台湾の人情食堂

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#34

超穴場・南機場夜市の本格グルメ屋台

文・光瀬憲子      

 

 台北には士林夜市を筆頭に、寧夏夜市、饒河街夜市、臨江街夜市など夜市がたくさんある。夜市によって人気店の特徴や食べ物の品揃えはさまざまだ。今回はこぢんまりとしながらもハイレベルな味の屋台が揃った穴場夜市・南機場夜市をご紹介したい。

 

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わかりやすいネオンゲートが南機場夜市のはじまり

龍山寺からタクシーで7分ほど  

 南機場とは、かつて空港があった場所だ。そのためか、台北の南のはずれにあり、艋舺(万華)エリアや中正記念堂からわりと近いのだが、最寄りのMRT駅がない。旅行者向けのガイドブックの地図からは外れてしまうエリアにあるため、観光客はほぼ皆無と言っていい。だが、私はコンパクトにまとまった南機場夜市が大好きだ。龍山寺や中正記念堂からはタクシーで7分程度と実はアクセスもよい。

 客の多くは若者だが、とにかく地元色が濃い。わざわざ夜市へ出かけよう、と意気込むのではなく、近所の人たちが「何か食べようか」「夜市でも行くか」とぶらりとやってきた感じが強い。だから服装にしろ、歩き方にしろ、みんなどこかのんびりしていて、夜市全体にホーム感があふれているのだ。

骨付き肉のスープとおこわの行列店  

「南機場夜市」とネオンで表示されたゲートをくぐると、ずらりと屋台や店が並んでいる。とっつきにある米糕(中華おこわ)と排骨湯(骨付き肉のスープ)の行列が目につく。ピンク色の甘いソースがかかったおこわは案外あっさりとしていて食べやすい。「暁迪排骨酥湯」という店名からしてメインは骨付き肉のスープ。おこわとの愛称がばっちりだ。イートインと同じくらいテイクアウトの客も多く、地元の人たちが押し寄せる人気店であることは明白。おこわとスープでお腹いっぱいにならないよう、数人でシェアしたいところだ。

 

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「暁迪排骨酥湯」の排骨酥湯(骨付き肉のスープ)

 

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「暁迪排骨酥湯」の米糕(中華おこわ)はあっさりとして食べやすい

 

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地元の人々に定評のある行列店。近所の人たちはテイクアウトが多い

美味しくて、しかも具が大きいおでん  

 さらに夜市のメイン通りを進むと目に留まるのが、人だかりのできた「基隆黒輪綜合甜不辣」の屋台。この屋台は南機場夜市の一番人気といえる店だ。

 黒輪を台湾語で発音すると「おれん」と読める。つまり日本語の「おでん」だ。大根、つみれ、ちくわ、厚揚げなどの定番の具に加えて、台湾らしさを象徴する 豬血糕(豚の血ともち米を固めたもの)もある。この店のおでんはオーダーの仕方が少々変わっていて、屋台の女将さんに欲しいものを指差して頼むと、その場で切って皿に盛ってくれる。他の店によくあるような「1人前○○元」とか「大碗○○元」という決まったメニューがない。こちらもテイクアウトの客がとても多いのが特徴。

 すべての具が大きいので、3~4種類頼むとお皿に山盛りになる。とにかく味が抜群にいい。どの具も手作りで、女将さんの優しさが伝わってくる。甘みが程よく、また皿の端に添えられた味噌ダレが極上なのだ。おでんのスープもごくごく飲み干してしまう。これはビールが欲しくなるが、残念ながらこの屋台では飲酒できない。最低消費はひとり35元で、スープはおかわり自由。基隆産のちくわは弾力があって日本のちくわぶを連想させる旨味がある。

 

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「基隆黒輪」のおでん。これで105元はリーズナブル。味噌ダレが絶品

 

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夕方から満席が続く人気屋台。席がないことも多いが、回転は速い

鴨の頭(!)は意外な旨さ  

 夜市を真ん中くらいまで歩くと、ちょっとインパクトの強い屋台に遭遇する。東山鴨頭という、どの夜市にもたいてい1軒はある滷味屋台だ。鴨の頭をはじめとする鴨肉やその他の野菜をこげ茶色にまでしっかり醤油味で煮込んだ料理で、これを竹串でつつきながらいただく。私はもちろん鴨の首から上の部分が大好物。骨ばかりで食べられる肉は少ないが、旨味が凝縮されていて濃厚だ。外観はなかなかインパクトがあるので、旅の思い出に是非チャレンジしてみて欲しい。甘辛い骨付き肉にかぶりつくと、やっぱりビールが欲しくなるのだが…。

 

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東山鴨頭は、勇気を持ってかぶりついた人だけが旨味にありつける

 

 さらに進むと、基隆の廟口夜市でおなじみの栄養三明治(サンドイッチ)がある。揚げパンの中央にぱっくり切り込みを入れて、キュウリ、ハム、煮玉子をはさみ、台湾マヨネーズをかけたもの。これは私のお気に入りの屋台料理なのだが、台北市内には少ないため、基隆に行くと必ず食べている。台湾マヨネーズをきかせた野暮ったくもやさしい味付けだが、サイズも小ぶり。食べ歩きにピッタリだ。

ビールのあるレストランも  

 ここまで来ると、やはりビールが飲みたくなる。夜市にはビールが飲める屋台が少ないが、南機場夜市の中央付近には「小漁村」という広めの食堂があり、炒め物や海鮮料理を提供している。夜市の真ん中にこうした食堂があることはちょっと珍しい。

 この食堂の魅力のひとつがメニューの多さだ。中華料理ならほぼなんでも出てくるのでは? と思わせるほど、海鮮、肉、野菜のあらゆる料理が揃っている。しかも、どの大皿料理もかなりリーズナブルでなかなかの味。店内の客層は、夜市で食べ歩いている若者よりもやや上のおじさま世代。円卓に幾つもの大皿料理とビール瓶を並べて和気あいあいと大声で話している。みな地元の人たちなのだろう。赤ら顔がゆるんでなんとも楽しそうだ。

 

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「小漁村」のラム肉炒め。はずれの少ないオーソドックスな料理

 

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「小漁村」の牡蠣フライ。台湾の牡蠣は小さめなのでおつまみ感覚でサクサク食べられる

 

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おじさまたちの憩いの場「小漁村」。夜市を歩き切ったあとに喉を潤すならここ

〆は伝統スイーツ、豆花  

 コンパクトな夜市だが、もちろんスイーツもある。私の大好きな台湾の伝統スイーツ、豆花(豆乳プリン)だ。夜市で食べ歩いたあとは、甘くこってりしたデザートよりも、豆花くらいさっぱりとして喉越しがよく、甘さ控えめなほうがありがたい。南機場夜市の豆花は目移りするほど種類が多いが、ここはシンプルな花生豆花(ピーナッツ豆花)を選ぶ。生成り色の豆花はその色の通り、やさしくふんわりとした味わい。同じ色のピーナッツも口に入れればつぶれてしまうほどやわらかく煮込まれていて、消化もよさそうだ。

 

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やさしい甘さのピーナッツ豆花は30元。トッピングも選べる

 

 ふらりと訪れて、地元の人たちに混じり、いかにもなれたように歩きたい。南機場夜市は、そんな旅慣れたリピーターたちにおすすめの台北でもっとも穴場な夜市だ。

 

 

 

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著者:光瀬憲子

1972年、神奈川県横浜市生まれ。英中日翻訳家、通訳者、台湾取材コーディネーター。米国ウェスタン・ワシントン大学卒業後、台北の英字新聞社チャイナニュース勤務。台湾人と結婚し、台北で7年、上海で2年暮らす。2004年に離婚、帰国。2007年に台湾を再訪し、以後、通訳や取材コーディネートの仕事で、台湾と日本を往復している。著書に『台湾一周 ! 安旨食堂の旅』『台湾縦断!人情食堂と美景の旅』『美味しい台湾 食べ歩きの達人』『台湾で暮らしてわかった律儀で勤勉な「本当の日本」』『スピリチュアル紀行 台湾』他。朝日新聞社のwebサイト「日本購物攻略」で訪日台湾人向けのコラム「日本酱玩」連載中。株式会社キーワード所属 www.k-word.co.jp/  近況は→https://twitter.com/keyword101

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