韓国の旅と酒場とグルメ横丁

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#55

名古屋の韓国「酒」講座で話しきれなかったこと〈3〉

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 名古屋の栄中日文化センターで行った韓国「酒」講座で、詳しく話しきれなかった話題のダイジェスト版パート3。今回は今まで記事にしていなかったソウルと済州のおすすめ酒場を3軒、紹介する。

 

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名古屋の栄中日文化センターの講座「韓国、酒とつまみと酒場の話」で講師を務めた筆者。スクリーンに映っているのは全羅北道の全州酒造から提供された母酒(モジュ)。アルコール度数が低い韓方ドリンクで、女性受講者に大好評だった

 

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計3回の講座で、各回10種を超える韓国酒の試飲をしてもらった。農心社からはつまみ用にお菓子を、サプリメントの会社からは二日酔い対策サプリ「READY Q」が提供された

 

 

『文化空間アリラン』(ソウル)

 仁寺洞の北側、3号線安国駅2番出口の近くにある憲法裁判所の南側の壁面に沿った薄暗い路地で、小さな明かりをともしているのが『文化空間アリラン』。

 中に入ると、日本の新宿ゴールデン街辺りにある店に似た気配。それもそのはず、この店の主人チェ・ウンジンさんは役者であり、1930年代の漫謡(ユーモラスな大衆歌謡)の歌い手でもあるからだ。

 

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『文化空間アリラン』の店内。右は常連さん

 

 店ではときにはチェさんのCDがBGMになったりする。興が乗れば彼女が歌ってくれる。アリランはチェさんの舞台でもあるのだ。夜が更けると彼女を慕う人作家、芸術家たちが三々五々ここに集まってくる。10名ちょっと座れば満席。そのため、隣席の人と自然に言葉を交わしたり、グラスをぶつ合ったりするようになる。

 酒はワインやビール、ウイスキーなど。つまみはその日にある材料で雰囲気に合わせて簡単なものを出してくれる。2次回や3次回でここに流れてくる人が多い。店が開くのは夜6時以降、閉店時間は気分次第。チェさんが外部の公演などに出かけることもあるので不定休。このゆるさもアリランらしい。

 

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飲み物はギネスビールとKloudビールのハーフ&ハーフが人気。定番つまみは平昌五輪でも話題になった韓国いちごやプチトマト、乾きものなど

 

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ホン・サンス監督の映画『ソニはご機嫌ななめ』で、チョン・ユミやチョン・ジェヨン、イ・ソンギュンが痛飲していた場面は、じつはこの店で撮影された

 

 

自喜香(ソウル)

 自喜香(ジャヒヒャン)と言えば、日本のマッコリ通ならプレミアムマッコリの先駆者である「自喜香」を思い出すだろう。全羅南道の咸平(ハムピョン)にある醸造場で醸したもち米マッコリで、豊かな味と香りでファンが多い。

 この店は長年プレミアムマッコリを醸してきたノ・ヒヨン代表が昨年末、仁寺洞の路地裏(鍾路区三一路445-14)で始めた店。咸平でノ代表の後を継いでいる息子さんとともに醸したマッコリと、ノ代表手づくりの南道料理を肴に出している。筆者は最初に出てくる5~6種類のナムルがお気に入り。味付けがあっさりしているので、日本の女性にも喜ばれるだろう。

 マッコリはアルコール8度と12度の自喜香マッコリと、6度のかぼちゃマッコリが人気だ。ぜひ3種類とも試してもらいたい。つまみはハイガイ(コマッ)、エイ(ホンオ)など南道らしいものが揃う。

 

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野菜がたっぷり摂れるパンチャン(つきだし)

 

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新鮮なクルポッサム(生ガキのキムチと白菜添え)

 

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エイを丸ごと使った南道らしいホンオチム(蒸し煮)。これとマッコリのマリアージュが楽しめたら大人の仲間入り

 

 常連客にも南道にゆかりのある人が多い。南道といえばパンソリ。マッコリがほどよく回ると自慢のノドを披露する常連客と出合えることも。

 

 

ヨロブン・サンコムジャンオ(済州)

『ヨロブン・サンコムジャンオ(みんなの生ヌタウナギ)』というちょっととぼけた名前のこの店とは、日本で人気のある居酒屋ルポ番組の下見をしているときに出合った。

 

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特徴のない外観だが、それがまたいい。ヌタウナギが泳ぐ水槽が目印。西帰浦市・東門ロータリーのアルミネ粉食横

 

 大通りに面しているにもかかわらず目立たない店だ。この店の魅力はメニューをヌタウナギ一本に絞っていること。

 

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釜山チャガルチ市場でもおなじみのヌタウナギ(コムジャンオ)。さばかれたばかりなので、まだ動いている

 

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メニューはセンクイ(塩焼き)、ヤンニョムポックム(タレ炒め)、スユク(身の蒸し煮)の3種。いずれも2人前40,000ウォン

 

 なかでも日本人に受けそうなのは、センクイと呼ばれる塩焼き。釜山ではヌタウナギの皮をはいでコチュジャン系のタレでもんで焼くものが主流だが、ここでは生きたヌタウナギを皮のまま塩をふって卓上で焼いて食べる。皮の焦げ味と香ばしさで酒が進むこと進むこと。

 

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日本の飲兵衛がよだれをたらして喜びそうなセンクイ(塩焼き)

 

 常連さんにだけ出しているという即席ビビンパも「日本からわざわざ来ました」とねだれば、食べさせてもらえるだろう。甘辛で女性受けする味だ。

 

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居酒屋番組では名峰・ハルラ山にちなんで、“火山酒”と形容されていた地元焼酎「ハルラサン」と「オルレ」

 

 多くの済州人がそうであるように、この店の女将も東京で働いたことがあり、少し日本語が話せる。先日放送された居酒屋番組に出た「トンバンソク食堂」とはまた違った渋い魅力のあるこの店、済州訪問時にぜひ訪れてみてほしい。

 

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めんどうみのいい女将、イ・ソンファさんは日本語が少し話せる

 

*4月21日(土)、東京で筆者がトークイベントを行います。第1部は12時15分~13時55分/『マッコルリの旅』『釜山の人情食堂』など代表作の取材秘話。第2部は14時40分~16時20分/映画で語る韓国の酒場情緒。1部・2部は各券3,000円。通し券は5,700円。会場は有楽町線飯田橋駅C1出口前。入場券は下記のチケットぴあで発売中。

http://ticket-search.pia.jp/pia/search_all.do?kw=%E3%83%81%E3%83%A7%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%82%A6%E3%83%B3%E3%82%B9%E3%82%AF

 

 

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*本連載は月2回配信(第2週&第4週金曜日)の予定です。次回もお楽しみに!

 

 

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紀行作家。1967年、韓国江原道の山奥生まれ、ソウル育ち。世宗大学院・観光経営学修士課程修了後、日本に留学。現在はソウルの下町在住。韓国テウォン大学・講師。著書に『うまい、安い、あったかい 韓国の人情食堂』『港町、ほろ酔い散歩 釜山の人情食堂』『馬を食べる日本人 犬を食べる韓国人』『韓国酒場紀行』『マッコルリの旅』『韓国の美味しい町』『韓国の「昭和」を歩く』『韓国・下町人情紀行』『本当はどうなの? 今の韓国』、編著に『北朝鮮の楽しい歩き方』など。NHKBSプレミアム『世界入りにくい居酒屋』釜山編コーディネート担当。株式会社キーワード所属 www.k-word.co.jp/

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