台湾の人情食堂

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#44

高雄へ直行! 下町の鹽埕・前金を食べ歩く

文・光瀬憲子  

 台湾人気が定着して、リピーターも増えてきている。最近は台北を2回、3回とリピートし、次は台南、高雄に一人旅……なんていう旅慣れた人も珍しくない。

 先日、高雄、台南、屏東、澎湖の4都市の首長たちが日本に集結し、南台湾への旅を誘致するイベントが行われた。最近はLCCも成田~高雄便を就航。中華航空やエバー航空はもちろん、バニラエアも1日2便、タイガーエアは週に2便、高雄への直行便があり、選択肢が広がっている。直接高雄に飛び、そこから台南、墾丁、嘉義などに足を伸ばせば台湾南部をゆっくり満喫できる。

 

 

食べ歩き重視なら高雄は鹽埕と前金地区を狙う

 

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舶来品が台湾の人々の羨望の的だった頃の雰囲気を伝える鹽埕の商店街

 

 高雄といっても広いのでどこを起点にすべきか迷ってしまう。私のおすすめは高雄の下町、鹽埕(イェンチェン)。下町といってもどこか洋風でレトロな雰囲気があるのは、戦後ここにアメリカの第7艦隊が停泊していたためだろう。港町・鹽埕。戦前は塩田ができて栄え、戦時中は日本軍の港として重宝され、戦後は米軍の寄港地として賑わった。

 このため、鹽埕にあるショッピング街やアーケードは日本とアメリカと台湾が入り混じり、一緒に年を重ねたような異国的な雰囲気が漂う。同じ港町の横浜や神戸を散歩するように、大人が歴史を感じながら楽しめる街なのだ。さらにうれしいことに、鹽埕の東隣の前金(チェンジン)地区には老舗のグルメが集結している。

 鹽埕へのアクセスは高雄のMRTオレンジラインの鹽埕埔駅が便利だ。高鉄の左営駅や高雄国際機場駅はMRTの赤いラインだが、美麗島駅で乗り換えることができる。

 

 

コクのあるスープの麺と豚モツのスライス

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『阿進切仔麺』の切仔麺。チャーシューも入って45元

 

 鹽埕埔駅から歩いて3分ほどのところに、地元の人に愛されている麺店『阿進切仔麺(アージンチエズミェン)』がある。切仔麺は台湾ではごく一般的なあっさりした麺だが、阿進の切仔麺は一味違う。スープのダシがきいていて、とても奥深い味わいがあるのだ。油っこくないのにコクがあり、麺によく絡む。麺にはほどよい歯ごたえがある。

 

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おまかせ黒白切プレートは150元。運がよければ歯茎(手前中央)にも出合える

 

 この店のもうひとつの売りは黒白切(ヘイバイチエ)と呼ばれる豚モツのスライス。麺を出す店であればたいていは黒白切が置いてあるが、ここは人気店だけあって、店頭に並んだモツの見た目から鮮度のよさが伝わってくる。肉を切り分けている人に「給我一盤綜合黑白切(ゲイウォー イーパン ジョンハー ヘイバイチエ)」と告げて、おまかせプレートを作ってもらってもいい。目を引くのはキャタピラのようなギザギザした形の部位。なんと豚の歯茎である。歯茎を出す店は少ないので、台湾人でも食べたことがない人、見たことがない人が多い。

 

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創業60年以上の『阿進切仔麺』

 

 

サバヒーのスープも高雄式で

 阿進の並びにあるのがサバヒーの名店『阿貴虱目魚店(アーグエスームーユーデェン)』。台湾南部をめぐったら、かならず台南と高雄でそれぞれのサバヒーを味わってみてほしい。台北とは比べものにならないくらい鮮度がよく、さらに台南と高雄では食べ方が異なる。

 

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高雄のサバヒーは練り物になっていて食感が楽しい。あっさりとしたスープによく合う

 

 台南では魚をそのままスープに入れたり、ほぐして粥に入れたりして食べるが、高雄ではすり身を固めたものが好まれる。新鮮なサバヒーをすり身にするのはもったいない気がするが、この店のすり身は香り豊かで濃厚な味わい。しかも、身の部分、皮の部分など、すり身にも種類がある。台南式の切身にはない弾力も楽しめる。

 阿貴は朝食にぴったりのあっさりとしたサバヒーのすり身と米粉スープが売りだ。控えめな塩味のスープとふわふわした米粉が、サバヒーの香りを引き立ててくれる。

 

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「阿貴虱目魚店」は早朝から昼過ぎまでの営業

 

 

大通りの前に移転し、さらににぎわう鴨肉専門店

 鹽埕の夜の楽しみはなんといっても鴨肉だ。高雄中から客が集まる人気の鴨肉専門店『鴨肉珍』は絶対に外せない。行列は免れないが、それでもこの店のジューシーな鴨スライスはぜひ一度味わってほしい。

 

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高雄の人気店『鴨肉珍』の鴨スライス。鴨肉は日本では安くないが、台湾では庶民に親しまれている

 

 以前は路地裏にあった店が五福四路の大通り沿いに拡張移転し、店内だけでなく通りに面した歩道に並べられたテーブルもいっぱいだ。移転後、ビールも置くようになったので、鴨とビールで高雄の夜を締めくくりたい。

 

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営業時間は20時まで。行列覚悟だが、意外と回転は速い

 

 

翌日は前金の行列店で朝ごはん

 鹽埕の隣駅である市議会駅周辺が前金区と呼ばれるもうひとつのグルメエリアだ。こちらは店がやや分散しているが、老舗が多く、高雄のグルメ好きをうならせている。

 前金で絶大な人気を誇る朝食店が2軒並んだ一角がある。朝早くから行列ができる『興隆居(シンロンジュー)』と『果貿來來豆漿(グオマオライライドウジャン)』だ。どちらも豆漿(豆乳)や小籠包を扱う朝食店だが、『興隆居』のほうは人気がありすぎて行列を見ただけであきらめる人も多い。左隣の『果貿來來豆漿』のほうが行列は控えめだが、こちらも十分に美味い。

 興隆居の売りは小籠包と焼餅。小籠包と言っても焼売サイズの汁の入った小籠包ではなく、小ぶりの肉まんのようなふっくらしたものだ。それでも中はつゆだくなので一口目は火傷に注意しよう。

 焼餅はサクサクしたパイのようなもの。これに中華の揚げパンとも呼ばれる油條を挟むのが台湾独特の食べ方だ。パンにパンをはさむという台湾独自の食べ方だが、ドライな焼餅とオイリーな油篠の食感の違いが楽しい。これをギュッと両手で押しつぶすようにして、豆乳に浸すのが通な食べ方だ。

 

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『興隆居』の看板メニュー焼餅に油條と卵焼きを挟んだもの

 

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『果貿來來豆漿』の看板メニューは、さわやかで力強い香りがたまらないニラたっぷりの菜包。辛いソースと一緒に

 

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『興隆居』と『果貿來來豆漿』はどちらも人気朝食店。時間がないときは行列が少ないほうへ

 

 

高雄の食べ歩きをスイーツで〆るならここ

 同じ前金エリアの『鐘家緑豆湯大王(ジョンジャーリュウドウタンダーワン)』は小豆と緑豆に特化した伝統スイーツ専門店。台湾のスイーツにはよく小豆や緑豆がトッピングとして使われる。煮込んだ緑豆をミルクと混ぜた緑豆シェークも人気だ。ここでは小豆と緑豆のかき氷、汁粉、シェークなど、季節に合った楽しみ方ができる。小豆は大小様々な豆を使っているので一口に小豆かき氷といっても食感の違があって飽きが来ない。

 

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甘く煮た小豆に牛乳を注いだスイーツ。大小さまざまな小豆の食感が楽しい。よく混ぜて

 

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インパクトの強い看板が目印。小豆と緑豆に特化した店だが、テイクアウトの客足が途絶えない

 

 

高雄の宿は清潔で個性的なレトロ民宿『參捌旅居』

 ちょっと大人っぽい鹽埕と前金を楽しむなら、宿にもこだわりたい。鹽埕駅から徒歩5分のところにある、うっかりすると見落としてしまいそうな白い扉。そこが民宿『參捌旅居(サンバーリュージュー)』の入口だ。古いビルを改造したレトロでおしゃれな民宿。部屋数は少ないが、その分サービスは行き届いていて、スタッフとの距離も近い。

 參捌旅居はただの民宿ではない。戦後、日本風のウエディングドレスをいち早く台湾にもたらし、花嫁のメイクやヘアなどを含むトータルコーディネートをした高雄初のウエディングサロン「正美」がこの民宿の前身なのだ。

 

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清潔感のあるシンプルな「參捌旅居」のダブルルーム。この部屋はかつて「ドレスデザイナーのスタジオ」だった

 

 当時使われていたウエディングドレスケースやトルソーが随所に配され、往時の華やかな雰囲気を伝えている。掃除がゆきとどいていて清潔感があり、居心地は抜群。共有のキッチン・リビングスペースはいつでも利用できるので、外で買ってきた物を食べたり、仕事をしたりすることもできる。ゆったりとした大人の旅にぴったりの癒しの空間だ。

 

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2階にある共有のラウンジ。キッチンや冷蔵庫は自由に利用できる

 

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大通りに面したシンプルな白い扉が『參捌旅居』の入口

 

●「參捌旅居」(サン・バー 3080s)

803高雄市塩埕区五福四路226号  TEL:07-5215938

料金 ダブル:日~木2680元、金〜土3280元

ベッドのみ(ドミトリースタイル):日~木600元、金~土800元

※高雄市MRTオレンジ線「鹽埕補」駅の1番または4番出口を出て、五福四路を西へ進み、瀬南街を過ぎたところの右手。

http://3080s.com/jp/index.html

 

 

 

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*本連載は月2回(第1週&第3週金曜日)配信予定です。次回もお楽しみに!

 

 

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著者:光瀬憲子

1972年、神奈川県横浜市生まれ。英中日翻訳家、通訳者、台湾取材コーディネーター。米国ウェスタン・ワシントン大学卒業後、台北の英字新聞社チャイナニュース勤務。台湾人と結婚し、台北で7年、上海で2年暮らす。2004年に離婚、帰国。2007年に台湾を再訪し、以後、通訳や取材コーディネートの仕事で、台湾と日本を往復している。著書に『台湾一周 ! 安旨食堂の旅』『台湾縦断!人情食堂と美景の旅』『美味しい台湾 食べ歩きの達人』『台湾で暮らしてわかった律儀で勤勉な「本当の日本」』『スピリチュアル紀行 台湾』他。朝日新聞社のwebサイト「日本購物攻略」で訪日台湾人向けのコラム「日本酱玩」連載中。株式会社キーワード所属 www.k-word.co.jp/  近況は→https://twitter.com/keyword101

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