料理評論家・山本益博&美穂子「夫婦で行く1泊2食の旅」

料理評論家・山本益博&美穂子「夫婦で行く1泊2食の旅」

#46

9月の名古屋&岐阜

文と写真・山本益博

 

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名古屋「吉い」はもまつ椀、岐阜「泉屋」鮎を味わう

名古屋の新栄(しんさかえ)に、極めて優れた日本料理店があります。その名を「吉い」といい、ご主人の吉井智恵一さんがおかみさんと二人で切り盛りする、わずか7人のみのカウンター割烹の店です。1日7人のお客様のみなので、その席を予約するのは並み大抵のことではありません。私は名古屋の友人に「いつでも結構ですから」とお願いして、席が取れるのを待つばかりなのですが、8月に名古屋へ出かけたばかりというのに、9月に席が2席取れましたと連絡を受け、喜び勇んで家内の美穂子と飛んでいきました。


「吉い」がどのように料理がすぐれているかというと、どの料理もできる限り、華美を排して、簡潔に調理し、器に盛り付けてあります。例えば、今年春にいただいた「筍」。湯がいた筍のほか、木の芽も若布も鰹節も添えられていません。土から顔をのぞかせたばかりの筍の命、それだけを愛でるという料理の姿勢なのです。なんと甘い筍の命だったでしょう。

 

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茄子と塩昆布の春巻き
 

 

今回も素晴らしい料理に出会いました。9月の日本料理に「はもまつ椀」があります。旬には「走り」「盛り」「名残り」があり、「名残り」の鱧と「走り」の松茸が、お椀の中で一瞬出会う「はもまつ椀」は、9月の代表的なお椀として知られています。ところが、今回の「吉い」のお椀には、骨きりされた鱧が見当たりません。浮かんでいるのは松茸の薄片のみ。ところが、お出汁をいただくと鱧の味わいがしっかりと伝わってきます。鱧の骨をベースにしたお出汁が、鱧の身以上の存在感を示しているのですね。これに、松茸の秋の香りが重なり、いただきながら陶然となりました。こんな「はもまつ椀」は、かつて味わったことがありません。日本料理の引き算のスピリットで、限界まで素材をそぎ落とした傑作です。

 

 

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鱧なしのはもまつ碗

 

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ご主人の吉井智恵一さん

 

 

「吉い」の料理はすべてこのスタイルです。あまりに素っ気ないという伝統的な日本料理を好むお客様も多いでしょうが、ここまで「自己流」を貫く料理人は、今まで50年以上日本料理を食べてきて、35年前の京都の「千花」の先代主人永田基男さん以来です。料理は一期一会、この天才料理人の料理をリアルタイムで味わえる幸せを、「吉い」のカウンター席に着くたびにかみしめます。

 

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家内の美穂子とカウンターで

 

 今回は、名古屋駅からほど近い中村区の「ストリングス ホテル」に1泊し、翌日は、岐阜まで出かけて、川原町の「泉屋」で「鮎」を堪能しました。水系の違う岐阜県の川で獲れた鮎を塩焼きにしての食べ比べ、頭からがぶりと食いつき、干物状になった尻尾まで食べつくします。これには、ビールがことのほか合います。

そして、締めには、鮎の香りの豊かなスープに小ぶりの鮎を添えた「鮎ラーメン」、岐阜までやってこないと楽しめない名品です。


 

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鮎の塩焼き

 

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鮎ラーメン

 

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泉屋の佇まい

 

そのあと、電柱のない、江戸時代の宿場町のような風情の川原町をぶらぶら散歩し、その先にある「YAJIMA COFFEE」へ。丁寧に淹れられた香り高い「イエメン モカマタリ」と酸と甘みのバランスの良い「オリジナルブレンド」をゆっくりと味わいました。どちらも、ナッツを使った「グルノーブル」というフランス菓子ととても相性が良かったです。「YAJIMA COFFEE」は、コーヒー好きが集まる大人の憩いの店といった感じです。

 

 

 

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川原町の街並み

 

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川原町の軒先を彩る岐阜提灯

 

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YAJIMA COFFEE

 

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丁寧なドリップ

 

 

次回は、上海です。

 

 

「吉い」

問い合わせ/052-241-0686
住所/名古屋市中区新栄2-8-13 シャトー秋月 1F

■「川原町泉屋

住所/岐阜市元浜町20
問い合わせ/058-263-6788 
営業時間/11:30~14:00 17:00~20:00
定休日/水曜日休み

http://www.nagaragawa.com

■「YAJIMA COFFEE

 

住所/岐阜市大宮町1-8
問い合わせ/058-215-6890 
営業時間/11:00〜18:00
定休日/火曜日休み

http://yajimacoffee.jp

*この連載は毎月25日に更新です。

山本さん顔

山本益博(やまもと ますひろ)

1948年、東京・浅草生まれ。早稲田大学第ニ文学部卒業。卒論が『さよなら名人藝―桂文楽の世界』として出版され、評論家としてスタート。幾度も渡仏し三つ星レストランを食べ歩き、「おいしい物を食べるより、物をおいしく食べる」をモットーに、料理中心の評論活動に入る。82年、東京の飲食店格付けガイド(『東京味のグランプリ』『グルマン』)を上梓し、料理界に大きな影響を与えた。長年にわたる功績が認められ、2001年、フランス政府より農事功労勲章シュヴァリエを受勲。2014年には農事功労章オフィシエを受勲。「至福のすし『すきやばし次郎の職人芸術』」「イチロー勝利への10ヶ条」「立川談志を聴け」など著作多数。 最新刊は「東京とんかつ会議」(ぴあ刊)。

 

 

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