料理評論家・山本益博&美穂子「夫婦で行く1泊2食の旅」

料理評論家・山本益博&美穂子「夫婦で行く1泊2食の旅」

#57

第55回  初夏の燕三条ローカル・ガストロノミーの旅

文と写真・山本益博

イルリポーゾヒレ肉と山菜

 

 


懐石「秀石菴」、フランス料理「UOZEN」、イタリア料理「イル・リポーゾ」へ
 

 


   緊急事態宣言が解除されて、初めて旅に出かけたのが新潟の燕三条です。本来なら、5月に出かけるはずでした。なぜなら、5月に「ミシュラン」の新潟特別版が出版されることになっていて、それに合わせてというか、いち早く仲間を誘ってお店を訪ねようと目論んでいたのでした。
 予定していたのは、懐石の「秀石菴」フランス料理の「UOZEN」それにイタリア料理の「イル・リポーゾ」の3軒。どの店も地方に在りながら東京より洗練された、素晴らしい「ローカル・ガストロノミー」の店です。

 

 


 東京から上越新幹線に乗り、新潟の一つ手前の燕三条まで2時間弱の旅です。駅の左側、つまり日本海側が燕市、右側が三条市で、懐石の「秀石菴」は、駅から西へ30分ほど車を走らせた岩室温泉にあります。この岩室温泉には、かつて、取材、プライベートなどで「ゆめや」という旅館に何回も泊まったことがあります。
   この温泉街の一角に「秀石菴」があります。東京・目白の名店「和幸」で修業した林・阿部の兄弟が二人三脚で作る懐石料理です。初夏のはも、鮎、どじょう、鰻など見事な調理がなされてでてきました。「こんな場所で?」とつい思いたくなるのですが、昨年伺ったとき、お茶会の仕出しのお仕事がいくつもあるとのことでした。
  そして、今回の白眉は「水ようかん」。
  匙で掬って口に運ぶと、あっという間に溶けて水と化してしまい、小豆のいい香りだけが残るという傑作の水菓子でした。
 

 

秀石菴水ようかん溶ろける水ようかん

 

   50年ほど前、東京の墨田の菓子司「越後屋若狭」の「水ようかん」をいただいたときの記憶が蘇りました。まさか、同じ「水ようかん」が燕三条でいただけるとはつゆとも思いませんでした。
 

 

秀石菴鮎の塩焼き「秀石菴」の鮎の塩焼き

 

秀石菴うなぎおこぜ一文字「秀石菴」のうなぎとおこぜのお椀と御飯の一文字

 

秀石菴玄関

「秀石菴」の打ち水された玄関

 

 

  店をでて燕三条に戻り、駅前のホテルで一休みのあと、今度は三条市の「UOZEN」へ。今回が3度目で、2度目は昨年暮れ、ジビエの大好きな家内の美穂子と一緒に出掛け、野鴨、鹿、月の輪熊を堪能いたしました。
  今回は、山菜の季節ギリギリのところで、山菜と猪肉、熊肉を鍋でいただきました。前菜がフランス料理で、主菜が日本料理の特別バージョン。店名の「UOZEN」は、マダムの実家の「魚善」をレストランに改造し、店名をアルファベットにしたのだそうです。
  井上シェフが、目の前で調理してくださり、お店が貸し切り状態だったので許されたわけで、コロナ禍の最中でなければ、ありつけなかった鍋料理でした。
 

 

UOZEN熊と山菜鍋井上シェフ井上和洋シェフ

 

UOZEN熊と山菜鍋目の前で調理される熊肉と山菜の鍋

 

 

  アミューズのジビエのパテやスペシャリテのぼたん海老のブイヤベース仕立ての美味しさは言うまでもありません。
 

 

 

UOZENジビエのアミューズジビエのアミューズ

 
UOZENぼたん海老のブイヤベースぼたん海老のブイヤベース

 

UOZEN店内1店内のインテリア

 

   翌日昼は、同じ三条市のイタリア料理店「イル・リポーゾ」へ。燕三条駅から車で10分ほど、住宅街の中に軒を並べて店はあります。周りはあまりにもありふれた風景なので、誰も料理に期待しない、できない様子でした。
   ところが、店に入って、一変。空気がまさしくイタリアなのです。小鮎のフリット、2種のトマト、鱒とピゼッリ(豆類)のサラダとソルベ、ズッキーニのフリット、いかと山菜のガルガネッリ、パンチェッタとアスパラガスのリゾットと次々に展開される洗練を極めた料理が繰り広げられと、会食している全員が感嘆の声を挙げながら、驚いているのです。
「ここはいったいどこなのだろうか?」と。

 

 

イルリポーゾ鱒と豆鱒とピゼッリのサラダとソルベ
 

 

 

  主菜の肉は牛ヒレに数日前に採ってきたというこしあぶらをはじめとする山菜の盛り合わせ。どちらが主役かわからないほどの贅沢な一皿でした。

 

 

イルリポーゾヒレ肉と山菜牛ヒレ肉と山菜の盛り合わせ
 

 


  デザートは苺のソルベとショコラの組み合わせ。原田誠シェフ47歳、渾身の初夏のメニューでした。全員がこの店で食事をするためだけにまた出かけてこよう、と誓いあいました。
 

 

イルリポーゾ原田シェフ3原田誠シェフと一緒に

 

イルリポーゾ玄関「イル・リポーゾ」の佇まい

 

 

 

  「イル・リポーゾ」とは「休憩」「憩い」といった意味のイタリア語で、以前、原田シェフのご両親がここで「いこい食堂」を営んでいたことに因んでいます。

 

  なお、「ミシュラン」新潟特別版は、7月中旬に発表、出版されるとのことです。3軒にどんな星がつくのでしょうか、とても楽しみでなりません。

 

次回は、「東京下町」です。
 

 

 

 

 

■「秀石菴」

 

住所/新潟県新潟市西蒲区岩室温泉617

 

問い合わせ/0256-82-2009

 

 

■「Restaurant UOZEN」

 

住所/新潟県三条市東大崎1-10-69-8 

 

問い合わせ/0256-38-4179

 

http://uozen.jp
 

 

 

■「イル・リポーゾ」

 

住所/新潟県三条市島田2丁目5-21

 

問い合わせ/0256-33-4411

 

 

*この連載は毎月25日に更新です。

山本さん顔

山本益博(やまもと ますひろ)

1948年、東京・浅草生まれ。早稲田大学第ニ文学部卒業。卒論が『さよなら名人藝―桂文楽の世界』として出版され、評論家としてスタート。幾度も渡仏し三つ星レストランを食べ歩き、「おいしい物を食べるより、物をおいしく食べる」をモットーに、料理中心の評論活動に入る。82年、東京の飲食店格付けガイド(『東京味のグランプリ』『グルマン』)を上梓し、料理界に大きな影響を与えた。長年にわたる功績が認められ、2001年、フランス政府より農事功労勲章シュヴァリエを受勲。2014年には農事功労章オフィシエを受勲。「至福のすし『すきやばし次郎の職人芸術』」「イチロー勝利への10ヶ条」「立川談志を聴け」など著作多数。 最新刊は「東京とんかつ会議」(ぴあ刊)。

 

 

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