韓国の旅と酒場とグルメ横丁

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#65

韓国大衆酒場ベスト10〈地方編〉

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 今回は、先月の大阪出張レポートの続編をお伝えするつもりだったが、読者さんからの要望に応えて予定を変更し、大阪のイベントで発表した『韓国居酒屋ベスト10〈地方編〉』を掲載する。

 筆者は20年前から韓国各地の大衆酒場を巡ってきたが、デポチプや酒幕と呼ばれる昔ながらの酒場は、首都ソウルよりも変化のスピードが遅い地方の町に多く残っていた。

 店選びの基準は、女将のキャラクター、地元密着度、常連客の熱など。もちろん安さは絶対条件だ。それでは、第10位から順に発表していこう。

 

 

第10位 居昌チプ/거창집(釜山)

 国際市場の北のはずれにある小さな居酒屋。女将は一見不愛想だが、情が深い。狭い通路を挟んで2~4人掛けのテーブルが6卓のみ。隣席との距離が近いので、人なつっこい釜山の酔客が日本から来たあなたを放っておかないだろう。

 

01筆者がコーディネートを担当したNHK『世界入りにくい居酒屋 釜山編』で取材した酒場。30000ウォンで酒3本頼めば、ご覧のようなつまみがずらりと並ぶ

 

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最近、『居昌チプ』のある通りが統一感のあるデザインでリニユーアルされた

住所→부산시 중구 신창동 4가 57 국제시장 1공구 B동 TEL 051-246-7468 第1・第3日曜定休

 

 

第9位 ジョニル・シュポ/전일슈퍼(全州)

 ソウルでもよく見かけるシュポ(食料雑貨店の店先で酒を飲ませる韓国版角打ち)が大型化し、店と酒場の割合が逆転した店。瓶ビール中瓶が2500ウォンで飲める。

 看板つまみはファンテクイ。熟成の進んだ大きな干し鱈を炙っただけのものだが、これがビールに合う。よく叩かれた鱈は手で折ると粉を吹くほどで、これが口中の水分を一気に奪う。そこにビールを流し込むのが楽しい。

 

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これがファンテクイ。鱈の質がよいこと、よく叩いてあること、炙り加減が旨さの秘訣

 

04全州市民なら知らない人はいない有名店

住所→전라북도 전주시 완산구 경원동 3가 13-12 TEL 063-284-0793 無休

 

 

第8位 ヨロブン・サンコムジャンオ/여러분 꼼장어(済州)

『世界入りにくい居酒屋 済州編』に推した店だが、渋すぎて採用されなかった。韓国、とくに地方の酒場はつまみが多種多様なのが魅力だが、ある程度年齢がいくと、「美味しいものをちょっとだけ」という気持ちになる。ここはまさにそんな店。

 看板のサンコムジャンオ(活きヌタウナギ)の塩焼きは、香ばしさと皮の焦げ味で酒が進むこと進むこと。

 

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コチュジャン系のタレではなく、塩焼きというのが日本人向き

 

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『ヨロブン・サンコムジャンオ』は済州の南の端、西帰浦市の東門ロータリーに面している

住所→제주도 서귀포시 동문로 69 TEL 064-733-3373 第1・第3・第5日曜定休

 

 

第7位 山城オルムマッコリ/산성얼음막걸리(釜山)

 安価な家庭料理風のつまみをパパッとつくって出してくれる気さくな女将のファンが多いのはもちろんだが、この店の最大の魅力はロケーション。店を出て右方向に歩き、橋の上から振り返ったときの風景はじつに映画的だ。

 

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つまみは5000~8000ウォンが主流。これは豚皮と野菜を炒めたテジコプテギ5000ウォン

 

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店の右手に見える橋(クルムタリ)は、映画『チング』でチャン・ドンゴンやユ・オソンが駆け抜ける場面で使われた

住所→부산진구 부전동 구름다리 아래쪽 TEL 不明 無休

 

 

第6位 釜山浦/부산포(釜山)

 年配の作家や芸術家が集う店なのだが、来るものは拒まず、去る者は追わず風の女将のキャラクターのおかげで誰でもふらっと入れる雰囲気。一人で行ってもいやな顔をされない。大衆酒場としては店はこぎれいなので女性でも入りやすい。醸造所から直接仕入れているトンドン酒(マッコリ)が美味。

 

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軽くつまむならソデクイ(干しシタビラメの炙り焼き)がおすすめ

 

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東光洞の路地裏、ぬるい夜風が似合う店

住所→중구 대청로 134번길 28-1 TEL 051-246-5014 無休

 

 

第5位 番地オンヌン酒幕/번지 없는 주막(束草)

 お人好しの主人が手づくりしているマッコリは、筆者のマッコリ歴のなかでも屈指の味。甘味と酸味のバランスが絶妙だ。夏はマッコリ用冷蔵庫で、冬は庭先の甕で醸されている。主人がつまみの準備をしているときは客がフロア係になることも。甕から直接マッコリを酌むというのはなかなかできない経験だ。

※『番地オンヌン酒幕』は、近くに移転しました。新住所は朝陽洞197-1。月~土9時~22時、日13時~22時(暇なときは早じまいも)。名節以外無休。TEL 010-8284-8257

 「田舎で、男一人でやっているので、至らない点が多いですが、束草にいらしたらお立ち寄りください」とのことです。

 

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主人(右)と筆者

 

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主人が醸す酒はマッコリではなく、どぶろくと呼びたい。東海岸にある束草は遠いが、わざわざ出かける価値がある

 

 

第4位 シンプン食堂/신풍식당(堤川)

 出合って間もないが、上位にランクインさせるしかない店。その理由は最近アップされた記事#63で。

 

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野草の香りがすがすがしい特製薬草酒

 

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野草を摘み、酒を酌み、麺を打つ。そして、問わず語り。店ではなく、田舎のおばあちゃんの家を訪ね、くつろぐ感じ

住所→충청북도 제천시 수산면 수산리 604번지 TEL 043-648-5061  無休

 

 

第3位 故郷チプ/고향집(平昌)

 今年、冬季五輪が開かれた街にある店とはとても思えないひなびた酒場。女将は90歳近いのだが、「私は人と話すのが大好きなんだ。体が動くうちはまだまだ店を続けるよ。最近、内装も少し新しくしたんだ」と頼もしい。日本植民地時代に大阪で生まれ、広島で育っているので、簡単な日本語を話してくれるのも日本人にはありがたいだろう。

 

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女将の健康の秘訣でもあるという山椒を使った焼き豆腐が名物

 

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店は女将の住居を兼ねている。たまに買い物に出ていることもあるので、姿が見えなくても、あきらめずに帰りを待とう

住所→강원도 평창군 평창읍 하4리 TEL033-332-2572 無休

 

 

第2位 ソチャンチプ/서창집(江景)

 韓国大衆酒場ランキングは、上位に近づくほど、店と言うより“お宅”感が強まってくる。植民地時代の日本式長屋をそのまま使っているこの店もその例。2年ほど前、膝を悪くしたため、「毎日店を開けるのはきついけど、日本からのお客さんが来たがったら事前に電話をおくれ。酒もつまみも用意するから」と泣かせることを言ってくれた女将。その後、復調して通常営業に戻ったのはうれしいニュースだ。手づくりのトンドン酒(澄み切った本物)と家庭料理を味わいにぜひ出かけてもらいたい。この店の詳細はバックナンバー#34で。

 

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江景は植民地時代に日本人が多く住んだところで、日本家屋がたくさん残っていて街歩きが楽しい。女将の店で一杯やり、そのまま江景に泊まり、翌朝はここで遅い朝食をとるのが楽しい

 

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昨年、看板が新しくなった。江景の邑役場が提供してくれたのだそうだ

住所→충청남도 논산시 강경읍 중앙리 16 TEL 041-745-4614 無休

 

 

第1位 紅チプ/홍집(群山)

 2本分のマッコリが入ったやかんに、海産物を中心としたつまみが10皿近く添えられて10000ウォン! これを人情酒場と言わずして何と言おう。去年から今年にかけて何人かの読者さんが訪ねたという報告をもらっているが、女将は立ち仕事がしんどそうだったとのこと。息子さんがたまに店を手伝っているが、この薄利多売の商いを彼が継ぐとは考えにくい。韓国大衆酒場ファンのみなさん、一刻も早い訪問を!

 

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女将はやたらと笑顔を振りまくタイプではないが、外国人客でも分け隔てなくもてなしてくれる。その日の食材を使い切ると、平等につまみを出せないので店終いということもあるので、早めの入店を

 

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つまみの一部。太刀魚、カニ、貝、サツマイモ、枝豆、汁物まで付く。これで生マッコリを2本飲んで10000ウォン(約1000円)。韓国を代表する“せんべろ”酒場だ

 

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2位の江景同様、群山も日本家屋が多く、一日中散歩してもあきない

住所→전라북도 군산시 신영동 13-4 TEL063-446-9912  無休

 

 

*年内に首都圏で筆者のトークイベントがいくつか行われる予定です。具体化しましたら本コラムやTwitter(https://twitter.com/keyword101)でお知らせします。

 

 

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紀行作家。1967年、韓国江原道の山奥生まれ、ソウル育ち。世宗大学院・観光経営学修士課程修了後、日本に留学。現在はソウルの下町在住。韓国テウォン大学・講師。著書に『うまい、安い、あったかい 韓国の人情食堂』『港町、ほろ酔い散歩 釜山の人情食堂』『馬を食べる日本人 犬を食べる韓国人』『韓国酒場紀行』『マッコルリの旅』『韓国の美味しい町』『韓国の「昭和」を歩く』『韓国・下町人情紀行』『本当はどうなの? 今の韓国』、編著に『北朝鮮の楽しい歩き方』など。NHKBSプレミアム『世界入りにくい居酒屋』釜山編コーディネート担当。株式会社キーワード所属 www.k-word.co.jp/

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