台湾の人情食堂

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#53

「あったかごはん」瑞芳、新竹、嘉義、台南、高雄編

文・光瀬憲子

 先月、大寒波が押し寄せ、日本各地が大雪に見舞われた。こんなときは亜熱帯台湾も気温が下がり、冬らしい気候になる。前回は意外と寒い台北の冬の過ごし方についてお話したが、今回はさらに範囲を広げて台湾の冬のあったかグルメをご紹介したい。

 

 

九份の行き帰りに立ち寄れる瑞芳駅前

 

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赤肉焿(豚肉すり身のあんかけスープ)に白米を入れてクッパ風に

 

 まずは情緒ある台北近郊のローカル線「平渓線」に乗ったり、九份へ行く際に通過することが多い瑞芳駅。この駅前には穴場グルメスポットがたくさんあるので、1本早い列車に乗って瑞芳駅で寄り道し、朝ごはんを食べてみるといい。

 駅の前から延びる一本道(民生街)の右手に『梅』という看板を掲げる小さな食堂がある。店の前にはテイクアウトの人でも寄りやすい屋台が出ている。台湾人はあんかけ好きだが、この店も「赤肉焿」(豚肉のすり身あんかけスープ)が売り。まずはとろみのあるスープを一口いただいて温まり、ごつごつしたすり身の旨味を楽しみ、最後に白米をスープに入れて韓国のクッパ風にすればお腹も満たされる。列車の旅の腹ごなしにぴったりだ。

 

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瑞芳駅を背に目の前にのびている商店街を歩くとすぐ右手にある『梅』。赤肉焿はテイクアウト客の多い人気店。電車を待つあいだイートインもできる

 

 

台北から30分の新竹、中央市場で

 意外と知られていない台湾北部のグルメ都市に新竹がある。サイエンスパークがあるので日本の企業人には訪れたことがある人も多いが、旅行者はあまり足を運ばない。だが、新幹線でわずか30分、290元の近さなので、日帰りはもちろん、半日だって十分に楽しめる(新幹線新竹駅から市内へはタクシーで20分/200元ほどかかる)。

 若手の現市長が新竹をグルメタウンとして売り出し中ということもあり、最近改めて新竹グルメに焦点が当たっている。そんななかで特におすすめなのが新竹市内の最大朝市「中央市場」内にある『糯米水餃』(もち米水餃子)。新竹市民に絶大な人気を誇る。

 ワンタンもあるので、ワンタンともち米水餃子の両方が1杯で楽しめるミックスだとお得感がある。朝からあたたかいワンタンともち米水餃子をあっさりとしたスープでいただく。もち米餃子はとにかくもち米100パーセントの皮がとろりと柔らかくて美味。肉汁もたっぷりだ。新竹は特に風が強く寒い街なので、体を芯からあたためて1日のスタートを切ろう。

 

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つるんとした歯ざわりは見た目どおり。もっちりして食べごたえがあり、中から肉汁があふれ出すもち米水餃子

 

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常連客がひっきりなしに訪れるため、ワンタンともち米水餃子は仕込みも大変。作業の手が止まらない

 

 もう1軒、中央市場のすぐそばに行列のできる鍋店がある。『西市汕頭館』という沙茶ソースを使った鍋の店。沙茶とはカレーのようなスパイスソースで、これをつけダレにしていただく鍋が絶品。特にこの店の沙茶は手作りで、牛肉も生肉を1枚1枚丁寧にスライスしているので、肉の風味がしっかりとしている。

 

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『西市汕頭館』の沙茶鍋は具だくさんで食べごたえたっぷり。沙茶とトマトが意外にマッチしてエスニックな風味に

 

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生肉を1枚1枚、丁寧にスライスして出してくれる。ここでしか食べられない新鮮な牛肉が人気の秘訣

 

 

台南に負けない食都、嘉義で

 台湾西部をさらに南下し、台中を過ぎたところにある嘉義。ここは台南に負けないグルメタウンだが、なかでも東公有市場という朝市の活気がすごい。市場の建物を囲む十数ブロックに店や屋台がぎっしり詰まっていて、その間を自転車やバイクがすり抜ける。

 この東公有市場のそばにあるロータリーに、雨の日以外は毎朝見つけることができる杏仁茶がある。店舗はなく、おばさんが一人でロータリーの隅に道具を広げ、椅子を並べて営業している。

 杏仁豆腐に似たアーモンド風味のスープをアツアツにして玉子を落としたものに、油條(中華揚げパン)をつけていただく。玉子が入った濃厚なアーモンドミルクに油條の油がじわりと溶け出し、コクが増す。最初はやけどするかと思うくらい熱いが、1杯飲むと寒さで縮こまっていた体と心ががほくれるようだ。甘いものを食べると、人は優しい気持ちになる。人情味あふれるお母さんの杏仁茶ならばなおさらだ。早朝から10時くらいまでしか営業していないので早めに訪れよう。

 

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雨さえ降らなければ毎日嘉義のロータリーで杏仁茶を作り続けるスリムな女将。おしゃべりも売りのひとつ

 

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杏仁茶に油條をプラスするとしっかり朝ごはんに。1本が大きいので2人で分けてもいい

 

 もうひとつ、嘉義におもしろい甘味処がある。台湾ではおなじみの湯圓という白玉団子によく似たスイーツ。嘉義にはこの専門店『劉湯圓甜酒醸焼冷氷』がある。

 冬場のおすすめはそのホットバージョン。甘酒のようなスープに玉子を落とした酒釀湯圓は、ほんのりと香る酒の風味がなんとも懐かしく、日本の甘酒や韓国のマッコリを思わせる。

 

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甘酒か? マッコリか? 酒粕で煮た甘いスープに湯圓を加え、卵を落とした「劉湯圓」のあったかデザート

 

 

台南、街はずれのサバヒー店と國華街

 日本人旅行者が急増している食都台南。ここも1月~2月は寒波とともに冷え込みが厳しくなる。特に公共の地下鉄などがなく、タクシー移動が主なので、車がつかまらないと寒い思いをする。

 そんな台南であたたまるには、やはり名物の虱目魚(サバヒー)粥やスープだろう。台南の人たちは、それぞれ自分のお気に入りのサバヒー店を持っている。

 私が好きなのは、あえて骨付きのサバヒーを出す『津華自助餐』だ。市内のはずれにあるので交通の便はあまりよくないが、タクシーで訪れる価値がある。まずその静かな佇まいがいい。客層はほとんどが中年男の一人客。これから仕事に出かけるおじさんたちがバイクで乗り付け、新聞を片手にサバヒー粥を1杯頼み、何も言わずに黙って食す。そんな姿がカッコよい、大人の哀愁漂う店なのだ。

 サバヒーは骨が細かく食べづらいので、ほとんどの店では事前に骨を抜いてから客に出す。津華にも骨なしサバヒーはあるものの、常連客が頼むのは骨付き。骨の周りの身が旨いことを知っているからだ。この店にはサバヒー粥やスープのほかにちょっとした小皿料理もあるので野菜も摂れるのがうれしい。

 

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『津華自助餐』の甘みのある骨付きサバヒースープ。豪華な朝ごはんになる

 

 台南市内の國華街というグルメストリートに行列のできるチマキ店『阿娟(アージュエン)』がある。チマキもさることながら、この店の人気メニューは魯麺と呼ばれる煮込み麺だ。

 熱さと旨味を逃さないあんかけスープに、たっぷりの太麺と具が入っている。驚くのは圧倒的な具の多さ。肉やイカのすり身、しいたけ、人参、かぼちゃ、湯葉など、具でスープが見えなくなるほどの豪快さ。見た目は酸辣湯のようだが、酸味は少なく甘口の煮込みスープに仕上がっている。果たして、一人前を一人で食べ切れる人がいるのだろうか。

 

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考えられる具材をすべて煮込んだような「阿娟」の魯麺。かなり量があるので女性なら2、3人で挑もう

 

 

高雄の廟前で

 最後に台湾南部の大都市、高雄である。クリスマスでも半袖の人がいる高雄だが、それでも寒波が来れば冷えることがある。真冬に当たる1月、2月は上着がないと厳しいだろう。

 そんな高雄はラム好きの人が多く、専門店も少なくない。ラム肉は当帰という漢方薬とともに煮込むとしっかりと体をあたためてくれて、女性特有の体の悩みにも効果的だ。

 高雄の保生大帝(保安宮)という古い廟は、境内に食べ物屋台がずらりと連なり、飲んだり食べたりできるので、地元の人たちの癒やしスポット。境内に店を構える『廟口羊肉』にはスキンヘッドのおじさんがいる。

 強面に見えるが実は愛想がよく、「飲んでみな」なんて当帰のスープを味見させてくれる。この店の当帰は日本人でも飲みやすい、クセのない味付けで、ラム肉も新鮮で旨い。廟の境内でガジュマルの木に守られながら温かいラムスープを飲む、幸せなひとときだ。

 

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廟の境内で食べられるあったかラム肉スープ。クセのない当帰なので日本人の口にも合う

 

 

 

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著者:光瀬憲子

1972年、神奈川県横浜市生まれ。英中日翻訳家、通訳者、台湾取材コーディネーター。米国ウェスタン・ワシントン大学卒業後、台北の英字新聞社チャイナニュース勤務。台湾人と結婚し、台北で7年、上海で2年暮らす。2004年に離婚、帰国。2007年に台湾を再訪し、以後、通訳や取材コーディネートの仕事で、台湾と日本を往復している。著書に『台湾一周 ! 安旨食堂の旅』『台湾縦断!人情食堂と美景の旅』『美味しい台湾 食べ歩きの達人』『台湾で暮らしてわかった律儀で勤勉な「本当の日本」』『スピリチュアル紀行 台湾』他。朝日新聞社のwebサイト「日本購物攻略」で訪日台湾人向けのコラム「日本酱玩」連載中。株式会社キーワード所属 www.k-word.co.jp/  近況は→https://twitter.com/keyword101

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