台湾の人情食堂

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#60

台北駅から15分の隠れグルメスポット、三重〈2〉

文・光瀬憲子

 台北中心部から近いベッドタウン、三重(サンチョン)。台北駅からMRTでわずか15分なのでぜひ開拓しほしいエリアだ。

 前回は三重の夜市を中心に取り上げたが、今回は三重が「隠れグルメスポット」と言われるゆえんでもある美味しいものを紹介したい。いずれもわざわざそのためだけに三重に足を運ぶ価値のものばかりだ。

 

001板橋同様、地方都市のようにどこかのんびりしたところのある三重

 

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三重の路地裏。気取らない台北といった雰囲気がいい。話しかければ旅行者にも気さくに対応してくれる

 

 

ぷりっぷりのイカのあんかけスープ

 台北から三重へ乗り入れるMRTは中和藘州線だが、川を越え、三重に渡ったあと二手に分かれ、藘州行きと迴龍行きになる。どちらに乗っても夜市には行けるのだが、今回ご紹介する店は「迴龍行き」が近道だ。MRT中和藘州線の迴龍行きに乗り込んだら台北橋駅で下車。ここから徒歩5分ほどのところに、三重では知らない人がいないというくらい有名なモンゴウイカのあんかけスープの店『朱記花枝焿』がある。

 店というよりも建物の軒下に屋台とテーブルを並べたような構えで、屋台にはハチマキ姿のご主人がひとり、朝から晩までイカあんかけを作っている。営業時間は朝8時から夜中の12時。いつもニコニコしながら接客しているので外国人でもとっつきやすい。

 

003建物の軒下に屋台を構える「朱記花枝焿」。ご主人が仕込み、調理、注文、釣り銭の受け渡しまですべてこなす

 

 看板メニューは歯ごたえのあるモンゴウイカの切り身が白いとろみスープに入った花枝焿(ホアズーゲン)。台湾人は魷魚(ヨウユー)と花枝(ホアズー)をはっきりと区別している。魷魚は主にスルメイカやヤリイカなど、花枝はモンゴウイカなどのコウイカを指す。花枝は白くて肉厚で、甘味も強い。台湾では魷魚よりも少し高価なのが特徴だ。

 半透明なスープに真っ白い肉厚なイカ。味はさっぱりとしていながらも海鮮の豊かな風味。イカの甘味がダイレクトに舌に伝わる。また、モンゴウイカならではの歯に吸い付くような弾力がいい。

 

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白さが上品なイカあんかけスープ。噛むと歯にサクッとめり込む噛みごたえ。少し辛みを加えると味が引き締まる

 

 もうひとつの看板メニュー(といってもメニューは2品だけ)は米粉(ビーフン)だ。少量のモヤシが入っているだけのシンプルなもの。だが、絶妙な硬さで細麺なのに歯ごたえがしっかり残っているし、イカあんかけとの味付けのバランスがすばらしい。イカあんかけが引き立つように、米粉はとても控えめに、でもしっかりと満足感のある味になっている。

 米粉は味が染み込みやすい麺なので、仕上がりが茶色い場合はすこし塩辛い、しっかり味付けされた米粉ということになる。一方で、この店のように白っぽい米粉は薄味なので他の料理の邪魔をしない。それでいて濃厚なエビの風味が、同じ海鮮であるイカあんかけスープとよく合う。ファンが多いのもうなずける三重の本気グルメだ。

 

005シンプルな米粉。強いエビの香りが食欲をそそる

 

 

3種の豚足の人気店

 イカあんかけの店の近くにあるのが、やはり三重では知らない人がいないほど有名な豚足の店『五燈獎豬腳』。この店名にはきちんとした由来がある。五燈とは5つのランプを意味する。かつて台湾で人気を博したのど自慢番組『五燈獎』。歌が上手だとランプが5つ点灯する番組なのだが、この店のオーナーはなんとこのTV番組に実際に出場して5つランプを獲得した人物なのだ。

『五燈獎豬腳』は三重に店舗が2つあり、いずれもこぎれいで入りやすいファストフード店のようなつくり。セルフサービス方式で、客はトレイを持って列に並び、カウンターで注文する。カウンターの向こうで湯気を上げている大鍋には豚足がゴロゴロと入っていて食欲をそそる。

 

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三重の地元民だけでなく台北でも広く知られている豚足の人気店『五燈獎豬腳』

 

 豚足には3種類あり、蹄に近い部分がヘルシーな「腳蹄」(ジャオティー)だ。脂分が少なく、コラーゲンたっぷり。食べやすいので女性ウケがいい。

 一方、脂身もしっかり、肉もガッツリ食べたいという人には「蹄膀」(ティーパン)。

 そして一番人気は皮、筋、肉のすべてがバランスよく含まれた「中段」(ジョンドアン)だ。肉は甘めの味付けでご飯が進む。豚足に合わせるなら白いごはんが望ましいが、食いしん坊のために魯肉飯も用意されている。また、栄養バランスを考えて野菜炒めなども頼むといい。

 

007豚足の味付けがしっかりしているので、魯肉飯は肉控えめ。それでも風味はしっかり

 

008柔らかく煮込まれた筋と肉が絶品の「中段」は万人に愛される豚足の部位

 

009豚足には青菜炒めも添えて

 

010台湾らしいオープンキッチンで、店も広いので入りやすい

 

 

筆者のマイベスト魯肉飯

 三重グルメのなかでも筆者が特におすすめしたいのが魯肉飯だ。魯肉飯は台湾全土、どこにでもある。そして台湾人に聞くと、自分のお気に入りの店があり、そこをリピートする人がほとんど。さっぱり系の魯肉飯、こってり系の魯肉飯、味付け薄め、肉大きめなど、店によって魯肉飯の味はさまざま。

 各地で魯肉飯を食べてきたが、今のところ三重の『今大魯肉飯』に勝るものには出合っていない。

 店はMRT菜寮駅から徒歩8分程度のところにあり、街はずれといった雰囲気だが、店の周りには人だかりがある。私が訪れた週末の夜は、夜9時近いというのに十数人の行列ができていた。テイクアウトして夕食に食べる人もいれば、イートインする人もいる。店内は広くはないが清潔感があって入りやすい。

 お待ちかねの魯肉飯は、肉と脂のバランスが絶妙で、甘過ぎず、濃過ぎず、そして香り高い味付けが特徴。ひと口含むと上品な甘みが広がり、脂が舌の上で溶けていく。魯肉飯は主菜の脇役になることがほとんどだが、この店の魯肉飯は立派に主役が務まる。

 

011『今大魯肉飯』の魯肉飯、排骨スープ、虱目魚(サバヒー)の煮物。どれもレベルが高い

 

 サイドメニューのスープや煮魚もすばらしい。どれもしっかりと研究しつくされた味付けで、完成度が高い。地元の人たちだけでなく、台北から足を運ぶ人が多いのもうなずける。

 

012けっして広くはないが、清潔感のある今大の店内。テイクアウト客が多く、イートインは空いていることも

 

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青い看板に集まる人々。夜遅くまで行列が絶えないので、市街地から離れていても見つけやすい

 

*筆者の名古屋の栄中日文化センターでの講座『台湾一周! 鉄道&高速バスの旅』は、残り2回分(6/10と7/8、それぞれ13:00~14:30)が定員に達したため席を増やしましたので、あと2、3名さまの受付が可能です。6/10は台南から墾丁への旅、7/8は東側を北上します。詳細やお申し込みは下記で。

 http://www.chunichi-culture.com/programs/program_160822.html

 

145/13に行われた講座『台湾一周! 鉄道&高速バスの旅』第1回目の様子

 

 

 

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*本連載は月2回(第1週&第3週金曜日)配信予定です。次回もお楽しみに!

 

 

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著者:光瀬憲子

1972年、神奈川県横浜市生まれ。英中日翻訳家、通訳者、台湾取材コーディネーター。米国ウェスタン・ワシントン大学卒業後、台北の英字新聞社チャイナニュース勤務。台湾人と結婚し、台北で7年、上海で2年暮らす。2004年に離婚、帰国。2007年に台湾を再訪し、以後、通訳や取材コーディネートの仕事で、台湾と日本を往復している。著書に『台湾一周 ! 安旨食堂の旅』『台湾縦断!人情食堂と美景の旅』『美味しい台湾 食べ歩きの達人』『台湾で暮らしてわかった律儀で勤勉な「本当の日本」』『スピリチュアル紀行 台湾』他。朝日新聞社のwebサイト「日本購物攻略」で訪日台湾人向けのコラム「日本酱玩」連載中。株式会社キーワード所属 www.k-word.co.jp/  近況は→https://twitter.com/keyword101

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