韓国の旅と酒場とグルメ横丁

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#51

南道から済州へ“片道3万800ウォンの旅”〈中編〉

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 新年にみなさんが福をたくさん授かりますよう、お祈り申し上げます。

 

 年末の配信に続き、今回も私の事務所の代表(日本人男性、55歳)が経験したソウル→木浦→済州の旅のレポートをお送りする。

 

セウォル号、再会ならず  

01

12月後半、銀淑が目撃したセウォル号を取り囲むフェンスに結びつけられた黄色いリボン

 

 事件の一年前、本コラムの筆者(鄭銀淑)と私に楽しい船旅の思い出をくれたセウォル号の今の姿を見届けたい。手を合わせたい。

 しかし、18時の木浦駅はすでに日が落ちていた。平和広場の刺身屋を予約してくれているお役所の人たちとの約束時間も迫っている。あきらめるしかない。釜山から列車と(慶全線)とバスを乗り継いで先に木浦駅に着いていた友人とともに刺身屋に向かった。

 しかし、この数日後、鄭銀淑が別の仕事で木浦を訪れる機会に恵まれ、木浦の北港に引き上げられたセウォル号と対面したのだ。

 

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合掌。セウォル号、2017年12月19日、午後2時半

 

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2013年6月、仁川から無事済州の港に着いたセウォル号の姿

 

 鄭から送られてきた写真を見て、全身の力が抜けてしまった。

 陸に上げられ、横倒しになっている船の姿のなんと悲しいことか。船を取り囲むフェンスには追悼の黄色いリボンが結び付けられていた。

「아이고(アイゴ)」

 この感嘆詞を初めて心から発した気がする。

 

 

船旅万歳  

 しかし、これで船旅に対する気持ちが萎えるほどやわではない。船旅はどんなに悲しい記憶でも吹き飛ばしてしまうくらい楽しいものなのだ(本コラム#06参照)。

 あまり知られていないが、木浦から済州には昔から定期航路があり、鄭銀淑は高校の修学旅行で利用したことがあるという。これまで韓日では、釜山⇔下関、大阪⇔釜山、釜山⇔対馬。韓国内では、仁川→済州、済州→釜山、済州→海南、済州⇔牛島、釜山→麗水、釜山→巨済島、莞島⇔青山島、群山⇔仙遊島、麗水⇔蓋島、木浦→黒山島→飛禽島→木浦などの船旅を経験したが、木浦・済州航路は初めてだ。

 

 

仕事納め、生マッコリ3本、迫る乗船時間  

 木浦のお役所の人たちとの楽しい会食が済んだのはその日の22時近く。これで今年の韓国関係の仕事は一段落だ。旅先での仕事納め。こんな解放感はなかなか味わえない。

 

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木浦、平和広場の海鮮料理店『松竹』でごちそうになった白身魚の刺身

 

 済州行きの船が国際旅客ターミナルを出るのは2時間半後の24時30分。どうせ船に乗ったら飲んで眠るしかないので、陸地でゼロ次回を始めるべきである。

 木浦駅の南側の干し魚市場には、2011年刊行の『韓国の人情食堂』(双葉文庫)で取材した『ヘナム・ウムシクジョム(海南飲食店)』がある。

 近代化が遅れ、それが独特の街の風情をつくりだしていた全羅道らしく、70年台の雰囲気をそのまま残した、ウナギの寝床のような店だったのだが、すっかり改装して大箱になり、駅により近いところに移転していた。

 看板メニューのピョダギ・ヘジャンクッ(1人用カムジャタン)は盛り付けがダイナミックになっていた。もともと地元向けの枯れた感じの大衆食堂だったのだが、おそらくテレビなどで紹介されたのだろう。

 それでも今のこの解放感と骨付き肉は妙にマッチする。映画『哀しき獣』で朝鮮族ヤクザの親分を演じたキム・ユンソクを気取って、骨から肉をガシガシとこそぎ、マッコリをあおる。「んむふ」。声にならない声が出る。

 

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木浦駅前、『ヘナム・ウムシクジョム』で食べたピョダギ・ヘジャンクッ(大)12000ウォンと木浦生マッコリ3000ウォン

 

 

旅客船ターミナルへ  

 友人と2人でマッコリを3本開けると、12時近くになっていた。すっかり気分がよくなり、このまま飲んでいたかった。単なる陸地の移動なら、予定などすっ飛ばし、流れにまかせて飲み続けてもいいのだが、我々を待っているのは船旅である。後ろ髪を引かれつつタクシーでターミナルに向かう。

 乗船時間は約7時間。解放感とマッコリの酔いで後先のことは考えなくなっているので、売店で缶ビールと全羅南道のイプセジュ(焼酎)2本を仕込む。つまみはイカやピーナッツなどの乾きものだ。

 

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木浦と済州を結ぶサンタルチーノ号はセウォル号ほどではないが、想像していたより大きな船だった。韓国の友人に事前にネットで予約してもらったが、平日ということもあり、乗船率は6割ほど。当日購入でも問題なかった

 

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船旅は乗り込むときがもっとも興奮する

 

 船で1泊するので、宿代が浮く。しかも船賃はたったの30800ウォンだ。経済性+旅情。韓国の船旅はもっと見直されていていい。

 いよいよ乗船だ。(続く)

 

08

一般室(雑魚寝)なら片道たったの30800ウォン(現在のレートでも約3300円)

 

 

*取材協力:全羅南道観光課『全羅道訪問の年』TFチーム、全羅南道文化観光財団

 

*1月27日(土)と28日(日)、名古屋の栄中日文化センターで、本コラムの筆者が講座「韓国、酒とつまみと酒場の話」を行います。おかげさまで27日の16:00~18:00と、28日の13:30~15:30の部は満席になりましたが、28日の10:30~12:30は受付中です。お申し込みは、電話(0120-53-8164)や下記サイト、窓口で。

http://www.chunichi-culture.com/programs/program_171715.html

 

 

 

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*本連載は月2回配信(第2週&第4週金曜日)の予定です。次回もお楽しみに!

 

 

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紀行作家。1967年、韓国江原道の山奥生まれ、ソウル育ち。世宗大学院・観光経営学修士課程修了後、日本に留学。現在はソウルの下町在住。韓国テウォン大学・講師。著書に『うまい、安い、あったかい 韓国の人情食堂』『港町、ほろ酔い散歩 釜山の人情食堂』『馬を食べる日本人 犬を食べる韓国人』『韓国酒場紀行』『マッコルリの旅』『韓国の美味しい町』『韓国の「昭和」を歩く』『韓国・下町人情紀行』『本当はどうなの? 今の韓国』、編著に『北朝鮮の楽しい歩き方』など。NHKBSプレミアム『世界入りにくい居酒屋』釜山編コーディネート担当。株式会社キーワード所属 www.k-word.co.jp/

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