韓国の旅と酒場とグルメ横丁

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#60

この夏、忠清南道に行きたい7つの理由

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 先月、私が日本に出張したのと入れ替わりに、私の事務所の日本人スタッフが忠清南道(チュンチョンナムド)の視察旅行に参加してきた。

 この十数年間、韓国各地で観光開発が進んでいる。それはソウルから中途半端に近いために逆に目立たなかった忠清道も例外ではない。

 忠清道人の気質については、昨年11月、本コラム#47に書いたが、今回は日本人スタッフ(30代後半、男性)による忠清南道レポートをお届けする。目玉はもちろん飲食だ。

 

その1、韓山モシマッコリ(扶余)

 韓国は飲酒を豪快に楽しむという点では日本に負けないが、酒の多様性という点では大きく遅れをとっている。しかし、7、8年前の爆発的なマッコリブームと、地方の村おこしや観光商品開発ブームが重なり、ご当地マッコリが存在感を増してきている。

 舒川(ソチョン)郡の特産物である韓山モシ(カラモシ)という植物を使ったマッコリもそのひとつ。カラモシは夏用の韓服やポジャギの素材として知られているが、食物繊維やアミノ酸、カルシウムが豊富で飲食にも適している。カルシウムは牛乳の数十倍も摂れ、歯や骨の健康に寄与するという。血液浄化作用や脂肪吸収抑制効果もあるといわれ、いいこと尽くしだ。

 筆者は本コラムの責任者である鄭銀淑の代表作『マッコルリの旅』(東洋経済新報社)に感化され、酒場巡礼のために韓国全市郡を6割ほど踏破しているのだが、韓山モシマッコリは、ほどよい青臭さが清涼感となっていて、各地で味わったマッコリのなかでも屈指と言えるほど旨かった。

 

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『韓山モシ醸造場』。醸造所の名前がそのまま冠されたマッコリ。韓山モシの名産地である舒川は、名優ソル・ギョングの故郷でもある

 

 同じく忠清南道の蓮の葉マッコリや、全羅南道のケンポナシマッコリ、江華島のヨモギマッコリ、ソウル仁寺洞の伝統酒場で出てくる松葉粉マッコリなど、葉っぱ系のマッコリを味わった人には、ぜひ試してもらいたい。

 

02ヨニッパプ(蓮の葉で包んで蒸した五穀飯)。蓮はこのために栽培されたもの。定食は17000ウォン

 

03店名にもなっているファンテ(干しダラ)に甘辛いタレをからめて焼いたファンテクイ。単品10000ウォン、定食17000ウォン

 

04『ファンテゴル』。扶余郡扶余邑東南里185-3 ℡041-836-8100 11:00~21:00 日曜休

 

 

その2、ぷりっぷりのイイダコしゃぶしゃぶ、〆は麺(洪城)

 韓国で春の産物といえばイイダコ(チュクミ)を思い出す人が多い。私は釜山に行くと、甘辛いタレにくぐらせたイイダコの網焼きの店に直行するのだが、さっきまで生きていた旬のイイダコをしゃぶしゃぶして食べようというのだから、まずいわけがない。焼酎を合わせたくなるが、昼食なのでガマン。

 

05生きたまま運ばれてくるイイダコ。おのれの運命に逆らって逃亡を図ろうとする。1キロ50000ウォン(3~4人前)

 

06残酷だが、身をくねらせる様子も美味しそうなイイダコ。貴様の命、おろそかには食わぬぞ!

 

 韓国では“夏バテの牛も元気になる”といわれるくらい滋養があるタコ。元気になるだけでなく、美肌効果も抜群。ソウルの行きつけのイイダコ焼き専門店の主が六十代とは思えないほど肌(頭も!)がツルピカなのがそれを証明している。

 イイダコをあらかた食べ終わった後は、スミが流れ出た残り汁でラーメンを煮る。見た目は真っ黒で不気味だが、タコの旨味とスミの濃厚な風味が意外にも上品なスープを生み、ぜいたくな〆食いとなった。

 次回はイイダコをつまみに冷えた焼酎を何杯も乾してからラーメンで〆る、“先酒後麺”といきたいところだ。

 

07イイダコしゃぶしゃぶの残り汁でラーメン(インスタントの乾麺)を煮る

 

08『ケッマウル・フェセンター』。洪城郡西部面宮里710-12 ℡041-631-3969 10:00~22:00

 

 

その3、二日酔いも吹っ飛ぶスカイバイク(保寧)

 視察旅行ではあるが、“韓国好き=酒好き”のならい通り、前の晩は同行の人たちと3次会まで痛飲してしまった。こういう場合、翌日の最初の観光メニューは、韓国式サウナ体験だったりすると都合がよいのだが、そうはいかない。

 スカイバイクという名の自走式の乗り物体験と聞き、一瞬めまいがしたが、やってみたら意外と楽しかった。

 

09往復約5キロのスカイバイク

 

 自転車のようにペダルをこいで進む4人乗りカートで、海沿いの高架路を往復するのだが、これがなかなか爽快だった。時間も30分ほどなので適度な運動になり、海風に吹かれているうちにアルコールも抜けていく。勾配ではペダルをこがなくても電動で進むのでラクである。

 子供だましかと思ったら、思いのほか愉快なアクティビティだ。二日酔いの朝にぜひ体験してもらいたい。

 

10『大川スカイバイク』。保寧市新黒洞2209-3 ℡041-931-1180 10:00~18:00(6月~8月は延長営業あり) 月曜休(6月~8月は無休) ※料金は2人乗車で22000ウォン、3人乗車で26000ウォン、4人乗車で30000ウォン 

 

 

その4、百済式うちわ作り体験(扶余)

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完成した百済式うちわ。もう少しシックな柄が好みだが、これが韓国らしさであり、百済らしい優雅さなのである

 

 紙に関する技術は遠い昔、朝鮮半島から日本に伝わったと聞いているので、心して臨んだ。韓国らしい模様が刻まれた硯のようなものに水を吹きかけ、その上に紙をのせ、布を丸めたタンポでやさしく叩き、ブラシでなじませ、紙に模様を浮かび上がらせていく。日本でいう拓本の要領だ。その紙をうちわに貼るだけなので意外と簡単。これまで韓国の地方では、仮面作りや焼き物などいろいろ体験したが、うちわ作りも素朴でよかった。

 ふだんの韓国旅行はどうしても飲み食いに偏りがちなのだが、こうした文化体験を挟むと、いいアクセントになるだろう。

 

12硯のようなものに紙をのせ、その上にタオルを敷いてブラシをかけてなじませる

 

13『百済文化体験場』。扶余郡扶余邑官北里77 ℡041-834-2330 09:00~18:00(うちわ作り体験は10:00~17:00) 無休 ※体験料金は3000ウォン

 

 

その5、オンドルは薪で! 伝統旅館(公州)

 この日の公州の宿は伝統旅館スタイル。わかりすく言えば韓屋(ハノク)コテージで、ひとつの建物の中にマルと呼ばれるリビングを挟んで個室が2つある。伝統旅館といっても今どきはカードキー(オートロック)で施錠できるのでセキュリティも万全。古風な外観に似合わずWi-Fiも完備されている。

 

14伝統旅館と言っても施設は新しいので、積年は感じさせないが、きれいなので女性にはかえって好まれそう

 

 このときはまだ肌寒くオンドル(薪で焚く本格派!)が効いていたのだが、熱過ぎても寝苦しいし、喉をやられしてまうので、窓を少し開けて室温を調節する。この不便さがかえっていい。

 

15韓式コテージでは、仲間と集まってオンドルに車座になり、酒盛りするのも楽しい

 

16一棟ごとに積み重ねられているオンドル用の薪。『公州韓屋村』。公州市熊津洞325-11 ℡041-840-8900 ※料金は80000~250000ウォン程度

 

 韓国の地方で数泊するとき、1泊はこうした伝統旅館を利用するのも悪くない。オンドルの床は冬はぽかぽか、夏はそのままでひんやりするので寝心地がよい。

 

 

その6、韓屋村のクッパ(公州)

 この日の朝も二日酔いで迎えた。こういうとき、韓国ではヘジャンクッと呼ばれる酔い覚ましスープを飲むのが常だ。ツアーの主催者もそのあたりは抜かりがなく、公州韓屋村の敷地内にある韓国料理店に連れて行ってくれた。店の入口に貼られているメニュー表の左上にはクッパの文字。さすがである。

 ところが、一行が席に着くと、どこからか耳を疑う言葉が飛び出した。

「ビールが飲みたい」

 韓国にはヘジャンスル(酔い覚ましの酒)というわけのわからない言葉があり、ヘジャンクッ屋では、酔い覚ましに来たにもかかわらず酒瓶がテーブルに登ってしまうことはよくある。それをやっているのはたいてい中高年男子だ。この一行は私以外全員女性(!)なのだが、ここで尻込みしていては男がすたる。

 ビールをグラスで1、2杯飲んだ頃、クッパが登場。スープとごはんが別々に出てくるタロ(別)クッパだ。牛コツでダシをとったスープに牛肉の薄切りが入っている。シレギ(ダイコンの干し葉)もたっぷり。これが公州式なのだそうだ。スープは赤茶色だが、見た目ほど辛くない。コクがあって旨い。二日酔いなのだが、ヘジャンクッとビールで一進一退といったところか。

 

17韓屋クッパ8000ウォン。『ユルファグァン』(公州韓屋村の敷地内)。℡ 041-856-0019

 

 

その7、山菜定食(公州)

 夜ごとの酒宴はとても楽しかったが、胃腸はかなり疲れている。視察ツアー最後の食事は、そんな一行のコンディションに寄り添うようなヘルシーなランチだった。

 看板メニューは山菜定食。こう聞くと質素なものをイメージするかもしれないが、山の幸をぜいたくに使った韓定食と言っていい。それくらいテーブルの上はにぎやかだ。

 韓国料理のすごさは、トウガラシやゴマ油、ニンニクなどを生かしたタレを上手く使って、そのままだと少々味気ない野菜をごちそうに変えてしまうところだと思う。「これは何という山菜?」などと確認するのももどかしく、次々に口に運ぶ。春の息吹を感じさせるナムルの苦味や酸味、葉もののすがすがしい香りで、ごはんが進む。

 

18山菜定食。写真は4人分ほどだが、1人12000ウォンとソウルでは考えられない値ごろ感!

 

 店先で焼かれていたヨモギの葉入りチヂミもいただく。ヨモギ団子やヨモギ粉を練りこんだ麺は食べたことがあるが、これは初めてだ。う~ん、マッコリが飲みたくなってきた。いかんいかん、体を浄化してから日本に帰らねば。と思ったら、すでに誰かが公州名産の栗を使ったマッコリを頼んでいて、お椀が回ってきた(!)

 

19店先で焼かれていたジョンには、春らしくヨモギの葉が入っていた

 

20『テファシクタン』。公州市寺谷面雲岩里728-5 ℡041-841-8020 8:30~20:00 無休

 

 忠清南道は海山の幸がバランスよく楽しめるところだが、バランスがよいために食のインパクトが弱かったのも事実。しかし、店とメニューをしっかり選べば、こんなに楽しめるのだということがよくわかった。個人的な再訪が楽しみである。

 

*取材協力:有限会社プランネット、忠清南道観光マーケティング課、忠清南道観光協会

 

 

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紀行作家。1967年、韓国江原道の山奥生まれ、ソウル育ち。世宗大学院・観光経営学修士課程修了後、日本に留学。現在はソウルの下町在住。韓国テウォン大学・講師。著書に『うまい、安い、あったかい 韓国の人情食堂』『港町、ほろ酔い散歩 釜山の人情食堂』『馬を食べる日本人 犬を食べる韓国人』『韓国酒場紀行』『マッコルリの旅』『韓国の美味しい町』『韓国の「昭和」を歩く』『韓国・下町人情紀行』『本当はどうなの? 今の韓国』、編著に『北朝鮮の楽しい歩き方』など。NHKBSプレミアム『世界入りにくい居酒屋』釜山編コーディネート担当。株式会社キーワード所属 www.k-word.co.jp/

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