韓国の旅と酒場とグルメ横丁

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#36

ソウル大衆酒場めぐり黄金コース「乙支路編」

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 ゴールデンウイークを挟んだこの1カ月間、日本からの旅行者(読者の方たち)とソウルで何度も飲む機会に恵まれた。どなたも日本の酒場通ばかりで、いくらリピーターでもこういうところには抵抗を感じるのでは? と思うようなディープな店でも楽しんでしまう人たちばかりで、さすが日本は居酒屋先進国と感心させられた。

 今回は、風情のある大衆酒場が集まっているソウルの乙支路4街→乙支路3街の飲み歩き黄金コースをおさらいしてみよう。

 

スタートは乙4(ウルサー)=乙支路4街(ウルチロサーガ)駅 

 ソウル飲み歩きのスタート地点は、乙支路4街駅。4番出口から地上に上がったら、2つ目の路地を右折してしばらく行くと、小さな食料雑貨店(シュポ)で飲ませる、ソウル版角打ちの人気店「デソン食品」がある。この時期は店の前に置かれる簡易テーブルで夜風を感じながら飲むのが一興。つまみは豆腐キムチなど。

 

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路地裏のオアシス「デソン食品」

 

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「デソン食品」の豆腐キムチ7000ウォン

 

 デソン食品に向かって右に進むと、突き当りの左角には名物おばあちゃんと娘、そしてたまに孫娘が顔を出す三代酒場「トンイル食品」がある。この辺りの飲ませるシュポとしては最古参。袋菓子や清涼飲料水が雑然と積まれた店内で飲んでいると、日本の人なら子供のころに通った駄菓子屋を思い出すことだろう。つまみはケランマリ(オムレツ)やプゴクッ(干しダラのスープ)など。

 

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「トンイル食品」のケランマリ(オムレツ)。飽きないようにと半分だけケチャップをかけてくれる心づかいがうれしい

 

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「トンイル食品」の名物おばあちゃん。夜も更けてこっくりこっくり

 

 また、昨年11月に本連載#23で紹介した「大福マートゥ」は角打ちデビューにうってつけだし、同駅1番出口脇の路地を入ってすぐのところにある「春川マッククス」で、先酒後麺(まず酒を飲み、麺で〆る)を体験するのもいい。詳細は前回#35参照。

 

 

乙4から乙3(ウルサム)=乙支路3街(ウルチロサムガ)へ 

 来た道を戻り、乙支路4街駅4番出口のある歩道を今度は右に進むと、すぐに遊歩道、清渓川(チョンゲチョン)が横切っている。この川沿いを左方向に5分ほど歩き、清渓サーゴリ(四つ角)を左折すると、通りの右側に乙支路3街駅4番出口が見えてくる。

 その手前の路地を右に入り、薄暗い零細工場街を歩くと、夕方以降ならざわめきが聞こえてくるはずだ。そのざわめきの方向に向かっていくと急に視界が開け、下の写真のような光景が広がるので驚くはずだ。

 

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ソウル市の「未来遺産」に選定され、外飲みも解禁となった乙支路3街のノガリ横丁

 

 ここは乙支路3街のノガリコルモク(干しダラ横丁)と呼ばれる、ソウルを代表する大衆ビアホール街。気候がよくなると路上にテーブルがズラリと並べられ、昼間はなんの変哲もない雑居ビル街がお祭り会場のように賑わう。昨年、路上での飲食はそもそも違法ということで外飲みは自粛されていたのだが、このほどノガリコルモクはソウル市の「未来遺産」に選定され、めでたく外飲み解禁となった。

 この辺りの店では、席に着いただけで生ビール(500cc)が出てくるので注文は不要。つまみも何も言わなければノガリ(タラの幼魚)の干物が出てくる。歯ごたえがあって、ノガリひとつで生2杯はいける。固いものが苦手ならファンテを頼むとよい。同じタラでもこちらは身が叩いてあるので、やわらかい。

 横丁の古株は「ОBベオ」。壁沿いにカウンターがあるので、一人飲みもしやすい。女将も気さくで、簡単な英語であれこれ世話を焼いてくれる。

 

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「ОBベオ」のファンテと生ビール。これで4000ウォン(約400円)

 

 乙支路3街でもう1軒行くなら、「元祖緑豆(ウォンジョノクトゥ)」。ОBベオを出たら左に進み、横丁でもっとも大箱の「満船HОF(マンソンホプ)」の角を左折し、突き当りを右折したところにある。

 ここはジョン(チヂミ)の専門店なので、酒は生マッコリが似合う。以前はソウルの長寿マッコリしか置いていなかったが、最近は京畿道の歴史ある醸造所で作られるジピョン・マッコリを出すようになったので、こちらも試してみよう。つまみは細かく刻んだタコとネギがたっぷり入ったヘムルパジョンがおすすめだ。

 長年、ジョンを焼き続けたご主人(70代)は一昨年亡くなられたが、今は奥さんとお手伝いさんががんばっている。

 

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「元祖緑豆」のヘムルパジョン10000ウォン

 

 

清渓川の北側の路地裏にソウルを代表する角打ちが 

 酔客たちを眺めながら、来た道を乙支路3街駅の4番出口まで戻る。そこから清渓川を渡り、公衆トイレの角を左に進む。工具店のある歩道を少し進み、ふたつめの路地を右に入ると「ソウル食品」がある。

 

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左手が「ソウル食品」の店舗

 

「えっ! ここで飲むの?」とたいていの日本人、いや韓国人にも驚かれる。周囲は狭小工場(主に金属加工)が集まっていて、この店も遠目にはその一部にしか見えないが、よく見るとアイスクリームや清涼飲料水の冷蔵庫があり、中には小さな調理場と生ビールサーバー、棚には袋菓子やカップ麺が無造作に並んでいる。

 

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小さな金属加工工場(こうば)に隣接する「ソウル食品」。1階は狭いので2、3人で訪れるのが望ましい

 

 生ビールも焼酎もマッコリもすべて2000ウォン(約200円)という破格値。最近、拙著の読者の方がこの店で、手長ダコの刺身と茹でサザエ、牡蠣の天ぷらを肴に生ビール3杯とマッコリ1本を飲んで34000ウォン(!)だったとSNSに書いていた。

 

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「ソウル食品」は生ビールサーバーを備えた珍しいシュポ。人気のある証拠。生は1杯2000ウォン

 

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「ソウル食品」おすすめのつまみ、茹でサザエ10000ウォン

 

 店は口数の少ないお姉さん(主人)と、快活なお姉さんの二人が切り盛りしている。主人は調理担当。快活なお姉さんはホール係&出前担当だ。

 2階には4人掛けのテーブルが5、6卓あり、ふつうの飲食店のように利用できるのだが、乙支路工場街の角打ちの醍醐味は、やはり1階の狭いスペースに2卓だけあるテーブルで、まめまめしく働く2人のお姉さんの姿を眺めながら飲むことだろう。

 

*今回取り上げた乙支路4街~3街の店の位置は、『韓国ほろ酔い横丁 こだわりグルメ旅』の巻末の地図で確認できます。

 

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*本連載は月2回配信(第2週&第4週金曜日)の予定です。次回もお楽しみに!

 

 

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紀行作家。1967年、韓国江原道の山奥生まれ、ソウル育ち。世宗大学院・観光経営学修士課程修了後、日本に留学。現在はソウルの下町在住。韓国テウォン大学・講師。著書に『うまい、安い、あったかい 韓国の人情食堂』『港町、ほろ酔い散歩 釜山の人情食堂』『馬を食べる日本人 犬を食べる韓国人』『韓国酒場紀行』『マッコルリの旅』『韓国の美味しい町』『韓国の「昭和」を歩く』『韓国・下町人情紀行』『本当はどうなの? 今の韓国』、編著に『北朝鮮の楽しい歩き方』など。NHKBSプレミアム『世界入りにくい居酒屋』釜山編コーディネート担当。株式会社キーワード所属 www.k-word.co.jp/

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