台湾の人情食堂

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#47

光瀬流、台湾での1日の過ごし方

文・光瀬憲子  

 今週末、ちょっとひとりで台湾へ。最近はそんな一人旅をする人が増えている。一人旅のメリットは色々あるが、やっぱり気ままに、本当に自分がしたいことをして、食べたいものを食べれられる気楽さがいい。

 では、台湾で暮らしたり、取材をしたりしながら20年以上も台湾と関わってきた私が、自分だけのために1日、首都台北で気ままに過ごすとしたら何をするか? 本当に行きたいところへ行き、本当に美味しいものを食べるに決まっている。そんな贅沢な私の1日をみなさんにご紹介したい。

 

 

朝から妥協なし。おいしいごはんを食べに基隆へ

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しっかりと風味を残しながらも朝にふさわしい爽やかなスープに、米の香りが食欲をそそる、きしめん風麺

 

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朝から食べられるほどさっぱりしていて、新鮮で甘みのある豚のヒモ(小腸)

 

 台北とは言っても、ひとつのところに留まるのが苦手なので、とりあえず朝から電車に乗って隣町、基隆へ。台北駅から台湾鉄道(在来線)に乗り、およそ45分。日本の通勤電車のような雰囲気だが、台湾ではほんの少し電車にのるだけでかなり遠出した気分を味わえる。日本と台湾を船で行き来していた時代に栄えた港町基隆は、実は隠れグルメタウンである。

 ここには私が45分電車に乗ってでも食べたい朝ごはんがある。基隆駅の裏手にある「巷頭粿仔湯」だ。この店には米粉100パーセント、テイクアウトもNGという新鮮過ぎるきしめん風の湯麺がある。あっさりとしたスープとつるんとした米の風味漂う真っ白な麺は朝ごはんにぴったり。そしてこの店の売りは麺だけではなく黒白切と呼ばれる豚モツのスライス。朝からモツ? と驚いてしまいそうだが、台湾の人たちは朝食に豚モツを食べる。軽く湯がいただけのあっさりとしたモツはプルプルしていて臭みもない。刻みショウガと甘い醤油ダレでいただくと1日の活力が補えそうだ。

 

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基隆駅の裏手にまわり、徒歩10分。基金公路沿いに看板が出ているので、そこから坂を下って裏路地へ

 

「巷頭粿仔湯」で朝ごはんを済ませて向かいの通りに出てみると、そこから賑やかな朝市が始まっている。安一路と楽一路の交差点から伸びる安楽市場だ。細長い通路は両側にずらりと店が並び、さらに通りの中央にも小さな屋台が出る。台北の都市部にある朝市よりもずっと活気があり、みんな親切だ。すでに朝ごはんを済ませてお腹いっぱいなはずなのに、豚足の煮物や伝統菓子などが並べてあると、つい目移りしてしまう。さすが港町だけあって、魚介類も多い。観光客などまず訪れない、小さくても地元の人たちで賑わう地方都市の朝市を歩くと、その街の本当の顔が見えてくる。

 

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近所の人たちで朝から元気な安楽市場。食材、朝ごはん、雑貨などの店がひしめき合う地元色の濃い市場だ

 

 

台北に戻り、龍山寺の近くで人気の魯肉飯を

 朝ごはんを基隆でいただいたあとは、台北市内に戻ってランチだ。台北で一人旅をする場合、やはり中心に据えるのは「何を食べるか」である。朝ごはんが基隆のさっぱりきしめんなら、昼は台北の下町でしっかり魯肉飯を食べたい。市場を歩いたり、電車で移動したりすればそれなりにお腹も空く。お気に入りの下町、艋舺(万華)で一番おいしい魯肉飯は、龍山寺の向かいにある「四方阿九魯肉飯」だ。

 広くて清潔感のあるオープンな店構えなので一人でも入りやすい。しっかりした味付けで食べごたえのある魯肉飯は地元の人たちのお墨付き。さらに白菜の煮物や青菜の炒め物なども充実していて、味にハズレがない。この店はテイクアウトもできるので、LCCなら帰りのフライト用に魯肉飯弁当を買っておくのもいい。

 

 

龍山寺でお参り→ピーナッツのお汁粉

 おなかが満たされたら、龍山寺でお参りだ。旅行者は観光目的で訪れるが、台湾のお寺は地元の人たちにとって憩いの場。買い物帰りに、デートの途中に、そして別段することがないときに、ぶらりと訪れて手を合わせる。そんな地元の人たちに混じって、何の気なしに龍山寺を訪れ、小銭で線香を買ってお参りする。そんなふうに肩の力を抜いた参拝が台湾のお寺にはよく似合う。

 

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龍山寺の境内。お参りは自己流でもかまわない。ここには商売繁盛、受験、恋愛など、さまざまな神様がいる

 

 龍山寺の向かいにある艋舺公園のまわりにはさまざまな飲食店が並んでいるが、そのなかに「三六圓仔店」という台湾伝統スイーツの店がある。ここでは温かい汁粉やピーナッツの粉をまぶしたお餅といった台湾ならではのおやつが楽しめる。私のお気に入りはピーナッツ汁粉。柔らかく煮込まれた白いピーナッツはほんのり甘く、体が芯まで暖まる。ほんの少し肌寒くなってきた秋の台北にぴったりのほっこりした控えめな甘さがいい。

 

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お気に入りのピーナッツ汁粉。油條を浸しながら食べると汁粉のうまみがアップする

 

 

変わりつつある迪化街を散歩

 最近、散歩が楽しいのは生まれ変わりつつある迪化街界隈。もともと迪化街は旧正月前にもっとも賑わいを見せる乾物街だが、従来の干し物や漢方薬の店に加えて、このところおしゃれな小物を扱う雑貨店や、独創的なブティック、レトロなカフェなどが立ち並び、若者たちから人気を集めている。

 ここでは土産を物色するのもいい。干し椎茸や乾燥ホタテはママ友に喜ばれる。からすみは酒好きな友だち。ウーロン茶の小さなパックは仕事でお世話になっている人たち。レトロな台湾の地図などが描かれた絵葉書は自分のために数枚。いつのまにか手荷物が膨れてくる。

 

 

永楽市場の近くの人気店で大腸麺線

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上品にまとまったクセのない麺線。鰹節の風味は控えめで、ニンニクペーストと香菜がプラスされると食べやすい

 

 歩き疲れたら、夕飯に麺線と臭豆腐の組み合わせはどうだろう。迪化街の南端、永楽市場のそばに「華・大腸麺線・臭豆腐」という麺線と臭豆腐だけを扱う小さな食堂がある。

 麺線や臭豆腐は台湾人にとっては「おやつ」に過ぎない。だから食事時以外でも客の出入りは多く、常に混雑している。この店の麺線はクセがないので麺線初心者にもぴったり。ほんの少しのニンニクペーストと香菜(パクチー)がほどよいアクセントになり、食欲をそそられる。臭豆腐は苦手意識がある人も多いが、案外食べず嫌いなことも多い。カリッと揚がった臭豆腐と汁気たっぷりのキャベツの漬物がとても良く合う。

 

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食事時はもちろん、おやつ時も混雑する「華・大腸麺線・臭豆腐」は待ち時間も考慮に入れて

 

 

迪化街のデザートはホット杏仁豆腐

 麺線と臭豆腐を食べればかなり満腹感が得られる。ふたたび迪化街をぶらつき、バロック風の建築物を眺めながら、迪化街のはずれのちょっとおしゃれなスイーツ店「夏樹甜品」を訪れる。うっかりすれば見過ごしてしまいそうな小さな店で、夏は冷たいかき氷や杏仁豆腐、冬は温かい汁粉やホット杏仁豆腐を扱っている。店構えや器が可愛らしいうえに、女子力がアップしそうな美容効果のあるヨクイニンや白キクラゲのデザートもあるので女性に人気だ。

 

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レトロな器でいただくトロリとした杏仁豆腐。温かい杏仁豆腐はアーモンドがさらに香ばしい

 

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一人でふらりと訪れたくなる、おしゃれで可愛らしい店構え

 

 

夜はワインとカラスミ

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カラスミには日本酒だと思っていたが、よく冷えた白ワインにもぴったり。肉厚で濃厚

 

 夜が更けてきたら夜市…といきたいところだが、今日はせっかく迪化街にいることだし、バーホッピングはいかがだろうか。最近はおしゃれな洋風や中華風のカフェバーが続々とオープンしている迪化街。「Le Zinc 洛 Café & Bar」は落ち着いた雰囲気を持つ大人のカフェバーで、ビールの品揃えが豊富なほか、安くて美味しいワインも用意されている。

 しかも酒肴にはカラスミのスライスがある。かつては日本人も大勢いたであろう迪化街の片隅で、ワイングラスを傾けながらカラスミをつまむなんて、なんとも粋な台北一人旅ではないか。

 

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奥行きのある店内では、地元の客たちが静かにおしゃべりをしている。ワインを飲みながら読書を楽しむのもいい

 

 

 

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*本連載は月2回(第1週&第3週金曜日)配信予定です。次回もお楽しみに!

 

 

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著者:光瀬憲子

1972年、神奈川県横浜市生まれ。英中日翻訳家、通訳者、台湾取材コーディネーター。米国ウェスタン・ワシントン大学卒業後、台北の英字新聞社チャイナニュース勤務。台湾人と結婚し、台北で7年、上海で2年暮らす。2004年に離婚、帰国。2007年に台湾を再訪し、以後、通訳や取材コーディネートの仕事で、台湾と日本を往復している。著書に『台湾一周 ! 安旨食堂の旅』『台湾縦断!人情食堂と美景の旅』『美味しい台湾 食べ歩きの達人』『台湾で暮らしてわかった律儀で勤勉な「本当の日本」』『スピリチュアル紀行 台湾』他。朝日新聞社のwebサイト「日本購物攻略」で訪日台湾人向けのコラム「日本酱玩」連載中。株式会社キーワード所属 www.k-word.co.jp/  近況は→https://twitter.com/keyword101

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