日本一おいしい!沖縄の肉食グルメ旅

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#42

栄町の路地に佇む隠れ家~『ルフュージュ』

文・藤井誠二 写真・深谷慎平

 

オープンから8年、毎日通いたくなる栄町の人気店 

 たぶん初めて『Refuge(ルフュージュ)』をたずねる客は、店の前を通りすぎてしまうだろう。那覇栄町の路地の一角。ひっそりと佇むように、表札を横にした店名を書いたちいさな看板が出ているだけだから。

 2010年のオープン直後からぼくは通わせてもらっているが、当時は店の前の道も、路地を突き当たったところにあった駐車場も舗装されていなくて、雨のあとは店の前に大きな水たまりができていた。

 

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 じつはオーナーの大城忍さん(43歳)をぼくは開店前から見知っていた。たまに通っていた十貫瀬にある焼鳥屋で仕込みを手伝う彼の姿をよく覚えている。ほとんど会話をした覚えはないが、あらためて聞いてみると、

「その焼鳥屋の前は、フレンチの店に少しいて、中華も4年間修行していました。じつは、23歳のときから漫画喫茶を経営していたんです。料理人になろうと思ったのはもともと漫画喫茶をやろうと思ったからなんですが、6年ぐらいやって、30歳を前にこのままでいいのかなと思って、漫画喫茶を売って、中華をやりたかったので、本格的に勉強を始めました。中華の料理人は若いころから始める人が大半ですが、ぼくは遅いデビューですね。ですが、いろいろな料理を学べたので、ぼくがつくりたい料理をつくって出していますし、とくにシャルキトリーは好きでやっています」

 彼が修行した中華は那覇市内にある老舗ホテルに入っている、誰もが知る四川料理の名店だ。だから、ルフュージュには中華料理がよく登場するし、汁なし坦々麺はレギュラーメニューだ。ぼくは大城さんのつくる汁なし坦々麺が大好きで、ふつうは〆に頼む人が多いのだが、ぼくは最初から頼んでビールを飲む。

「ほくが修行した店の汁なし坦々麺の通常の辛さの4分の1におさえています。もっと辛いのが食べたいかたは言ってくだされば、辛くできますよ」

 

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オーナーの大城さん

 

 店をオープンして8年目。今や栄町では予約がとれない有名店になった。もとスナックをリノベーションした。かつての場末感を微妙に残しながら、センスよくまとめあげられた店内。フランス語でルフュージュとは「隠れ家」とか「たまり場」の意味だ。

「元スナックをリノベするお店の走りでした。たった8年前ですが、当時は栄町でワインが飲めるなんて、とお客さんが言ってたぐらいですから。栄町の盛り上がりはこの3~4年ですが、当時から栄町がいまから来るなという予感がありました。最初は一人だけ切り盛りできる、コの字のカウンターの物件をさがしていたんです。お客さんの顔を見たかったから。でも、一週間後にここが空くよと言われて、即決しました。時代に合ったのかなと思っています。沖縄はもともと大箱の店でわいわい飲む文化だったのですが、いまは少人数で個性的な小箱の店で飲むようになってきてますから」

 これだけの有名店になったのは、口コミと、栄町を毎夜のように回遊する酒好き、うまいもん好きが通ってくるからである。8対2で2が観光客。地元客が多いが、そのうちの半分ぐらいが移住してきた地元客である。お客さんがお客を呼んでくる。

 毎日でも飲めるような店にしたいというのがコンセプト。毎日何かしらのメニューは変わるが、値段がとにかくリーズナブル。どの料理も丁寧に仕込まれているのがわかる。ここで毎日、メシが食えたら幸せだろうなあ。

 

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スナックをリノベーションした隠れ家的なお店。料理はもちろん、酒も充実している

 

 ぼくが必ず食べるのは、マリネした野菜盛りだ。この日は、カリフラワー、ロマネスコ、ズッキーニ、プチトマト、パプリカ、大根のわさび漬け、レッドキャベツ、水菜、レタス、ヤングコーン、うずらまめ、シロネギ。一つ一つ仕込みが異なり、大城さんの丁寧な技がわかる。これだけでも腹いっぱいの量なのだが、野菜不足のオッサンにはありがたすぎる一皿なのである。

 

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マリネした野菜の盛り合わせ

 

 そして、これも必ず頼む。スモークしたサーモンだ。店内の置いてあるスモークマシンで三時間かけてつくる。しっとりした舌触りがたまらない。

 

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お気に入りのサーモン

 

 レギュラーメニューの他に、カウンターにちいさな黒板がおいてあるので、その日のおすすめ料理が書いてある。さあ、今日はどれを食べよう。

 

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 和牛ホルモンフィレンツェ煮込み。ギャーラ(牛の第四胃)とマルチョウをサルサベルデメソースで島にんじんとズッキーニといっしょに煮込んである、イタリアンパセリとアンチョビのソースだ。つけ合わせはレッドキャベツに、グリーンピース。

 

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和牛ホルモンフィレンツェ煮込み

 

 カスレは贅沢な一皿だ。フランスの郷土料理だが、白いんげんと玉葱を、オープン当初から継ぎ足して使っている豚肉を煮込んだときのスープで煮込んである。分厚くきった沖縄産の豚のバラ肉。ソーセージ(もちろん、大城さんの手作り)と鶏肉。これも沖縄県産。もちろんいっしょに焼くのではなく、別々に仕込み、焼く。それが白いんげんの煮込みの上に並ぶ。

 ソースを肉にいっしょに食べると、肉とソースの合わさり方が絶品で、これを東京で食べたらいったいいくらするのだろうと、カメラマンの深谷君と顔を見合わせて、その美味さに溜め息をついた。手間がかかるのでたまにしか出さないそうだ。

 

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フランス料理のカスレ。手の込んだ一皿

 

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ビールにもワインにも、泡盛にも合う一品揃い

 

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少し遅れて合流した普久原君。汁なし坦々麺と焼きギョウザに舌鼓

 

 料理には人柄が出るといわれる。いまは料理が忙しくなってなかなかカウンターに出てこれなくなっている大城さんと会話すると、この店の一皿すべてに彼の人柄がにじみ出ていることがわかるはずだ。

 

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●『Refuge(ルフュージュ)』

那覇市安里388-10 電話098-911-4856

 

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*本連載は、仲村清司、藤井誠二、普久原朝充の3人が交代で執筆します。記事は月2回(第1週&第3週木曜日)配信予定です。次回もお楽しみに!

 

 

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仲村清司(なかむら きよし)

1958年、大阪市生まれのウチナーンチュ二世。作家、沖縄大学客員教授。1996年、那覇市に移住。著書に『本音で語る沖縄史』『消えゆく沖縄 移住生活20年の光と影』『本音の沖縄問題』『ほんとうは怖い沖縄』『島猫と歩く那覇スージぐゎー』ほか。共著に『沖縄 オトナの社会見学 R18』(藤井、普久原との共著)のほか、『これが沖縄の生きる道』『沖縄のハ・テ・ナ!?』など多数。現在「沖縄の昭和食」について調査中。

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藤井誠二(ふじい せいじ)

1965年、愛知県生まれ。ノンフィクションライター。現在、沖縄と東京の往復生活を送っている。著書に『人を殺してみたかった』『体罰はなぜなくならないのか』『アフター・ザ・クライム』ほか、共著書多数。『漫画アクション』連載のホルモン食べ歩きコラムは『三ツ星人生ホルモン』『一生に一度は喰いたいホルモン』の2冊に上梓。最新作『沖縄アンダーグラウンド──消えた売春街の戦後史と内実』刊行予定。

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普久原朝充(ふくはら ときみつ)

1979年、沖縄県那覇市生まれ。建築士。アトリエNOA、クロトンなどの県内の設計事務所を転々としつつ、設計・監理などの実務に従事する。街歩き、読書、写真などの趣味の延長で、戦後の沖縄の都市の変遷などを調べている。本書の取材を通じて、沖縄の伝統的な豚食文化に疑問を持ち、あらためて沖縄の食文化を学び直している。

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