台湾の人情食堂

台湾の人情食堂

#40

台北駅至近のとっておきの宿と米粉麺の人気店

文・光瀬憲子 

 台北のヘソともいえる巨大建造物、台北駅。台北市内を走るMRTをはじめ、高鉄(台湾新幹線)、台鉄(在来線)、長距離バスの発着駅となっているが、今年3月には台北市内と桃園空港を結ぶ空港MRTも開通してますます便利になった。駅の外観や吹き抜けのホールも見ものだが、2階のフードコートや地下のショッピングモールも充実している。

 筆者がここ数年注目しているのは、その台北駅の北側、「後車站(ホウチャザン)」(駅裏)と呼ばれるエリアだ。新たに開通した空港直通のMRTを降りて地上へ上がると、承德路、太原路、重慶路といった通りに出る。ごちゃごちゃした垢抜けない洋服屋さんや雑貨店、工具店などが立ち並び、洗練された台北駅の南側と比べると雑然としているが、下町っぽさが残っていて風情がある。

 戦後、台湾の地方都市は物資が不足していたため、列車で台北まで上り、食糧や衣類、日用品を買い求めるのが常だった。このため、台北の駅裏では洋服店、カバン店、雑貨店などの卸売店が繁盛したという。その頃の名残で、いまでも台北駅裏にはこうしたものを扱う店が多い。

 

 

こだわりのあるドミトリー「スター・ホステル」

 そんな駅裏の一画、華陰街に、うっかりすると通り過ぎてしまいそうな、シンプルな木枠のドアがある。よく見ると頭上に「Star Hostel」という看板が出ている。この木枠の入口からエレベーターで4階へ上がると、ちょっとした異空間が迎えてくれる。

 ここは3年前にオープンしたドミトリー型の宿、スター・ホステル。最近、台北には低価格のベッドだけを予約し、部屋を他の旅行者とシェアするドミトリータイプの宿が急増している。スター・ホステルは4人部屋、6人部屋、8人部屋など男女別、および男女混合のドミトリーが15室ある。

 その一方、個室も充実していて、シングルルーム、ダブルやツインルームなど、一般のホテルと変わらない部屋も54室。合計で190人以上を収容できる、台北市内で最大規模のドミトリーだ。

 

01

スター・ホステルのメインラウンジ。すべて台湾本土で調達した木材を使っている

 

 スター・ホステルがちょっと特別なのは、そのレイアウトと運営形態。ドミトリーにはたいていラウンジと呼ばれる共有エリアがあり、宿泊客は自室のベッド以外に、ラウンジで多くの時間を過ごす。スター・ホステルはこのラウンジに重きを置いている。2フロア分の高さのある天井と広々とした木目調の巨大ラウンジ。中央やベランダには観葉植物が置かれていて、屋外にいるような開放感がある。

 

02

スタンダードなシングルルーム(トイレ、シャワー付き)。シンプルで清潔感あふれる部屋は1泊1400元~

 

03

ツインルーム(トイレ、シャワー付き)は1泊2080元~

 

04

相部屋は1ベッド1泊580元~。タオルやアメニティーは要持参だが、レンタルもできる

 

 掃除には特に力を入れているというだけに、館内は清潔感にあふれている。筆者自身が宿泊取材をしている間も、拭き掃除や植物の手入れをするスタッフの姿を一日に何度も見かけた。

 

05

人気の「フレンドバンク」と呼ばれる相部屋。1泊3100元~で、3~4人でシェアするのににちょうどいい

 

06

木目調の落ち着いたファミリールーム。1泊3000元~

 

 また、台湾では土足で建物内に入るのが一般的だが、スター・ホステルの宿泊エリアは、ラウンジを含め、個室、洗面所、キッチンなどはすべて靴を脱いでスリッパで入る。「日本をお手本にしたんです」というのはオーナーの廖晨翔氏(通称エリック)。営業マンとして欧米やアジアを飛び回った20代から30代、彼は各地のドミトリーに滞在し、台北でも自ら経営したいと考えたという。

 日本のホテルや家庭では土足で室内に入らないこと、すみずみまで掃除が行き届いていて清潔感を保っていること、シンプルでムダのない内装がエコにも通じていること、など日本から学んだことが多いと言う。

 相部屋には一人ずつ大きなロッカーが備えられているので、大きなスーツケースも十分に収納できる。ベッドにはもちろんカーテンがあり、コンセントや小さな照明もあるので、同室の人がいてもプライベートな空間をもつことができる。

 

07

すべての宿泊客に無料の朝食バイキングが提供される。豆から挽いたコーヒーも美味。サンドイッチもその場で作ってくれる

 

08

広々としたダイニングスペース。朝食時はもちろん、仲間との団欒にも使える

 

 だが、せっかくのドミトリーだ。ここはラウンジを有効活用したい。スター・ホステルには広々としたリビングのようなラウンジに加え、食堂やカフェとして利用できるテーブルエリアも用意されていて、どちらも24時間利用可能。また、キッチンも自由に使うことができ、冷やしておきたいものは名前を書いて冷蔵庫に保管できる。また、週に3回ほどムービーナイトを設けていて、人気映画の上映会も行う。巨大スクリーンで見ることができるのでちょっとした劇場気分を味わうことができる。

 ドミトリーの宿泊客はほとんどが昼間は観光に出歩き、夜に寝床へ戻る。台北は夜市など夜のエンターテイメントが多いので、ラウンジが混雑するのは夜の10時過ぎだ。宿に戻り、夜市で買ったデザートをシェアする人、一緒に来た友達と写真を見せ合う人、どこかでケーキを調達してきてバースデーパーティーを開くグループ、またはひとり静かに読書をする人など、過ごし方はさまざまだ。

 

 

台北駅Y17出口の目の前にある「アパートメント10」

09

アパートメント10の特等席。女子部屋の西向きのベッドは、足元のカーテンを開けるとTaipei 101が見える

 

 スター・ホステルのオーナーが「駅裏の隠れ家」と呼ぶもうひとつのドミトリーがある。その名も「アパートメント10」。こちらは台北駅Y17出口の目の前にあるので、スター・ホステルよりアクセスがよい。1階のエレベーター前には警備員のおじさんがのんびりと座ってテレビを見ている。10階のドアを開けるとやはり異空間。スター・ホステルのような開放感はないが、アットホームで実に落ち着いた雰囲気だ。200人近くを収容できるスター・ホステルとは異なり、こちらは相部屋が2部屋、個室が5部屋で、収容人数は合わせて30人程度。

 共有スペースのラウンジには、落ち着いた色のフローリングや味のある大きなテーブルとソファ、台北の西側にある板橋や三重などの下町にかかる陸橋を俯瞰することができる大きな窓などがある。隠れ家と呼ぶにふさわしい落ち着ける空間だ。

 

10

アパートメント10のラウンジ。無料の朝食は各種のパンやフルーツなど

 

11

アパートメント10へは、この「名城ビル」(台北駅Y17番出口の目の前)のエレベーターで10階へ。24時間警備員がいるので安心

 

 

米粉麺と豚肉スライスが美味しい路地裏食堂

 アパートメント10を出て右に進み、重慶北路を右に折れて歩道沿いを少し歩き、重慶北路の向かいに見えるピンクの看板のコンビニ(萊爾富)の右脇の路地に入ると、右手にオーナー行きつけの食堂「大稲埕米粉湯」が見えてくる。早朝から昼過ぎまで営業するこの屋台では、79歳になるおじいちゃんが満面の笑みで客を迎えてくれる。

 

12

重慶北路と華陰街の交差点付近の路地にあるおじいちゃんの米粉スープ屋台

 

13

午前中に訪れれば塩粥にもありつける。向かいには雑貨店があり、ビールの自己調達も可

 

 朝食やランチにぴったりの、あっさりとしたスープと太めの米粉。炭火で暖められたスープには、豚肉のいろいろな部位が煮込まれているので、旨味が濃い。米粉スープを1杯、そして黒白切(豚モツのスライス)を1皿頼む。正肉やレバーなど一般的な部位をはじめ、豚の歯茎や目玉など、ほかではあまり食べられない部位も揃っている。

 

14

手前の米粉スープは40元。黒白切は部位や量によって異なるが1プレート50元程度。日曜定休

 

 9歳の頃からこの店を手伝い、キャリアは70年というおいじいちゃん。そのかくしゃくとした仕事ぶりと、すべてを包み込むような笑顔を見るだけでも、この食堂に来る価値がある。

 

●「Star Hostel」(スター・ホステル)

台北市華陰街50號4F ※桃園空港からMRT台北駅下車、台北駅地下街を歩き、Y13出口を出て太原路を直進。華陰街を右折してすぐ。

シングルルーム1400元~ ダブルルーム1980元~ ツインルーム2080元~ ドミトリー 1ベッド580元~

http://www.starhostel.com.tw

 

●「Apartment10」(アパートメント10)

台北市重慶北路一段1號10F-1 ※桃園空港からMRT台北駅下車後、台北駅地下街を歩き、Y17出口を出た目の前。荷物が多い場合はエスカレーターがあるY13出口へ。

ダブル・ツインルーム1780元~ トリプルルーム 2500元~ ドミトリー1ベッド500元~

http://apt10f.com

 

 

 

 

*著者最新刊、双葉文庫『ポケット版 台湾グルメ350品! 食べ歩き事典』が好評発売中です。旅のお供にぴったりの文庫サイズのポケット版ガイド、ぜひお手にとってみてください!

 

ƒshoei

ポケット版 台湾グルメ350品! 食べ歩き事典

定価:本体648円+税

 

 

*単行本『台湾の人情食堂 こだわりグルメ旅』が、双葉社より好評発売中です。ぜひお買い求めください!

 

台湾カバー01

『台湾の人情食堂 こだわりグルメ旅』 

定価:本体1200円+税

 

 

*7月15日、8月19日(いずれも第3土曜13:00~14:30)、名古屋の栄中日文化センターで筆者が台湾旅行講座を行います。お申し込みは下記からお願いいたします。
http://www.chunichi-culture.com/programs/program_160822.html
℡ 0120-53-8164

 

 

*本連載は月2回(第1週&第3週金曜日)配信予定です。次回もお楽しみに!

 

 

taiwan_profile_new

著者:光瀬憲子

1972年、神奈川県横浜市生まれ。英中日翻訳家、通訳者、台湾取材コーディネーター。米国ウェスタン・ワシントン大学卒業後、台北の英字新聞社チャイナニュース勤務。台湾人と結婚し、台北で7年、上海で2年暮らす。2004年に離婚、帰国。2007年に台湾を再訪し、以後、通訳や取材コーディネートの仕事で、台湾と日本を往復している。著書に『台湾一周 ! 安旨食堂の旅』『台湾縦断!人情食堂と美景の旅』『美味しい台湾 食べ歩きの達人』『台湾で暮らしてわかった律儀で勤勉な「本当の日本」』『スピリチュアル紀行 台湾』他。朝日新聞社のwebサイト「日本購物攻略」で訪日台湾人向けのコラム「日本酱玩」連載中。株式会社キーワード所属 www.k-word.co.jp/  近況は→https://twitter.com/keyword101

紀行エッセイガイド好評発売中!!

taiwan00_book01

台湾一周! 安旨食堂の旅

taiwan00_book02

台湾縦断! 人情食堂と美景の旅

isbn978-4-575-31183-9

台湾の人情食堂 こだわりグルメ旅

 

台湾の人情食堂
バックナンバー

その他のTRAVEL

ページトップへ戻る

ページトップへ戻る