究極の個人旅行ガイド バックパッカーズ読本

究極の個人旅行ガイド バックパッカーズ読本

#47

いまだから観たい名作ロードムービー

文・室橋裕和

 映画の中で描かれているあの場所に立ちたい。そんな思いから旅立ったという人もまた多い。とくに、主人公が旅をしながら、なにかを発見し変わっていくことを題材にした、いわゆる「ロードムービー」は人を旅に誘う。旅先の風景がふんだんに描かれ、異文化との衝突や、その中で成長していく人の姿に共感し、自分も旅立ちたくなってくるのだ。そんなロードムービーのおすすめを紹介したい。

 

 

きっと旅に出たくなる映画7選

 

『劇的紀行 深夜特急』(1996年、日本)
 バックパッカーのバイブルとして知られる沢木耕太郎の名著を映像化。主人公は若き日の大沢たかおで、彼の雰囲気はやや明るいが『深夜特急』の世界に実によく合っているように思う。
 彼は原作に忠実なルートで、ユーラシア大陸を西へ西へと旅していく。アジアの熱気に揉まれ、少しずつたくましくなっていく姿が描かれる。井上陽水の主題歌のどこか切ない感じもたまらない。
 原作は70年代後半のユーラシア大陸が舞台だが、撮影時は90年代半ば。香港やシンガポールは相応に経済発展を遂げており原作とはやや異なるものの、新しい時代の空気も取り入れつつ作品はつくられている。クルー一行が実際に長丁場の旅をしながら撮影を敢行したという。
 熱狂的なファンがたくさんいる作品の映像化となると賛否両論つきものだが、こちらは原作ファンの評価も高く、いまも色褪せることはない。

 

01

 

『ザ・ビーチ』(2000年、アメリカ)
 アレックス・ガーランドの小説を映像化した作品で、『タイタニック』で一躍トップスターになったレオナルド・ディカプリオが主演。タイ南部のどこかにあるという伝説の楽園を探すバックパッカーたちを描いている。
 作品にはバンコクのカオサン通りや、クラビー、それにピピ島といったバックパッカーに人気の場所がふんだんに登場し、雰囲気を盛り上げる。タイ南部にバックパッカーが急増するきっかけにもなり、とくにピピ島は大人気となった。
 しかし一方で観光客の急増により島の環境破壊が進み、劇中に登場するマヤ湾などは生態系保護のため現在は立ち入れなくなっている。それでも映画に出てきた、まさしく秘境のようなビーチや美しいサンゴの海域はまだ健在だ。

 

02

 

『恋する惑星』(1994年、香港)
 ウォン・カーウァイ監督をスターダムに押し上げた作品で、トニー・レオン、フェイ・ウォンの中華圏を代表する2大俳優に加えて金城武も出演。
 舞台となっているのは香港中心部・九龍にある重慶大厦(チョンキン・マンション)だ。この雑居ビルに出入りする男女の恋愛模様を、スタイリッシュに描き話題となった。
 重慶大厦といえば当時からいまも、香港におけるバックパッカーの最大基地として知られる。複雑に入り組んだ構造で、怪しげな店や小さな工場や住居が密集するカオスのようなビルで、その中にはバックパッカーが泊まる安宿もたくさんあるのだ。そんな重慶大厦の30年近く前の様子が描かれていて面白い。その頃の、まだ猥雑さをたっぷり残している香港の街並みも必見だ。

 

03

 

『イントゥ・ザ・ワイルド』(2007年、アメリカ)
 豊かな家庭で何不自由なく育ち、優秀な成績で大学を出たはずの青年クリスは、その環境に疑問を持ち、すべてを投げうって旅に出てしまうのだ。
 彼はヒッチハイクでアメリカ大陸を流浪し、アルバイトで生計を立て、さまざまな人と出会い別れて、やがてアラスカへとたどり着く。念願だった「荒野」アラスカは、しかし過酷な大地だった。無一文でなにも持たずに旅を続けてきた彼は、廃バスを寝床にするものの、この地で生きるための食料も見つけられず、最後は命を落とす。その衝撃的な結末は、実話でもある。監督は俳優としても知られるショーン・ペン。

 

04

 

『モーターサイクル・ダイアリーズ』(2004年、アルゼンチン)
 かの革命家チェ・ゲバラは、旅人でもあった。彼はブエノスアイレス大学で医学を学んでいた23歳の頃、友人とアルベルト・グラナードと南米大陸を放浪する旅に出たのだ。およそ半年間、1万2000キロに渡る大旅行だった。ブエノスアイレスを出てからは、ふたりでおんぼろのバイクにまたがり、荒野を走り、アンデス山脈を越え、古代遺跡マチュピチュに圧倒され、まさしくバックパッカーのように旅を続けていく。
 そこで出会うのは、貧しくも懸命に生きる人々だった。厳しい暮らしを余儀なくされている先住民のインディオたち。ペルーではハンセン病患者が、チリでは鉱山労働者たちが苦しい生活を送る姿を目の当たりにする。この経験からゲバラは、人々のためになる国をつくろうと、革命家になる決意をしたともいわれる。

 

05

 

『八十日間世界一周』(1956年、アメリカ)
 舞台は19世紀末、ロンドン。飛行機も高速鉄道もまだ現れていない。そんな時代に、果たして世界一周は可能なのか。それも80日間という期間で……。
 主人公は仲間とそんな賭けをしてしまうのだ。そして80日間で世界をぐるりとひと回りできるのか、実証するための旅に出る。船や鉄道を駆使し、そしてときには気球に乗って、ヨーロッパからエジプト、インド、タイ、香港、さらには日本にもやってくる。蒸気船で太平洋を渡り、サンフランシスコからは大陸横断鉄道でニューヨークを目指す。ロンドンまで、80日以内で戻ることはできるだろうか。
 フランスの小説家ジュール・ヴェルヌの作品を映像化したもので、第29回アカデミー賞では作品賞、脚色賞、劇・喜劇映画音楽賞など5部門で受賞した名作中の名作だ。

 

06

 

『スタンド・バイ・ミー』(1986年、アメリカ)
 旅の原点は小さな好奇心だと思うのだ。あの路地を曲がったら何があるだろう。隣の町まで歩いてみようか。子供の頃、誰しもそんなことを思ったのではないだろうか。
 あの頃の淡い気持ちを思い出させてくれる映画だ。12歳の少年たち4人は、遠くの森に死体が放置されているという噂を聞きつけ、ともに旅に出る。鉄道の線路に沿って、ひたすらに歩いていくのだ。ときにケンカをし、野宿をしたり、鉄橋の上で汽車に追いかけられたり、彼らの冒険と友情はまぶしい。鉄路に沿って広がるアメリカの大自然も心を打つ。
 自分たちの住む世界を飛び出して、少しでもいいから遠くへ行きたい。知らない場所を見たい……きっと彼らも持っていたそんな思いは、バックパッカーにも共通しているはずだ。

 

07

 

*本連載は月2回(第1週&第3週水曜日)配信予定です。次回もお楽しみに!

 

*タイトルイラスト・野崎一人 タイトルデザイン・山田英春

 

 

『バックパッカーズ読本』編集部

格安航空券情報誌『格安航空券ガイド』編集部のネットワークを中心に、現在は書籍やWEB連載に形を変えて、旅の情報や企画を幅広く発信し続けている編集&執筆チーム。編著に究極の個人旅行ガイド『バックパッカーズ読本』シリーズなど。

 

紀行エッセイガイド好評発売中!!

okinawa00_book01

最新改訂版 バックパッカーズ読本

究極の個人旅行ガイド バックパッカーズ読本
バックナンバー

その他の辺境・秘境の旅

ページトップアンカー