旅する&恋する! 韓国ドラマ

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#61

韓流紀行〈9〉釜山が舞台の『応答せよ1997』

文・康 熙奉(カン・ヒボン)

 

「応答シリーズ」は3部作が作られたが、最初に放送されたのが2012年の『応答せよ1997』だった。このドラマには、悪人や犯罪がいっさい出てこない。あるのは、若者たちの友情と愛。見ているだけでも、温かい気持ちになる不思議な力を持っている。

 

流行語になった「応答せよ」

 釜山(プサン)を舞台とするドラマや映画はたくさんあるが、『応答せよ1997』は激動の1990年代後半の釜山をリアルに再現した作品として大評判になった。

 キャスト陣には歌手出身の新人もいれば、実力派の俳優も多数揃っていた。その中で、チョン・ウンジとソ・イングクの主演ふたりの起用は大成功だった。ともにドラマ初主演ながら素晴らしい演技を披露した。

 そして、数々の名ゼリフ、個性溢れるキャラクターたち、最後まで視聴者の好奇心を刺激する構成……『応答せよ1997』は作品性としても高いクオリティを誇った。

 その人気に後押しされる形でノベライズ化もされ、若者たちの間では「応答せよ」という言葉が流行語にもなった。

 ストーリーを見てみよう。

 時は2012年のソウルだ。

 釜山のある高校の同窓会が開かれている。現在33歳、ふるさとの釜山を離れ、それぞれソウルで格闘する彼ら彼女たち。この日はちょうど1組のカップルが結婚を発表する日でもある。久々に集まった懐かしい顔ぶれに会うと、もっとも熱く強烈だった1997年の思い出がよみがえってくる。18歳の甘酸っぱい思い出は、決して忘れられない大切な宝なのだ。

 時をさかのぼって1997年の釜山へ……。

 シウォン(チョン・ウンジ)は、勉強はまったく駄目だが、人気アイドルグループの追っ掛けに情熱を燃やす。

 そんな彼女の幼馴染で女子たちの憧れの存在だったのが文武両道のユンジェ(ソ・イングク)である。

 

釜山の高校生たちがいい

 兄妹のように育ったシウォンとユンジェだが、シウォンの親友ユジョン(シン・ソルユ)がユンジェに恋を告白したことから、2人はお互いに対して微妙な気持ちを覚え始めていく。そんな2人には、さらに大切な仲間がいる。

 まず、ユンジェとは一番仲のいい親友がジュニ(ホヤ〔元INFINITE〕/現イ・ホウォン)。繊細で心優しい人柄ゆえに、女子たちにも評判がいい。しかし、彼は意外な秘密を抱えていた……。

 次に、ソウルから釜山に転校してきたハクチャン (ウン・ジウォン)。彼はモテ男だが、女性の前で無力になるという致命的な弱点があった。

 最後は、釜山一のおせっかいでおしゃべり好きのソンジェ (イ・シオン)。ウワサ好きで、学校中のいろんな情報を知っていた。

 以上の6人の青春はどのように輝いていたのか。そして、結婚を発表するカップルとは一体誰と誰なのか?

 そんな興味が最後まで引き継がれていく。

 さらに、ユンジェの兄でありシウォンの担任教師テウン(ソン・ジョンホ)も重要なキャラクターだ。学生時代は全国テストで首席をとった伝説の人物。ソウルでいくらでも成功できるはずだったが、唯一の家族であるユンジェのために釜山を離れなかった。

 以上の7人をめぐって、物語は縦横に展開されていく。

 そして、ドラマの舞台になっている釜山が興味深い。韓国第二の大都会だが、首都のソウルに対してコンプレックスがある。ソウルからハクチャンが転校して来たときのクラスの雰囲気でそれがよくわかる。

 釜山の訛りも強烈だ。

 たとえ韓国語がわからなくてもイントネーションで笑える。

 1997年当時の釜山の高校生たちの生き生きした日常生活が、ドラマを華やかに彩っている。

 

麗しき兄弟愛

 チョン・ウンジとソ・イングクの主役コンビがいい。

 チョン・ウンジは、釜山の高校にこういう女子高生がいっぱいいるんだろうなあ、と思わせるくらい演技が自然だった。

 ソ・イングクにしても、無口でぶっきらぼうな釜山の典型的な男をありのままに演じていた。

 この2人の演技が本当によかった。2人はもともと歌手なので演技はそんなに経験がなかった。チョン・ウンジはドラマ出演が初めてだし、ソ・イングクは『ラブレイン』でおどけた役を演じただけ。それでも、2人は感性豊かな演技を披露していた。

 さらに、『応答せよ1997』の登場人物たちは、みんな何かに恋している。アイドルグループのメンバーに、クラスメートに、野球に、ゲームにさえ、彼ら彼女たちは恋をしている。その情熱と行動力はエネルギッシュですらある。

 その姿は、今を生きる私たちに、「何かを好きでいることや恋をすることがどれだけ偉大であるか」を改めて教えてくれる。恋や情熱があるからこそ、人はもっと輝くことができるのだ。

 さらに、ドラマで感激したのは兄弟愛だ。

 シウォンに恋しているユンジェの兄であるテウン。彼もシウォンのことが好きだ。

 恋のライバル同士になって、兄弟の関係が難しくなっていくが、それでも兄弟がお互いを思い合う場面が本当にいい。

 こういった人間の情愛が重層的に描かれているのが『応答せよ1997』の特長だ。韓国ドラマというのは家族関係を大切にする場面が多いが、この作品もそういう意味では正統派のドラマである。

 しかも、それぞれの年齢層が楽しめる内容になっている。

 20~30代だったら、アイドルを追っかける人の気持ちがわかる。ドラマに出てくる人たちと年齢も近いし、共感しながら感情移入ができるだろう。

 40~50代なら、自分たちの高校時代を懐かしく思い出しながらノスタルジックに楽しめるのではないか。

 それ以上の年齢の人は、初恋、親子愛、兄弟愛といった普遍的なテーマに心を動かされるだろう。

 このように、『応答せよ1997』は見た人が情緒的に応答できる傑作なのである。

 

*本連載は毎月2回(第1週&第3週木曜日)の配信です。次回もお楽しみに!

 

 

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