ポモドーリ・リピエーニ・ディ・リーゾ」は、熟した大きなトマトの中にお米を詰めてオーブンで焼いたもの。熱々のままではなく、常温か冷たくしていただく。ここで使うお米は、2のインサラータと同じアルボリオ米が理想的だが、その他のお米でも十分代用できる。トマトは完熟の大きめのものを用意し、中身をナイフとスプーンで取り出し外側は容器として、中はソースとして使う。大きさにもよるが、だいたいトマト1個を一人分として考え、お米はくり抜いたトマトの中に入れて量の目安にするといい。伝統的なレシピではトマト、バジリコもしくは西洋パセリ、アルボリオ米を具として詰めるが、これもアレンジは自由自在。ハムや鶏肉、小エビなどを加えても美味しい。お米は茹でずに生のまま詰めてオーブンで焼くが、柔らかいご飯が好みの方はソースと一緒に一度火を通してお米が少し柔らかくなってから冷ましてトマトに詰めるといい。付け合わせとしてポテトやパプリカなどを一緒に容器に入れてオーブンで焼くと一度に調理できる。冷めても美味しいのでパーティ用のメニューとしてもおすすめだ。
 

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*参考レシピ* <材料:二人分>・完熟の大きめのトマト2個 ・アルボリオ米80g ・バジリコ、西洋パセリ(どちらか1つでも、両方でもOK)適量 ・ニンニク 一欠片 ・塩、コショウ少々 ・オリーヴオイル適量

 

<作り方>1・トマトを洗い、蓋にする上部を切り取って中身を取り出す。中身はナイフで内側の周囲を切り、真ん中に十字に切り目を入れてからスプーンでくり抜くと綺麗に取り出せる 2・トマトの中身をボウルに入れ、バジリコ・西洋パセリを加えてブレンダーでソース状にする 3・冷水でよく洗ったお米を2に加え、塩、コショウ、ニンニクで香りづけしたオリーヴオイルで味付けをして1時間寝かせる 4・3をトマトの容器に詰め、蓋をしてオーブントレイに並べる。トレイの隙間にポテトやパプリカを入れてもOK  5・トレイを予熱したオーブンに入れ、180℃で50〜55分焼く。熱々でももちろんOKだが、常温か冷たくして食べても美味しい
 

 

 

4・Polpo e Patate / ポルポ・エ・パターテ(タコとポテトのサラダ)

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夏の食卓のメインディッシュとして、又は前菜としても頻繁に登場する「タコ&ポテト」。ビタミンCたっぷりのジャガイモとレモン、ビタミンB12、ビタミンE、ミネラルが豊富で疲労回復にも効くと言われるタコの組み合わせは、暑さでバテ気味の身体も喜ぶ一品。
タコはイタリアでも良く食べられている食材だが、日本のタコと比べると小ぶりで身も固いので、生の状態をめん棒で叩いたり、白ワインを加えて茹でたりして柔らかくする。生のタコを使用する場合は下準備に少々時間がかかるが、作り方自体はとてもシンプル。タコとジャガイモを茹でて冷まし、レモン果汁とオリーヴオイル、塩・胡椒で味付けすれば出来上がり。日本では更に便利なことに、刺身用に下ごしらえが済んでいる柔らかなタコがスーパーなどで簡単に手に入る。手間を省きたい場合はこの刺身用のタコを使えばさらに簡単に作ることができる。柔らかなタコとレモン果汁であっさり味付けしたポテトは口当たりもさっぱりしていて食が進む。冷たいビールのおつまみにもぴったりなので、冷蔵庫に作り置きして夏の晩酌のお伴にするのもいい。
 

 

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*参考レシピ* <材料:二人分>・タコ500g ・ジャガイモ300g ・レモン1個・西洋パセリ適量 ・ニンニク一欠片 ・塩、コショウ少々 ・オリーヴオイル適量 ・白ワインコップ1杯

 

<作り方>1・生タコをよく洗い、白ワインを加えた冷水をたっぷり入れた鍋に入れて火にかける。お湯が沸騰した状態で更に20分煮てから火を止め、そのまま完全に冷めるまで鍋の中で寝かせておく 2・皮を剥いて一口大に切ったジャガイモを形が崩れない程度に茹でる。この間、ニンニクをオリーヴオイルに浸しておく 3・タコが完全に冷めたら一口大に切り、茹で上げたジャガイモと混ぜ合わせる。レモン1個を絞った果汁、ニンニクで香りづけしたオリーヴオイル、細切りにした西洋パセリ、塩、胡椒で味付けして完成

 

 

5.Cous Cous con Verdure /クスクス・コン・ヴェルドゥーレ(野菜のクスクス)

 

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最後の一品は「野菜のクスクス」。イタリア料理でクスクス?と思われるかもしれないが、実はクスクスはイタリアでも700年以上の歴史を持つ伝統食材である。北アフリカ、中東が発祥地であるクスクスが最初にイタリアのトスカーナ、リグーリア両州に伝わったのは13世紀。以来、イタリア伝統の野菜や肉、魚介の煮込み料理やミートソースにクスクスを合わせる料理が広く親しまれるようになった。パスタと同じくデュラム小麦を原料とするクスクスは、イタリア国内にも100年以上の歴史を持つ製造所が存在するほどポピュラーな食材。お米やパスタと同じように様々なアレンジが出来るのがクスクスの特徴で、北アフリカや中東とは一味違ったイタリア風のレシピもたくさんある。イタリアのクスクス料理で特に有名なのはシチリア島トラーパニの「魚介のクスクス」で、じっくり煮込んだ魚介のスープが染み込んだクスクスは絶品の美味しさである。
一般家庭ではそこまで手の込んだスープを作るのは難しいが、クスクス自体はお湯を注いで蓋をして5分で出来る簡単さなので、料理が億劫な時にはとても重宝する。冷蔵庫の残り野菜を切って混ぜたり、パスタソースやカレーと合わせたりと使い方も自由自在。ビタミンBやミネラル、食物繊維などがバランス良く含まれている栄養価の高い食材なので、夏バテにもダイエットにも効果大。

 

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*参考レシピ* <材料:二人分>・クスクス80g ・水80g ・ズッキーニ1本・パプリカ1/3・ナス中1本・エシャロットまたは玉ねぎ1/2個・トマト・塩、胡椒、オリーヴオイル適量 *お好みで鶏肉やエビなどを加えてもOK。味付けもターメリックやカレーパウダーなどをひとさじ加えるとエスニック感が増す

 

<作り方>1・クスクスは粒の大きさや製造会社によって調理法が異なるので、購入した際に箱の説明書きをよく読んで。イタリアで一般的に売られているのは、調理時間5分〜10分の中程度の大きさのクスクス。軽くオリーヴオイルをまぶしたクスクスに同量のお湯を加えてラップし、5〜10分置いておけば出来上がる 2・野菜は全て細切りにし、トマト以外の野菜はオリーブオイルで炒めて塩胡椒で味付けする 3・2のフライパンに1のクスクスと生トマトを混ぜれば完成
 

 

 

 

*この連載は毎月第2・第4木曜日(月2回)の連載となります。次回は2019年8月22日(木)掲載予定です。お楽しみに! 

 

 

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田島麻美 (たじま・あさみ)

千葉県生まれ。大学卒業後、出版社、広告代理店勤務を経て旅をメインとするフリーランスのライター&編集者として独立。2000年9月、単身渡伊。言葉もわからず知り合いもいないローマでのサバイバル生活が始まる。半年だけのつもりで暮らし始めたローマにそのまま居座ること19年、イタリアの生活・食文化、歴史と人に魅せられ今日に至る。国立ローマ・トレ大学マスターコース宗教社会学のディプロマ取得。旅、暮らし、料理をメインテーマに執筆活動を続ける一方、撮影コーディネイター、通訳・翻訳者としても活躍中。著書に『南イタリアに行こう』『ミラノから行く北イタリアの街』『ローマから行くトスカーナと周辺の街』『イタリア中毒』『イタリア人はピッツァ一切れでも盛り上がれる』他。

 

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