ブーツの国の街角で

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#60

番外編:一人飯にも最適! イタリアの最新ファストフード

文と写真・田島麻美

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5月に入り、いよいよ本格的な行楽シーズンがスタートした。イタリア各地に世界中からのツーリストが押し寄せるこの季節は、有名観光スポットやレストランも事前予約が必須である。とはいえ、旅先のスケジュールが何もかも予約済みというのはなんだか窮屈にも感じる。特に食事はその日その時で気分も腹具合も異なり、事前にそれらを知ることは不可能。さらに、一人旅の場合は食べられる量も限られるから、旅行中の全食事をレストランで食べるというのはちょっと無理があるだろう。そんな時にオススメしたいのが、最近イタリアで人気を呼んでいる「メイド・イン・イタリー」のファスト&ストリートフード。従来、ファストフードと言えば大手ハンバーガー・チェーン店かバールのパニーノ、ローマなら切り売りピッツァくらいしか選択肢がなかったのだが、ここ数年、イタリア各地に『味と品質にこだわったファストフード』の店が急増。厳選した国産食材を使い、イタリアの伝統料理をベースにした安く気軽に食べられるメニューの数々は、旅行者はもとより一人でサクッと食事を済ませたいイタリア人にも歓迎されている。今回は、旅先で手軽に味わえるイタリアの代表的なファストフード・メニューと店舗をご紹介しよう。
 

 

 

1.    スップリ(Supplì)
 

  ピッツェリアの前菜メニューとしてお馴染みの「スップリ」は、シチリアのアランチーノよりも小ぶりなローマ生まれのライスコロッケ。「サプライズ」を意味するフランス語のシュルプリーズのイタリア語訛りが名前の由来で、中にびっくりするような美味しいものが入っていることからこの名がついたと言われている。代表的なスップリは「スップリ・アル・テレーフォノ(電話のようなスップリ)」で、嚙ると中のモッツァレッラチーズが電話線のように長く伸びるのが特徴だ。
  大人も子どもも大好きなスップリは、ピッツエリアや惣菜類を置いている食材店、バールなどでも食べられるが、最近注目されているのは中身の具と味にこだわった「スップリ専門店」。トラステヴェレ地区にある『Supplì Roma(スップリ・ローマ)』、ナヴォーナ広場近くにある『Supplizio(スップリツィオ)』を始め、ローマの旧市街には「スップリの名店」と評判の店がいくつかあり、一日中、いつでも揚げたてアツアツの美味しいスップリが味わえる。中の具は、定番のトマトソース味のご飯にモッツァレッラが入った「クラッシコ」を筆頭に、カルボナーラやカチョ・エ・ぺぺなどローマの代表的なパスタの味を小さなライスコロッケに凝縮したものなど盛りだくさん。1個1.5〜3€程度でローマの伝統的な味が楽しめる。食事時に様々な味をたくさん食べてみるのも良し、ちょっと小腹が空いた時におやつ代わりに食べるのも良し。小さくても大満足間違いなしのファストフードだ。
 

 

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片手でパクッと食べられるライスコロッケ「スップリ」。いろいろな味を食べ比べてみるのも楽しい(上)。下町トラステヴェレの名店『Supplì Roma(スップリ・ローマ)』の店内。お昼時は大混雑する。名物のスップリの他、ラザーニャや惣菜類も。イートインスペースもある(中上)。オックステールの煮込み「コーダ・アッラ・ヴァッチナーラ」が入ったスップリ(2€)は絶品(中下)。シンプルながら食べ応え十分の「カチョ・エ・ぺぺ」のスップリ(1.5€)も人気商品(下)。
 

 

 

2. トラピッツィーノ(Trapizzino)

  ローマの下町テスタッチョで10年前に誕生した新しいストリートフード「Trapizzino(トラピッツィーノ)」。「トラメッヅィーノ(=サンドイッチ)+ピッツァ」の造語で、分厚く焼いたピッツァ生地にローマ料理のソースをたっぷり詰めたボリューム満点のファストフードだ。開店以来その美味しさが評判を呼び、今ではローマ市内に6店舗、その他ミラノ、フィレンツェ、トリノ、N.Yにも店舗が拡大している。美味しさの秘密は独自の製法によってフカフカに焼き上げるピッツァ生地とバラエティ豊かな具の数々。常時用意されている定番の具は、「ポッロ・アッラ・カッチャトーラ」、「ポルペッタ・アル・スーゴ」、「リングア・イン・サルサ・ヴェルデ」などローマの伝統料理が5品。一方、随時追加されるスペシャルメニューは、「バッカラ&チェチ」、「コラテッラ・コン・チポッレ」、「カルチョーフィ・アッラ・ロマーナ」など玄人好みの味が用意されている。レストランならメインディッシュのリストに並ぶ料理をあえてピッツァに挟んで食べる、というアイデアもさながら、どのメニューのソースもしっかり本格的な美味しさを保っているのが人気の理由だろう。1つ4€〜と料金も手頃で、ビール片手にかぶりつけるのも嬉しい。ローマ市内ではテスタッチョ地区、ミルヴィオ橋広場、テルミニ駅構内のメルカート・チェントラーレなどに店舗がある。一度食べたら病みつきなる美味しさを、ぜひ体験してみて欲しい。
 

 

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テスタッチョ地区にあるトラピッツィーノ一号店。隣は広々としたイートインスペース(上)。定番の人気メニュー「ミートボールのトマトソース煮込み/左」と「ナスのパルミジャーナ/右」はいずれも4€。1つでもお腹いっぱいになるほどのボリューム(中上)。注文すると目の前で焼き立てピッツァに好きな具を詰めてくれる。トリッパやバッカラなどローマの名物料理も登場する(中下)。『小麦粉は石臼で挽いたもの、トマトはBIO、自然酵母使用、時間と情熱をたっぷりかける』というのがトラピッツィーノのモットー(下)。
 

 

 

3. 箱入りパスタ(Pasta in scatola)

 

   手のひらに乗るサイズの縦長の紙の箱の中にパスタやサラダ、肉や魚などメインの料理を入れて提供してくれるストリートフード店が、現在、イタリア各地で急速に増えてきている。街ごとに異なる伝統の郷土料理はもちろん、エスニックやオリジナリティあふれる料理の数々も箱に入れてテイクアウトすれば「ストリート・フード」に大変身! 料理のクオリティも高く、地元の食材やこだわりの味が格安で楽しめるので、旅先で見かけたらぜひ試して見て欲しい。
  ローマにも観光地や住宅地など各所にボックス料理のファストフード店が増えているが、中でも「パスタ」だけにこだわった『Il Pastaio di Roma(イル・パスタイオ・ディ・ローマ)』は味にうるさいローマっ子も太鼓判を押す店。デュラムコムギと卵と水だけを使用し、店内で毎日製造している自家製のフジッリ・パスタは時間が経ってもふにゃふにゃにならずアルデンテの歯ごたえをキープできるように考案されたもの。ショートパスタなので立ち食いでも食べやすい。ソースはカルボナーラ、アマトリチャーナ、トマトソース、ジェノヴェーゼ、バターとパルミジャーノの5種類。オーダーしてからパスタを茹で、熱々のソースに絡めて提供してくれる。作り置きのソースなんて美味しいの?と疑問を持っていたが、これがレストランと比べても遜色のないレベルで驚いた。1箱4€で食べ応えも十分、ホテルの部屋に持ち帰れるのも嬉しい。
 

 

 

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ナヴォーナ広場近くの隠れたショッピング・ストリートにある『Il Pastaio di Roma』の店舗。観光やショッピングの合間に、安くて手軽に本格的なパスタが味わえる(上)。イートインもできる店内。ドリンク類も充実している(中上)。毎日店内で作られている独特の形状をした自家製パスタ・フジッリ(中下)。本格的なアマトリチャーナの味にびっくり。但し、カルボナーラはローマの伝統レシピではなく、パスタの形状やテイクアウトにしても品質を保てるよう考慮したオリジナルソースだそう。パスタはどれも1箱4€(下)。
 

 

 

4. トースト(Toast)

 

  朝食や軽めのランチに恋しくなるのが「トースト」。実はイタリアではあまり馴染みがなかったトーストだが、ここ数年でようやく普及し始めた。その先駆けとなったのが、『Capatoast(カパトースト)』というトースト専門のチェーン店。ミラノ、ローマ、ナポリ、トリノ、ヴェネツィアからパレルモまで、現在イタリア各地の17の街に店舗がある。〝イタリア初のトーステリア(=トースト専門店)〟として、厳選したイタリア産食材を使用した多彩なメニューを用意している。ベースとなる食パンは小麦粉、全粒小麦粉、シリアル入り、ヴィーガン向け、グルテンフリーの5つのタイプを取り揃え、毎朝焼き立てを提供。まずはパンの種類を選び、さらに約30種類のメニューの中から好みの具を選ぶ仕組みになっている。シンプルなハムとチーズのトーストからイタリアのD.O.P食材を使ったトマトとプロシュット・ディ・パルマ、カプレーゼ、おやつ代わりにもなるチョコクリームやジャムを塗った甘いトーストまでバラエティも豊か。お値段は具によって変わり、2.5〜8€と幅がある。サイドメニューとしてサラダやフライドポテトも用意されているので、お腹の空き具合によって組み合わせるのもいい。ローマ市内にはトラステヴェレ地区、チチェローネ通り、レ・ディ・ローマ地区の3カ所に店舗がある。
 

 

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アメリカ風のトーストが恋しくなって注文したベーコン、チェダーチーズ、スクランブルエッグの「American Toast / 5€」(上)。メニューはシンプルなものからイタリア食材をたっぷり使ったもの、スイーツまでさまざま(中上)。パンの種類とサイズ、具をチョイスしてオーダーする。イートイン・スペースも備えている(中下)。ショッピング・ストリートであるコーラ・ディ・リエンツォ通りにほど近いチチェローネ通りの店舗(下)。
 

 

 

5. ラザーニャ(Lasagna)

 

 手作りのお惣菜も売っている食材店なら必ずと言っていいほど置いてあるラザーニャ。老若男女に愛されているイタリア料理の代表格のラザーニャを手軽に食べられる店が登場した。伝統のイタリア料理を高品質のまま、広く世界に普及したいという4人の若者の情熱によって2010年にオープンした『Lasagnam(ラザニャム)』は、ラザーニャをメインにした初めてのファストフード店。現在、ローマに2つの店舗があり、将来的には世界にイタリアの伝統のラザーニャを広めたいという目標を掲げている。ラザーニャの種類は伝統的なボロニェーゼからカルボナーラ、カチョ・エ・ぺぺ、シチリアーナ、ティロレーゼなどイタリア各地の郷土料理にヒントを得たオリジナルまで10種類を取り揃えている。いずれのメニューもイタリア産の高級食材をふんだんに使用、味と品質に強いこだわりを持っている。その他、ハンバーガーやサラダなどのメニューも豊富。ラザーニャとサイドディッシュ、ドリンクを組み合わせたお得なセットメニューも各種用意されている。安く、美味しく、お腹を満たしたい人には最適のスポットだ。
 

 

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ショッピング・ストリート、ナツィオナーレ通りとコロッセオにある『Lasagnam』(上)。ナツィオナーレ通りの店舗にはWiFiフリーの広々としたイートインスペースもある(中上)。定番のボロニェーゼ5.9€(手前)とナスとスモークチーズ、トマトが入ったシチリアーナ6.9€(奥)を試食。テイクアウトして家で温め直して食べたが、とても美味しかった(中下)。10€以下でがっつり食べられるお得なセットメニューも多数。イカやポテト、ピッツァのフライなども揃えている(下)。
 

 

<インフォメーション>

 

ご紹介した店舗はローマ旧市街のものだが、チェーン展開しているお店はイタリア各地に店舗を持っている。以下のHPを参考に旅先でチェックしてみて欲しい。また、スップリやラザーニャ、パスタなどはお惣菜を置いている食材店や切り売りピッツァのお店などでもテイクアウト用に用意しているところがある。

 

・Supplì Roma(スップリ・ローマ)

https://www.suppliroma.it/?lang=en

 

・Supplizio(スップリツィオ)

https://www.supplizioroma.it/en/

 

・Trapizzino(トラピッツィーノ)

https://www.trapizzino.it/en/

 

・Il Pastaio di Roma(イル・パスタイオ・ディ・ローマ)

http://www.ilpastaiodiroma.it/indexnewengcart.html

 

・Capatoast(カパトースト)

https://capatoast.it/

 

・Lasagnam(ラザニャム)

https://lasagnam.it/


 

 

★ MAP ★

 

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*この連載は毎月第2・第4木曜日(月2回)の連載となります。次回は2019年5月23日(木)掲載予定です。お楽しみに! 

 

 

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田島麻美 (たじま・あさみ)

千葉県生まれ。大学卒業後、出版社、広告代理店勤務を経て旅をメインとするフリーランスのライター&編集者として独立。2000年9月、単身渡伊。言葉もわからず知り合いもいないローマでのサバイバル生活が始まる。半年だけのつもりで暮らし始めたローマにそのまま居座ること19年、イタリアの生活・食文化、歴史と人に魅せられ今日に至る。国立ローマ・トレ大学マスターコース宗教社会学のディプロマ取得。旅、暮らし、料理をメインテーマに執筆活動を続ける一方、撮影コーディネイター、通訳・翻訳者としても活躍中。著書に『南イタリアに行こう』『ミラノから行く北イタリアの街』『ローマから行くトスカーナと周辺の街』『イタリア中毒』『イタリア人はピッツァ一切れでも盛り上がれる』他。

 

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