台湾の人情食堂

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#52

じつは寒い! 冬の台北の過ごし方

文・光瀬憲子

 台湾は沖縄よりも南にある。島全体は亜熱帯に属し、最南端の墾丁(ケンディン)という場所だけは熱帯に属する常夏の島だ。でも、冬場は意外と寒い日がある。関東地方で突然大雪が降ると、雪慣れしていないため都市機能が麻痺したりするが、台湾も寒さ慣れしていないので、今年のように寒波がやってくると大変な騒ぎになる。

 数年前、日本で大雪が降ったとき、取材で台湾一週の旅に出かけていった。台湾ならば少しは温かいと思って薄っぺらいコートしか持っていかなかったのだが、予想に反して台湾は寒かった。日本に大寒波が訪れると、台湾も間違いなく厳しい寒さに見舞われている。

 

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めったに寒くならない南台湾だが、それでも大寒波となると上着をはおりたくなる。台南、朝のサバヒー屋さんにて

 

 

気温はそれほど低くなくても……

 台北で暮らしていた頃、1年に数日間だけ寒くなることがあった。ほんの一週間程度なのに、ぐっと冷え込む気がするのは、台湾の空気が湿気を帯びているためだろう。特に台北の冬は雨が降りやすい。スコールのような雨ではなく、1日中しとしとと降り続くような雨で、これが身体を芯まで冷やすのだ。1月~2月に急激に寒くなるその1週間のために、台北の人たちはヒーターを購入したり、ダウンジャケットを探したりする。

 私が元夫と台湾で結婚式を挙げたのも1月だった。日本から親戚を十人ほど呼び寄せたが、それほど贅沢なホテルは準備できず、リーズナブルなツアーで使うようなホテルだった。そのホテルには暖房がなく、申しわけないことに、薄着で来た招待客はほぼ全員、風邪を引いて帰っていった。

 

 

宿のチェックポイントは暖房と浴槽の有無

 だが、亜熱帯の台湾で暮らす人にとって、寒さは「憧れ」でもある。たとえば雪のちらつく日に温かい温泉につかったり、ふかふかのマフラーと手袋を身にまとったり、そういった寒くなければできないことに強い憧れがあるのだ。だから台湾人にもっとも人気の日本の旅行先は北海道だ。雪まつりの札幌が台湾人で埋め尽くされるのもこのためだ。

 日本は寒いと思って台湾に行っても、南国台湾のほうが逆に寒いと感じることがある。予約したホテルの部屋にバスタブがない。あったとしてもアツアツのお湯が出ない。冬なのになぜかホテルに冷房が入っている(そもそも冷房しかない)。こうなると、寒さから逃れる方法がなくて風邪を引いてしまったりするのだ。

 

 

首や手首が冷えないよう備える

 1月~2月にかけて台湾を旅する場合、そして日本で寒波が来ていたり、特に冷え込んでいる場合、台湾も寒いと考えて十分な備えをしたほうがいい。ホテルは浴槽があるところを選ぶ、保温性に優れた下着を着る、カイロを持参する、帽子やマフラーを用意する。

 

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3年前の寒波のときは台南でマフラーまで巻いた。300元(1000円ちょっと)なので迷わず購入。名物のトーストシチューであたたまるの図

 

 数年前に大寒波の台湾を訪れた私は、そんな備えをいっさいしていなかったので、急きょ旅先でマフラーを買うことにした。湿気の多い台湾では、冷え込んだときに首周りや手首周りを冷やさないことが大事だ。飛行機の中も案外寒いので要注意。

 そして、ホテルではこんな言葉を覚えておくと便利だ。

・暖房はありますか/請問有暖氣嗎?/チンウェンヨウヌァンチーマ?

・私の部屋は寒すぎます/我的房間太冷/ウォーダファンジェンタイレン

・布団をもう1枚ください/給我多加棉被/ゲイウォドゥオージャーミェンベイ

・毛布をもう1枚ください/給我多加毯子/ゲイウォドゥオージャータンズ

・バスタブのある部屋がいいです/我要有浴缸的房間/ウォーヤオヨウユーガンダファンジェン

・お湯が使いたいです/我要用熱水/ウォーヤオヨンラースエ

・冷房を切ってください/請關掉冷氣/チングァンデャオレンチー

 

 

鍋であたたまる

 それでもまだ寒い場合は、食べ物で暖を取ろう。台湾の冬は短いが、身体の芯からあたたまる漢方系の食べ物が充実している。

 寒いときはやはり鍋に限る。台北からMRTで15分ほどの板橋区には有名な薑母鴨(生姜と鴨肉の鍋)の専門店『林家帝王薑母鴨』がある。冬場には持ってこいの栄養たっぷりの鍋だが、驚きなのは米酒と呼ばれる台湾焼酎をまるまる1本(600ミリリットル)鍋に注いで煮込むこと。最初は酒臭くてとても飲めたものではないが、じっくり煮込むとアルコールがほどよく散り、まろやかでコクのあるスープができあがる。この鍋は当然、車の運転をする人は食べられない。

 

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板橋『帝王林家薑母鴨』の生姜鴨肉鍋。コトコト長時間煮込むことでアルコール分が飛び、鴨肉のコクが増す

 

 もうひとつ、板橋に行ったらぜひ食べておきたい冬のあったかフードがある。板橋の湳雅夜市に大きな屋台を構える『王記好吃麻油雞』(ごま油の鶏肉スープ)だ。

 クセがあるので日本人には少々ハードルが高いが、この店のものはまろやかで食べやすい。暖を取るだけでなく、病み上がりの人や妊婦・産婦にもよいとされていて、私が妊娠した頃、義母がよく作ってくれた。

 ところが、やはり日本人の私には食べ慣れず、加えて妊娠中はつわりで普通の物さえ口にできなかったので麻油雞など食べられるはずもない。このときのことがトラウマになり、ずっと麻油雞には苦手意識があったのだが、王記の麻油雞と出合って抵抗感がなくなった。

 

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板橋の『王記好吃麻油雞』は、冬になると行列必須の人気屋台。難易度の高い風味の麻油雞もこの店なら美味しく食べられる

 

 

薬膳スープであたたまる

 台北市内にも身体を温める薬膳スープの専門店がある。延三夜市の『良友薬燉排骨』には骨付き豚肉の薬膳スープやクコとナマズの煮込みスープがある。若者からお年寄りまで立ち寄るこの大衆食堂は、薬膳スープが70元で食べられる点が人気なようだ。魯肉飯など台湾の定番メニューも置いてあるので組み合わせて食べるのも楽しい。

 

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見た目はインパクトがある『良友薬燉排骨』の枸杞土虱(クコとナマズの煮込み)は案外あっさりとして食べやすい 

 

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延三夜市にある、入りやすいオープンな店構えの『良友薬燉排骨』。食堂が密集するエリアで夜が楽しい

 

 

スイーツであたたまる

 あたたかい料理で暖を取ったら、やはりスイーツもあたたかくなければ。洋菓子と違って、台湾伝統スイーツは寒い時期に温めて食べることができるので身体にやさしい。豆花だって冬はホットを注文できる。

 MRT雙連駅のそばにある『雙連圓仔湯』は台湾伝統スイーツの専門店。キレイでおしゃれな店内は女子であふれている。小豆の汁粉や豆花に、煮込んだタロイモ、蓮の実、ピーナッツなど、好きなものをトッピングしてオーダーできるのも楽しい。自分だけのお気に入りホットスイーツを見つけてみよう。

 

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『雙連蓮仔湯』のあたたかいピーナツスープ。湯圓(白玉団子)やタロイモ煮込みなどお好みでトッピングを選べる

 

 この店は油モチも絶品で、できたての柔らかさと言ったら! 黒ごま、ピーナッツパウダーなどをまぶしていただく、どこか日本のきなこ餅にも似た懐かしいスイーツだ。

 

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きなこ餅を思わせる油モチ。ピーナツの粉とゴマが香ばしい。餅が驚くほど柔らかい

 

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『雙連蓮仔湯』は伝統の味を守りつつもキレイにリニューアル。家族連れやカップルも多い

 

 

寒さと雨に見舞われたら屋根付きの夜市へ

 冬場は寒い上に、雨の日が多い台北。夜市巡りをしたい人に雨は残念だが、最後に屋根付き夜市をご紹介しよう。

 台北最大の規模を誇る士林夜市は、野外屋台もあるものの、建物内に屋台食堂をはじめとするさまざまなエンタメ施設が集合しているので雨の日でも十分に楽しめる。

 

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士林夜市と言えば地下の食堂街。テーブルにメニューが貼られていてオーダーしやすい

 

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士林夜市名物のイカあんかけスープ。寒い冬は冷めにくく、旨味を閉じ込めるあんかけがおすすめ

 

 また、北投の温泉施設も寒い冬場にはおすすめだ。台北駅からMRTで30分ほどだが、ちょっとした小旅行気分を味わえる。

 

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北投の山中にある温泉街。路肩から湯けむりが出ている

 

 さらに、台北西部の龍山寺そばにある華西街夜市はかつて多くの日本人が訪れた伝統夜市。しっかり屋根があるので安心して歩くことができる。

 

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屋根があるので寒さと雨をしのげる華西街夜市。老舗が多く、どこか懐かしさが漂う

 

 

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*本連載は月2回(第1週&第3週金曜日)配信予定です。次回もお楽しみに!

 

 

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著者:光瀬憲子

1972年、神奈川県横浜市生まれ。英中日翻訳家、通訳者、台湾取材コーディネーター。米国ウェスタン・ワシントン大学卒業後、台北の英字新聞社チャイナニュース勤務。台湾人と結婚し、台北で7年、上海で2年暮らす。2004年に離婚、帰国。2007年に台湾を再訪し、以後、通訳や取材コーディネートの仕事で、台湾と日本を往復している。著書に『台湾一周 ! 安旨食堂の旅』『台湾縦断!人情食堂と美景の旅』『美味しい台湾 食べ歩きの達人』『台湾で暮らしてわかった律儀で勤勉な「本当の日本」』『スピリチュアル紀行 台湾』他。朝日新聞社のwebサイト「日本購物攻略」で訪日台湾人向けのコラム「日本酱玩」連載中。株式会社キーワード所属 www.k-word.co.jp/  近況は→https://twitter.com/keyword101

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