旅する&恋する! 韓国ドラマ

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#53

韓流紀行〈1〉魂を揺さぶられる『梨泰院クラス』

文・康 熙奉(カン・ヒボン)

 2020年1月から3月まで韓国ケーブルチャンネルのJTBCで放送された『梨泰院クラス』は、社会現象を巻き起こすほどの注目を集めた。今は日本でもNetflixを通して大人気となっている。これほど注目される理由は?

 

 

舞台は梨泰院

 パク・ソジュンは、前作のラブコメ『キム秘書はいったい、なぜ?』で究極のナルシストを演じきった。

 それが、今度は一転して、壮大な夢を持って疾走する血気盛んな若者を演じている。それが、最新作の『梨泰院クラス』だ。

 パク・ソジュンが扮するのは、主役のパク・セロイだ。このキャラクターが、本当に素晴らしい。

 何よりも、混沌とした現代社会で待ち望まれるヒーローというのは、パク・セロイのように、損得を抜きにして自分の大望に向かって突き進んでいく男なのである。

 とにかく、パク・セロイは絶対に妥協できない頑固者だ。

 その頑固さゆえにすべてのものを失った。

 そして、流れ着いたのが梨泰院(イテウォン)だった。

 ソウルに何度も旅行で出掛けたことがある人なら、一度くらいは梨泰院に行ったことがあるだろう。ソウルでも「流行の先端を行く街」という評価があるほどの繁華街だ。

 同時に、舞台が梨泰院になっていることには象徴的な意味がある。

 それは何なのか。

 現在の韓国は多文化共生社会を目指している。様々な立場の人たちがお互いに尊重しあいながら一緒に暮らす社会が理想だ。そして、『梨泰院クラス』でも、複雑な境遇を持つ外国出身者やトランスジェンダーが仲間に加わっている。そういった多文化共生を表す意味で梨泰院はドラマの舞台にとてもふさわしいのだ。

倒すべき相手は?

 梨泰院でパク・セロイが自由な精神を取り戻していく。

 再び希望に燃えた彼は、意気投合した仲間たちと大きな夢に向かって走り出した。何よりも、パク・セロイは現実を変えていくパワーを持っていた。

 そして、パク・セロイが梨泰院で始めた居酒屋の名前は「タンバム」という。「甘い夜」という意味だ。韓国語で「甘い」という連体形は「단(タン)」で、「夜」は「밤(パム)」なので、「甘い夜」は「タンバム」となるのだ。

 梨泰院に来るまでのパク・セロイは本当に辛いことばかりだった。だからこそ、梨泰院で開いた居酒屋の名前を「タンバム」にした。

 そこには、新しい希望に燃えるパク・セロイの気持ちが乗り移っていた。本当にいい店名だと思う。

 一方、このドラマのメインストーリーは、典型的な復讐劇を描いている。

 パク・セロイが倒すべき相手は、韓国で最大の外食産業に君臨している長家(チャンガ)グループだ。

 その会長であるチャン・デヒは怪物のような存在なのだが、その男にすべてを奪われたのがパク・セロイだ。

 高校を中退になり、父親を殺され、刑務所に服役する羽目になった。直接の相手はバカ息子のほうだが、黒幕はチャン・デヒその人だ。

骨太で愛すべきストーリー

 パク・セロイは、いかに強大なチャン・デヒに復讐を果たしていくか。その執念こそが、『梨泰院クラス』という物語を成立させている。

 けれど、このドラマは単純な復讐劇ではない。パク・セロイが関わる周囲の人たちのサイドストーリーが、物語を大いに盛り上げている。

 パク・セロイは、「梨泰院を自分の街にしてみせる」という壮大な野望を持っているが、決して金の亡者ではない。

 それどころか、彼は人を思いやる優しさを持ったナイスガイだ。

 人生は人と助け合うことがいかに重要であり、それがお互いの成長につながるということをドラマは全編にわたって展開していく。

 さらに、『梨泰院クラス』のキャスティングで嬉しかったのは、パク・セロイの父親としてソン・ヒョンジュが演じていたことだ。

 ソン・ヒョンジュといえば、韓国のホームドラマで人気を博している大物俳優だ。ドラマ『ソル薬局の息子たち』で主役を演じていたので覚えている人も多いだろう。独特のペーソスを演じさせたら天下一品の役者だ。

 そんな大物が第1話だけで特別出演している(他は回想シーンで登場)。しかも、パク・セロイの父親として息子に酒の飲み方から人生の教訓まで諭している。

 出番は短いけれど非常に重要な役柄であり、ソン・ヒョンジュの冒頭からの登場は『梨泰院クラス』を大いに盛り上げた。

 こうして始まった『梨泰院クラス』。強烈な復讐心と頼もしい共助精神というのは、一見すると相反する感情なのだが、それが複合的に作用しあって『梨泰院クラス』という物語を骨太で愛すべきストーリーにしている。

 それゆえ、『梨泰院クラス』はこんなに面白いし、次々に魂を揺さぶられた人々をこれだけ生んだのである。

 

 

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