旅する&恋する! 韓国ドラマ

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#63

韓流紀行〈11〉痛快な1人2役の『王になった男』

文・康 熙奉(カン・ヒボン)

 

  ヨ・ジングが王と道化師の1人2役を演じた『王になった男』は、もともと2012年に韓国で公開された映画『王になった男』(主演がイ・ビョンホン)をドラマ化した作品だ。ドラマは映画よりはるかに長いので、映画版では描かれなかった王妃とのラブロマンスも詳しく描写されていた。

 

 

ヨ・ジングは恐ろしい俳優!

 

『王になった男』で堂々たる主役を演じたヨ・ジングは、かつて「天才子役」と呼ばれていた。特に印象的だったのが、『太陽を抱く月』のイ・フォン役だ。このときは、キム・スヒョンが演じた国王の子供時代に扮していたが、ヨ・ジングは強烈な印象を残して、後に演じるキム・スヒョンにプレッシャーを与えるほどだった。

 子役として実績を積み重ねたヨ・ジングは、大人の俳優として『テバク~運命の瞬間(とき)』に出演し、朝鮮王朝の21代王の英祖(ヨンジョ)を演じた。このときは、主役のチャン・グンソクが制作発表会で「ヨ・ジングさんは本当に恐ろしい俳優だと思います。台本読みのときもそう感じたし、演技に臨む姿勢が恐ろしいほど真摯です」と絶賛していた。

 このように、ヨ・ジングは子役から大成した大人の俳優として評価を高めていた。そんな彼が、今度は本格時代劇の『王になった男』に主演した。

 このドラマの見どころは、道化師が国王になってしまうという意外性だ。そして、ヨ・ジングは、国王のイ・ホンと道化師のハソンを巧みに演じ分けた。果たして、どんなストーリーに仕上がっていただろうか……。

 国王のイ・ホンは王位を継承する過程で弟を殺してしまい、精神的な苦痛から不安定な日々を送っていた。暗殺されるという恐怖心も強く、徐々に乱れていく王のことを、都承旨(トスンジ/王の秘書室長)のイ・ギュ(キム・サンギョンが演じていた)は憂慮していた。

 そんなイ・ギュは、町で王に瓜二つの男を見かける。それが道化師のハソンだった。イ・ギュはハソンを王宮に連れていき、王の影武者をさせようとする。

 驚いたハソンは逃亡するが、彼は庶民を苦しめる悪政に憤り、善政のために王の身代わりになることを決心する。

 しかし、ハソンは失敗ばかりを繰り返し、イ・ギュから叱責を受け続けた。それでも、イ・ギュは努力するハソンを徐々に認めるようになっていった。

 イ・セヨンが演じる王妃も、国王の態度が豹変して驚きを隠せなかった。常にイ・ホンは冷酷で王妃は心を閉ざしていたのだが、急に国王が優しくなり、陰謀に陥れられた王妃の父親の命も救ってくれた。徐々に王妃はイ・ホンに心を開いていき、笑顔さえ取り戻すようになった。

 

1人2役の難しさ

 

 国王の身代わりになったハソンが苦慮したのが高官との関係だった。特に王宮では、クォン・ヘヒョが演じている左議政(チャイジョン/副総理)のシン・チスが腐敗政治を行なっていた。

 こんな悪徳高官を抑えるために、イ・ギュは国王となったハソンに善政を指示していく。それにハソンもよく応えた。

 その後に物語は急展開する。乱心して隔離されていた本物のイ・ホンが逃亡して、王宮に戻ってきた。彼は激怒し、ハソンは追放されて殺されそうになる。王妃もまた、イ・ホンの冷酷さを目の当たりにして、恐怖がぶり返してしまった。しかし、常軌を逸していたイ・ホンをイ・ギュが王宮の外に連れ出し、最後は命を奪った。

 もはや影武者ではない。本物の国王になったハソンは、再び民のための善政を行なうようになっていく……。

 以上のようなストーリーが展開されていくが、ドラマはやっぱり主役が肝心で、ヨ・ジングの演技がとても良かった。

 難しい1人2役……彼も試行錯誤しながら演じたはずだが、1人の俳優がここまで多様に変化していると思えないほど、ヨ・ジングは国王と道化師の性格や表情の違いを巧みに表現していた。

 何よりも、本物のイ・ホンは錯乱状態になっていることが多く、ヨ・ジングはめまぐるしく変わる過敏な表情を求められたが、彼は鋭い感性で切羽詰まったイ・ホンの乱心を演じきっていた。その反対にハソンの場合は庶民的なおおらかさをハツラツと演じたし、国王になって戸惑う仕種なども繊細に表していた。

 ヨ・ジングの演技力は物語の後半になるとさらに凄味が出るので、先に進んだ視聴者はその演技を大いに楽しみにしよう。

 

ドラマを彩る収穫は?

 

 イ・セヨンが演じた王妃を見ると、ドラマの中で特に重要だったのが、優しく接してくれた国王が実は本人でなくてハソンが成り代わっていたことがわかったときだった。王妃が受けた衝撃はとてつもなく大きかった。

 その際、イ・セヨンは激しく揺れる感情を細かい情感で表していた。しかも、王妃の気品を失わなかった。さすが、と思わせる演技力であった。

 都承旨を演じたキム・サンギョンも存在感が強烈だった。彼が扮したイ・ギュは、「実際に政治を動かしているのは彼なのではないか」と思わせるほど説得力のある役柄であり、キム・サンギョンは王宮の真ん中を堂々と歩いていく気高さをもって演じていた。

 振り返ってみれば、彼は『大王世宗』という大河ドラマで主役を担った名優である。これまでの実績は申し分がなかった。格が上の俳優だけに、『王になった男』で若いヨ・ジングとの対比でキム・サンギョンを重要な都承旨に配役したのは最適であった。

 もう1人の重要なキャラクターがいる。悪役の高官になったクォン・ヘヒョで、彼は以前からの韓流ファンならお馴染みだ。『冬のソナタ』のキム次長としてよく知られているからだ。

 今回の『王になった男』でクォン・ヘヒョは「悪の総帥」の役柄を担った。『冬のソナタ』を見ていた人にとっては「イメージがガラリと変わった」とビックリするかもしれないが、多彩な演技を幅広くこなす彼は「憎たらしいほどのハマリ役」として悪役を演じきっていた。

 そういう意味で、最後まで『王になった男』をスリリングに動かして予断を許さぬ展開に持ち込んだクォン・ヘヒョの芸達者ぶりは、ドラマを彩る大きな収穫であった。

 

*本連載は毎月2回(第1週&第3週木曜日)の配信です。次回もお楽しみに!

 

 

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『韓国TVドラマガイド』編集部

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