韓国の旅と酒場とグルメ横丁

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#53

名古屋の韓国「酒」講座で話しきれなかったこと〈1〉

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 1月27日(土)と28日(日)、名古屋の栄中日文化センターで行った韓国「酒」講座(2時間×3回)は、中京圏だけでなく、関東、関西、九州など遠方からも15名様以上にご参加いただき、にぎやかに終了した。

 

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 試飲酒の数々。左上から右に、五感満足(五味子酒)、長寿五味子酒、金井山城マッコリ、徳山薬酒、千年オジャジュ、二東生マッコリ、クムボクジュ、慶州法酒、百歳酒、覆盆子酒、クラウドビール、江西ビール、桃マッコリ。右上の瓶は梨花酒。つまみとして辛ラーメンで有名な農心の菓子(秀美チップ)や、ハンドク社の二日酔い用グミ風サプリ「READY Q」を試してもらうことができた

 

 この講座のために韓国各地の酒造会社が提供してくれたお酒は30種以上。1回の講座で10種以上の試飲をしていただくことができたが、時間の都合で準備した話題の半分も話せなかったのが悔やまれる。

 そこで今回から数回に分け、その一部をダイジェストでお届けする。

 

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左から、ニモメ(済州)、ムンベスル(金浦)、ソゴグジュ(舒川)、安東焼酎、長 紅参マッコリ、スルチハン・ウォンスニ(龍仁)、ペダリ生マッコリ(高陽)、チジャンス・ホバクマッコリ(東海)、バナナマッコリなど

 

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左からクラウドビールまでは、一番上の写真と同じ並び。その右から、受講者さんがプレゼントしてくれた大同江ビール(平壌)、大江ビール(ベルギー)、桃マッコリ

 

 

今行かないと後悔する、冬季五輪開催地・平昌の哀愁酒場

 女将が80代後半で大阪生まれ。

 そう聞くだけで彼女の個人史に興味がわいてくる。

 2011年に平昌五輪開催が決まったので、その翌年の冬、特にあてもなくバスを降りたのが平昌市外バスターミナルだった。

 江原道には「山多三邑の寧平旌」という言葉がある。寧越(ヨンウォル)、平昌(ピョンチャン)、旌善(チョンソン)という三つの村の山深さを表している。それを裏付けるように、当時はバスターミナルに降り立ってもそこが五輪開催地とはとても思えなかった。寒いので暖をとろうと思って入ったのがこの店だ。

 

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平昌市外バスターミナルの隣り、平昌市場のはずれにある『故郷チプ』

 

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『故郷チプ』の女将とタイル張りカウンター

 

 十畳ほどの店の奥でタイル張りのカウンターが迎えてくれた。昔のマッコリ酒場の必須条件である。すり減った木のテーブルや不揃いな椅子もいい味を出している。

 カタコトの日本語を話す小柄な女将がフライパンに山椒の油をひき、豆腐を焼いてくれた。山椒には体をあたためる効果があるのだという。寒い平昌で暮らす女将の健康の秘訣なのだ。

 

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山椒の油で焼いた豆腐とマッコリ

 

 昨年、女将にご機嫌うかがいの電話を入れてみた。元気で営業中とのこと。年齢が年齢なので、気分の波があったり、市場に買い物に出かけていたりして不在だったりするときもあるかもしれないが、五輪見物で平昌に出かけるなら、ぜひ立ち寄ってもらたいたい。

 

 

人気居酒屋番組の明洞編に、ある事情で登場しなかった店

 私の事務所で取材コーディネートを担当させていただいている番組だが、「江南」に続く2度目のソウル編のお題は「明洞」だった。

 江南も大変な難題で店選びに苦労したが、番組スタッフはさすが映像のプロ。麗水出身の女将を“ゴッド・オモニ”とキャラクター付けし、みごと番組を成立させた。

 明洞のときはさらに頭が痛かった。明洞と聞いて日本人が思い浮かべる範囲ではいい店が見つからないので、範囲をプラザホテル裏の小公洞辺りまで広げると、なかなかいい路地裏酒場が網にかかった。

 

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ソウル市庁の向かい、プラザホテルの裏側(南側)にある『シンソン・シクタン』。鼻のいい人ならすぐ探り当てるだろう

 

 そのひとつが『シンソン・シクタン』。クルポッサムという牡蠣と茹で豚肉、キムチがひと皿に盛られる、これぞ韓国というべき料理が看板だ。下見したときは牡蠣の季節ではなかったため、カンジェミというエイの身が使われていたが、その味付けは薄目で、エイ、豚肉、キムチそれぞれ旨味が生かされたタイプのポッサムだった。ずばり、日本人好みである。

 

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発酵による臭みの少ないエイ、豚肉、キムチを盛り合わせたポッサム。今ならエイではなく新鮮な生牡蠣にありつける

 

 店は地下にあり、けっして広いとは言えないが、隣席の客と肘と肘がふれそうになるような距離感が心地よかった。照明は明るいものの、どこか懐かしく“穴ぐら感”もある。大変な人気店で活気も十分だった。

 

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拙著『서울을 먹는다(ソウルを食べる)』の共著者である味コラムニスト、ファン・キョイクさんがレギュラー出演しているグルメ番組『水曜美食会』効果が一段落した今、ぜひ行きたい店

 

 主人は飲食業での成功者が多い全羅道出身。夫婦で切り盛りしている。筆者が以前からあちこちで書いたり話したりしている「夫婦の店で、ご主人がまめまめしく働く店に外れなし」を地でいっている。

 しかし、この店はこの番組に登場しなかった。取材拒否である。

 店に入ったときから気になっていたのが、韓国でもっとも人気のあるグルメ番組『水曜美食会(スヨミッシッケ)』の取材を受けたことを知らせる横断幕だった。同番組に出て以来、常連客をけちらすように一見客が押し寄せ、それが常連客にも主人にも大きなストレスになってしまったようだ。

 東京でいえば新橋、大阪でいえば梅田、名古屋でいえば伏見あたりの路地裏にありそうな店といえば、イメージがしやすいだろうか? いい意味で日本人受けする店の代表格だと思うので、ぜひ出かけてみてほしい。

 

 

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紀行作家。1967年、韓国江原道の山奥生まれ、ソウル育ち。世宗大学院・観光経営学修士課程修了後、日本に留学。現在はソウルの下町在住。韓国テウォン大学・講師。著書に『うまい、安い、あったかい 韓国の人情食堂』『港町、ほろ酔い散歩 釜山の人情食堂』『馬を食べる日本人 犬を食べる韓国人』『韓国酒場紀行』『マッコルリの旅』『韓国の美味しい町』『韓国の「昭和」を歩く』『韓国・下町人情紀行』『本当はどうなの? 今の韓国』、編著に『北朝鮮の楽しい歩き方』など。NHKBSプレミアム『世界入りにくい居酒屋』釜山編コーディネート担当。株式会社キーワード所属 www.k-word.co.jp/

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