台湾の人情食堂

台湾の人情食堂

#46

台湾リピーター向け、台北のおすすめ7店

文・光瀬憲子  

 台湾に長年住み、台湾で食べ歩く仕事をしていると、よく日本の知り合いからおすすめの店を聞かれる。そんなとき私はたいてい、「台湾に行くのは何度目?」と尋ねることにしている。初めての台湾なのか、2度目なのか、リピーターなのかによって、食べてほしいものは異なるからだ。もし台湾リピーターであれば、ここでご紹介する7店にぜひ足を運んでみてもらいたい。

 

 

牛スジでビール→〆は真っ赤な牛肉麺!

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スジも赤身もホロホロにやわらかい牛肉麺。トマトの甘みがやさしい

 

 台湾グルメの代表的な存在とも言える牛肉麺。台北市内だけでも数え切れないほどの専門店があり、台湾人一人ひとりが自分のお気に入りの店を持っている。ファンが多いだけに、競争も厳しい牛肉麺業界で、地元の人々に密かに支持されているのが日本人留学生も多い師範大学のそばの「老王紅焼牛肉麺」だ。

 老舗だけあって、店構えも味がある。旅行者はめったに訪れないが、柔らかなスジ肉の牛肉麺を求めて地元ファンが足繁く通う店なのだ。牛肉麺店では醤油煮込みの紅焼(赤)とクリアスープの清燉(白)の2種類を用意している場合が多いが、老王は紅焼1本勝負。おすすめはなんと言ってもトロトロに煮込まれたスジ肉だ。紅焼スープはやや辛めの味付けだが、トマトのようなフルーティーな甘みが加わり、辛さのなかにほどよい甘さが溶け込んでいる。

 この店にはなんとビールも置いてあり、牛スジだけを一皿頼んでビールのおともにすることもできる。牛肉麺の店でビールとスジ肉のツマミをいただくなんて、ツウの中のツウではないか。

 

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師範大学のそばにある「老王紅焼牛肉麺」。あまり人通りのない場所にあるのに、昼時はファンが集まる

 

 

赤と白の食べ比べも楽しい北投の牛肉麺

 

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北投「志明牛肉拉麺」の紅焼牛肉麺。麺の縮れ具合が絶妙。肉はサクッと口の中でほぐれる

 

 もう一軒、台北の温泉リゾートにある「志明牛肉拉麺」は絶品の白スープの牛肉麺を出すことで知られているが、紅焼もなかなかのハイレベル。北投の温泉旅館でこの牛肉麺を紹介してもらったとき、赤派と白派で旅館のスタッフたちの意見がまっ二つに割れた。「絶対に白を食べるべき」という人と「赤のほうが美味しい」という人が半々だったほどだ。

 実際、店を訪れ、テーブルを見渡してみると、赤と白の割合はほぼ半々。この店の白は牛肉麺大会にランクインしたほどの名店だが、赤も負けていないというわけだ。紅焼スープの辛さはそれほどでもないが、濃厚なダシと柔らかな肉が味わえる。麺はやや縮れた太麺で、弾力がものすごい。コシのある麺と柔らかな肉の組み合わせが絶妙なバランスである。この店を2人以上で訪れたら、やはり白と赤を1杯ずつオーダーしたい。

 

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外にテーブルを並べただけの店だが、牛肉麺大会で入賞を果たした名店

 

 

繊細な客家料理

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豆板醤で味付けされた豆腐(右上)、ゴーヤの詰め物(手前中央)、タケノコの煮物(左上)はいずれも日本人の味覚によく合う

 

 台湾はさまざまな文化の融合体だと言われるが、そんな複雑な台湾文化の一端を担うのが客家(はっか)と呼ばれる人々だ。同じ漢民族だが独立した文化を持ち、倹約家で料理上手なことで知られる。

 流浪の民だった客家の人々は、住み着いた土地でいかに少ない食材から美味しいものを作るか、少ない食べ物でどうやって空腹を満たすか、ということを常に考えて料理をしていたという。

 また、卵焼きや豚の角煮など、もともと客家料理だったものが台湾料理として定着したものも多い。そんな客家の家庭料理を専門に扱うのが「五月雪」というレストラン。代表的な客家料理である苦瓜封は、半分に切ったゴーヤの中に肉や野菜を詰めて煮込む料理。見た目のインパクトにちょっと戸惑うかもしれないが、長時間煮込んであるために驚くほど柔らかい。肉や野菜をゴーヤに詰めることでカサを増し、豪華なもてなし料理に見せたことが発端だったとか。客家料理にはそんな工夫が随所に施されている。

 

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五月雪とは5月に咲く白い花のこと。客家の人々にとって故郷を感じさせる日本で言えば「桜」のような存在

 

 

多彩な家庭料理をつまみにビール

 

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大ぶりの海老とフワフワの玉子の炒め物(右)とタウナギのあんかけ炒めがビールによく合う

 

 台湾人はハレの日の会食に海鮮を食べることを好む。ここ「田園台菜海鮮餐廳」は、少しだけ贅沢で台湾らしい食事を楽しむことができる店。フカヒレや北京ダックはないけれど、たとえばエビと卵の炒め物だったり、タウナギの炒め物だったり……気さくな仲間と少しいい店に行きたいときにちょうどいい。エビは大ぶり、玉子はフワフワで、味付けは濃すぎず、薄すぎず。ビールにちょうどいい程度。タウナギの炒め物は見た目が豪快だが、丁寧に味付けされていて盛り付けも見みごとだ。家庭料理をツマミにビールを空ける台湾のおじさんたちは、本当に幸せそうな顔をする。

 

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平日でもなかなか予約の取れない人気店

 

 

北京ダックのハーフサイズ

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艶やかでパリッとした食感の皮。肉は締まってはいるが、ジューシーで肉汁たっぷり

 

 台湾旅行と言えば、屋台グルメやスイーツだが、一晩だけ豪華な食事をしたい。そんなときはホテルのレストランで北京ダックはいかがだろうか。

 北京ダックは通常、1羽まるごとをオーダーするので、最低でも5人はいないと食べきれない。でも台北のハワードプラザホテルの「珍珠坊」では半羽から扱っている。予約は必要だが、半羽なら2〜3人でも楽しめる量だ。

 あめ色に光る北京ダックの皮、肉汁が染み出す鴨肉、甘辛い味噌ダレとネギを一緒に薄皮に包み込んで頬張る。旅の疲れが一気に吹き飛ぶような旨さだ。この店には他にも広東料理の飲茶でよく見られるチャーシューまんやプリプリの海老蒸し餃子などもあり、どれもハズレがない。

 

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ハワードプラザホテルの中にあるレストランなので、ちょっと贅沢な雰囲気を味わえる

 

 

豚モツで一杯→麺で〆る

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豚の頬肉をショウガと甘口醤油タレでいただく。これ以上ないビールのおとも

 

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新鮮でフワフワなコブクロ。ゆがいただけなのに臭みがなく、食感はもちもち

 

 旅行中、贅沢な食事をする夜もあれば、下町で気取らずに一杯、という夜もあっていい。それなら迷わず艋舺(万華)の「龍城號」へ足を運ぼう。

 ここは100年以上続く老舗の麺店。もちろん、麺もスープもすばらしいが、黒白切と呼ばれる豚モツのスライスとビールも楽しめる庶民の居酒屋なのだ。あまり遅くまで営業していないのが残念だが、夕食時ともなれば豚モツ2~3皿にビールを一杯ひっかけて、最後は麺でシメよう、という魂胆でやってくる地元のおじさんたちで満席になる。

 特におすすめなのは白く艶やかなコブクロだ。新鮮で臭みがなく、もっちりとした歯ごたえは思わず叫びたくなるほど旨い。

 

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看板メニューのひとつである鶏肉スープ。長時間煮込まれたモモ肉は柔らかくて栄養もたっぷり

 

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外観はリニューアルしても味は変わらず。100年以上の歴史を持つ「龍城號」

 

 

盛りは豪快、味は素朴で万人に愛される伝統スイーツ

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ショーケースの中から好きなトッピングを選んでのせる台湾かき氷。煮豆は優しくて素朴な甘みが特徴

 

 台湾でかならず体験したいスイーツはやはりかき氷。でも、本当の台湾らしさを味わうなら、マンゴーかき氷ではなくて剉冰(ツォビン)だ。フワフワの氷に何種類ものトッピングをのせた食べごたえのある伝統スイーツ。

 艋舺の「龍都氷菓専業家」は100年近い歴史を誇る、特にファンの多い老舗だ。人気の秘訣はそのボリュームと価格。そして素朴な甘さが売りの煮豆や芋といったトッピング。もちろんシーズンのときはマンゴーかき氷だってやっている。かき氷のほかにも、フルーツシェークやピーナッツ汁粉などの伝統スイーツメニューが揃っており、老若男女を問わず、台湾の人々に愛され続けている。

 

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甘過ぎず、飽きが来ないため、中年男性がひとりでも訪れる。それが台湾伝統スイーツだ

 

 

*今回ご紹介した7店のうち☆マークの付いた5店は、12月8日からのツアー『光瀬憲子と行く台北2泊3日朝市・夜市めぐりと伝統スイーツの旅』で訪問予定です。航空券は自己手配も可能。夕食後、ご希望の方は光瀬が大衆酒場へご案内します。ぜひご参加ください。詳細は下記で。

http://unipack.union-air.co.jp/feature/tpe.php

 

 

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*本連載は月2回(第1週&第3週金曜日)配信予定です。次回もお楽しみに!

 

 

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著者:光瀬憲子

1972年、神奈川県横浜市生まれ。英中日翻訳家、通訳者、台湾取材コーディネーター。米国ウェスタン・ワシントン大学卒業後、台北の英字新聞社チャイナニュース勤務。台湾人と結婚し、台北で7年、上海で2年暮らす。2004年に離婚、帰国。2007年に台湾を再訪し、以後、通訳や取材コーディネートの仕事で、台湾と日本を往復している。著書に『台湾一周 ! 安旨食堂の旅』『台湾縦断!人情食堂と美景の旅』『美味しい台湾 食べ歩きの達人』『台湾で暮らしてわかった律儀で勤勉な「本当の日本」』『スピリチュアル紀行 台湾』他。朝日新聞社のwebサイト「日本購物攻略」で訪日台湾人向けのコラム「日本酱玩」連載中。株式会社キーワード所属 www.k-word.co.jp/  近況は→https://twitter.com/keyword101

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