台湾の人情食堂

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#64

『鉄道やバスで台湾一周』講座ダイジェスト〈3〉

文・光瀬憲子

 前々回から、名古屋の栄中日文化センターで講師を務めている台湾一周講座(全3回)のダイジェストをお届けしているが、最終回は南端の墾丁から東側の都市を一気に北上し、台北へと戻っていく。台湾は島の東側と西側で気候、言葉、街や人の雰囲気が大きく異なる。今回は台湾東部の街と食べ物の魅力をお伝えしよう。

 

 

景観が変化に富んだ東側

 台湾東部は西部に比べて交通が不便だ。高鐵(新幹線)は西側にしか走っていないため、東部都市へのアクセスは台鐵(在来線)、高速バス、飛行機(空港があるのは台東と花蓮のみ)などになる。

 台湾は平地が多い西側で都市化が進んだが、太平洋に面した東部は美しい海と反り立つ山々に囲まれ、自然に恵まれている。人口が少ない分、手つかずの自然が残されており、近年では台湾国内の旅行者にも人気のスポットだ。また、南太平洋の島々から台湾の東側に移り住んだり、台湾の西側から徐々に移動してきたりした先住民が多いのも特徴だ。

 

墾丁から枋寮、または高雄まで北上

01枋寮駅を南下すると右手に見えてくる海岸線。立ち並ぶヤシの木が台湾らしい風景を作っている

 

 台湾の南端、墾丁からバスで枋寮駅まで戻って台鐵に乗る。時間があれば再び高雄駅まで戻って台鐵に乗り、車窓風景の変化をじっくり楽しむのも悪くない。  

 高雄から台東は自強号(快速)でおよそ2時間半。枋寮駅を過ぎると、車窓には海が広がり始める。穏やかな海岸線には南国らしいヤシの木やビンロウの木が並んでいて日本の海岸線とはだいぶ趣が違う。

 枋寮からしばし海沿いを走り、列車はふたたび内陸へ。そして東側へ回り込み、古荘駅、大武駅と進むうち、今度は太平洋が眼下に広がる。高雄から台東にかけて大きな都市はなく、停車駅も小さな無人駅が多いが、それも鉄道ファンにとっては魅力のひとつ。

 

台東の歩き方、食べ方

 台東は東部最大の街だ。とはいえ、内陸寄りにある台東駅から少し離れた海側にある繁華街に高いビルはほとんどなく、大きめの八百屋や雑貨屋が軒を連ねたメインストリートがもっとも賑わっている。どこか日本の田舎町にも似ているように感じるのは、古びた日本家屋が多いからかもしれない。

 また、街の中心には「天后宮」という媽祖(海の女神)をまつる廟があり、台東人の心の拠り所となっている。廟のそばには旨い店がある、という筆者の持論のとおり、天后宮周辺には人気の屋台や食堂がずらり。大きな祭りなどもこの廟で開催される。

 

02東台湾で最大級の廟「天后宮」。旧正月を過ぎた頃に行われる寒単爺の祭りのときは街中に爆竹が鳴り響く

 

 台東でナンバーワングルメはなんと言っても豪快な滷味(醤油煮込み)だ。地元の知り合いに案内してもらった『林記阿達魯味面食館』は、筆者の食べ歩き史上、最高の滷味。豚の正肉から内臓、尻尾まで、あらゆる部位を煮込んで絶妙な醤油タレで味付けしてあり、みごとな照りとほどよい柔らかさ、歯ごたえなどがたまらない。また、この店はビールが置いてあるのもありがたい。

 

03台東を訪れたらかならず食べたい『林記阿達魯味面食館』の滷味。これで3~4人前、300元前後

 

 

池上で絶景サイクリング

 台東からさらに北上すると、池上という街がある。台湾で一番の米どころだ。台湾全土でチェーン展開している池上飯包(弁当)でその名が知られている。池上米はもともと日本時代に日本から持ち込まれた米で、当時は日本の天皇に献上される「貢米」となった。

 そんな池上では、田園風景のなかでサイクリングを楽しむことができる。

 池上では二期作が行われている。温かい台湾では冬の間も稲が育つので、収穫は6月~7月と、11月~12月の2回。収穫の2週間ほど前に訪れると、重たそうに穂を垂らした金色の稲が優雅に波打つ光景が見られる。6月からすでに暑いので、サイクリングをするなら秋冬がおすすめだ。

 

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米どころ池上。6月から7月と、11月から12月に黄金の稲穂が人々を出迎える。サイクリングに最適

 

 ついでに池上駅のそばにある『福原豆腐店』に立ち寄り、絶品の豆花と臭豆腐(この店では「香炸豆腐」と呼んでいる)を堪能するのもいい。豆腐専門店の豆花と臭豆腐は、大豆の香りが濃厚だ。もちろん、帰りは駅で「池上飯包」を購入することもお忘れなく。

 

06『福原豆腐店』の「香炸豆腐」は香り豊かな臭豆腐。中はジューシー、外はカリカリ

 

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池上駅のホームでも買える『池上飯包』。木の箱が適度に湿気を吸ってくれるので時間が経っても美味しい

 

 

花蓮、そして宜蘭へ

 池上から北へ1時間半ほど北上すると海と大理石の街、花蓮に着く。花蓮の太魯閣(タロコ)は日本人旅行者にも人気の観光スポット。列車の窓から外を眺めると、穏やかな海岸線と反り立つ大理石の山々の組み合わせに目を見張る。

 花蓮の次の目的地は宜蘭。近年、桃園県から宜蘭県へと山を抜ける高速道路が開通したため車でのアクセスがよくなったが、台北から時計回りで宜蘭や礁渓ヘ列車の旅を楽しむ人も少なくない。

 宜蘭は「台北の台所」と言われるほど肥沃な土地で、美味しい野菜がとれる。特に「宜蘭ネギ」は有名で、台北の市場で並んだものを見ればその質のよさは一目瞭然。他の産地のものと比べると大きく、色つやがいい。宜蘭の夜市ではそんな宜蘭ネギをたっぷり使った蔥油餅(チヂミ風)が外せない。油で揚げたたふわふわの生地と、さわやかなネギの風味を楽しめる。

 

台湾の熱海、礁渓温泉でひと休み

 宜蘭のすぐ北に位置する礁渓は温泉で有名な街。駅を降り立つと、なんとなく熱海にいるような気がするのは、潮の香りと背後にそびえる山のせいだろうか。どこからともなく漂う温泉の匂いのせいだろうか。

 日帰り温泉も数多くあるので、ホテルなどの貸し切り湯で1時間数百元で汗を流すのもいい。それほど時間がない場合は、駅のそばにある広々とした「礁渓公園」で無料の足湯を楽しんでもよいだろう。

 

08礁渓の温泉街には数々の温泉旅館や日帰り温泉施設が立ち並ぶ。1時間数百元で温泉浴が楽しめる

 

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入浴後は温泉街の屋台でビール。野菜や山菜、イノシシ肉などのジビエが美味しい

 

 礁渓を訪れたら絶対に外したくないのが『礁渓八宝冬粉』という食堂。朝6時から営業しているので、さっぱりとした具だくさんの春雨スープと魯肉飯の朝ごはんで一日の活力を補いたい。サメの燻製などサイドメニューも充実している。

 

10『礁渓八宝冬粉』の魯肉飯。ひき肉はあっさりした味付けで油っこくなく、朝から食べられる


11『礁渓八宝冬粉』の春雨スープ(八寶冬粉)。シイタケ入りの肉団子、エビ団子、キクラゲ、レタス、金針の花、春雨(冬粉)など具だくさんでヘルシー

 

基隆で食べるべきもの

 台湾一周の旅もいよいよ最後の停車駅、基隆に到着。台北のお隣の街だけあって、都会的な雰囲気が漂う。基隆は台北からのアクセスがよく、また九份に近いため近年では観光客が増えている。

 有名な廟口夜市よりも地元感を味わえるのが安楽市場という駅チカの朝市だ。土日などはとても活気があり、地元民の生活感が感じられる。

 安楽市場のすぐ向かいの路地裏には、絶品のきしめん風麺と特上の豚モツを提供する『巷頭粿仔湯』がある。朝から営業しているので朝市散策するならここで朝食を。完全無添加の手作り麺はあっさりとした味付けで、米の風味が際立つ。

 

12米粉で作られた『巷頭粿仔湯』のきしめん風麺。あっさりとしたスープは朝ごはん向き

 

 新鮮な豚モツを切り分け、部位ごとに盛られた小皿料理はさまざまな食感が楽しめる。海が近いだけあってちくわもおすすめ。基隆ちくわは日本のちくわよりも弾力があって風味豊だ。

 

13『巷頭粿仔湯』では豚モツやちくわ、大根などを小皿で提供。基隆の手作りちくわはモチモチで美味

 

 3回に分けてお伝えした台湾一周だが、停車駅を選んだり、時期を選んだりすることで、自分らしい旅にカスタマイズできる。3泊4日で主要都市を押さえるのもよし、2週間かけてブラブラと田舎の町を訪れるのもよし。

 みなさんが台湾一周を体験したら、筆者のTwitter(https://twitter.com/keyword101)にそのルートを書き込んでもらえたら、とてもうれしい。

 

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ぐるりと一周して戻った台北駅には各地から集まる人々の姿が。地方都市ひと巡りすると、台北を見る目がも変わるかも

 

 

*今秋、首都圏で筆者のトークイベントがいくつか行われる予定です。具体化しましたら本コラムやTwitter(https://twitter.com/keyword101)でお知らせします。

 

 

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*本連載は月2回(第1週&第3週金曜日)配信予定です。次回もお楽しみに!

 

 

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著者:光瀬憲子

1972年、神奈川県横浜市生まれ。英中日翻訳家、通訳者、台湾取材コーディネーター。米国ウェスタン・ワシントン大学卒業後、台北の英字新聞社チャイナニュース勤務。台湾人と結婚し、台北で7年、上海で2年暮らす。2004年に離婚、帰国。2007年に台湾を再訪し、以後、通訳や取材コーディネートの仕事で、台湾と日本を往復している。著書に『台湾一周 ! 安旨食堂の旅』『台湾縦断!人情食堂と美景の旅』『美味しい台湾 食べ歩きの達人』『台湾で暮らしてわかった律儀で勤勉な「本当の日本」』『スピリチュアル紀行 台湾』他。朝日新聞社のwebサイト「日本購物攻略」で訪日台湾人向けのコラム「日本酱玩」連載中。株式会社キーワード所属 www.k-word.co.jp/  近況は→https://twitter.com/keyword101

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