旅する&恋する! 韓国ドラマ

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#44

韓流歴史紀行〈5〉済州島の恋北亭

文と写真・康 熙奉(カン ヒボン)

 済州島(チェジュド)は韓国最大の観光地で、空港にはいつも観光客が殺到している。しかし、朝鮮王朝時代に本土から来る船の発着場は済州島の北岸の朝天(チョチョン)にあった。つまり、船の時代には朝天が拠点だったのだ。その朝天に今も恋北亭(ヨンブッチョン)という歴史的なあずまやが残っている。この名称に入っている「北」とは果たして何なのか。

 

5-1済州島にある恋北亭

流人の島

  イ・ヨンエが主演した『宮廷女官 チャングムの誓い』(原題は『大長今』)では、済州島が非常に重要な役割を担っていた。

 謀叛の罪をきせられたチャングムは済州島に流罪となり、そこから物語は大きく変わっていく。彼女は復讐に燃え、何度も逃亡を企てる。その度に捕まって苦境に陥るのだが、医術を学ぶことによって、再び宮中に戻る機会を得る。まさに、済州島は捲土重来を期す場所として描かれていた。

 同時に、ドラマを通して「流人の島」という印象も強烈に残った。特に、チャングムと師匠のハン尚宮(サングン)が罪人として済州島に向かう場面が、多くの視聴者の涙を誘った。

 悲惨な最期を遂げたハン尚宮。最愛の師匠の死を嘆き悲しむチャングム。そのチャングムの嗚咽の中に、済州島というさいはての地のおぞましさが示されていた。

 この『宮廷女官 チャングムの誓い』は16世紀前半の物語である。ときは、朝鮮王朝時代の前期だった。

 

5-2『宮廷女官 チャングムの誓い』のロケが行なわれた済州島のウェドルゲ海岸

 

 朝鮮王朝が実施した流刑は、罪の軽重によって流配地を決定するというものだった。つまり、重い罪を負うほど都の漢陽(ハニャン/現在のソウル)から遠い場所に流されたのだ。とりわけ、南海の孤島とされた済州島は、最も多くの政治犯が流刑となった島であった。

 しかも、済州島への流罪は終身刑を意味していて、生きて再び都に戻ることは皆無に近かった。それゆえ、権力闘争に明け暮れた支配階級の人々は、済州島への流罪をとても恐れた。

 その中の一人が、15代王の光海君(クァンヘグン)である。

光海君の嘆き

 1608年に即位した光海君。豊臣軍との戦いによって荒廃した国土の復興に尽力し、歴史的に貴重な史籍の編纂にも貢献をした。

 しかし、王位を安定させる過程で兄や弟の命を奪い、義母の大妃(テビ/王の母)の立場を剥奪している。

 こうした行為によって多くの恨みを買った光海君は、1623年にクーデターを起こされて廃位になった。その末に島流しとなり、最後は済州島に流された。

 行き先は告げられていなかった。船の周りに幕を張って、方向がわからないようにしてあったのだ。

 

5-3恋北亭の名前にある「北」とは?

 

 済州島に着いたとき、光海君は初めて自分が孤島に流されたことを知る。

「なぜ、こんなところへ……」

 光海君は絶望した。

「ご在位のとき、悪い家臣に惑わされなければ、ここまで遠くに追われることはなかったでしょうに……」

 島の役人にそう言われたものの、すべては後の祭であった。

 以後、屈辱の中で光海君は余生を送った。

 没したのは1641年。享年66歳。王位にあった者としては、実に哀れな晩年であった。

時代は変わったが……

 光海君が済州島に着いたときの港が朝天だった。

 飛行機の時代になって今では小さな漁港にすぎなくなった。

 しかし、流罪となった政治犯が朝天から済州島に上陸したという歴史は残っている。それを象徴するのが恋北亭である。

 

5-4

現在の恋北亭は地元の人たちの溜まり場になっている

 

 名前に入っている「北」とはどこを指すのか。

 それは、朝鮮王朝時代の都であった漢陽(ハニャン/現在のソウル)だ。

 恋北亭に佇んでいた地元の長老がこう語ってくれた。

「流罪となって済州島にやってきた高官たちは、都で政変が起こると、ここに来て必死にチョル(お祈り)をしていたそうだよ。自分の派閥が政争に勝てば罪が消えて再び都に戻れるかもしれない。必死に祈ったはずだ。その気持ちもよくわかるね」

 流罪となって身を落とした高官たちにとって、恋北亭は一縷の希望を託せる場所であった。都に戻れた人はほとんどいないにしても……。

 時代を経て、今は恋北亭で地元の人たちが集まって世間話を楽しんでいる。なんとも、のどかな光景だ。

 しかも、大いに発展した済州島には、大勢の人たちが先を争ってやってくる。罪人としてではなく観光客として……。

 恋北亭から北の方向を臨むと、青く澄んだ海が見える。

 この海を、絶望にうちひしがれた光海君も、ずっと見ていたのであろうか。

 

5-5恋北亭から北に向かって海をながめる

 

*筆者・康 熙奉のプロフィール&近況はtwitterをご覧ください→https://twitter.com/kanghibong

 

*本連載は月2回配信(第1週&第3週木曜日)予定です。次回もお楽しみに!

 

 

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