料理評論家・山本益博&美穂子「夫婦で行く1泊2食の旅」

料理評論家・山本益博&美穂子「夫婦で行く1泊2食の旅」

#51

〈番外編〉 延岡(東九州バスク化構想) 

 

文/編集部

 

 2月18日に延岡市が主催するイベント「EAT Nobeoka in ENEKO Tokyo」が開催されました。これは山本益博さんが「食」のまちづくりアドバイザーを務める延岡市の食材の魅力を発信するもので、市内の生産者、料理人が東京に集ったのです。そこで今回は番外編として、山本益博さんと長年交流があり、「TABILISTA」で『わざわざ飛行機に乗って麺を食べに行ってきます』を連載している高山コジローさんにレポートしてもらうことになりました。1月末に実際に延岡へ足を運んで、イベントに参加された4名の生産者と3名の料理人を取材してもらったので、ぜひ読んでいただきたいと思います。
 イベント当日の様子は、改めて後日「TABILISTA」でご報告させていただきます。

 

 


文と写真/高山コジロー&編集部

 

 

 

「鏡山牧場」

牛肉本来の味を追求した、延岡の自然放牧黒毛牛

 

 

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鏡山牧場から島浦島、日向灘を望む。

 

 海の幸、山の幸、里の幸が豊富で、しかも質が高く、食材の宝庫と言われる延岡。

 そんな延岡の山の頂で、全国的にも珍しい自然放牧により牛本来の生き方、牛肉本来の赤身肉の味を追求している牧場がある。

 延岡市内から車を40分ほど走らせ、日豊海岸沿いにそびえ立つ鏡山を登り山頂にある「鏡山牧場」の生産者八崎秀則さんを訪れる。

 のんびりと寝そべり日光浴をする黒牛、牧草を喰む黒牛が出迎えてくれた。

 そこは約65ヘクタール(東京ドーム約14個分)の広大な放牧地だ。冬場なのでグリーンが鮮やかな牧場とはいえないが、澄んだ空気に眼下に広がる日豊海岸のどこまでも続く美しい海と青空の眺めが気持ちいい。

 

 「鏡山牧場」には大きな特徴がある。約100頭の牛たちは、牛本来の生き方を追求し、一年中、雨の日も風の日も放し飼いだという。牛舎に戻すことはなく、牧草のみを食べながら、ゆったり自由にのんびり過ごす自然放牧で飼育されている。

 

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牛たちは広大な牧場の敷地内で1年中放牧されている。

 

 いま世界中で注目されている「グラスフェッド」という飼育方法で、日本では珍しいという。

 飼われている牛は、すべて宮崎県産の黒毛和牛(黒毛和種)の経産牛だ。

 経産牛とは出産を経験した牛のことで、一般的には去勢された雄牛か未経産の雌牛が食肉としては上等とされ、経産牛は肉質が劣るといわれている。7、8頭出産すると役目を終える経産牛を鏡山牧場では、8年から12年ほど自然放牧で育てている。牛は牛舎で飼われ通常は2年ほどで出荷されるそうで、自然放牧はかなりの時間と労力を費やすことになる。なぜそんなに多く手間をかけるのか、八崎さんに伺う。

 

 「自分で食べて、美味いと思う牛を、放牧で育てたかったんです」。

 「そもそも牛肉を美味しいと思っていなかった(笑)。牛の脂や柔らかさではなく、宮崎県産の黒毛和牛がもつ美味しさとはなんなのか。ジューシーな肉質、脂が少なくヘルシーでありながら、自分で食べて美味しいと思える牛肉を生産したかったんです」。

 

 牛舎で牛を飼うという考えは、八崎さんには全くなかった。

 「牛は本来、牧草を食べて生きてきた生き物。自然に飼えば、自然な牛肉の美味しさが出てくるのではないかという思いがありました」。

 そのために広島で肥料メーカーを営む八崎さんが延岡にやってきて牛を始めたのが約3年前のこと。最初は山の麓の北浦町で空いた鶏舎を改造して牛を2頭飼い始めた。自然放牧にこだわっていたため、広い放牧地を求めて、延岡市の協力もあり2年前に、こちらに移ったという。

 

 鏡山牧場では、長期に渡り放牧し牛たちを自由に歩かせることで、あえて脂を絞り、牛肉の美味さを追求し、コクのある肉本来の味わいを堪能できる「グラスフェッドビーフ」を育てている。

 牛の肉質等級は、脂肪交雑(さし)、肉の色沢、肉の締まり及びきめ脂肪の色沢と質の4項目から判断される。牛舎で飼われ穀物類を食べて育った牛は、脂肪分が豊富で「さし」の入った甘みのある肉になる。最上のものはさしの入ったいわゆる霜降り肉。A4、A5ランクと等級されるが、鏡山牧場では等級にはこだわらない。

 

 「飼っている牛たちは、元々さしの入っていない赤身肉ではないんです。たっぷりさしが入った宮崎の黒毛和牛の経産牛を放牧し運動させることで、ほどよく脂を抜いて肉の旨味を凝縮させるイメージなんです」。

 赤身肉というと輸入肉の赤い色をイメージしてしまうが、「鏡山牧場」の牛肉は、きめ細かい脂の入った赤ピンク色のきれいな肉質なのだ。

 「一般的に経産肉は5歳から7歳ぐらいの肉質がいいといわれていますが、8歳より10歳、10歳より12歳のほうが味の濃い肉になります。たとえばミンチにしてハンバーグを作り試食してみると、12歳が一番コクがあり旨いんですよ」。

 ただし欠点もあり、齢が増すと肉の中にスジが入ってしまい、硬くなってしまうとのことだ。そのため出荷時期は見極めているという。

 また単に「焼く」のではなく、ステーキ、焼肉、煮込みなど料理によって、肉の処理、調理の仕方、食べ方を研究しないといけないという。

 

 広大な牧場を眺めていると、自然に飼うということは簡単なことではないことがわかる。牛肉はジビエではないので、肉の安定供給、品質維持が求められる。そのため毎日朝と晩に一定の量の牧草を与えるという。

 「延岡を中心に大分の農薬や添加物を含まない天然の牧草のみを使い、安全に心がけでいます」。

 広大な牧草地なので、牛の体調の心配も尽きない。毎日牧場を足で周り、牛で観察するがすべてに眼が届くわけではなく、ドローンも使いくまなく牛の状態、健康観察を行うという。ヒトが管理しやすい飼い方ではなく、牛に寄り添う育て方、自然に何も手を加えないというのは、肉体的にも厳しく簡単ではない。

 「肉体的にはきつく、放牧よりも牛舎で飼う方が楽ですよ」。と八崎さんは笑いながら話す。

 肉質のさらなる向上のため、新たな試みとして延岡の地ビール会社の「ビール粕」を利用しているという。ビールの生産工程で麦芽を濾過した後に残る廃物で処分されるものだ。

 「麦芽の自然な飼料であり、高タンパクで牛の体を維持しながら、肉質も良くなります。安全でコストも抑えられます」。

 ビール会社にとっては産廃の処理ができ、まさに地元ならではのウインウインの関係といえる。


 

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「自分が食べて美味しいと思える肉を育てたい」と語る八崎秀則さん

 

 最後に流通に関してお聞きする。まだ生産量は多くなく、ネットでの販売が中心だそう。東京、大阪、京都などの料理人からの注文が多いという。もちろん地元延岡のレストランのシェフからも大いに注目されていて、問い合わせは絶えない。

 「地元の料理人の方とも、一緒にやっていきたいです。延岡の食材を使って、どんな料理を作ってくれるのか、夢が膨らみます」。

 「誰にでも好まれる牛肉ではありません。僕が美味しいと思う牛肉。牛本来の牛肉の味や牛が出荷されるまでのストーリーに共感していただける方々に、お楽しみいただきたいです」。と八崎さんは最後にいう。

 延岡市が提言する「東九州バスク化構想」のイベントでは、延岡市のペルー料理「reco tacna」の久我シェフの手により「鏡山牧場」の牛肉を食材とした料理が振舞われた。

 いったいどんな料理がお披露目されたのだろう。後日レポートさせていただくのでお楽しみに。

 

 

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■株式会社 鏡山牧場

 

住所/宮崎県延岡市北川町川内名6677-6

問い合わせ/0982-46-2333 

 


 

 

「斧農園」

野菜本来の美味しさは、こだわりの土作りから。

 

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斧さんの家の前に広がる段々畑。

 

 延岡の食材と聞いて、まずイメージするのは魚ではないだろうか。東は日向灘に面し、多くの山に囲まれ河川が走る延岡の地。水郷の豊かな土壌、年間を通じて適度の雨量、寒暖差があり野菜作りに適し、多種多様の美味しい野菜が作られている。延岡の美味しい野菜の存在は、あまり知られていない。

 延岡市の西部の北方町で、こだわりの美味しい野菜作りに取り組でいる農園があると聞き訪れる。

 市内の中心部から車で40分ほど、日向灘に注ぐ五ケ瀬川の渓谷沿いを走り、さらに細い道を上流に向かい北方町板下地区戌の山間部の小さな集落にある「斧農園」に到着する。北方町は全国でも珍しい十二支による住所表記を持ち「千支の町」として知られる。

 

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斧さんがつくる「とろうま大根」は文字通りとろける旨さ。

 

 

 車から降りると深い森林の香りがする。家の前には石垣に囲まれた段々畑が7段連なり、

 畑の下に流れる川のせせらぎが心地よく、空気がうまい。

 農園では6反(約6000㎡)の土地に、畑では大根、白菜、人参など、1年を通じて30種類以上の多品種の野菜育てられ、森の中では原木しいたけが栽培されている。

 

 朝の出荷作業で忙しいところ、「斧農園」の斧康弘さんに、こだわりの野菜作りについて話を伺う。

 「もともと母が2004年に水田だったところを畑に変え野菜作りを始めたんですが、手伝っているうちにやりがいを感じ、一緒にやることにしたんです」。

 斧さんは高校卒業後、食品の卸売会社に勤めていたが、12年前に辞め本格的に農業を始めた。

 

 「健康な野菜、味わいのある野菜を育てるには、土が重要だと思います」。

 斧農園では、最初から化学肥料は一切使われていないという。

 「土作りには天然の有機肥料を使います。腐食酸という天然の土壌有機物やミネラル鉱石を使うことで、自然界に近い状態の土にしています」。

 そのため土壌消毒も石灰ではなく貝殻の化石を蒔き、除草剤も土の中の微生物が死んでしまうために使わないとのことだ。

 

 

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土づくりへの熱い想いを語る斧康弘さん。

 

 「自然に近い状態が、健康でおいしい野菜が作れると思うんのです」。

 

 そのため畑の土の特性に合わせて、育てる野菜を変えているという。

 「水田だった畑は1つ1つ全く土の性質が違います。肥料の必要なナスやきゅうりは肥えた畑で作り、あまり肥料のいらないレタスや枝豆などと区別して、野菜によって畑を変えて栽培しています」。

 野菜に合わせて肥料を加えるのではなく、土に合わせ栽培する野菜を変える。まさに土の持つ特性を生かした野菜作りが行われている。

 そのため日々土の改良には研究を重ねていて、昨年から馬糞堆肥を試しているという。バラの栽培で使われることが多い馬糞堆肥は、有機物を多く含み土の中の微生物を増やし豊かにしてくれる作用があるという。

 

 野菜作りには散水する水も重要だ。

 「水道はないんです。山の向こうから谷水を引いています。畑には谷水を使い、生活用には井戸水を使っています」。

 水道は整備されておらず、土ばかりでなく水も山で濾過されたきれいな天然水が使われている。斧農園の野菜は、まさに自然の恵みの賜物だ。

 「よかったら、食べて」。母親のヒデ子さんがとれたてのしいたけを振舞ってくれた。香ばしく焼かれ噛みしめるとコクのある旨みが口いっぱいに溢れる。朝引いたばかりの人参と大根の漬物もいただく。オレンジ色鮮やかな人参をそのままかじってみると、水々しくコリコリとした食感がいい。人参独特の苦みやえぐみがなく、じんわり甘みがある。

 「甘くておいしいでしょ。これが自然の人参の味なんですよ」。

 「延岡の子供たちには食育の一環として、農園に来てもらい野菜はどのように育てているのかを体験してもらっています。その場で野菜を食べることで、地元の自然の野菜の味を感じてもらえればと思っています」。

 子供たちに農業の楽しさや、自然の素晴らしさを伝えていきたいという。

 

 

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自宅敷地から湧き出す水(左)、忙しい時間帯にもかかわらず、優しく出迎えてくれた母親のヒデ子さん(右)

 

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肉厚で旨味たっぷりの原木椎茸(左)、出してくださった椎茸バター焼きとヒデ子さんの自家製漬物は絶品(右)。

 

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獲れたての人参は生で食べても驚きの甘さ。

 

 

 野菜作りのためには、消費者との交流も欠かせない。

 「市場にだけ卸すと消費者の声が聞こえてこないんです。直売所でお客さんから『おいしかったよ』と直接言われると栽培意欲がわきますよ」。

 そればかりでなく斧農園では、新鮮な野菜をセットにして約2000セットほど、毎週お客さんに直接届けて交流をはかっているという。

 

 山の中にあるしいたけの栽培場を見せてもらう。段々畑の下の川向こうにあり、軽自動車1台しか通れない細い道を登り、さらに車を降り歩かなければならない。きれいに原木が整備されている。スプリングクラーによるしいたけの散水にも、畑同様に山の谷水を引き使っている。

 「しいたけは季節により菌の種類を変えています。冬場のしいたけは寒暖差の刺激がないと大きくならず、今冬は温かいので大変ですね」。

 

 

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恐ろしいほどほど澄んだ清流にかかる沈下橋を渡り、さらに険しい山道を椎茸栽培場へ向かう。

 

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静寂の中に整然と並べられた榾木には、自然の恵みを受けた椎茸たちが生育していた。

 

 

 しいたけ栽培場の奥の大きな畑では、大根と紫白菜が栽培されていた。

「新しい野菜作りにも料理人の方と連携して取り組んでいます。生で食べられる紫白菜は、地元のレストランでサラダに使ってもらっています。ピクルスにしてもおいしいですよ」。

 紫白菜をかじってみると白菜に比べて柔らかで水々しく食感が良い。色鮮やかな紫色でサラダには、ぴったりだ。

 

 

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奥の畑で活き活きと語る斧さん(左)、収穫したばかりの大根は見るからに栄養たっぷり(右)。

 

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自慢の紫白菜。味はもちろん、彩鮮やかで”映える”野菜だ。

 

 

 斧さんは、東九州バスク化構想延岡推進協議会内の「生産者部会」の部会長を務めている。延岡の農産、水産、畜産の生産者が集まり、生産拡大や品質を高めることで、延岡の食の魅力の一層の向上を推進する活動をしている。

 「見本市を開催し消費者と直接意見を交換したり、延岡の食材の魅力を伝えるため料理人に作ってもらったレシピを添えて販売したりしています」。

 自身の野菜だけでなく、延岡の生産者と料理人が一緒になって、消費者との交流をはかり、延岡の食文化を発信しているのだ。

 「東九州バスク化構想」のイベントでは、延岡市のペルー料理「rico tacna」の久我シェフの料理で斧農園の野菜が使われる。普段から斧農園の野菜を使い、魅力を知り尽くしている久我シェフがどんな料理を披露してくれたのか、イベントレポートをお楽しみに。

 

 

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■斧農園

 

住所/宮崎県延岡市北方町板下戌240

問い合わせ/0982-44-1350 

 

 

 

「rico tacna」(リーコ タクナ)
料理人 久我大輔さん

 

 

 延岡駅から歩いて7分ほど。瀬之口町交差点にあるペルー料理「rico tacna」(リーコ タクナ)を訪れる。

 モダンな外観のビル。開放感のあるきれいな店内は、ゆったりしたテーブルの配置がされ、奥の厨房の手前にはカウンター席がある。

 九州では珍しいペルー料理店オーナーシェフの久我大輔さんにお話を伺った。


 

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延岡生まれペルー育ちの久我大輔シェフ。

 

 

 延岡で生まれの久我シェフは、父親の仕事の関係で5歳〜10歳までペルーのタクナ市で育ったという。


 「首都のリマからは遠く離れたタクナ市では日本人は私たちの家族だけでした。日本食はなかったので、幼少期の食の記憶といえばペルーの家庭料理なんです」。

 店名の由来は、「リーコ」はスペイン語で美味しい。「タクナ」は幼少期に5年間過ごした第2の故郷タクナ市である。お店のマークはタクナの街マークにrico tacnaの文字を入れて使っているという。

 

 帰国後は延岡に戻り、言葉の問題など苦労が多かったという。

 「高校卒業後、作るのが元々好きだったので料理の道にすすむことにして最初は宮崎のフレンチレストランで2年。延岡に戻ってからはホテルで8年ほど働きながら独自に料理の勉強をしていました。ベースはフレンチとイタリアンなんですが、子供のころの経験したペルーの家庭料理の記憶を原点としたアレンジしたオリジナルの欧風ラテン料理のお店として2008年にオープンしました。ペルー料理といっても誰も知らなくて(笑)」。

 

 ランチで「ピカンテ ア ラ タクネーニャ」をいただいた。宮崎牛の胃袋(ハチノス)とホルモンをアヒ(ペルーの唐辛子)で煮込んだペルー料理だ。タクナは砂漠の中にある都市で、牛肉の内臓を使った煮込みが好まれていたという。新鮮な牛ホルモンは臭みは一切なく、旨みたっぷり。アヒは日本の唐辛子ほど辛くなく、心地よいスパイシー感がいい。

 

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「ピカンテ ア ラ タクネーニャ」(上)、サラダ(左下)とデザート(右下)も味わい深い。

 

 

 「オープン当初は、ホルモンってっ聞いただけで、誰も食べてくれなくて、どうしようかと思いました(笑)」。

 ランチは煮込み料理だけでなく、山羊のチーズを使ったペルーのパスタもあり、手軽にペルー料理が楽しめる。夜は4000円からのコース料理がメイン。料理に合わせて珍しいペルーのビールやワインも取り揃えられている。

 

 ランチも夜のコース料理も肉、魚、野菜、食材はほとんど延岡産を使っているという。

 「野菜は斧農園さんが多いです。リクエストしてパクチーやペルーのとうもろこしなど無理言って作ってもらったりしてます。牛は延岡の鏡山牧場の赤身肉を初めてイベントで使います」。

 

 「東九州バスク化構想」のイベントでは、前出の鏡山牧場の牛肉、斧農園の野菜を使った「鏡山牛を使ったアンティクーチョ」を披露するという。

 「まだ延岡では流通してない牛の赤身肉は、一度使ってみたかった食材です」。と久我シェフはいう。

 延岡の野菜と牛肉をどのようにペルー料理にアレンジしたのか。レポートを楽しみにしてほしい。

 

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​■rico tacna(リーコ タクナ)

 

住所/宮崎県延岡市瀬之口町1-2-6

問い合わせ/0982-35-2080

営業時間/11:30~14:30(L.O.14:00)18:00~22:00(L.O.21:30) 定休日/木曜日 

 


 

「結城水産」

延岡の離島・島浦島で、こだわりの高品質の養殖魚を育てる

 

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日向灘に浮かぶ島浦島(鏡山牧場から望む)。

 

 

 「美食の国」延岡で、いま俄かに注目を集めている島がある。島浦島である。

 古くから「しまんだ」と呼ばれ、親しまれてきた離島だ。江戸時代には参勤交代の寄港地として栄え、豊かな自然や文化、温かい人の暮らしが息づく。日向灘の北部に位置する島の周囲は豊かな漁場として知られ、古くから漁業の島として名を馳せてきた。磯釣りファンにも人気のスポットが点在する。近年、この島でこだわりをもって育てられている高品質の養殖魚の存在が注目されるようになってきている。

 大手居酒屋チェーンが島浦産の魚を直接買い取り、全国の店舗で出すようになったことも島が注目されるようになったきっかけのひとつだ。流通の発達により、獲れたての魚をその日のうちに首都圏へ運ぶことが可能になった。また、島浦の名が全国に知れ渡ることで、新たな需要も出てきたという。


 延岡市の中心部から北東へ約12km、車で30分ほどで島への玄関口、浦城港に着く。島浦港へはここから高速船で約10分だ。港へ着くと、離島ならではの時間が流れていた。これぞ漁業の島という雰囲気が街に漂う。

 

 

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浦城港と島浦港を結ぶ高速船(上)。島のストリートは漁師町の風情がたっぷり(下)。

 

 

 出迎えてくれた「結城水産」の結城嘉朗さんは、島で養殖業を営む実家を手伝っている。爽やかな好青年という印象だ。タイ、シマアジ、イサキ、カワハギ等の魚を養殖しているが、その中でもカンパチが一番多く、約4万匹だという。

 ではなぜ、カンパチなのか?

 結城さんがカンパチの養殖に力を入れているのには理由がある。

「カンパチの養殖は手間がかかるんです。ツブのエサを食べないので、冷凍したサバを砕いたりオリジナルのエサをつくる必要があります。同属のブリ以上にハダムシやエラムシなどの寄生虫がつきやすいので、これらの駆除に細心の注意を払う必要もあるんです。だから大規模な養殖業者はあまりやりたがらないですし、小規模だからこそ勝負できる魚だと思っているんです」

 

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「島浦町漁業後継者部」を立ち上げたという結城嘉朗さん。

 

 結城さんは、島生まれ、島育ち。実家は養殖業を営んでいたが、子どもの頃は漁場へ手伝いに行くこともほとんどなかったといい、小売りの方に関心が高かったそうだ。大学進学のため福岡へ出ると、そのまま福岡で就職して5年間、スーパーの鮮魚売り場で働いていた。

 

 「毎日、魚を捌き、寿司用や刺身用に切り分けていました。いま思えば、良い訓練になったとも思いますね。島に戻ろうと思ったきっかけは、母親からの電話で新しい船を買うという話を聞いたことです。新造船は家一軒買えるくらい高額なんですよ。これは、自分が家業を手伝うしかないなと覚悟を決めました」。

 

 島へ戻って養殖の世界に飛び込んだが、最初は戸惑うことも多かったという。朝7時には漁場に出て、昼食は家に戻り、午後再び漁場へ向かう。寒い時期、カンパチのエサやりは3日に1回ほど。水温が低いとあまりエサを食べないからだ。エサを多くやりすぎると食べ残しで、海が汚れ病気の原因にもなる。

 自然災害のリスクもある。島浦島でも何年か前の台風では生け簀同士がぶつかって、魚が混ざってしまい、甚大な被害となった。東日本大震災の時には消費が減少して魚価が半値まで下落し、まったく商売にならない状況もあったという。台風など時化の時には島から出られなくなるという離島ならではの悩みもある。

 

 

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(写真提供/結城水産)

 

 

 「主な作業は肉体労働ですし、すべて手探りでしたね。経験もなく、教えてもらえる環境でもなかったですから。ロープの結び方を習得するだけでも2~3か月かかりました。ようやく人並みにできるようになったのは、3年くらい経ってからです」。

 カンパチといえば、寿司屋では必ず注文してしまう大好きなネタ。スズキ目アジ科の大型回遊魚で、大きいものは100センチ前後まで成長するが、一般的に最も美味なサイズは体重2~3kg のものだと言われている。ブリやヒラマサと比較すると脂が少なくあっさりとしており、コリコリとした歯ごたえのある食感が特徴だ。しかし、近年の世界的な海産資源の減少もあって、天然は流通量が非常に少ない。

 島浦島は古くから「イワシの舞う島」とも呼ばれ、カンパチのエサとなる青魚が近海で獲れる。そのため地元の巻き網漁船から新鮮なエサを安価で仕入れることができるのだ。黒潮に近いため潮の流れが速く、身のしまった魚が育つ環境にある。そして、あまり海が荒れないことも養殖に好条件だ。また、潮流が速いことで、漁場をキレイに保つこともできるのだという。

 

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漁港には島浦近海で獲れた青魚が水揚げされる。(写真提供/結城水産)

 

 

 この島で養殖業を営むのは3軒。何十万匹もの鯛を養殖する業者もある。島に同世代の若い漁師がいたことは心強く、刺激にもなった。カンパチの養殖方法は稚魚を大きく成長させる「畜養」がスタンダード。稚魚の獲得はほとんどを輸入に頼らざるを得なかったが、結城さんは「島浦町漁業後継者部」というチームを結成して、積極的に質の向上に力を入れ、近畿大学との連携によって完全国産のカンパチを生産するなど若手後継者による新しい挑戦を続けている。血抜きや神経締めなど天然よりも徹底した処理が行われていることも見逃せない。こうすることで魚の臭いがせず、新鮮さも保てるといい、就職先での経験も活かされているのだろう。

 

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(写真提供/結城水産) 

 

 カンパチは魚臭さが少なく味が濃いので、刺身や寿司ネタに重宝される。ブリよりも後味にクセがなく、さわやかな風味を好む人に人気の魚だ。ぜひとも延岡で結城さんのカンパチを食してみたいと思った。

 

 「実家は、島では昔から評判が良かったんですよ。でも、出荷先は遠方が多く、まとめて活魚車に積み込まれ、ただの宮崎産となってしまう。生産者の顔は見えないですし、誰が育てたのか分からなくなることに違和感を覚えていました。養殖はこれからもっと伸びる漁業だと思っているんですが、現状は厳しいですね。良い魚を育てるにはコストもかかるし、手間暇かけている割に魚価がついてこないんです。自分の魚を地元の延岡で食べて欲しいという思いは強いんですが、いまの魚価ではなかなか難しいですね。延岡には腕の良い料理人もいるし、美味しい飲食店もあります。でも、規模が小さい。東京などの大消費地に卸さないと採算が合わないというのが実情です」。

 

 そういった事情でいまのところ延岡市内の飲食店では、まだ結城さんが育てた魚が提供されることはないようだが、2月のイベントで延岡市の「かくれ処キッチンふかみ」の深見政男シェフによる料理に使われることが決まっている。イベントとはいえ、地産地消が実現するわけだ。期待は膨らむ。

 

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■有限会社 結城水産

 

住所/宮崎県延岡市島浦町673

問い合わせ/0982-43-1105

 

 

「かくれ処キッチン ふかみ」

料理人 深見政男さん

 

 延岡駅から車で6、7分ほど。南町の繁華街、飲食店が入るビルの1階の奥まったところにある「かくれ処キッチン ふかみ」を訪れる。入り口に掲げられる「気軽に。くつろぐ。」看板が印象的だ。

 店内に入ると正面のカウンター席が4席。左手に座敷があり、右手にはテーブル席。20人ほど入れるお店だ。

 

 宮崎市内の居酒屋で働いたのち、延岡に戻り居酒屋で8年ほど働き独立する。2018年にオープンしてもうすぐ2年目。若き店主の深見政男さんにお話を伺った。

 

 

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話の節々に延岡愛がにじみ出る店主の深見政男さん。

 

 

 「生まれ育った延岡が好きで、地元で店をやりたかったんです。お客さんが気軽に、くつろげる店をやりたいと思い始めたんです」。

 オープン当初は延岡の食材を使うとか、特に意識してなかったという。

 「いざ店を始めてみて、延岡の恵まれた食材の素晴らしさに気づきました(笑)。魚はもちろんですが、野菜、肉。自然薯、たらの芽、野蒜などの山の幸も豊富ですね」。

 

 

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オープン前の店内には、地元産の新鮮な食材が並んでいた。

 

 ランチは若いお客さんが多く、夜は50代60代が多いという。お酒は宮崎県産の芋焼酎が一番人気で、刺身をメインとした魚料理の注文が多いという。

 

 「やはり魚に一番力を入れてます。魚は信頼している魚屋さんから仕入れ、すべて延岡産です。海の天候が悪くて魚の数が少なかったようですが、今日もすべて延岡で揚がった新鮮な魚を仕入れてます」。

 クロムツ、カマス、アジの刺身をいただく。どれも新鮮で脂が乗っている。東京では味わえない美味さだ。珍しいアジの白子は濃厚で旨みたっぷり。大振りで新鮮なアジでしか出せない逸品だ。メヒカリ、カマスの唐揚げどれも旨い。

 

魚ばかりでない。延岡発祥のチキン南蛮は深見さん自信の一品。

 「もも肉を使い、手作りの南蛮酢とたっぷりのタルタルソースを合わせています。正直旨いですよ(笑)」。ジューシーに揚げたもも肉に南蛮酢とタルタルのバランスがよく素晴らしかった。

 

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地魚のお造り(左)、メヒカリの唐揚げ(中)、チキン南蛮(左)。

 

 2月7、8、9日に開催された「のべおかタパス食べ歩き2020」。気軽に小皿料理を楽しめるイベントには、「宮崎牛すじの煮込み」「北方産自然薯のきのこ餡かけ」「宮崎名物レタス巻き」の3品で参加した深見さんは、2月の延岡市が提言する「東九州バスク化構想」のイベントでは「北方産自然薯のとろろと真鯛の炙り」を披露するという。

 

 「延岡の食材の素晴らしさを伝えたいです」という深見さん。

 若き料理人による延岡の海の幸と山の幸のコラボが楽しみだ。

 

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■かくれ処キッチン ふかみ

 

住所/宮崎県延岡市南町1-2-10

問い合わせ/0982-26-2136

営業時間/11:30~13:00 17:30~22:30 定休日/日曜日

 

 

「Chinese Restaurant FUBITO(史)」

料理人 小澤寿史さん

 

 延岡駅から車で6、7分ほど。外観はイタリアンかフレンチかというおしゃれなでカジュアルな中華料理店「Chinese Restaurant FUBITO(史)」を訪れる。
 清潔感溢れる店内に入るとカウンター席が5席。店の奥に進むと広いスペースがあり、20人ほど入れるテーブル席がある。広い店内だが夫婦二人で切り盛りしているという。

 延岡出身のオーナーシェフ小澤寿史さんが出迎えてくれた。

 

 

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延岡の食材は鮮度が抜群だと語る小澤寿史シェフ。

 

 福岡を皮切りに長崎佐世保のシティホテルで中華のシェフを7年間務めた小澤シェフにお話を伺った。

 

 「独立して店を開こうと思った時に最初から延岡を考えていたわけではないんです。子供を育てる環境を一番に考えたとき、18年間自分が育った延岡の環境や自然、人の温かさもあり、自然な流れで地元の延岡で店を開くことにしました。地元の仲間が延岡で店を開くことをすすめてくれたのも大きいです」。

 2015年に本格的な広東料理「Chinese Restaurant FUBITO(史)」を始める。

 

 延岡の食材を料理にどのように生かしているのだろう。

 「広東料理がメインの店です。本場の香港も海に囲まれているんですが、海の幸を使った海鮮料理が多いんです。広東料理は素材をいかした調理方法なので、新鮮な魚や海老、蟹など延岡は豊富です。中華のイメージはこってりしていると思うんですが、脂っこいとか、辛いということではなく、あっさりした食べやすい中華を目指しています」。

 女性客が入りやすくランチは盛況だという。夜は3500円からのコース料理をメインに、アラカルトもあり、お酒と一緒に楽しめる料理で女性だけでなく男性客も魅了している。

 「女性客には少しあっさりした味付けに、お酒を飲む男性客には少し味を濃くしています」。

 地元の常連客が多く、お客さんの年齢や体調も考慮しているという。

 

 延岡の食材についてお聞きする。

 「福岡や佐世保と比べても、延岡はなんでも新鮮な食材が揃います。肉は宮崎牛を使っています。野菜はすべて延岡のものを使っています。鮮度がいいのでハリや甘み、味が全然違います。レタス一つとっても水々しく葉のはり方が違うんです」。

 「魚も不漁でない限り、延岡の北浦産の地物を使っています。ハタとかアラとかは中華との相性も凄くいいんです。冬は北浦で揚がるカマスを素揚げにして薬味ソースをかけたり、甘いピリ辛の味付けで軽く炒めたりします。いまが旬のガラエビも素揚げして山椒塩を添えてカラごと召し上がってもらっています」。

 鮮度がいい地元の魚介だから出せる料理だ。

 

 ランチをいただいた。延岡の野菜を使ったサラダから始まり、春巻きにしゅうまい、宮崎牛、中華スープにパラパラチャーハン。最後は奥様特製のシフォンケーキ。本格的な中華がリーズナブルな料金でいただける。あっさりしていて女性に人気なのも納得だ。

 

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ランチで提供された料理。宮崎牛(上)、チャーハン(中)、奥様特製のシフォンケーキ(下)。

 

 2月7、8、9日に開催された「のべおかタパス食べ歩き2020」。気軽に小皿料理を楽しめるイベントには3年前から毎年参加しているという。「イベントで出した小皿料理はとても好評で、過去の料理を数種類メニューに載せています。初年度に出した『宮崎県産牛ホホ肉の紹興酒煮』は好評で、ランチやコースにも組み込み常に出すようにしています」。

 「東九州バスク化構想」のイベントでは、「ヒオウギ貝と地鶏のシューマイ」を披露するという。

 「天然ならではの旨み詰まった延岡のヒオウギ貝を手作りの皮で包んだシューマイです。ぜひ味わっていただきたいです」という小澤シェフ。

 延岡の食材を使った広東料理に興味が尽きない。

 

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■Chinese Restaurant FUBITO(史)

 

住所/宮崎県延岡市本町1-4-11 1F

問い合わせ/0982-27-5976

営業時間/11:30~14:00(L.O.13:30)18:00~21:30(L.O.21:00) 定休日/日曜日

 

 

「きたうら善漁。」(ぜんりょうまる)

料理人 吉田善兵衛さん

 

 延岡市の「きたうら善漁。」の料理人 吉田善兵衛さんを訪れる。

 「TABILISTA」連載の第5回で山本益博さんが訪れているお店だ。

 『カウンターで展開される料理は、食材に最大の敬意を払った「のべおかテロワール」の日本料理の醍醐味を満喫できるはずです』。(連載より抜粋)

 

 

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 漁師をされていた吉田さんが、延岡の地に『きたうら善漁。』を開いたのは2008年。店を始めたのは、「お店を持ちたい」とか、「料理人になりたい」とかではないという。

 

 「漁師だったので、採ってきた魚をみなさんと分かちあいたい。そのためには、料理が絶対必要になる。それを自分がやっている」。

 「魚を一番美味しく食べさせることができるのは漁師さん。好みとかおいしさを超えた、真のおいしさがそこにはある。延岡の魚の真のおいしさを一番知っているのは、自分で魚を採っている延岡の漁師さん。だから誰かが、料理しなくてはいけない。料理人は、その真のおいしさに、お客さんをご案内するのが本来やるべきこと」。

 

 吉田さんは、料理とは、理(ことわり)を料(はか)ることだという。

 真のおいしさとは、時代の流行とか、人の好みではなくなく、本当の「真のおいしさ」だ。

 良いとか悪いとか、好きとか嫌いとかがなくなり、絶対的な価値観が、明確になるのではないか。だから驚きや面白さもいらない。

 味はきっかけであり、人と人との縁、出会いを大事にしているという。

 

 「魚の仕入れは自分で漁に行くこともあるが、自分の価値観を理解してくれている漁師さんが市場に出す前、まさに泳いでいるときから、自分のために選別してくれている。真においしい延岡の魚は、延岡に来ないと食べられない」。

 

 料理とは、理(ことわり)を料(はか)ることの意を再び問う。

 「不自然なことはしない。必要なことを必要なだけやる。料理とは決まっている。創作することではなく伝えること。自然の恵みをみなさんと分かちあいたい」。

 

 時代や流行は関係ない。あくまでも料理を究極する吉田さんは、自分の中の世界観のなかで、延岡でも人が寄り付かないところ、何にもない世界で新たに店をかまえたいという構想もあるという。

 

 「料理人とはなにか。真の自然の恵みをみなさんと分かちあう。パフォーマンスではなく、必然的な料理。お客さんのためではなく、その素材を分かち合う。それは家でやっていたこと。だから本来あるべき価格帯 10,000円ぐらいでやりたい。そして一年に一度でもいい。延岡の人、日本全国の人、世界中の人が来てくれるような店にしたい」。

 

 お話しを伺いながら、吉田さんの料理が食べてみたくなった。残念ながら予約でいっぱいかなわなかった。ここでは、2016年に「TABILISTA」連載の第5回で山本益博さんが訪れた時の写真を転載することにする。

 

■日本料理 「きたうら善漁。」  PHOTO/MASUHIRO YAMAMOTO

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さわらと白菜 ほうれん草を添えた鯛のお造り ご主人の吉田善兵衛さん

 

 

 その吉田さんが「東九州バスク化構想」のイベントに参加する。

 「延岡の魚がおいしく食べられるのは、東京ではなく延岡。舌先は一緒だけど、本当は違う、ということをイベントで知ってもらいたい」。

 吉田さんの料理とは、理(ことわり)を料(はか)ること。期待が膨らむ。

 

 

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日本料理 きたうら善漁。

 

http://zenryomaru.jp

住所/宮崎県延岡市本町1-3-14

問い合わせ/0982-31-0051

営業時間/18:00~22:00 (L.O. 21:30)※要予約 定休日/日曜日

 

 

 今回ご紹介した延岡の生産者と料理人が集うイベントが東京で開催されました。個性豊かなこだわり食材とそれを使った料理。いったいどのような融合を見せてくれたのか、ワクワクしますね。イベントの様子は、近日中に「TABILISTA」で紹介します。こちらも楽しみにしていてください。(編集部)

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 延岡は、高速道路が開通するまで、九州の「陸の孤島」と呼ばれていました。
東京から出かけるとなると、宮崎まで飛行機で飛び、空港から特急に乗り換えて1時間20分ほどかかります。

 「東九州バスク化構想」を推進する延岡市の「食」のまちづくりアドバイザーとして何度も足を運ぶうちに、延岡が「食の宝庫」であることがわかりました。

 豊かな土地の恵まれた食材ばかりか、優れた人材が何人も「いい仕事」をしている現場を目の当たりにしたのです。

 ジャンルこそ違え、これらの若き料理人たちが力を結集したら、九州はおろか、全国に発信できる「美味しい革命」を起こすことができるのではないかと確信しています。 海の幸、里の幸、山の幸が豊富で、しかも質が高い。何世代にもわたって土地の知恵が結集し根付いた文化をフランスでは「テロワール」と呼びます。それに倣えば「のべおかテロワール」と名付けたいほどです。(山本益博)

 

*この連載は毎月25日に更新です。

山本さん顔

山本益博(やまもと ますひろ)

1948年、東京・浅草生まれ。早稲田大学第ニ文学部卒業。卒論が『さよなら名人藝―桂文楽の世界』として出版され、評論家としてスタート。幾度も渡仏し三つ星レストランを食べ歩き、「おいしい物を食べるより、物をおいしく食べる」をモットーに、料理中心の評論活動に入る。82年、東京の飲食店格付けガイド(『東京味のグランプリ』『グルマン』)を上梓し、料理界に大きな影響を与えた。長年にわたる功績が認められ、2001年、フランス政府より農事功労勲章シュヴァリエを受勲。2014年には農事功労章オフィシエを受勲。「至福のすし『すきやばし次郎の職人芸術』」「イチロー勝利への10ヶ条」「立川談志を聴け」など著作多数。 最新刊は「東京とんかつ会議」(ぴあ刊)。

 

顔

高山コジロー

編集者・旅人・たまにバーテンダー。大学卒業後、出版社にて男性ファッション誌、女性ファッション誌、漫画誌、トラベル誌、フリーマガジンなど20 年に渡り20 誌ほど編集長として携わる。現在は白黒の雄猫と共に気ままに暮らす。小学生の頃より極度の乗り物酔いだが、なにしろ飛行機が好きなので、生涯搭乗数は優に400回を超える。忘れられぬ旅はJAL ファーストクラス(特典航空券)で行ったパリ一人旅。酒好き、旨いものに目がない「食いしん坊」でもある。「KOJIRO(コジロー)」名義にて2017 年、『TABILISTA 』にてJALサファイア会員になるために年間50回飛行機に乗り、ついでに麺を食べに行く「マイル修行&麺の旅」を好評連載。「わざわざ飛行機に乗って麺を食べに行ってきます」はその続編にあたる。

 

 

 

料理評論家・山本益博&美穂子「夫婦で行く1泊2食の旅」
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