台湾の人情食堂

台湾の人情食堂

#45

台北のオフィス街、穴場ランチストリート

文・光瀬憲子  

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占い横丁などで知られている行天宮からわずか徒歩5分の錦州街は、地元の人たちに愛されているグルメストリート

 

 台北市内の夜市や朝市などは、外国人旅行者が行きやすい観光スポットだ。でも台北には、それ以外にもグルメスポットがあちこちに存在する。狙い目はオフィス街。企業が集中するエリアには、美味しい食堂が軒を連ね、ランチ目当ての会社員たちを奪い合っている。

 台北の東区に位置する錦州街は銀行やオフィスなどが多いエリアだが、市場などの生活施設もあり、生活圏と商圏が入り交じったようなところ。近所の買い物客や会社勤めの若者はいるが、観光客の姿はあまりない。だが、実は行天宮や占い横丁などの有名観光地から徒歩圏内なため、旅行者にとっても超穴場なグルメスポットなのだ。

 

 

七面鳥の肉と豚の脂身のよくばり丼

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魯肉飯にするか雞肉飯にするか、なかなか決められない人のためのミックス丼。豚の油と鶏の旨味を一緒に味わえる招牌飯

 

 最初のおすすめは赤い看板が目印の『冠鼎雞肉飯』。

 狭い店内は昼どきにはあっという間に満席になる。看板に掲げる雞肉飯が主力メニューだが、ほかにも麺類やサイドメニューが充実している。オフィス街らしく、お弁当もある。

 こういった食堂では、店内で食べる客とテイクアウトの客が半々。店内で食べるつもりなのに間違ってテイクアウトの列に並んでしまうこともあるので、店内を見回して席が空いていないかまずは確認。案外、長蛇の列は弁当待ちで、店内には空席が、ということもあるからだ。

 雞肉飯は台湾中部の嘉義発祥の小さな丼物だ。魯肉飯に似ているが、白米の上に鶏の胸肉やもも肉のほぐしたものがのっている。雞肉飯の「雞」は通常、七面鳥の肉を指す。色味が白っぽいので薄味だと思いがちだが、しっかり塩味がついていてご飯がすすむ。

 この店の特徴は七面鳥の肉だけでなく、さらに魯肉飯ものせた「招牌飯」だ。鶏肉か豚肉か、迷った人のための両方のせである。一緒に口に入れると、魯肉飯の脂身と締まった七面鳥の肉がなんともバランスよく混ざり合う。

 ほかに豚の頬肉のスライスやガチョウの腸のスープといった変わり種メニューも。派手な看板以外は何の変哲もない食堂だが侮るなかれ。付近の人たちには料理の味が高く評価されている。

 

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赤い看板が目印の『冠鼎雞肉飯』はテイクアウト客も多い。店内で食べる場合はまず空席をチェックしよう

 

 

極太の刀削麺と牛肉の北京ダック風

 グルメ激戦区の2店目は、中国東北料理の『天福園麵點世界』だ。こちらも12時を過ぎると広い店内が一気に満席となってしまう人気店。中国東北料理と言っても台湾風にアレンジされていて、メニューも豊富だ。

 

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店に入ると左手の棚に並んでいる小皿料理。ここから食べたいものを取っていく。外食続きで不足しがちな野菜を補給

 

 看板料理は極太の刀削麺。包丁でスパスパ削りながら煮立った湯の中に入れていく。歯ごたえのある麺が大好きな私は、これが大好物なのでいろいろな店で食べているが、この店は当り。麺が太すぎず、それでいてモチモチ感たっぷりで、しかもソースの味がよく絡んでいる。

 

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モチモチの刀削麺はさっぱりとした醤油味。日本人の味覚に合う期待通りの旨さ

 

 湯麺と乾麺があるが、断然乾麺、つまり炒めたものがおすすめだ。牛肉入り、ラム肉入りなどが選べる。いずれも基本は醤油味で、日本人でも受け入れやすい味だ。

 もうひとつ、東北料理の店に来たらかならず頼みたいのが肉捲餅(ロウジュエンビン)である。刀削麺などの東北地方の粉ものを出す店によく置いてあるが、他のレストランではめったにお目にかかれない。私はこれを牛肉の北京ダック風と呼んでいる。

 

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外の皮が香ばしく、中の肉は甘みがあってジューシーな肉巻き(牛肉の北京ダック風)

 

 小麦粉で作られたクレープのような皮で、牛肉、ネギ、甘辛いソースをくるりと巻いたもの。タレが甘いので北京ダックのようでもあるが、皮の部分はしっかりと塩味がついていて、こんがりと焼き色もあるので北京ダックの薄皮よりもずっと味わい深い。牛肉はあっさりとした味付けだが、ソースの甘みとネギの辛さが程よい刺激になる。小腹にちょうどいい中国東北地方のおやつといった感じだ。

 

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12時を過ぎるとあっという間に満席になってしまうので、11時台に訪れたい

 

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餃子や麺など、ランチにぴったりのメニューが揃う『天福園麵點世界』は地元の会社員に大人気

 

 

ガチョウ肉のぜいたく漢方スープ

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高級なガチョウ肉がたっぷり乗った湯麺。スープにガチョウの油がほどよく出ていて美味

 

 『天福園麵點世界』の並びには、鶏肉の漢方スープ専門店『錦州美食』がある。ちょっと珍しいのは、この店がガチョウの肉を扱っている点だ。鶏肉の漢方煮込みはよくあるが、ガチョウというのは珍しい。

 台湾の人々は、少し肌寒くなると漢方スープに飛びつく傾向がある。暑い夏でも体力が落ちてくると薬膳スープの出番だ。「鵝肉」と謳っているだけあって、この店のガチョウ肉は食べごたえがある。

 ガチョウは鶏や鴨に比べると少し高級な肉だ。そんなガチョウ肉をたっぷり使った鵝肉麺(ガチョウ肉スライスの湯麺)が100元で食べられる。スープに皮の脂身がほどよくしみ出ていてコクがあり、柔らかなガチョウの肉にはギュッと旨味が詰まっている。これはちょっとぜいたくなランチだ。

 一方、寒いときや体力をつけたいときにおすすめなのが四物湯と呼ばれる漢方スープ。こちらは真っ黒なスープの中にとろとろに煮込んだ鶏肉が入っている。スープは苦味と甘みが入り混じり、初心者にはなかなかとっつきにくい部分もあるが、二口、三口と飲むうちにやみつきになる。

 

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骨付き鶏肉をとろとろに煮込んだ四物湯薬膳スープ。最初は薬臭く感じられるかもしれないが、いつのまにか苦味と甘み味がやみつきに

 

 骨付き鶏肉はじっくり煮込まれていて、スルッと骨が抜けるほど柔らかく、甘みたっぷり。飲んだ瞬間から漢方が体中を巡ってぐんぐん元気が出るような気がする。

 

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漢方スープにガチョウという、少し高級感のある珍しい組み合わせが台湾人に人気の『錦州美食』

 

 錦州街は一見、台北のどこにでもあるような商店街だが、美味しいものとの遭遇率の高い通りだ。上記の3軒以外にもみなさんで当りの店を開拓してみてほしい。

 

 

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著者:光瀬憲子

1972年、神奈川県横浜市生まれ。英中日翻訳家、通訳者、台湾取材コーディネーター。米国ウェスタン・ワシントン大学卒業後、台北の英字新聞社チャイナニュース勤務。台湾人と結婚し、台北で7年、上海で2年暮らす。2004年に離婚、帰国。2007年に台湾を再訪し、以後、通訳や取材コーディネートの仕事で、台湾と日本を往復している。著書に『台湾一周 ! 安旨食堂の旅』『台湾縦断!人情食堂と美景の旅』『美味しい台湾 食べ歩きの達人』『台湾で暮らしてわかった律儀で勤勉な「本当の日本」』『スピリチュアル紀行 台湾』他。朝日新聞社のwebサイト「日本購物攻略」で訪日台湾人向けのコラム「日本酱玩」連載中。株式会社キーワード所属 www.k-word.co.jp/  近況は→https://twitter.com/keyword101

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