究極の個人旅行ガイド バックパッカーズ読本

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#51

withコロナのトルコ旅行〈前編〉

文と写真・来生杏太郎

 旅行がほとんど「タブー」のようになっている状況下、私はあえて旅に出た。目的地はトルコだ。コロナ禍による入国制限が世界中で続いているが、少しずつ観光客を受け入れる国も出てきており、そのひとつがトルコなのである。
 とはいえ、果たして本当に旅行できるのか? 実際にはどんな手続きや検査が必要なのだろうか? withコロナの旅のリアルをお伝えする。

 

いまどうすれば海外に行けるのか?

「もうメールは読んだ? そういうわけで7月1日の再オープンは延期になった」
 6月も終わりに近くなった日の朝8時過ぎ、寝ぼけながら電話に出ると上司は開口一番そう言った。覚悟はしていた。私の仕事はホテルマンだ。メインターゲットのインバウンド客が戻る目処がまったく立たない状況でホテルの営業を再開させるのは無謀すぎる。収入の面では痛手だが、人事からの説明では雇用調整助成金の支給条件が緩和されたことで、当面暮らせる額の休業手当は出るという。
「最短でも再開は9月なんだから、どこか海外に行ってくれば?」
「この状態で行ける国なんてないですよ」
「そこは君の腕の見せどころだろう」
 上司の期待に応えるべく、電話を切るなり調査に入った。

 

 いま海外旅行をするには、この4つが障壁になっている。

1.観光客を受け入れている国はあるのか
2.飛行機は飛んでいるのか
3.新型コロナウイルスの罹患リスク
4.日本帰国後の空港検疫はどうなっているのか

 これらをいかにしてクリアするのか。ひとつひとつ考えてみた。

 

01
イスタンブールのグランドバザールは通常営業していたが、外国人観光客がいないので人通りは少なめ

 

候補に挙がってきたトルコ、ギリシャ、セルビア

 まず、日本からの観光客を受け入れている国を調べた。アジアは全滅だ。オーストラリアもダメ。アメリカ大陸に至っては大流行の真っ最中だ。それはヨーロッパ諸国も同様なのだが、中には観光客の受け入れを始めている国があった。セルビア、ギリシャ、トルコの3か国だ。セルビアの事情はよくわからないが、観光立国であるギリシャとトルコが早々に入国制限を解除したのは経済上の理由だろう。2、3週間の旅ならトルコのほうが楽しめるし、過去に7回行っているので不測の事態が起きても対応がしやすい。
 トルコの感染状況は、1日1000人程度で減少傾向となっていた。現地の友人に聞いてみたところ、マスクさえしていれば普通に旅行はできるとの返事があった。ただ、5月から6月にかけて数度の外出禁止令が発令されているのが懸念事項だった。旅行中に再発令された場合は、日程の変更を余儀なくされるので、スケジュールには余裕を持たなければならない。
 問題は航空便だが、エミレーツ航空やカタール航空など中東系航空会社は成田便の運行を継続していた。トルコ航空も7月から羽田便を再開するという。スカイスキャナーで調べると、成田~イスタンブールはカタール航空が週末限定キャンペーン中で、最安だと往復8万円だった。真夏のイスタンブールにしては破格の安さだ。成田~ドーハ、ドーハ~イスタンブールは毎日運行していて、乗り継ぎ時間も2、3時間と理想的だった。トルコ航空の直行便は往復10万円とやや高く、この時点では週2便だった。
 怖いのはフライトキャンセルだが、カタール航空では払い戻しや2年間有効なバウチャーへの交換などの特別措置が用意されていた。カタール航空の運航履歴を調べてみると、ここ1週間はほぼ定時で飛んでいる。
 そこまで確認し終えてから、カタール航空の公式サイトで航空券を購入した。日本帰国後に課せられる2週間の自宅待機を8月末までに終わらせることができて、かつ料金が安い帰国日を選ぶと、旅行期間は23日間になった。
 そして帰国後に待っている空港検疫は、この時点では日本入国前にPCR検査が行われていた。結果が出るまでに2日間は空港近くのホテルに隔離されることになる。たとえ陰性でも、帰宅に公共交通機関が使えないという縛りがある。成田空港から都内までタクシーとなると値は張るが、レンタカーを使えばその半額程度で収まりそうだ。その後、2週間の自宅待機に入るというわけだ。

 

02
トルコでは国内線の飛行機に何度か乗ったが、いずれも搭乗率は高かった

 

コロナ対策アプリが必要に

 チケットは購入したが、トルコ国内の行き先は白紙の状態だった。トルコを旅行した方ならわかるかと思うが、この国はたとえ1か月あっても見どころには事欠かない。くまなく旅するなら3か月は必要だろう。トルコは8回目になるが、まだまだ未踏の地は残されている。
『地球の歩き方』を取り寄せて、ルートの検討に入る。今回はトルコ東南部と東部のクルド人エリアを旅することにした。イスタンブールからシャンルウルファに飛び、陸路でシリア、イラク、イランとの国境をなぞるようにバスで東進する。アルメニアとの国境上にあるアニ遺跡までいく行くことにして、残りの約1週間は予備日に充てた。
 イスタンブール~シャンルウルファの片道航空券はトルコ航空の公式サイトで購入した。ただし、新型コロナウイルスにともなう問題がひとつあった。航空券の予約を入れる際に「HESコード」なるものを求められたのだ。
 航空会社のサイトや在イスタンブール日本領事館のサイトで調べてみると、乗客の健康状態を追跡するコード番号で、搭乗するまでに取得することが必須とされていた。航空便だけでなく、バスや列車に乗るときも必要なのだ。
 トルコ当局の公式アプリ「Life Fits Into Home」やSMSで取得できると書いてはあったが、日本の携帯電話番号ではアプリの登録ができず、SMSを送っても返信が来なかった。ただ、航空券そのものの予約はHESコードを空欄にしても購入はできたので、現地でトルコのSIMカードを買ってから登録することにした。
 短期の旅ならAIRSIMや楽天UNLIMITなどのローミングで済ますこともできるが、今回は3週間と長めの旅だ。どのみち現地のSIMは必要になる。ちなみにこのLife Fits Into Homeはなかなかのアプリで、日ごとの感染者との接触状況がわかったり、街なかでのハイリスクエリアを色分けで示してくれるなど、トルコ滞在中には重宝した。

 

03
接触確認アプリでは、過去1日、7日、14日にさかのぼって感染の恐れがある人との接触履歴を知らせてくれる

 

04
マルディンの市場。地方都市のローカルエリアはマスク着用には無頓着なところが多い

 

いつものように旅支度を進める

 宿については、到着1日目のイスタンブールだけ予約して、シャンルウルファ以降は現地で探すことにした。この状況下で混んでいることは考えにくく、オンライン旅行代理店(OTA)のサイトでは大まかな相場を調べるだけに留めた。予約に縛られる旅にはしたくなかった。
 旅行資金は現金で8万円を持って行ったが、旅が終わるまで両替することはなく、すべてキャッシングで済ませた。日本円のレートがよい両替所はイスタンブールでさえ少なかった。現地ATMでキャッシングしようとすると、7%ほどの手数料がかかると表示されるが、実際には徴収されない。私の三菱UFJ銀行VISAカードでは、規定レートでのキャッシング額+金利だけで済んだ。

 

05
成田では搭乗前にフェイスシールドを着用するようにと指示があった

 

ガラガラの成田から、いざ出発!

 出発当日の成田空港第2ターミナルは、やはり閑散としていた。夕方以降で運航しているのは、22時台のスリランカ航空、エミレーツ航空、カタール航空の3便だけだ。それでもカタール航空のカウンターには列ができている。中東系の航空会社はコロナ禍でも週7便の運航を継続していて、日本とヨーロッパを結ぶ貴重なインフラとなっていた。
 搭乗ゲートでは全員にフェイスシールドが配られ、搭乗前にはマスクと併せて着用を求められる。機内は医療施設のような様相だった。客室乗務員は全員、白い防護服にマスクとゴーグルを着用した重装備だ。乗客は欧米系と中東系が目立つ。チェックインカウンターから機内に至るまで日本人の姿を見ることはなかったので、いても数名程度だろう。フェイスシールドの着用は、慣れればさほどの違和感はない。マスクの着用も機内の乾燥で喉を痛めやすい私にはかえって都合がよかった。
 ドーハの空港は、開いている店も多く活気があった。この状況でも積極的に運航しているカタール航空のハブ空港だけのことはある。乗り継ぎ案内の表示を確認すると、9割以上がカタール航空の便だった。プライオリティーパスが使えるアルマハラウンジは休業していたが、隣のオリックスラウンジに振り替えてもらえ、乗り継ぎ時間をゆったりと過ごすことができた。イスタンブールまではあと4時間ほどだ。
 後編では、新型コロナ流行中でのトルコ旅の実情について述べたい。

 

06
乗継地のドーハ空港。成田空港よりははるかに活気があった

 

*本連載は月2回(第1週&第3週水曜日)配信予定です。次回もお楽しみに!

 

*タイトルイラスト・野崎一人 タイトルデザイン・山田英春

 

 

『バックパッカーズ読本』編集部

格安航空券情報誌『格安航空券ガイド』編集部のネットワークを中心に、現在は書籍やWEB連載に形を変えて、旅の情報や企画を幅広く発信し続けている編集&執筆チーム。編著に究極の個人旅行ガイド『バックパッカーズ読本』シリーズなど。

 

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