台湾の人情食堂

台湾の人情食堂

#59

台北駅から15分の隠れグルメスポット、三重〈1〉

文・光瀬憲子

 台北のベッドタウンでありながら下町情緒漂う板橋(バンチャオ)を紹介してきたが、もうひとつ、大都会台北を支えるベッドタウンがある。三重だ。日本語で「みえ」と読みたいところだが「サンチョン」という。

 台北には三重出身者が案外多い。板橋と同様、三重の中心地へは台北駅からMRTで15分ほどなので、距離もさほど変わらないが、三重が板橋と大きく異なるのは鉄道がないところ。実際、三重の中心部に降り立つと、確かに大きな車道が街の中心を何本も貫いていて、車社会というのもうなずける。

 列車に乗って台北を目指した人々はみな、板橋を通る。一方で、三重は何本もの高速道路が交わる車社会となった。台北と地方都市の物流を支えた三重は、工業都市として成長したのだ。また、その裏で三重は台湾ヤクザの縄張りとなったという話もある。このため、三重の出身者は気性が荒いとも言われているが、実際に訪れてみると、三重区民はみな気さくで、地方都市に来たときのようにリラックスできる。

 

 

三和夜市を目指して

 台北からMRT中和新蘆線で三重へ渡ると、台北橋駅と三重國小駅という2つの駅が三重のグルメ通りや夜市の最寄り駅となる。どちらかの駅で降りて、もう片方まで歩いていけば、文化路と中央北路にまたがる三重最大の三和夜市と出合える。

 

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三重区民が普段着のまま訪れる三和夜市。文化路と中央北路にまたがる大規模な夜のエンタテインメントだ

 

 三和夜市には飲食店の集まる文化路と雑貨や服の集まる中央北路があって、とにかく大きく、活気がある。夜市というのは本来、どの街にもあって地元の人たちが普段着のまま歩き、食事ができる「近所のお祭り」だ。台北市内の夜市は観光化されていて旅行者も多いので地元感がやや薄いが、三和夜市はまさに三重区民のお祭り会場といった雰囲気だ。

 

ぶよぶよが美味しい、肉圓(バーワン)

 三重夜市で「何を食べたらいい?」と地元の人に聞いてみると、たいていの人が『萬粒肉圓』だと答える。看板メニューは、ひき肉やタケノコを煮込んだ具材を片栗粉の団子で包んで揚げた、肉圓(バーワン)。半透明でぶよぶよした不思議な食べ物だ。萬粒の肉圓は特にサイズが大きい。皮の部分に弾力があり、具材が透けて見える。この皮を割ると、中からどどっと具がこぼれ落ちてくる。肉もタケノコも大粒で食べごたえがある。

 

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『萬粒肉圓』の肉圓は標準サイズよりも大きめで食べごたえがある。値段は30元を守り通している

 

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ぶよんぶよんとした感じがたまらない! 美味しいソースをたっぷり絡めて、皮の部分も肉の部分も最後まで楽しめる

 

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材料費が高騰するなかで1粒30元を維持すべく、すべてセルフサービス

 

 これほどのボリュームなのに、値段は1つ30元。店内には「ずっと値上げしていません」という張り紙がある。そのかわり、すべてがセルフサービス。でも、美味しくて安い肉圓にありつけるなら、それも気にならない。

 

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三和夜市ではエビ釣りも楽しめる。台北市内の夜市ではなかなかお目にかかれない。写真は『萬粒肉圓』の目の前

 

 

白玉団子とワンタンのスープ

 三和夜市でのもうひとつのお気に入りは、夜市の中央あたりに位置する行列屋台『阿文餛飩湯圓』だ。湯圓には甘い白玉団子のような食べ方と、塩味のスープに入れるおかずのような食べ方があるが、この店は後者。また、その看板がうたうように湯圓とワンタンの両刀使いだ。

 どちらかというと湯圓のほうが人気があるようだが、湯圓とワンタンを合わせた「総合」(ミックススープ)もあり、これが一番の売れ筋。カウンター席は4~5人で埋まってしまうのだが、周辺にも簡易テーブルが出ていて、どれも満席という盛況ぶりだ。

 この店の湯圓はやや小ぶりで食べやすく、皮にしっかりと歯ごたえがある。具材の味付けが濃厚で、噛むと中の具材がとろんと溶け出す。一方でワンタンはやや薄めの味付け。この2つがスープのなかで絶妙に混ざり合う。三重の人たちに長年愛され続けてきた地元の味だ。

 

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 『阿文餛飩湯圓』の総合(ミックススープ)は、湯圓とワンタンの両方を楽しみたい欲張りさん向け

 

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ツルンとした湯圓は、甘い物と塩味のものとがあるが、この店は塩味専門。中には味のはっきりした具が入っていてアクセントになる

 

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カウンターはたいてい満席だが、回転は速い『阿文餛飩湯圓』。テイクアウトの客も多く、常に人だかりができている

 

 

地元っ子に愛されているパパイヤミルク

「三重に行ったら何食べよう?」 三重出身の人たちにそう聞いて返ってきた答えは、意外にも「パパイヤミルク」だった。

 夜市からは少し離れた三重の目抜き通りにある『三重牛乳大王』には、夜市のシメや食後のおやつにちょうどよい濃厚パパイヤミルクがある。三重区民なら誰しもが一番と認めるパパイヤミルクだそうで、その名は台北にも知られている。

 

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三重一番と評判の『三重牛乳大王』。看板のパパイヤミルクのほかにも数々のシェークが取り揃えてある

 

 パパイヤミルクとはその名の通り、パパイヤとミルクをミキサーにかけた濃厚なドリンク。パパイヤはそのまま食べるとクセがあるが、ミルクのまろやかさがクセを消して甘みを強調してくれる。タピオカミルクティーが流行る前は、パパイヤミルクが台湾のスイーツドリンク界を牛耳っていたと言っていい。この店のパパイヤミルクはまろやかな甘味と風味で、パパイヤが苦手な人でも飲みやすそう。

 また、この店は緑豆沙(緑豆シェーク)もおすすめ。緑豆は解熱作用があるので暑い台湾では好まれる。優しい豆の香りがする、甘さ控えめの絶品シェークに仕上がっているので、これから暑くなる夏旅の途中に是非試してほしい。

 

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フロアに奥行きがあるので、食べ歩きの途中に冷房で涼み、身体を休めるのにちょうどいい

 

 

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著者:光瀬憲子

1972年、神奈川県横浜市生まれ。英中日翻訳家、通訳者、台湾取材コーディネーター。米国ウェスタン・ワシントン大学卒業後、台北の英字新聞社チャイナニュース勤務。台湾人と結婚し、台北で7年、上海で2年暮らす。2004年に離婚、帰国。2007年に台湾を再訪し、以後、通訳や取材コーディネートの仕事で、台湾と日本を往復している。著書に『台湾一周 ! 安旨食堂の旅』『台湾縦断!人情食堂と美景の旅』『美味しい台湾 食べ歩きの達人』『台湾で暮らしてわかった律儀で勤勉な「本当の日本」』『スピリチュアル紀行 台湾』他。朝日新聞社のwebサイト「日本購物攻略」で訪日台湾人向けのコラム「日本酱玩」連載中。株式会社キーワード所属 www.k-word.co.jp/  近況は→https://twitter.com/keyword101

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