台湾の人情食堂

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#58

台北駅から15分の隠れグルメスポット、板橋〈2〉

文・光瀬憲子

 台北の隠れグルメタウン、板橋。台北駅からMRT板南線で15分のところにある府中駅は、川向こうの下町らしい見どころがある。

 

大富豪の家と庭を公園として開放している『林本源園邸』

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板橋のシンボルとも言える『慈恵宮』。古いが手入れが行き届いていて活気がある

 

 府中駅からすぐのところにある慈恵宮や黄石市場はもちろんだが、板橋と言えばもっとも有名な観光名所は『林家花園』だ。現在は『林本源園邸』と呼ばれている大富豪の屋敷で、朝9時から夕方5時頃まで一般に開放されている。林家は板橋では今でも有名な大地主。『林家花園』は、その一家が板橋に居を構え、米や塩などの商いを通じて富を築いた1800年代に建てられた大屋敷で、とても個人のものとは思えない規模である。

 

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林家の観稼樓という建物。この2階から見渡す限りが林家の敷地であり、そこにできる作物を眺めたという

 

 敷地内には池も小山もある。驚くことに、孔雀のオリまである。なんと、林家では孔雀をペットとして飼っていたそうで、その名残りで今も敷地内で飼育されているのだ。

 かつて、この林家のご令嬢と小学校の同級生だったという人に話を聞いたことがある。林家の孫娘は小学生の頃、子供部屋ではなく子供用の屋敷をまるごと1棟与えられていたそうだ。その屋敷で一緒におやつを食べたり、宿題をやったりしたという。

 一家の長である祖父が誕生会を開くときなど、屋敷の中にある池の前に設置された舞台に楽団や劇団を呼んで出し物をさせたりした。現代の富豪とはスケールが違う。建物も非常に凝った造りになっており、書庫、書斎、客間など、用途別に建てられている。

 園内の随所に見られる飾り窓などにも遊び心が伺えて、よく観察していると楽しい。林家の敷地を歩きながら、それが個人宅であること、ここに住んでいた富豪家族のことなどを思い浮かべると、なんだかワクワクしてしまう。

 

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敷地内には池と舞台があり、家長の誕生会には貴賓や近隣住民など数百人が集まったという

 

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広大な敷地内は腹ごなしの散歩にうってつけ。緑が多いので暑い日は涼を取るのにも最適

 

 

板橋の夜市で牡蠣料理に舌鼓

 林家花園で散歩を楽しんだら、板橋の夜市に足を運んでみよう。板橋にはかなり規模が大きく、内容も充実した湳雅夜市がある。長い通りの両側にぎっしりと飲食屋台が並び、ところどころで行列も見かける。

 ひときわ人気があるのが『蚵仔之家』という牡蠣専門店。蚵仔煎はもちろんのこと、牡蠣フライや牡蠣のスープなど、牡蠣料理を豊富に取り揃えていて、夕食時ともなれば店の前には長蛇の列ができる。

 店頭では職人さんが丸い鉄板で蚵仔煎づくりのパフォーマンスを展開しているが、客が頼んでいるものはさまざまだ。たっぷり牡蠣の入ったスープや、カリッとした衣が小気味よい牡蠣の揚げ物、そして青菜などの野菜も豊富。板橋の客層は台北市内と比べるとどこかリラックスしていて、気取っていないのがいい。食べ物はコスパがよく、蚵仔之家のメニューも台北市内より若干安い。

 さっそく「家」の看板、蚵仔煎をいただく。ここの蚵仔煎ソースはオレンジ色でやや甘め。これに赤いピリ辛ソースを添えると可愛らしいビジュアルになる。牡蠣が大粒で弾力があり、パワフルな蚵仔煎だ。1つだけでかなりのボリュームなので2〜3人でシェアするくらいがちょうどいい。

 

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『蚵仔之家』の蚵仔煎。大粒の牡蠣がたっぷり入っており、ソースは甘め。これだけでお腹いっぱいになる

 

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板橋の住民は台北市内の人たちと比べて肩の力が抜けているように見える。飲食店の人たちもおおらかで、気さくな雰囲気

 

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老舗看板の威厳漂う『蚵仔之家』の店頭。店頭では蚵仔煎職人のパフォーマンスも見られる

 

 

麻油雞デビューはこの店で

 湳雅夜市の名物として忘れてならないのが麻油雞(鶏肉のゴマ油スープ)。栄養満点のスープとあって、私は妊娠中にこれを食べさせられ続けてトラウマになってしまった。日本人旅行者には若干ハードルが高いが、だからこそ、板橋の『王記好吃麻油雞』で麻油雞デビューしてほしい。

 

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ほんのり漂うゴマ油と漢方薬の風味が食欲をそそる『王記好吃』の麻油雞。クセがないので初心者でも食べやすい

 

 この店の麻油雞は、漢方薬の香りやゴマ油の香りが控えめで、鶏肉の旨味が際立つスープ。寒い冬には特に混雑するが、暑くなり始めるこれからの季節ほど、体力アップのために飲んでおきたい。

 小さな屋台には常に人だかりができているのですぐに人気店とわかる。夜市らしく、紙の器に入った麻油雞はほんのり酒と漢方薬が香るものの、濃厚で旨みたっぷり。骨付きの鶏もも肉は、かじると肉がホロリと崩れるほど柔らかく煮込んである。旅行者でも難なくチャレンジできそうだ。

 

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板橋湳雅夜市でも一二を争う人気店なので行列必須。夏でも麻油雞で体力をつけようと老若男女が集まる

 

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テイクアウトももちろん可能。また、麻油雞スープに麵線(そうめん)をプラスするとさらに食べやすくなる

 

 

朝は黄石市場のワンタンスープ

 夜市とは違った賑わいを見せる府中駅のそばの黄石市場は、早朝から地元の人たちの台所として混雑している。そんな黄石市場の一角に、中高年に人気のワンタン店がある。台湾人の朝ごはんとしては人気の豆漿やお粥に次いで、ワンタンも人気の朝食メニューだ。

 

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朝ごはんにいただきたいシンプルなワンタンスープ。あっさりとした塩味に具だくさんのワンタン

 

 黄石市場の『老曹餛飩』は現在二代目が取り仕切る板橋の老舗ワンタン店。2017年にリニューアルオープンして旅行者でも安心して入れる小奇麗な店舗に生まれ変わった。しかし、味わ変わらず60年来の伝統を引き継いでいる。

 白くて美しいヒダのついたワンタンは、あっさりとしたスープでいただく。早朝6時から夜の7時まで営業しているいので1日中楽しめるが、やはり朝がおすすめだ。朝もやがかかる朝市にこそ、シンプルなワンタンスープがよく似合う。

 また、この店は小皿のサイドメニューも充実している。セルフサービスなので、好きな料理を手にとってワンタンと一緒に楽しめる。

 

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乾麺は器の底に溜まった汁をよく混ぜるとちょうどよい塩加減になる

 

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セルフサービスのサイドメニューも充実しているので、選んで食べれば夕食としてもボリュームたっぷり

 

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『老曹餛飩』の旧店舗。現在は二代目がおしゃれで入りやすい店舗を構え、さらに人気を集めている

 

 

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著者:光瀬憲子

1972年、神奈川県横浜市生まれ。英中日翻訳家、通訳者、台湾取材コーディネーター。米国ウェスタン・ワシントン大学卒業後、台北の英字新聞社チャイナニュース勤務。台湾人と結婚し、台北で7年、上海で2年暮らす。2004年に離婚、帰国。2007年に台湾を再訪し、以後、通訳や取材コーディネートの仕事で、台湾と日本を往復している。著書に『台湾一周 ! 安旨食堂の旅』『台湾縦断!人情食堂と美景の旅』『美味しい台湾 食べ歩きの達人』『台湾で暮らしてわかった律儀で勤勉な「本当の日本」』『スピリチュアル紀行 台湾』他。朝日新聞社のwebサイト「日本購物攻略」で訪日台湾人向けのコラム「日本酱玩」連載中。株式会社キーワード所属 www.k-word.co.jp/  近況は→https://twitter.com/keyword101

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