究極の個人旅行ガイド バックパッカーズ読本

究極の個人旅行ガイド バックパッカーズ読本

#38

タイ・バックパッカー・アイランド〈2〉パンガン島

文と写真・『バックパッカーズ読本』編集部

 タイ湾に浮かぶ3つの島の中で、バックパッカーたちが最も親しんできたのがパンガン島だろう。いまや世界的なイベントに成長した、フルムーンパーティーの聖地だからだ。満月の夜を目指して、いまもバックパッカーが押し寄せる島なのだ。

 

パーティー文化を受け継ぐ聖地 

 1990年代初頭だったといわれている。その頃まだプリミティブな暮らしと大自然とが残るパンガン島を訪れた欧米人のDJがいたという。彼は島の夜空に輝く満月の美しさに感動して、小さなパーティーを開いた……。
 この出来事がきっかけとなり、パンガン島では満月の夜、レイブパーティーが開かれるようになっていく。そしてどんどんとその規模を拡大させていった。
 インドのゴアやマナリ、スペインのイビサ島などで盛り上がっていたパーティー文化が波及したともいえるだろう。90年代には格安航空券の普及によって世界的なバックパッカー・ブームが起こり、またタイでは観光開発が急速に進んだことも背景にある。90年代も後半になると、パンガン島はバックパッカーの聖地、パーティーのメッカと見なされるようになっていく。
 いまもその文化は受け継がれている。
 満月の夜、巨大なパーティーが行われるのは島の東部、ハドリンだ。ここには無数の安宿と食堂、旅行会社や土産物屋などがひしめき、さながらバンコクのカオサン通り。この島を訪れるバックパッカーの大部分がこのエリアに宿を求めるだろう。フルムーン時にはおよそ3万人がハドリンに押し寄せるともいわれる。

 

01
フルムーンパーティーが島の観光開発の起爆剤になった

 

02
パーティー会場となるハドリン。平時は美しいビーチが広がる

 

パーティー時には最低でも5泊? 

 平時のハドリンであれば、ドミトリー200バーツ(約710円)くらいから安宿が見つかる。シングルで400バーツ(約1420円)ほどだろうか。しかしフルムーンパーティーのときはこれが値上がりし、さらに「最低でも5泊」など連泊が求められるのである。満月の当日だけでなく、その前後もハドリンにのんびり滞在しようという欧米人がたくさんいるからだ。
 つまり「値上げ+連泊」という条件でも、フルムーン時は宿が足りなくなるので、できるだけ早く予約をすべし。
 あるいは、ハドリンには泊まらないという手もある。よほどのパーティー好きでもなければ、5泊も必要はない。ひと晩あるいは数時間ほど会場で過ごせば、かなり満足するだろう。別のエリアに泊まって、パーティーだけバイクタクシーやトゥクトゥク、レンタルバイクなどでハドリンと往復すればいい。
 旅行者が集まってくるのは東部のハドリンだが、島民の暮らしの中心は西南部のトンサラだ。こちらは島の暮らしぶりが見えてくる市場や商店街もあるし、テスコロータスなど大型スーパーもあって便利。毎週土曜日の夜にはナイトマーケットも開かれる。安宿もハドリンほどではないが、たくさんある。こちらはフルムーン時でも連泊を求められないところが見つかる。

 

03
トンサラのサタデー・ナイトマーケットは外国人に大人気

 

04
バケツカクテルはタイのビーチではよく見るが、飲みすぎには気をつけて

 

パーティーでの注意点 

 パンガン島はアジアを代表するパーティーシーンのひとつだが、90年代のようなアナーキーさはずいぶんと影を潜めた。パーティー客がマリファナやドラッグを大っぴらに楽しんでいたのは昔の話で、いまは取り締まりが厳しく行われている。パーティー時には島の各所で警官隊による検問があるし、荷物もレンタルバイクもすみずみまでチェックされる。ドラッグの所持が見つかって逮捕される外国人も多い。
 それと泥酔による事故にも注意。島の名物のようになっているのは「バケツ」と呼ばれる特製ドリンクで、その名の通りウイスキーやコーラやスタミナドリンクなどがバケツに入って売られている。島のいたるところで見るだろう。これをどぼどぼとバケツに注いて混ぜて、みんなで飲み干し、音楽に乗って踊るのだ。酒の強さだけでなく、パーティーの幻想的な雰囲気や、轟くような大音響の音楽もあって、おかしな酔い方をすることもある。そのままバイクに乗って事故を起こしたり、海に飛び込んで溺れる旅行者もまた多い。
 なお2020年のフルムーンパーティーは、3月8日、4月7日、5月7日、6月5日、7月7日、8月4日、9月2日、10月3日、10月30日、11月30日、12月29日。とりわけ11月と12月が盛り上がる。
 また現在のパンガン島では、フルムーンパーティーの「経済効果」に気を良くしたのか、満月のとき以外にもあれこれとイベントが行われている。半月の日のハーフムーンパーティー、新月の日のブラックムーンパーティーが有名だ。
 逆に言うと、静かに過ごしたい人はこれらの日を避ければいいだろう。

 

05
北部のチャロック・ルム湾。ハドリンよりぐっとローカルな雰囲気になる

 

見どころはハドリンだけではない 

 フルムーンパーティーばかりが注目されるパンガン島だが、島にはまだ手つかずのジャングルも残り、また古い漁村のたたずまいにも味わいがあり、ゆっくりするにはいいところだ。
 北部のチャロック・ルム湾には小規模のリゾートが点在し、ハドリンよりもずっと落ち着いた風情だ。若い欧米人向けのジャンクフードばかりのハドリンより、シーフードもおいしい。
 ここから西に行くと、ちょっとした絶景スポットもある。パンガン島から細長い砂州が突き出ており、その先の島とつながっているのだ。いかにも写真映えするが、日本人旅行者は少ない。
 西部には小さな村が並ぶ。島の人々の暮らしぶりを眺めながらバイクで走るのは楽しい。内陸に入っていけば、エレファントサファリやジャングルトレッキングが楽しめるし、アレンジしている旅行会社もある。
 ハドリンとトンサラ以外でも安宿は島内に散らばっている。こうしたところに泊まって、パーティーだけハドリンに行くというのもいいだろう。
 なお交通はタオ島、サムイ島との船がメイン。チュムポーンからタオ経由、スラーターニーからサムイ経由もある。タオ同様に、バンコクからのジョイントチケットも各所で販売されている。プーケットなどタイ各地からのジョイントチケットもある。

 

06
島の西部は遠浅になっていて、干潮時の夕暮れは幻想的な光景が見られる

 

07
パンガン島北部のビューポイントから。砂州でパンガン島とつながったマー島が見える

 

 

*本連載は月2回(第1週&第3週水曜日)配信予定です。次回もお楽しみに!

 

*タイトルイラスト・野崎一人 タイトルデザイン・山田英春

 

 

『バックパッカーズ読本』編集部

格安航空券情報誌『格安航空券ガイド』編集部のネットワークを中心に、現在は書籍やWEB連載に形を変えて、旅の情報や企画を幅広く発信し続けている編集&執筆チーム。編著に究極の個人旅行ガイド『バックパッカーズ読本』シリーズなど。

 

紀行エッセイガイド好評発売中!!

okinawa00_book01

最新改訂版 バックパッカーズ読本

究極の個人旅行ガイド バックパッカーズ読本
バックナンバー

その他の辺境・秘境の旅

ページトップアンカー