韓国の旅と酒場とグルメ横丁

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#62

『孤独のグルメ』に登場したテジカルビの魅力

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 先週放送された日本のTVドラマ『孤独のグルメ』ソウル出張編では、五郎さんが焼肉を楽しんでいた。牛カルビはあたりまえ過ぎるから登場しないだろうと予想していたが、案の定、メインはテジカルビクイ(豚肉の味付け焼肉)で、さすが人気番組と感心した。

 日本では韓国焼肉=牛肉というイメージが強いかもしれない。だが、牛焼肉は高価で、韓国でも“ごちそう”だ。庶民に気軽に食べられているのは豚肉のほうである。今回は、五郎さんが食べていたテジカルビの魅力についてお伝えしたい。

 

 

安くて当たり外れがない

01ソウルの薬水駅近くの人気店『ウソンカルビ』のテジカルビ。豚でも牛でもカルビは本来、骨付き肉のことを指す

 

 豚肉の質や管理方法の向上によって、豚肉を味付けしないでそのまま焼いて食べるサムギョプサルが普及して久しいが、80年代頃までは肉の質を味付けでカバーしているようなテジカルビのほうが存在感があった。

 もともと牛肉よりやわらかい上、醬油や砂糖、コチュジャン、ニンニク、ショウガ、おろした果物などを混ぜた甘めのタレに漬け込むため、さらにやわらかくなる。牛肉は高価な割に肉質に当たり外れがあるし、同じ豚肉でもサムギョプサルは冷凍肉だと肉がばさばさしていたりする。その点、テジカルビは安くて当たり外れがないのだ。

 

02テジカルビはタレに漬かった状態で出てくるのがふつう

 

03厨房で焼かれ、皿に盛られて出てくるタイプも

 

 

冷えた焼酎とテジカルビ

 日本では焼肉の友といえばビールだろうか。一方、韓国ではビールといえば、フライドチキンや炙った干しダラ、羊肉の串焼きなどを思い出す人が多い。豚でも牛でも焼肉となるとソジュ(焼酎)を思い出して、喉を鳴らす人が圧倒的だろう。

 同じ韓国人でも好みはいろいろだが、私は甘みのある食べ物にはソジュが合うと思っている。その意味でテジカルビにはソジュである。口中が甘→辛→甘の変化はじつに幸せなローテーションで、肉も酒もどんどん進む。

 マッコリはソウルの長壽(チャンス)をはじめとする一般的なブランドは甘みがあるのでもうひとつだが、ソウルでもたまに出合えるソミョンソプや済州など、すっきり系のマッコリならテジカルビにも合うだろう。

 

04テジカルビは店ごとにタレに特徴がある。これは光州で食べたもので、おろしニンニクがたっぷり使われたタイプ

 

05おろしニンニクの効いたテジカルビの焼き上がり

 

06大衆食堂の定番メニューのひとつであるチェユクポックムはテジカルビの親戚的存在。豚肉を野菜と一緒に甘辛く炒めたもの

 

 

葉野菜、そして白飯とテジカルビ

 サンチュをはじめとする葉野菜とテジカルビの相性も抜群だ。

 漬けダレの甘い複合味と葉野菜の苦味が口中でひとつになったときのことを思い出すだけで、そわそわしてくる。韓国が生んだ最高の食のハーモニーのひとつだと思う。

 

07テジプルコギはテジカルビの兄弟的存在。これは大邱で一般的なテジプルコギ。店先で炭火焼され、皿に盛られて出てくる

 

08テジカルビとニンニク、白飯をサンチュで巻いて食べるの図

 

 また、『孤独のグルメ』の五郎さんがそうだったように、日本人は焼肉とごはんをいっしょに食べる人が多い。

 私は90年代後半の日本留学時代、埼玉県朝霞市の焼肉店でアルバイトをしていたことがあるのだが、その店の焼肉の漬けダレを総じて甘いと感じていた。その理由を厨房長に聞くと、子供から大人まで幅広い層に愛されるためには、甘めの味付けが必須なのだという。私もまかないで焼肉とごはんをいただいているうち、そのとりこになった。日本は米が美味しいのでなおさらだ。

 その意味で、甘いテジカルビは白飯の最高の友である。私は日本での焼肉体験を思い出しながら、ソウルでもテジカルビ・オンザライスを楽しんでいる。

 

 

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紀行作家。1967年、韓国江原道の山奥生まれ、ソウル育ち。世宗大学院・観光経営学修士課程修了後、日本に留学。現在はソウルの下町在住。韓国テウォン大学・講師。著書に『うまい、安い、あったかい 韓国の人情食堂』『港町、ほろ酔い散歩 釜山の人情食堂』『馬を食べる日本人 犬を食べる韓国人』『韓国酒場紀行』『マッコルリの旅』『韓国の美味しい町』『韓国の「昭和」を歩く』『韓国・下町人情紀行』『本当はどうなの? 今の韓国』、編著に『北朝鮮の楽しい歩き方』など。NHKBSプレミアム『世界入りにくい居酒屋』釜山編コーディネート担当。株式会社キーワード所属 www.k-word.co.jp/

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