旅する&恋する! 韓国ドラマ

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#54

韓流紀行〈2〉対立が面白くする『愛の不時着』

文・康 熙奉(カン・ヒボン)

 ヒョンビンとソン・イェジンという魅力的な主役カップルが大人気となっている『愛の不時着』。今まで日本で韓国ドラマを見たことがない人も、スリリングな展開で虜になっている。本当に見どころが多い作品だ。

 

重層的な対立ドラマ

 ラブコメを除いて韓国ドラマのストーリーの成り立ちを見ていくと、「復讐型」と「対立型」という二つのパターンが一番面白いと思っている。

「復讐型」というのは、地獄のような境遇に追い込まれた主人公が執念で復讐を遂げていくというストーリー。最近で言うと、まさに『梨泰院クラス』が明快なほどの「復讐型」のドラマだった。

 もう一つの「対立型」というのは、登場人物たちが深刻な対立によって葛藤を繰り返すのだが、誤解を乗り越えて徐々に和解のプロセスをたどっていくというストーリー。この仕立てのドラマが韓国ドラマには多いのだが、『愛の不時着』も「対立型」を中心に据えたドラマになっていた。

 しかも、『愛の不時着』では対立の軸がいくつも重なっていた。

 まずは、韓国と北朝鮮の体制による対立。その中で、ソン・イェジンが演じるユン・セリが、パラグライダーで飛行中に竜巻に巻き込まれて北朝鮮に入り込んでしまうという設定が作られていた。

 こうして、ヒョンビンが演じる北朝鮮の将校リ・ジョンヒョクと韓国の財閥令嬢であるユン・セリは、対立の真っ只中で「許されざる愛」に深まっていく。

 その二人に、多くの人間関係がからんでくる。たとえば、ユン・セリの両親と兄二人を巻き込んだ財閥一家の後継者争いも深刻だったし、北朝鮮に逃亡した詐欺師ク・スンジュン(キム・ジョンヒョンが扮していた)と自尊心が高い音楽家ソ・ダン(ソ・ジヘ)の価値観の対立にもハラハラさせられた。

 さらに、対立にはかならず火に油を注ぐような悪役が登場する。この『愛の不時着』ではチョ・チョルガン(オ・マンソクが演じた)という狡猾な大悪人がいて、主人公カップルの最大の敵になっていた。

 とにかく、ストーリーが多彩で重層的にエピソードが描かれていくので、見る人は話の筋を把握するだけでも大変だった。そんな風に集中力を働かせてドラマを見ているうちに「次から次へと見たくなる」という心理状態になっていくのが、『愛の不時着』のツボになっていた。

主役の二人は?

『愛の不時着』を見た多くの人が評価していることだが、やはり、ヒョンビンとソン・イェジンという絶妙なキャスティングがとても良かった。

 それにしても、スターの浮き沈みが激しい俳優の世界で、二人は息の長い人気を維持している。

 くしくも、ヒョンビンとソン・イェジンが大ブレークしたのが2005年だった。

まず、ヒョンビンはキム・ソナと共演して『私の名前はキム・サムスン』で脚光を浴びた。彼のルックスと柔らかい感性は、韓流の若手の中で「先頭に躍り出た」と思わせる存在感があった。

 同じ頃、ソン・イェジンはぺ・ヨンジュンが主演した映画『四月の雪』のヒロインになった。彼女もぺ・ヨンジュンと一緒にさいたまスーパーアリーナの大きなステージに登場して、日本のファンから喝采を浴びた。

 このように、2005年に大ブレイクを果たした2人が15年経っても、韓流の最前線で堂々たる主役を演じている。本当のスターだと言える。やはり、作品を牽引する第一の要素はキャスティングだと再認識した。

 役柄もとてもいい。『愛の不時着』でヒョンビンが演じているリ・ジョンヒョクは、ユン・セリを温かく見守り続ける。彼は正義感が強く、人に対しても優しい。人間的に申し分がない人物だった。

 そんなリ・ジョンヒョクが今度は韓国に渡り、軍服を脱いで流行の服を着てソウルの繁華街を歩いて行く。そのとき、ヒョンビンが颯爽と立っていた姿がとても絵になっていた。

 一方、ソン・イェジンが演じたユン・セリは、当初はワガママな財閥令嬢だったのに、北朝鮮から戻ってリ・ジョンヒョクを迎えるようになると、好感の持てる女性に変わっていく。そのあたりの「人間的に成長していくユン・セリ」というのも、その後の名場面を演出していた。

人間の普遍性が感じられた

 ドラマでは、北朝鮮の人々の暮らしぶりが克明に描かれる。軍人だけでなく、家庭を切り盛りしている女性たちの姿がいきいきと映し出されていた。

 実際に脱北者にかなり取材して現状を反映させている。北朝鮮というと、情報の少なさから「どんな国?」と疑問を持たれそうだが、ドラマでは人々の生活感や好奇心、そして悩みなどが描かれていた。ドラマである以上は、誇張された場面も少なくないが、どこの国であれ人間が生きていくうえでの普遍性が感じられる部分も多かった。

 なお、制作事情で興味があったのは「北朝鮮での場面はどう撮っているのか」ということだった。

 特に、平壌(ピョンヤン)駅と北朝鮮の人々が住む村のロケ地が気になった。

 平壌駅はモンゴルのウランバートルで撮影されたという。同じように、開城(ケソン)駅や列車の場面もウランバートルでの撮影だった。

 また、北朝鮮の人々が住む村の撮影はオープンセットを使ったという。北朝鮮での撮影が許されない以上、スタッフの苦労も並ではなかっただろうが、そのおかげで違和感を感じずに北朝鮮でのシーンを見ることができた。

 その他でも、リ・ジョンヒョクの部下4人の人間味、リ・ジョンヒョクが住む村の主婦たちの井戸端会議、そして、北朝鮮の軍務の中の権力闘争など、本当に様々な話がメインストーリーにからんでいた。

 その多様性がドラマをますます面白くしていた。

 

 

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