究極の個人旅行ガイド バックパッカーズ読本

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#35

バックパッカー初体験にはミャンマーもおすすめ〈2〉

文と写真・『バックパッカーズ読本』編集部

 まだまだ不便なことも多いけれど、旅の魅力をたっぷり味わえるミャンマー。生活の中に息づく仏教や、たくましく働く子供たちに何事かを考え、伝統のカラフルな装いに目を見張り、壮大な自然に息を呑む。そんなミャンマーをバックパッカー旅行するための基本情報を紹介しよう。

 

ミャンマーの暮らしが見えるカフェに行こう 

「ミャンマーの食事はいまひとつ」という声があるが、決してそんなことはないのだ。どの国だって豊かな食文化が根づいているもの。だけどミャンマーは(カンボジアあたりも同様だが)、これまで混乱していた社会情勢、低迷していた経済状況もあり、外食文化があまり発展していない。家庭料理は抜群においしいのだが、周辺国のタイやベトナムのように、どこに行っても安くておいしい屋台があるとは限らないのだ。選択肢はいくらか少なくなる。
 それでも、バックパッカーの予算でも十分に食を楽しめるはず。いちばんお世話になるのは、トレーにおかずを並べた大衆食堂だろう。これなら言葉がわからなくても注文できる。この中では「ヒン」という、ミャンマーカレーともいわれる煮込み料理をよく見るだろうか。
 注文するのは一皿、多くでも二皿でいい。ほかに、それこそ山のような副菜がどかんとやってくるのがミャンマー流なのだ。スープ、サラダや、茹でたり煮物にした野菜、揚げた干しエビといったご飯のアテ……これらがテーブルいっぱいに並べられる。基本的に無料だ。もちろんご飯もついて、一皿2500チャット(約180円)~くらいだろうか。それに麺類はナマズからダシを取った国民食的なモヒンガーなど種類豊富。
 そしてミャンマーは多民族国家であり、中国とインドの影響も強い国だ。少数民族の料理も各地で食べられる。シャン族風の米麺カオスエや、インドにルーツのある炊き込みご飯ダンバウがあるかと思うと、その隣で中華風の肉まんを蒸していたりもする。
 バックパッカーなら、ぜひカフェにも行ってほしい。旧宗主国のイギリスの影響かミャンマーではあちこちでカフェを見るが、ここが社交場のようになっていて楽しい。紅茶もあればインド風のチャイ(ミルクティー)もあるし、中国茶は飲み放題だ。カフェでもやはり、お茶を頼むとスナックやパンなどの皿がどっさり運ばれてくるが、食べたぶんだけ支払えばいい。軽食のほかヒンやモヒンガーなどもある。
 ここは友人同士のんびり過ごしたり、商談したりと思い思いに過ごすところ。ミャンマー人の生活が見えてくる場所でもある。バックパッカーも紅茶一杯300~400チャット(約20~30円)を飲んで腰を落ち着ければ、なかなか豊かな気分になれるのだ。

 

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こういう店がわかりやすいし、リーズナブルだ

 

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中部パアンのレストランにて。頼んだのは右下の魚の煮物だけ。あとはみんな「オマケでついてくる」副菜なのだ

 

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街歩きに疲れたらカフェに寄ろう。賑やかな店ならたいてい料理もおいしい

 

ヤンゴンではgrabが欠かせない 

 長距離移動はバスが主流になるだろう。鉄道も走っているが本数はわずかで遅延も多い。飛行機はバックパッカーの予算的に難しい。バスはここ数年の道路インフラの改善から、少なくとも主要都市間ではだいぶ快適になってきた。ゆったりとリクライニングできたり、USB完備の車両もある。よほど安いバスでなければエアコンはある。
 3時間前後の短距離移動の路線はミニバンが頻発している。早いしひんぱんに発着しているのだが、後部座席に詰め込まれるとかなりきつい。また荷物が大きいと追加料金がかかる場合も。
 ヤンゴンとマンダレーの市内では、タクシー配車アプリgrabがすっかり普及した。目的地を入力すれば、ほんの数分でやってくるほどgrabタクシーの密度は高い。あらかじめ料金が提示されるし、客が運転手を評価するシステムなので後から高額な料金を請求されることもない。クレジットカードと紐づければ現金は不要だ。
 確認のため乗車前にメッセージが送られてくることもあるが、こちらの登録した名前から相手は外国人だと察して、やりとりは英語の簡単な定型メッセージだけになることがほとんどなので、言葉の問題もない。ミャンマーではぼったくりタクシーは少ないのだが、それでもバスターミナルや駅には悪質な連中もいる。そんなときはgrabを使おう。ヤンゴンでは路線バスも便利だが、grabと併用して回るといいだろう。
 地方都市ではバイクタクシーが活躍するだろう。郊外の見どころをまとめて回ってくれたりもする。安宿でも手配できる。

 

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ヤンゴン駅で出発を待つ。時間があるなら列車の旅も楽しい

 

タイから陸路で入るコースもおすすめ 

 人気の観光地は2019年7月に世界遺産として指定されたばかりのバガンだろう。カンボジアのアンコールワット、インドネシアのボロブドゥールと並ぶ仏教三大遺跡のひとつで、大平原に数千ともいわれる仏塔や寺院が散らばっている。
 加えてビルマ最後の王朝の都マンダレー、シャン高原に広がるインレー湖、それにヤンゴンと合わせた4か所を巡るルートが人気だろうか。最短で10日は欲しい。
 タイと組み合わせても面白い。4つの陸路国境が開いているのだ。タイ・ラノーンからミャンマー最南端のコータウンに海を越えて入るルート、タイ西部メーソートからミャンマー・ミャワディに入るルートを選ぶバックパッカーが多いようだ。
 このルートではミャンマー最大のパワースポットといわれるチャイッティーヨー・パヤー、世界最大級の寝釈迦仏、それにアンダマン海でのマリンスポーツも楽しめる。
 なお北部のメーサイ・タチレク国境からは、情勢不安定のためチャイントンという町までしか行けない。もうひとつタイ・カンチャナブリーからミャンマー・ダウェイに抜けるルートも開かれており、通行するバックパッカーは少ないが、タイ国境に広がる山岳美を見ながら旅することになる。
 そしてミャンマーからは、インドへも道がある。インド東部の最果て、日本軍が無謀な作戦を行ったことで知られるインパールに向かう国境が開かれているのだ。
 陸路で東からアジアを旅してきてミャンマーに入ると、インドの臭いが濃密であることに気がつくだろう。インド系の人々が実に多い。前述のようにチャイもあれば、インド料理の店もたくさん並ぶ。ヒンドゥー教の寺院もよく見かける。ミャンマーの先に、インド文化圏が広がっていることを肌で知るだろう。この国は東南アジアのモンゴロイド世界と、南アジアのコーカソイド世界の結節点でもあるのだ。

 

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落ちそうで落ちない巨岩の上に仏塔が立つ。このチャッティーヨー・パヤーはミャンマー人には人気の巡礼地

 

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ヤンゴンのボージョー・アウンサン・マーケットにて。少年僧はミャンマーでよく見る

 

世界の現実も知る旅となる 

 そんな文化の交差点であるミャンマーでは、面白さと同時に、異なる民族・宗教・人種が共存することの難しさも感じる。北部の旅がチャイントンで止まってしまうのは、いまも中央政府と対立する少数民族がいるからだ。バングラデシュ国境が越えられないのは、世界的に知られることになったロヒンギャ問題が横たわっているからだ。
 それに経済発展を続けてはいても、まだまだ貧困を目の当たりにするだろう。ヤンゴン郊外では、地方から出稼ぎにきた膨大な数の人々が形成するスラムが広がる。食堂や屋台でも、路上の物売りでも、いたるところで働く子供たちを見る。彼らの笑顔やたくましさに感じ入ることもあるが、学校に通えない子供も多いのだ。
 また、どこに行っても僧たちの姿を目にする。上座部仏教が人々の暮らしに寄り添い、息づいている。早朝の托鉢、少年僧の列、寺院で手を合わせる人々の姿にも、きっと何かを感じる。
 少し苦労するかもしれないけれど、ミャンマーの旅は実に刺激的だ。たくさんの学びももらうだろう。そして初海外・初バックパッカーでも、なんとか旅できるはずだ。バックパッカー旅行してみたい、でもどこに行ったらわからない……という人には、おすすめできる国のひとつだ。

 

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朝の托鉢の光景はどこか神聖なものを感じる。これがミャンマーの日常だ

 

 

*本連載は月2回(第1週&第3週水曜日)配信予定です。次回もお楽しみに!

 

*タイトルイラスト・野崎一人 タイトルデザイン・山田英春

 

 

『バックパッカーズ読本』編集部

格安航空券情報誌『格安航空券ガイド』編集部のネットワークを中心に、現在は書籍やWEB連載に形を変えて、旅の情報や企画を幅広く発信し続けている編集&執筆チーム。編著に究極の個人旅行ガイド『バックパッカーズ読本』シリーズなど。

 

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