究極の個人旅行ガイド バックパッカーズ読本

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#44

再開の動きが見えはじめた旅行業界

文・室橋裕和

 コロナウイルスの猛威はまだ収まってはいないが、それでもピークアウトする国々が出てきた。旅行の再開に向けた動きも少しずつはじまっている。ようやく、ほんのわずかながら、光が見えたようにも思う。そんなポジティブな情報を中心に集めて、僕たちはいつ、どんな形で、再び旅できるようになるのかを考えてみたい。

 

航空路線の再開、入国制限の解除もはじまる

 5月7日、オーストラリアとニュージーランドは、2国間限定で行き来を再開させる構想を発表した。両国の間であれば入国後14日間の隔離も不要というものだ。早くから厳しいロックダウンによって感染拡大を封じ込めたオセアニアの優等生2国だから可能な措置だが、実現すれば国際的な往来再開に向けたモデルケースになるかもしれない。
 また昨今、日本でもガイドブックの発売が続いていたジョージアは、6月15日から国内旅行を解禁し、7月1日からは外国人も受け入れるという。このジョージアにも路線を持つトルコ航空は、6月から日本を含む19か国へのフライトを徐々に再開させることを検討中と発表。カタール航空も運航再開に向けて動き出した。
 国際的な往来を復活させようという兆しが、世界各地で現れている。それはたぶん、このまま国境を閉ざしていてはどの国も経済が持たないからだろう。

 

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倒産が危惧されたタイ・エアアジアも5月から国内線の運航を再開

 

どの国もまずは国内旅行から再開か 

 とはいえ、これだけ世界中がウイルスによって大打撃を受けたのだ。アフターコロナの旅は少し変容せざるを得ないだろう。
 参考になるのは香港の取り組みかもしれない。香港政府観光局はSARSから復活したときの経験を活かし、段階的に観光業を再開させていくプランを打ち出した。その中では、交通機関や宿泊施設、観光地が衛生的であることが重要視され、「健康」がひとつのテーマになるとした。
 タイ国政府観光庁も同様に、観光業に新しく衛生基準を設けることを発表。「アメージング・タイランド・セーフティー&ヘルス・アドミニストレーション(SHA)」というもので、一定の衛生基準を満たしたホテルやレストラン、スパ、土産物屋などに認証を与えるというものだ。SHA認証があれば、そこは衛生的でコロナの心配がない施設、ということだろう。さらに観光地では徹底的な消毒をすることも合わせて、コロナ後に需要を回復させていく計画だ。
 しかし、いきなり海外からの旅行者を受け入れるのではなく、まず国内市場から取り組んでいく。タイ・エアアジアとタイ・ライオンエアは、5月1日から国内線の運航を再開させた。バンコク・エアウェイズは5月15日から、バンコク~サムイ島路線を再開させる予定。いずれも当面は、マスク着用、シートは離れて座ることが義務づけられる。
 いち早くパンデミックを脱した中国では、国内旅行市場がすでに活性化しつつある。5月1日からのメーデー連休は、中国各地が旅行者で賑わった。目立ったのは、少人数で、近距離の旅だという。中国人お得意の大人数ツアーはいまのところ敬遠される傾向にあるようだ。
 日本でも同様で、日本旅行業協会(JATA)は7月から国内旅行の需要喚起に向けたキャンペーンを始めることを予定している。

 

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中国ではすでに観光地での混雑もはじまり、「密」が懸念されている(写真は2020年1月)

 

海外旅行は近隣アジア諸国から 

 国内旅行の次は、いよいよ海外旅行の再開となるが、まずはビジネス客と家族訪問が優先されるだろう。
 中国では、やはりパンデミックを封じ込めた韓国から、企業関係者の受け入れをはじめた。韓国人は韓国側であらかじめPCR検査を受けて陰性証明書を発行し、それを持って渡航する。中国でもやはりPCR検査を受けて、結果が出るまでの1~2日は隔離されるが、この臨時制度を利用することで従来の「入国後14日間隔離」は免除される。
 観光も含めた往来は、オーストラリアとニュージーランドのように、近隣国から再開ということになりそうだ。
オーストリアでも外国人観光客の受け入れ再開を検討しはじめているが、最初はドイツ限定になるという。隣国であり、ヨーロッパの中では比較的、感染者が少ないドイツからの旅行を許可し、様子を見ていこうという判断だ。
 日本でも国内旅行の自粛を解いて一定の期間を待ち、その後に海外旅行の再開といった流れになるだろう。やはり近隣アジア諸国からというのが現実的だ。アジアは欧米に比べて感染がいくらか抑えられていることと、相互の経済的、文化的な結びつきが強いからだ。衛生的な準備が整った近隣国同士から、海外渡航が緩和されていくだろう。

 

03インドネシアやタイなど、ビジネス需要の大きな近隣国から渡航できるようになっていくと思われる

 

本格的な海外旅行再開は来年か 

 気になるのは「いつ旅できるようになるのか」ということだ。国内外の旅行メディアの情報を総合すれば、「日本国内は早くて夏」になりそうだ。
 海外旅行はそれ以降、秋から年末年始にかけて徐々に再開していくという意見が多い。今年は不可能だとする見方もある。コロナウイルスが人間によって運ばれる以上、いま世界中で行われているあらゆる規制の中で、最後の最後に解除されるのが海外旅行だろう。
 それもしばらくは「マスク着用義務」「飛行機などの座席は間隔を空ける(つまり料金は上がる)」「パスポートと一緒にコロナ陰性証明書を持ち歩く」といったスタイルでの旅行になる。
 それでも、「さて旅行は」という話ができるようになってきたのだ。大きな前進だと思う。
 海外旅行市場の活性化まで時間がかかることから、国内旅行の需要は大きくなるだろう。日本国内をバックパック・スタイルで旅する人は、緊急事態宣言が開ければ増えていくと思われる。バックパッカーといえば海外ばかりで、日本をちゃんと旅したことがない、という人は意外に多い。
 当編集部でも今後は、国内バックパッカーのノウハウについても発信していければと考えている。日本の魅力を再発見する機会になるはずだ。

 

 

*本連載は月2回(第1週&第3週水曜日)配信予定です。次回もお楽しみに!

 

*タイトルイラスト・野崎一人 タイトルデザイン・山田英春

 

 

『バックパッカーズ読本』編集部

格安航空券情報誌『格安航空券ガイド』編集部のネットワークを中心に、現在は書籍やWEB連載に形を変えて、旅の情報や企画を幅広く発信し続けている編集&執筆チーム。編著に究極の個人旅行ガイド『バックパッカーズ読本』シリーズなど。

 

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