日本一おいしい!沖縄の肉食グルメ旅

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#44

栄町のミャンマー料理店~『マンダレー食堂』

文・藤井誠二 写真・深谷慎平

 

再生の只中にある街に、また新しい文化がやってきた

 モノレール安里駅前に広がる繁華街・栄町のスナックがかたまっている一角の裏道を夕方に散歩していた。空が重たいな思っていたら、大粒のスコールがいきなりきた。どこか雨宿りをしようと周囲を見回すと、見慣れない店があった。開店したばかりのようで、どうやらミャンマー料理の店だった。ドアが開いていた。

 

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 あとで主の松田長潤さんに聞いたら、2018年初頭に開店したばかりだという。マンダレーはミャンマーの第二の都市の名前である。客は誰もいなかったが、ミャンマーの塩レモン杯を飲んだ。ミャンマーのそば焼酎を使った店のオリジナルだ。なんだか、落ち着く味だ。飲みながら、ぼくは大粒の雨粒が往来に跳ね上がるのを見ていた。雨足がおさまると、ぼくは主に御礼を言い、再訪を約束して自宅へと歩いた。

 次に地元の友人と行ったとき、前に飲んだミャンマーの塩レモンハイを最初に飲んだ。このミャンマーでつくられているそば焼酎は、メリナウッド樽で熟成させた、まろやかな味わいだ。つまみはヒマワリの種。この組み合わせで料理を待つ時間はなかなかいい。 

 

_DSC0190webミャンマーのそば焼酎の塩レモン杯

 

_DSC0192webひまわりの種

 

 まずは、「カリカリ島豆腐」。中華料理の豆腐チリソースがけの沖縄版みたいだが、島豆腐の塩味がなんともいい。そば焼酎がすすむ。

 

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_DSC0233webカリカリ島豆腐

 

 この日は、三バカのおなじみ普久原朝充くんと、ドキュメンタリー監督の松林要樹さんとパートナーの前川由佳さんもいっしょ。松林さんはブラジルやタイなどで暮らしてきて、さいきん沖縄に移住してきた。前川さんはタイ・ミャンマーの国境で日本のNGOの看護師として、ミャンマー難民のために二年半はたらいていた経験がある。二人ともミャンンマー料理はとうぜん食べ慣れていて、「なつかしい、なつかしい」と言いながら、じつによく飲み、よく食べた。

 

_DSC0248web筆者(左)、松林さん(中央)と前川さん(右)

 

「本日の和え物」というのがメニューにあり、この日は山羊肉の和え物。香草やスパイスといっしょに、県産の山羊肉(ボイルしてオーブンで焼く)をすりこぎで潰す。これがまた、そば焼酎に合う。もちろん、ミャンマー料理。セイタータウ。セイターというのが山羊、タウというのが、すりつぶすという意味だ。

 

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_DSC0284webミャンマーの山羊料理、セイタータウをいただく

 

 そしてモヒンガー。これもミャンマー料理。煮麺みたいなものだが、手が込んでいる。バナナの芯の部分と白身魚のアラといっしょに煮て出汁をとる。それに緑豆のかき揚げがのっかる。バナナの芯もそのまま皿の具になる。薬味的な役割だが、それだけを食べてもシャキシャキした食感で美味い。

 

_DSC0427webモヒンガーを堪能する普久原クン

 

 白身魚のレモングラス(要予約で時価。だいたい2500円ぐらいから。この日はマダイ)をあらかじめ注文しておいた。マダイの腹に香草などを詰め込んで、レモングラスと一緒に煮る。

 

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白身魚のレモングラス。お腹の中にも香草などが詰められている

 

 そして、発酵させたお茶の葉をいっしょに炒めたマンダレー炒飯もかきこみながら、飲んで、ぼくたちは語り続けた。

 

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マンダレー炒飯。発酵させたお茶の葉がポイント

 

  奥さんはミャンマー人のメイさん。じつは、彼女がマンダレー出身なのだ。メイさんと松田さん出会ったのは東京で、沖縄の浦添出身の松田さんが働いていた中華料理店にメイさんが入ってきて知り合った。松田さんのルーツは与那国島だ。この日は一歳になる手前の「与(あたる」くんもベビーカーで登場。

「日本人と結婚して沖縄に住むつもりはなかったんです。親は反対しましたね」とメイさんが笑うと、松田さんは「アジアのいろいろな国が好きで、独立したら、アジア料理の店をやりたいと考えていました。嫁がミャンマー人なので、ミャンマー料理にしたのです。楽しいから気楽にやっていきたいです」と言った。

 

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主の松田さん(左)と奥さんのメイさん(右)

 

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店名の由来はメイさんの出身地から

 

 この店も栄町のおばあスナックをリノベした。町は変わっていく。スナック街だったこの街もご多分にもれず廃れてはいる。しかし、沖縄の「外」からどんどん人や文化が入ってきて、再生の只中にある。新しい人や文化が入ってくるこの街はほんとうにおもしろい。

 

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店はスナックをリノベーションしている

 

 与(あたる)ちゃんの「与」は与那国島の「与」。そして、仏教国ミャンマーでは「与える」とは輪廻で「返ってくる」という意味もある。敬虔な仏教国の人々はそう考える。与ちゃんのお姉さんは「えみる」という名前。笑顔を人に与えたら返ってくるという、これも仏教の輪廻の考え方からきている。そんなことを「メイさんと松田さんが交互に笑顔で説明をしてくれた。

 

_DSC0455web息子の与くんと、娘さんのえみるさんも一緒に、一家の記念撮影

 

 

●『マンダレー食堂』

住所:那覇市大道172-2 アパート佐平102

https://www.facebook.com/マンダレー食堂-1853731478271821/

 

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*本連載は、仲村清司、藤井誠二、普久原朝充の3人が交代で執筆します。次回もお楽しみに!

 

 

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仲村清司(なかむら きよし)

1958年、大阪市生まれのウチナーンチュ二世。作家、沖縄大学客員教授。1996年、那覇市に移住。著書に『本音で語る沖縄史』『消えゆく沖縄 移住生活20年の光と影』『本音の沖縄問題』『ほんとうは怖い沖縄』『島猫と歩く那覇スージぐゎー』ほか。共著に『沖縄 オトナの社会見学 R18』(藤井、普久原との共著)のほか、『これが沖縄の生きる道』『沖縄のハ・テ・ナ!?』など多数。現在「沖縄の昭和食」について調査中。

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藤井誠二(ふじい せいじ)

1965年、愛知県生まれ。ノンフィクションライター。現在、沖縄と東京の往復生活を送っている。著書に『人を殺してみたかった』『体罰はなぜなくならないのか』『アフター・ザ・クライム』ほか、共著書多数。『漫画アクション』連載のホルモン食べ歩きコラムは『三ツ星人生ホルモン』『一生に一度は喰いたいホルモン』の2冊に上梓。最新作『沖縄アンダーグラウンド──消えた売春街の戦後史と内実』刊行予定。

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普久原朝充(ふくはら ときみつ)

1979年、沖縄県那覇市生まれ。建築士。アトリエNOA、クロトンなどの県内の設計事務所を転々としつつ、設計・監理などの実務に従事する。街歩き、読書、写真などの趣味の延長で、戦後の沖縄の都市の変遷などを調べている。本書の取材を通じて、沖縄の伝統的な豚食文化に疑問を持ち、あらためて沖縄の食文化を学び直している。

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