台湾の人情食堂

台湾の人情食堂

#56

途中下車のお楽しみ、駅前食堂の旅〈2〉

文・光瀬憲子

 前回に引き続き、駅から歩いてすぐのところにある美味い食堂をご紹介する。今回も台北はもちろんのこと、ちょっと足を伸ばせば行ける基隆や、はるか南部の高雄まで、気軽に入れる駅前食堂をピックアップした。

 

 

台北駅

 最近、台北の駅裏(本コラム#43参照)がおもしろい。

 とくに昨年、桃園空港までの直通MRT(機場捷運)が開通してからは、乗り場が近いとあって駅裏(台北駅の北側)に空港利用者が立ち寄ることが多くなっている。市場と商店街の中間ぐらいの経年を感じさせるショッピングエリア「華陰街商圏」は日本の若い女性でも歩きやすい。

 

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一見シンプルな白粥に見えるが、実は具だくさん。海鮮、牛肉、鶏肉など、さまざまな具材から好きなものを選ぶ

 

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『太源粥品』の粥はいわゆる広東粥。お米はとろっとしたタイプ。油條はサクサク感としっとり感の両方を楽しめる。ラーメンどんぶりくらいのサイズなので、食べ歩き目的の旅なら2人でひとつでもいいかも

 

 そんな人気エリアにあるのが粥専門店の『太源粥品』。粥といっても、ここで扱っているのは朝ごはん向けの具なし粥ではなく、ラーメン丼くらいの器にごはんや具がたっぷり入った、一皿でおなかいっぱいになりそうな粥だ。台湾では「広東粥」と呼ばれているように、もとは広東料理だが、その後、台湾流に進化を遂げた。

 具は海鮮が特に人気で、エビや牡蠣などが入ると濃厚で旨味のある粥が楽しめる。私が好きなのはピータンと豚肉の粥。アツアツのうちに、ちぎった油條(揚げパン)とネギをたっぷりのせていただく。サクサクの揚げパンが次第に粥の汁を吸って柔らかくなっていく食感も楽しい。日本語のメニューがあるのもうれしいポイントだ。

 

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機場MRTに近い、台北駅の地下街出口Y15番を出たら、鄭州路29巷の路地をまっすぐ進んで徒歩3分

 

 

基隆駅

 基隆と言えば駅から少し離れたところにある廟口夜市が有名だが、駅のすぐそばにも隠れた名店がある。

 基隆の駅を出て線路沿いを北上するように進むと、フェリーターミナルの手前に年季の入った看板を掲げる老舗臭豆腐店『劉家50年臭豆腐』がある。

 

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基隆のフェリー乗り場そばの香り際立つ伝統的な臭豆腐。外側はカリッと、中はジューシーなのが昔ながらの味

 

 オーソドックスな揚げ臭豆腐もカリッとして美味だが、この店の名物は「豆干包」という不思議な食べ物。厚揚げに魚のすり身で封がされたものがゴロンとスープに入っている。揚げをかじると、中からは濃厚な味付けの豚ひき肉の煮込みが! 厚揚げ爆弾と呼びたい感じだ。

 フェリー乗り場のすぐそばにあるため、この店で臭豆腐を買ってフェリーに乗り込む人も多い。

 

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厚揚げにひき肉の煮込みを詰めて魚の練り物で蓋をした、なんとも不思議な食べ物。他店ではなかなか味わえない

 

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夕方は混雑必須。フェリーに乗り込む前にテイクアウトする客も多い。基隆駅を出て線路沿いを北上してすぐ

 

 

彰化駅

 台湾で不思議な食べ物ベストテンに入ると思われるのが肉圓。

 ぷるぷるした透明な丸いもののなかに、豚肉やタケノコの煮込みが入っており、上からどろりとピンク色のソースがかかったアレだ。北京語でロウユェン、台湾語でバーワン。その発祥は台湾南部の都市、彰化だと言われており、彰化には競うようにして多くの肉圓専門店が軒を連ねている。

 なかでも有名なのが彰化駅から徒歩4分ほどの場所にある『老担阿璋肉圓』。地元の人たちに愛されているのはもちろん、内外の観光客も多く訪れるため、常に混雑している。駅前という立地も人気の秘密だ。

 この店で気に入ったのは、パクチー取り放題だということ。パクチー党の筆者としては、肉圓の上に好きなだけパクチーを盛れるというのがありがたい。肉圓は大きめで、中の具材の味付けもしっかりしている。ゴロゴロと大きめに切られた具材もいい。

 

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台湾不思議料理の上位にランクインする肉圓。ぷるぷるな食感を甘みのあるソースとたっぷりのパクチーで

 

 特筆すべきは肉圓に合わせるスープ。龍骨髄湯という名のスープには希少なブタの脊髄が使われている。台湾でも食べられる場所は限られているので、この店を訪れたらぜひ頼んでみてほしい。

 

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世にも珍しいブタの骨髄スープ「龍骨髄湯」はほかでは味わえない一品。案外あっさりしていて飲みやすい

 

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彰化を舞台にした台湾映画『あの頃、君を追いかけた』で登場したことで人気に火がついた『老担阿璋肉圓』

 

 

美麗島駅(高雄)

 高雄市内を十字に走る赤線と橙線のMRT。この2本が交差するのが美麗島という大きな駅だ。真上は巨大ロータリーになっていて、昼夜を問わずかなりの交通量がある。このロータリーに面しているのが『大圓環』食堂だ。魯肉飯が人気だが、高雄では魯肉飯のことを「肉燥飯」(ロウザオファン)と呼ぶ。

 私は以前から「ロータリーのそばに旨い店あり」という自説を持っているのだが、『大圓環』はまさにその象徴とも言える店。オープンな店構えは、駅から吐き出される人々を手招きするよう。立ち込めるスープの香りに誘われてふらふらと席に座ってしまいそうだ。

 大きなテーブルには写真のメニューが貼ってあるので、食べたいものを目で確かめて注文することができる。この店の肉燥飯は肉が大きめで脂身もたっぷり。あっさりとしたシイタケや大根のスープを選べば、野菜も摂れる。

 

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高雄では魯肉飯ではなく肉燥飯と呼ばれる。煮込み肉が大きめなので食べごたえがある

 

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合わせるスープは鶏肉とシイタケのスープや大根と排骨のスープなど。写真入りメニューで選べる

 

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高雄のMRT美麗島駅1番出口からすぐの『大圓環』。人だかりがあるのですぐに見つかる

 

 

池上駅

 池上と言えば台湾の米どころだが、粉ものも負けてはいない。

 池上はサイクリングの名所で、稲刈りの時期は黄金色の稲穂が敷き詰められた通りで風を感じることができる。そんなサイクリングのお伴に最適なのが池上駅から徒歩3分のところにある『好朋友肉包店』だ。ちょっと小ぶりの肉まん専門店。

 タケノコ入りの肉まんや野菜まんが人気のほか、小豆や芋などのあんまんもある。サイズが小さいので、朝ごはんに1人2~3個がちょうどいいだろう。手作り感たっぷりで、皮の張りはまるで赤ちゃんのほっぺのよう。弾力と甘みがある皮をかじると、中からは濃厚な肉汁があふれ出す。

 

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蒸し上がったばかりの肉まんは皮の張りがたまらない。もっちりとして甘みがある、期待を裏切らない旨さ

 

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小ぶりで食べやすく、肉汁もたっぷり。朝ごはん代わりなら1人2〜3個がちょうどいい

 

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マントウも人気のメニュー。ほんのり黒砂糖の香りが漂う黒糖マントウ。甘すぎないので朝食にぴったり

 

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サイクリングを楽しむ旅行客や地元の人々に不動の人気を誇る。シンプルな美味しさが売り

 

*名古屋の栄中日文化センターでの台湾旅行講座『途中下車や車窓風景を楽しむ 台湾一周!鉄道&高速バスの旅』の募集が始まりました。日時は5/13、6/10、7/8、いずれも第2日曜の13:00~14:30です。お申し込はお電話(0120-53-8164)、または下記からお願いします。

http://www.chunichi-culture.com/programs/program_160822.html

 

 

 

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*本連載は月2回(第1週&第3週金曜日)配信予定です。次回もお楽しみに!

 

 

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著者:光瀬憲子

1972年、神奈川県横浜市生まれ。英中日翻訳家、通訳者、台湾取材コーディネーター。米国ウェスタン・ワシントン大学卒業後、台北の英字新聞社チャイナニュース勤務。台湾人と結婚し、台北で7年、上海で2年暮らす。2004年に離婚、帰国。2007年に台湾を再訪し、以後、通訳や取材コーディネートの仕事で、台湾と日本を往復している。著書に『台湾一周 ! 安旨食堂の旅』『台湾縦断!人情食堂と美景の旅』『美味しい台湾 食べ歩きの達人』『台湾で暮らしてわかった律儀で勤勉な「本当の日本」』『スピリチュアル紀行 台湾』他。朝日新聞社のwebサイト「日本購物攻略」で訪日台湾人向けのコラム「日本酱玩」連載中。株式会社キーワード所属 www.k-word.co.jp/  近況は→https://twitter.com/keyword101

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