料理評論家・山本益博&美穂子「夫婦で行く1泊2食の旅」

料理評論家・山本益博&美穂子「夫婦で行く1泊2食の旅」

#36

箱根

文と写真・山本益博

 

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家族三人で秋の箱根へ
仙石原のすすき、強羅の宿「箱根本箱」、蕎麦「箱根竹やぶ」を堪能する

 

  

 

箱根の強羅にこの夏、ユニークな宿が誕生した! その名も「箱根本箱」。ホテルに図書館が併設された感じで、本好きにはたまらない宿である。本棚の前で立ち読みする人もあれば、ラウンジでコーヒーを飲みながらゆっくりとページを進める人もいる。さらに、部屋に持ち帰って精読するもよし。壁面一杯の棚に並ぶ本はジャンルが偏らず、気に入った本があれば、買い求めることもできる。まことに、ありがたいホテルである。

 

 

 

6壁一面に本棚が並ぶラウンジ
 
 

9ゆったりとした空間で妻の美穂子と
 

 

この秋、箱根・仙石原のすすきが見ごろということで、家族三人で出かけて行った。秋晴れに恵まれ、陽の光を浴びたすすきは黄金色に輝き、なんとも気持ちよさそうに秋風に身を任せてそよいでいた。その様は、まるで黄金の海原! 6月の根付きのよい稲穂が初夏の風にそよぐ緑一面の田んぼも壮観だが、10月の黄金のすすきの大群は、また格別の趣があった。
 

 

5黄金色に輝く仙石原のすすき

 

 

さて、「箱根本箱」の露天風呂がついた客室には、テレビも時計もない。時を忘れて、くつろぐか、時と一緒に我も忘れて、読書に耽るかしてくださいとでも言っているようだ。


 

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客室の露天風呂からの眺め

 

夕食は2回制で、2回目が7時45分というのがとてもいい。チェックインして、一風呂浴びて、すぐに夕食という旅館の食事は、なぜかせわしないと思う私など、お腹も適度に空いて、好都合である。しかも、カウンターと個室が選べる自由がある。
私達はカウンター席に並んで、相模湾で獲れる地魚をはじめとするシェフの渾身の料理を存分に味わった。料理に合わせて選ばれたワインが、すべて国産というのも立派である。
ここまで徹底できている宿は、私の知る限りほかになく、なんとも度胸のよい選択ですがすがしい。
 

 

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シェフ渾身の箱根のローカルガストロノミー

 

 

 朝ごはんは洋食で、キッシュにハムに緑野菜の皿。パンオショコラにカフェオレがつき、ジュースは完熟みかん。さらにミネストローネのスープで身体が温まる。
 

 

 

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カウンター席にて朝ごはん

 

 

チェックアウト前にもう一度露天風呂に入り、さて昼はどこで食べようかという算段になり、湖尻に近い「箱根竹やぶ」へ出かけることにした。千葉県・柏にある「竹やぶ」の支店である。
この店へ来たら、必ず注文するのが「そばがき」。そば粉と水だけで作る極めてシンプルなそば料理だが、「竹やぶ」の「そばがき」はよその団子状の硬さのそれではなく、空気をいっぱい含んだまるでムースのような「そばがき」である。
そばの香りを楽しむにはうってつけ。あとは、せいろを手繰る。温かいそばなら定評の「てんぷらそば」もいいが、つい「にしんそば」に食指が動いてしまう。昆布の旨味がしっかりと馴染んだにしんの味のコクのあること。
甘味は「水あずき」。言ってみれば「水ようかん」の極上版。
箱根にはどの道筋にもそば屋が点在するが、「竹やぶ」を知ってしまうとほかに目をくれなくなる。最強の1軒である。
 

 

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そばがき
 

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せいろ


1にしん

 

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水あずき

 


次回は宮古島です。

 

 

 

■「箱根本箱」

 

住所/神奈川県足柄下郡箱根町強羅1320−491
問い合わせ/0460-83-8025住所/非公開
http://hakonehonbako.com

 

 

■「竹やぶ 箱根店」

 

住所/神奈川県足柄下郡箱根町元箱根160-80
問い合わせ/ 0460-84-7500
営業時間/11:00~18:00 ※18:00以降予約のみ
定休日/水曜日

 

 

 

 

 

*この連載は毎月25日に更新です。

 

山本さん顔

山本益博(やまもと ますひろ)

1948年、東京・浅草生まれ。早稲田大学第ニ文学部卒業。卒論が『さよなら名人藝―桂文楽の世界』として出版され、評論家としてスタート。幾度も渡仏し三つ星レストランを食べ歩き、「おいしい物を食べるより、物をおいしく食べる」をモットーに、料理中心の評論活動に入る。82年、東京の飲食店格付けガイド(『東京味のグランプリ』『グルマン』)を上梓し、料理界に大きな影響を与えた。長年にわたる功績が認められ、2001年、フランス政府より農事功労勲章シュヴァリエを受勲。2014年には農事功労章オフィシエを受勲。「至福のすし『すきやばし次郎の職人芸術』」「イチロー勝利への10ヶ条」「立川談志を聴け」など著作多数。 最新刊は「東京とんかつ会議」(ぴあ刊)。

 

 

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