料理評論家・山本益博&美穂子「夫婦で行く1泊2食の旅」

料理評論家・山本益博&美穂子「夫婦で行く1泊2食の旅」

#42

杭州

文と写真・山本益博

 

杭州;鮨一張君の握りまぐろ

 

 

 

若き中国人の天才職人
杭州「鮨一」

 

「食在広州」(食は広州に在り)で有名な広州ではなく、杭州は上海から車で1時間のところにある都市で、名所といえば「西湖」です。現在は、成田から毎日直行便が出ていて、3時間ほどのフライトで着きます。
 

 

杭州;西湖

「西湖」静寂な佇まい
 

 

昨年秋、初めて杭州へ出かけました。地元の郷土料理の店ばかりでは変化に乏しいと思い、杭州の知り合いに、日本料理で人気の高い店を1軒選んでいただきました。それが「鮨一」でした。

 

杭州;鮨一外観

荘厳な佇まいの「鮨一」

 

そこに若き中国人のすし職人の天才がいたんです。親方は日本人なのですが、脇方の見るからに20代と思われる若者は、一見日本人にも見えましたが、じつは上海出身の中国人でした。なにより、所作が潔くて、美しい。刺身を引く庖丁さばきが簡潔で切れが良く、小鉢に付きだしを盛る箸に手を添える手際が優しく、スピーディ。すしを握る姿も、清潔で、無駄がなく、品がある。とても、中国人の若者が握るすしとは思えませんでした。
帰り際に話を聞けば、上海生まれの23歳で、張くんは17歳の時から独学で「すし」を勉強してきたのだという。まさしく、天才の仕事ぶりでした。
彼のすしをもう一度食べてみたい。その天才ぶりを確かめてみたい。その思いで、先日、すしの評判店、江戸前鮨の名店を食べつくしている食いしん坊と二人で出かけてゆきました。
前回は、親方との二人三脚で、張くんの握りは3貫しか食べられませんでしたが、今回は、親方の計らいで、彼がすべて握りました。やはり、魚を切りつける、それを握る所作が、簡潔で美しい。
 

 

杭州;鮨一張君の握りまぐろ

見事な握りまぐろ

 

 

食べながら、にぎり鮨の本場、東京で2,3年、酢めしの基本から勉強しなおしたら、彼にかなう20代のすし職人はいないのではなかろうかとまで思いました。
もし、東京で最上級のすし種を目の当たりにし、「江戸前」をしっかり学んで、理解ある経営者のもとで店を開き、「ミシュラン」で1つ星を取ったら、それこそ、快挙ではないかしらん。中国人の若者が、東京のすしでミシュランの星を取る、私の夢はどこまでも膨らんでいくのでした。

 

杭州;鮨一親方と張君

鮨一の親方と張さん

 

 

ところで、昨年秋に泊まった宿は「杭州新新飯店」でした。西湖が目の前に広がるクラシックなホテルです。町中からは離れていますが、静かで落ち着いた宿でした。

 

 

杭州;杭州新新飯店

「杭州新新飯店」

 

 

今回は、「AMAN」に宿泊です。西湖近辺の広大な敷地にヴィラ(一軒家)が点在している最高級リゾートホテルです。杭州はいま建設ラッシュですが、その喧騒からは信じられないくらい静かな森のなかの保養地です。
 

 

杭州;アマン外

茶畑と竹林に囲まれた「アマンファユン」

 

 

杭州;アマン室内1

ゆったりした室内空間
 

 

杭州;アマン室内2

洗練されたインテリア

 

次回は、金沢です。

 

 

 

■「鮨一」

 

住所/上满觉陇路12号
問い合わせ/(86)571 8693 2259

■「杭州新新飯店」

 

住所/住所/杭州市北山街58号
問い合わせ/(86)571 8766 0008

http://www.thenewhotel.com

■「アマンファユン」

 

住所/22 Falun Lane, West Lake Street,West Lake Scenic Area,Hangzhou, PRC 310013
問い合わせ/(86) 571 8732 9999 

https://www.aman.com/ja-jp/resorts/amanfayun
 

 

 

*この連載は毎月25日に更新です。

山本さん顔

山本益博(やまもと ますひろ)

1948年、東京・浅草生まれ。早稲田大学第ニ文学部卒業。卒論が『さよなら名人藝―桂文楽の世界』として出版され、評論家としてスタート。幾度も渡仏し三つ星レストランを食べ歩き、「おいしい物を食べるより、物をおいしく食べる」をモットーに、料理中心の評論活動に入る。82年、東京の飲食店格付けガイド(『東京味のグランプリ』『グルマン』)を上梓し、料理界に大きな影響を与えた。長年にわたる功績が認められ、2001年、フランス政府より農事功労勲章シュヴァリエを受勲。2014年には農事功労章オフィシエを受勲。「至福のすし『すきやばし次郎の職人芸術』」「イチロー勝利への10ヶ条」「立川談志を聴け」など著作多数。 最新刊は「東京とんかつ会議」(ぴあ刊)。

 

 

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