旅する&恋する! 韓国ドラマ

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#46

韓流歴史紀行〈7〉『西便制』の青山島

文と写真・康 熙奉(カン ヒボン)

 全羅南道(チョルラナムド)の青山島(チョンサンド)は、TVドラマや映画のロケ地としてよく使われる島だ。映画なら『西便制(ソピョンジェ)』、ドラマなら『春のワルツ』や『ピノキオ』。ロケ地として多用される理由は青山島に行けばわかる。どこへ行っても風光明媚な島なのである。

 

7-1

小さい島だが、標高400m近い山がいくつもある

人を手招きしてくれる郷愁

 青山島は、莞島(ワンド)から南に約20キロメートルの距離にある。面積は約42平方キロメートルで、伊豆大島の半分くらいの大きさである。

 莞島からフェリーに乗ると、およそ45分で青山島に着く。海上から青山島が見えたときは、とても幻想的だった。

 小さな島だが、とがったような山がいくつもあり、島全体が海の中から空に向かって突き出たような雰囲気があった。

 

7-2青山島は莞島からフェリーで45分だ

 

 その青山島の港に立ったとき、真っ先に目に入ったのは、入り江に停泊する漁船の先に見えていた小山だった。

 正三角形のように秀麗な斜面を持った山で、一枚の絵に見立てた場合、「前に漁船の群れ、後ろに三角の山」という構図は、人を手招きしてくれる郷愁があった。

 恰好の目標なので、まずはその山に向かって歩きだした。

〈頂上まで登って港を見下ろしたら、さぞかし眺めがいいだろう〉

 天下人になったような思いがよぎった。

 

7-3漁船がたくさん停泊する港の先に正三角形の小山が見える

 

 何軒もの食堂を過ぎ、旅館を通り抜けると、島の周回道路に出た。その道を横切って進むと警察署があった。小さな島のことだから、派出所を一回り大きくした程度の建物である。もちろん、警察署に用事はないから、右に曲がって坂道を上り始めた。

1960年代の風情が残る

 大きな声が聞こえる。道端に5人の男たちが座り込んでいた。といっても、みんなで島の将来を熱く語り合っているわけではなく、嬌声をあげて花札に興じているのである。しかも、賭け事の紙幣を路上で重ねている。

〈警察署のすぐそばで大胆きわまりない〉

 そう思えるが、警察もこんなことをいちいち取り締まっていたら、地元の人たちと要らぬ軋轢を生んでしまうだろう。

 というより、ここで嬌声をあげている男たちの中に、非番の警察官がいるかもしれない。シャツを脱ぎ顔を真っ赤にして熱くなっている短髪の50代が、意外と署長だったりして……。人は見かけによらぬほうが面白い。

 白熱する勝負をしばらく見ていたが、「これを見るために青山島に来たわけじゃない」と思いなおし、再び歩きだした。

 坂を上って行くと、道が周回道路に合流した。残念ながら、小山の頂上に向かう道はなさそうなので、いったん港に戻ることにした。

 すると、空車のタクシーが通りかかった。なんというタイミングの良さ。離島どころかソウルにいるかのような便利さだ。

 運転手さんは30代の男性で、優しい目をしていた。口調もていねいだった。

 早速、『西便制』の撮影に使われた民家まで連れて行ってもらった。

  車の中から見える景色がすばらしい。美しい海岸線、青々とした麦畑、大樹が生い茂る山、人々が寄り添いながら暮らしている集落……。青山島では見るものすべてがどこか懐かしい。

「ここに来る人がよく言うんですよ。1960年代の風情をこれほど残している場所も珍しい、と」

 運転手さんはそう言った。

名画のシーンが浮かんでくる

 やがて、『西便制』でロケに使われた民家に着いた。

 藁葺き屋根の古い民家だった。映画の場面を再現するような、主人公たちの「そっくりさん人形」も作られていた。

7-4『西便制』のロケに使われた民家

 

 この民家を撮影に使った『西便制』は1993年に制作された映画で、日本では『風の丘を越えて』というタイトルで公開された。

 パンソリという朝鮮半島伝統の謡曲を歌う旅芸人の話で、パンソリを上達させるために父親が娘を盲目にさせてしまうという悲話が織り込まれていた。

 旅芸人の親子3人が、地方の誰も通らないような小道で、「珍島アリラン」を歌いながら陽気に踊るシーンが忘れられない。

 貧しい日々の中で必死に生きている3人が、束の間に共有した家族の絆。その喜びが映像の中ににじみでていた。

 そのシーンを撮影した場所も青山島の田舎道だという。映画に出てきたような小道を歩いてみた。

 低い石垣で仕切られた細い道がくねくねと続いている。それを見ていると、まるで『西便制』の名場面がフラッシュバックのように甦ってきた。

 

7-5起伏が多い土地を巧みに利用して畑が広がっている

 

 遠くに目をやると、上にいくに従って緑の色合いが変わる段々畑が見える。ありふれているようで、どこにでも見られない風景。それは水彩画のようであり、いつまで見ていても飽きることがなかった。

 

(次回は青山島が舞台となった『春のワルツ』について触れます)

 

*筆者・康 熙奉のプロフィール&近況はtwitterをご覧ください→https://twitter.com/kanghibong

 

*本連載は月2回配信(第1週&第3週木曜日)予定です。次回もお楽しみに!

 

 

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