ブーツの国の街角で

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#42

サンタ・セヴェーラ: 海辺のレストラン&シーフードでプチ・バカンス気分を満喫

文と写真・田島麻美

 

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  猛暑のローマで悶々とパソコンに向かっていると、心も身体もぐったりしてくる。窓から外を見れば、いつもいっぱいの広場の駐車場は空っぽ、近隣の家々もひっそりしている。皆早々にバカンスに出かけたか、どこかのビーチで寝そべっているに違いない。なんだかとっても寂しい。私も、ちょっとでもいいから夏の海のバカンス気分を味わいたい!という欲求がムラムラと湧き上がってきた。思い立ったら即行動!「キレイな海を見ながら冷たい白ワインを飲んで美味しいシーフードを食べる」という私のプランに便乗してくれた友人と2人、ローマから各駅電車で1時間のところにあるサンタ・セヴェーラへやってきた。
 

 

 

 

 

中世時代の面影が残る無人の旧市街

 

 

 

  サンタ・セヴェーラの無人駅には、予想外に大勢の人々が降り立った。大半は海へ行くらしい軽装の若者カップルで、土埃が舞う駅前広場から伸びた一本道をずんずん歩いていく。彼らの後に着いていくと、国道1号線のアウレリア街道に出た。車が行き交う道を用心深く渡り、ようやく見えた「Castello(カステッロ=城)」の看板に従って、松並木の道を進む。周囲を野原で囲まれた道は田舎町の雰囲気そのもので、ローマからたった1時間とは思えないのどかさである。
  松並木が途切れたところで、中世時代の城壁にぶち当たった。門をくぐって中に入ると、まるで映画のセットのような可愛らしい村があった。中世の建物がそっくりそのまま残った保存状態の良い村だが、観光客を除けば人の気配はほとんどない。本当に映画のセットの中にいるような気がしてきた。この村の唯一の名所である「サンタ・セヴェーラ城」のチケット売り場に住民らしき女性がいたので、情報収集を兼ねて話しかけてみた。女性の話では、村の見学スポットはサンタ・セヴェーラ城の他にピルジ古代博物館、古代海洋博物館などがあり、8ユーロの共通券で全て入場できるらしい。とはいえ、ここまで来た一番の目的は「海辺で食べるシーフード」だったので、「美味しいレストラン、知りません?」と尋ねてみると、「ビーチ沿いにいっぱいあるわよ」とのことだった。では、まずはレストランで腹ごしらえをしてからお城見学に戻って来ますね、と言ってお姉さんに別れを告げ、早速お店探しにビーチへと向かった。
 

 

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アウレリア街道を渡ると見えてくる松並木の道。突き当たりにサンタ・セヴェーラの中世の村がある(上)。村の情報センターとしても機能しているお城のチケット売り場には、お土産売り場も揃えたブックショップもある(中)。映画のセットに紛れ込んだような錯覚に陥る無人の村(下)。
 

 

 

 

 

 海辺のレストランでプチ・バカンス気分を満喫

 

 

  照りつける太陽の下、城壁を出て海の方向へ5分も歩くと、カラフルなパラソルがびっしり並んだビーチが見えて来た。平日の午前中だというのに、心地良い潮風を全身に受けながらゴロゴロ寝そべって肌を焼いている不届き者たちを、内心の羨ましさを隠しつつ眺める。昨夜の雷雨でちょっと荒れている海は波が高く、ビーチには涼しい潮風が吹き抜けている。ああ、これぞまさしくイタリアの夏の風景だ。
  海に突き出たお城とビーチ、白波が踊る海のパノラマが楽しめるレストランに席を取り、新鮮なシーフードを味わうことにした。夏のみ営業している海辺のバカンス地にはよくあることなのだが、私たちが入ったレストランもお値段はやや高め。ローマの標準的なシーフード・レストランと比較すると、3〜5ユーロ上乗せしているように思える。しかしながら、今日はバカンス気分を味わいにここまで来たのだし、何より目の前に広がるロケーションは最高。波音を聴きながら涼しい潮風に吹かれ、冷たい白ワインと一緒に新鮮な魚介類を味わうひと時は、上乗せ料金を払うに値する。そう判断した私たちは、魚介類のアンティパスト盛り合わせとシーフードフライを注文し、日常の喧騒を忘れて贅沢なランチを堪能することにした。小さな皿に盛られて運ばれて来たアンティパストの数々は、生牡蠣や手長海老、タコとポテトのサラダなど、目にも美しく爽やかなラインナップ。次いで登場したイカとエビのミックスフライはさっくりした食感がたまらない。時折通り抜けていく潮風に、思わず「気持ちいい〜!」という声が出る。長期のバカンスには行けなくても、海と太陽と美味しいものさえあればバカンス気分を味わうことは出来るのだ。
 

 

 

 

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隣村のサンタ・マリネッラまで続く長いビーチは、毎年夏に『イタリア・サーフ・エキスポ』が行われることでも知られている。海沿いには新鮮なシーフードが味わえるレストランが軒を連ねているので、砂浜を散歩しながら予算とロケーションで店を選ぶのも楽しい(上)。種類も豊富なアンティパスト・ミスト。ちょっと高級感がにじみ出ているプレゼンテーションもバカンス気分を盛り上げてくれる(中)。白ワインとよく合うお約束のイカ&エビフライは夏の海のお楽しみの一つ(下)。
 

 

 

 

 

木陰のカフェタイムで爆睡寸前

 

 

  満腹&ほろ酔い状態でレストランを出て、ビーチで寝そべる人々をもう一度ぐるりと見渡してから村へ戻ることにした。帰りの電車まではまだ時間がある。食後のカフェをゆっくり飲んでから、お姉さんに約束したお城訪問をしよう、ということになった。
   野原を横切って村の入り口に着くと、水着姿のまま軽食やビールを楽しんでいる人々がバールにたむろしていた。横には気持ちの良さそうな木陰にたくさんのテーブルが並んでいる。皆ここで食後のひと時を満喫しているらしい。我々も早速カフェを注文し、カップを手に木陰のテーブルについた。ギラギラと強烈な午後の太陽から逃れられる木陰はとてもありがたい。爽やかな潮風が吹き抜けるテーブルで、小さなカップに入ったエスプレッソをゆっくり味わう幸せ。気のおけないおしゃべりをしながらシーフードの消化を待つ間、いつしかウトウトし始めた。ああ、ここにハンモックが欲しい。ここで2時間昼寝が出来たらどんなに素晴らしいか。強烈な誘惑を最後の理性を振り絞って退ける。爆睡寸前でどうにか意識を取り戻し、長いカフェ休憩を終えて席を立った。
 

 


 

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中世の村の入り口にあるバールで心地良いカフェタイム。セルフサービスなので好きなものを注文して自分で席まで運ぶ。長居しても文句を言われない気楽さが嬉しい。

 

 

 

中世の騎士のミイラ? 骸骨だらけのお城見学

 

 

   約束どおりランチ後にお城のチケットを買いに来た私たちを、お姉さんは笑顔で迎えてくれた。が、時計を見て一言、「もう2時半の入場には間に合わないから、次は午後4時の入場になるわ」。へっ? 今朝の話では、「ガイドなしで会場時間内は自由に見学できる」と言ってませんでした?と問いただすと、「う〜ん…。まだ2時40分だから、急いで行けば入れてくれるかも」と不安なことを言いながらチケットを切ってくれた。大急ぎで城門まで走って行き、モギリのお姉さんに同じ話を繰り返してどうにか入れてもらうことができた。どうやらお城は時間と入場者数で区切って入場制限をしているらしい。危なかった。
   中へ入ってみると、「入場制限する必要がどこにあるのか?」というくらい空いていた。入場者は我々2人だけ。甲冑姿の騎士のお出迎えを受け、ゆったり貸切状態で城内を見学していく。
サンタ・セヴェーラの歴史は非常に古く、起源は古代エトルリア時代に遡る。お城の前に残っている『ピルジ』の遺跡は、古代エトルリア人達の港であったものらしい。街の名は298年にここで殉教したうら若きキリスト教徒「聖セヴェーラ」に捧げられたものであることもわかった。このお城は聖セヴェーラとその家族が処刑された場所に建てられた教会(5〜6世紀)の遺跡の上に、11世紀に建てられたとある。聖女が殉教した、いわば聖地である場所に建てられたお城、ということか。そう聞くと何か縁起の良い場所のような気がしないでもないが、実際に展示されているのはこの地を掘り起こした際に発見された中世時代の犬の骸骨(しかも完全形)や中世時代の騎士の骸骨(これも完全形)、そして発掘現場をそのまま展示した博物館(棺と骸骨がメイン)など、ちょっと不気味な雰囲気である。ホラー好きの私にはたまらない展示だが、これは好みが分かれるかもしれない。場内には、サラセン人の襲撃を見張った塔や、青い海とビーチのパノラマが楽しめる窓、そしてなんとお城に泊まれる『Ostello(オステッロ)』などもある。季節によって開場時間は異なるが、通年で見学者・宿泊者を受け入れているので、ローマの喧騒を逃れてちょっとリフレッシュしたい人は、ここまで足を伸ばしてみるといいだろう。
 

 

 

 

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サンタ・セヴェーラ城の入り口。入場は火〜日の10時半〜15時半、1時間毎の入れ替え制で最大50名まで。7・8月は16〜23時まで夜も開場している。その他の季節の開場時間はサイトで要確認(上)。場内で展示されているお城の全景写真(出典:castello di santa severa/中)。サラセン人の襲撃に備えて作られた12世紀の塔(下)。
 

 

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 城内の窓からはサンタ・マリネッラまで続く長いビーチと海のパノラマが楽しめる(上)。お城の出口付近にある「オステッロ」のレセプション。客室はWiFiとエアコンも完備されていて、とても快適そう。シングルからファミリー用までタイプの異なる14部屋がある。中世のお城に泊まってみたい、という人は必見。予約はお城のサイトからできる(下)。

 

 

 

 

 

 

★ MAP ★

 

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<アクセス>

ローマ・テルミニ駅からチヴィタヴェッキア行き各駅電車で約1時間、Santa Severa(サンタ・セヴェーラ)下車。片道4ユーロ。無人駅なので帰路の切符もローマで事前に購入していくことをお勧めする。駅から村までの道のりは何もない野っ原の一本道を10〜15分ほど歩く。駅の周りにバールなどはないので、人気の少ない冬期や暗くなってからの女性の一人歩きには十分な注意が必要。
 

 

 

<参考サイト>

・サンタ・セヴェーラ城観光・イベント情報(英語)

http://www.castellodisantasevera.it/en/

 

 

 

 

*この連載は毎月第2・第4木曜日(月2回)の連載となります。次回8月23日(木)掲載予定です。お楽しみに! 

 

 

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田島麻美 (たじま・あさみ)

千葉県生まれ。大学卒業後、出版社、広告代理店勤務を経て旅をメインとするフリーランスのライター&編集者として独立。2000年9月、単身渡伊。言葉もわからず知り合いもいないローマでのサバイバル生活が始まる。半年だけのつもりで暮らし始めたローマにそのまま居座ること17年、イタリアの生活・食文化、歴史と人に魅せられ今日に至る。国立ローマ・トレ大学マスターコース宗教社会学のディプロマ取得。旅、暮らし、料理をメインテーマに執筆活動を続ける一方、撮影コーディネイター、通訳・翻訳者としても活躍中。著書に『南イタリアに行こう』『ミラノから行く北イタリアの街』『ローマから行くトスカーナと周辺の街』『イタリア中毒』『イタリア人はピッツァ一切れでも盛り上がれる』他。

 

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