台湾の人情食堂

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#61

台北最大の学生街「公館」の安旨グルメ

文・光瀬憲子

 初めて台北の地を踏んだのは私が20歳の頃だったので、訪ねた友人や新しくできた知り合いもみな学生だった。彼らの興味の対象は安い雑貨やファッション、おしゃれなランチ、カラオケ……。それらがぎっしり詰まっているのが台北南部にある「公館」という学生街だ。台湾大学、台湾師範大学、台湾科技大学という名門校のほかに、高校や中学校も点在しているので、公館には十代から二十代の若者が目立つ。

 台北にはほかにも西門町という、日本の渋谷やソウルの明洞(ミョンドン)に例えられる若者の街があるが、公館は西門町より庶民的で垢抜けない。観光客は少なく、地元の学生がのんびり歩いているイメージだ。

 羅斯福路(ルーズベルト通り)を中心とした公館の飲食店の特徴は学生に合わせた価格設定とボリューム。牛肉麺だろうが肉まんだろうが、台北市内の他のエリアより総じて安く、それでいて定食などはボリュームがある。では、食堂には学生ばかりかと言えば、サラリーマンや界隈で働く人たちの姿もちらほら見られる。社会人になっても学生時代の味とボリュームが忘れられず、通っている人もいるようだ。

 

01街を歩く人も、店の人も十代から二十代という若者の街、公館。学生街といっても、あまりちゃらちゃらしていないので、大人でも散歩が楽しい

 

 そんな学生街に、一風変わった建物が現れたのは2010年のこと。もともと朝市、地域センター、シアターなどが入っていた複合施設の水源ビルがリニューアルされ、鮮やかなスカイブルーのデザイナーズビルとなった。イスラエルのヤコブ・アガムという著名なアーティストによるデザインなのだが、雑然とした台北の学生街では際立って存在感がある。

 

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外壁が塗り替えられ、2010年にリニューアルオープンした水源ビルは公館のランドマーク

 

03水源市場の青いビルの脇には昼から夜にかけて屋台(公館夜市)が出る

 

 この前衛的な建物の1階と2階はなんと市場とフードコート(!) 稼ぎ時はランタイムで、午前11時頃から狭い通路は満員電車のようにごった返す。カツ丼や海鮮丼、カレーといった日本風のメニューもあれば、麺や餃子、自助餐(バイキング)など、扱う品はさまざま。何を食べようか迷っているうちに席を奪われてしまうのですばやく行動を。でも、ここではのんびり食事をする人などいないので、少し待てば席があく。回転が早いのだ。

 

迫力の庶民派バイキング

 まず注目したのは特に店名を掲げていない『No.63』のブース。12時近くなるとものすごい行列ができる。一見、普通の自助餐だが、おかずの種類が豊富で、どれも目移りするほど美味しそう。行列は長いが待ち時間が短いのは、おかずをよそう女将さんやスタッフの手さばきに秘密がある。

 

04水源ビルの1階にあるフードコーナー。63番ブースは超人気の自助餐(バイキング)。行列しているが、回転は驚くほど速い

 

 ここではまずテイクアウトかイートインかに合わせて、客がお弁当箱、もしくは仕切りのあるトレイを選ぶ。そして最初に副菜3種を選び、次に主菜1種を選んでのせてもらい、最後に白米をよそってもらうシステム。副菜と主菜は予め決めてから並ぶのが鉄則。おかずをよそう手がものすごく速いので、おかずを前にして迷っていられない。自分の番が来たらコレ、コレ、コレと3品即答できなければベルトコンベアー式の流れを止めてしまうのだ。

 

05主菜は1つだけ選べる。魚にするか、肉にするか、迷うのも楽しい。予め決めてから列に並ぼう

 

 私が選んだのはトマト炒めやタケノコの煮物、そして主菜は蜜漬けのスペアリブ。ガラスケースの向こうでつややかに光りながら、選ばれるのを待っていた。たっぷりの甘辛ソースとゴマの風味がたまらない。見た目通りのしっかりとした味付けと食べごたえで、ご飯が何杯でも食べられそう。

 

06圧倒的な照りで有無を言わせぬ迫力がある蜜漬けスペアリブ。ごはんが進むこと進むこと

 

 

これぞヘルシーフード! 野菜たっぷり水餃子

07『陳師傅全麦手工水餃』(左)の前の通路で席が空くのを待つ

 

 その繁盛ぶりでは前項の自助餐に引けを取らないのが『陳師傅全麦手工水餃』という水餃子の店。カウンター席がいっぱいだったら通路で待機。この間に注文するものを決めておく。カウンターに座った先客たちが食べているのはラーメンどんぶりにぎっしりと具が詰まったスープ。水餃子がメインなのだろうが、それが埋もれて分からないほど野菜がどっさり。トマトやブロッコリーがゴロゴロ入っている。見るからにヘルシーな水餃子だ。

 さらに、テーブルの上に置いてある赤唐辛子と干豆腐をお好みでトッピングする。鮮やかなビジュアルで、食べる前から健康になりそう。トマトも野菜も驚くほど甘く、歯ごたえがしっかりしていて新鮮。スープは案外あっさりしていて、全麦の水餃子は皮が分厚く、モチモチの食感。けっこうボリュームがあるので、公館であれこれ食べ歩きするつもりなら、ランチタイムのピーク(11時半頃~13時頃)を避けて、2人でひとつを頼むといいだろう。

 

08トマトがまるごと1個入った『陳師傅全麦手工水餃』の野菜てんこ盛り水餃子

 

 

デザートは人気店で素朴な豆花を

 公館は水源市場の外にもさまざまな食堂や屋台がある。そのなかに食後のデザートにぴったりな伝統スイーツの店『龍潭豆花』だ。仮店舗のようにがらんとした店内に、そっけなく並べられた簡易テーブルと椅子。長年この状態で営業を続けていているのだが、ファンが多いので客足は絶えない。

 

09行列店の多い公館で人気ナンバーワンの『龍潭豆花』。暑い夏旅の途中に寄って涼をとろう

 

 メニューは豆花のみ。「冷たい」か「温かい」かのどちらかを選ぶだけだ。台北では短い冬をのぞいて冷たい豆花が人気。ガリガリっと歯ごたえのある氷は濃厚なシロップに浸かっていて、ふんわり柔らかい豆花と長時間煮込まれた柔らかピーナッツがたっぷり入っている。ああ、やっぱりシンプルな豆花が一番だ。そう思わせる伝統の味。だからこそファンが多いのだろう。学生のみならず、地元の人たちがちょこっと寄って暑さを凌ぐ、そんな店だ。

 

10豆本来の甘みが優しく、ピーナッツもくたくたに煮込まれた『龍潭豆花』の豆花。夏は冷たいものを

 

 

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著者:光瀬憲子

1972年、神奈川県横浜市生まれ。英中日翻訳家、通訳者、台湾取材コーディネーター。米国ウェスタン・ワシントン大学卒業後、台北の英字新聞社チャイナニュース勤務。台湾人と結婚し、台北で7年、上海で2年暮らす。2004年に離婚、帰国。2007年に台湾を再訪し、以後、通訳や取材コーディネートの仕事で、台湾と日本を往復している。著書に『台湾一周 ! 安旨食堂の旅』『台湾縦断!人情食堂と美景の旅』『美味しい台湾 食べ歩きの達人』『台湾で暮らしてわかった律儀で勤勉な「本当の日本」』『スピリチュアル紀行 台湾』他。朝日新聞社のwebサイト「日本購物攻略」で訪日台湾人向けのコラム「日本酱玩」連載中。株式会社キーワード所属 www.k-word.co.jp/  近況は→https://twitter.com/keyword101

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