ステファン・ダントンの茶国漫遊記

ステファン・ダントンの茶国漫遊記

#34

台湾におちゃらかのフレーバー茶を2  

ステファン・ダントン

 

 

 


 

「台湾の人にフレーバー茶は受けいれられるだろうか?」
 私には確信があった。

 まず、台湾の高山烏龍茶をはじめとするお茶は渋味・苦味が弱く繊細な味わい。産地や製法ごとに異なるのはその芳香。ぶどうのような香り、ミントのような香り、森の香りなどと表現されるような個性ある香りをそれぞれ持っているのが特徴だ。だから、繊細な味わいの日本茶にフレーバーをのせた『おちゃらか』の商品は抵抗なく受け入れられるに違いない。
 実際、日本橋の『おちゃらか』には、場所柄もあって、台湾のお客様もたくさんいらっしゃる。「桃」と「夏みかん」などの柑橘系は台湾人に人気が高い。最初から日本茶あるいは『おちゃらか』のフレーバー茶に興味を持って来てくださる方、たまたま来店した方などさまざまだが、彼らの反応を見ていても台湾でおちゃらかのフレーバー茶はヒットするように思える。
 とはいえ、日本橋の『おちゃらか』にみえるお客様は「日本に来て日本茶専門店、中でも『おちゃらか』を選んで足を運ぶ方」だから、台湾の一般的な方にフレーバー茶を楽しんでもらうためには、現地の嗜好を知らなければならない。
 現地で食べて飲んで感じた。現地の方にフレーバー茶を試飲してもらって意見を聞いた。
 

 

 

 

台湾の食味

 

 

   中華料理といえば、塩味や辛味や香りの強い、濃厚な味のイメージがあるけれど、台湾の料理は随分と薄味だ。
 滞在中には、台湾料理の有名レストランでもごく普通の食堂でもカフェでも中国料理からハンバーガーまでいろんな食事をしたけれど、何を食べてもとにかくおいしい。まず、素材の鮮度がよい。だからだろうか。全体的に塩味も辛味も控えめで、素材そのものを生かしたおだやかな味付けだ。
 スウィーツ類も同様で、伝統的なパイナップルケーキも街角の露天で売られている大判焼きもアイスクリームも、甘みはかなり抑えめで、素材の味と香りが際立つような味わい。
 お茶と同様、舌で感じる味よりも、鼻で感じる芳香にウエイトが置かれているような印象だ。

 

 

 

路上の食堂でアヒルの血豆腐をつつく

 

デコレーションも味もすばらしいスウィーツを台中で

 

信じられないくらい安くておいしいチーズバーガー!

路上の食堂でアヒルの血豆腐、台中でデコレーションと味がすばらしいスウィーツ、安くておいしいチーズバーガーを味わう。

 

 

日本茶を知っていますか?

 

 

   台湾の人が持つ日本茶の印象とはどんなものなのか。実は、日本茶は台湾では非常にポピュラーなことがわかった。とはいっても…ペットボトル飲料としてではあるが。台湾のコンビニエンスストアのお茶コーナーに日本茶ドリンクの占める割合は相当なものだ。もちろん烏龍茶やジャスミン茶もあるけれど、複数メーカーの緑茶、ほうじ茶は、それぞれ無糖・加糖のものが用意されている。
「日本茶を飲んだことがありますか?」と聞くとほとんどの人が「よく飲むよ」と答えるのだが、それはペットボトル飲料だ、という状況は日本と同様だ。入り口はそれでもいいと思う。少なくとも「日本にも緑茶があって、ほうじ茶という中国茶にはないカテゴリーがある」ということが多くの人に知られているということが重要だ。本物の茶葉で入れた日本茶を飲めば、「ペットボトルの飲料とはちがう」そのおいしさをわかってもらえるから。
 

 

 

 

コンビニで買った緑茶をチェックする

台湾のコンビニで買った緑茶をチェックする。

 

 

 

台北での試飲会にて

 

 

   8月5日日曜日の午後、台北での試飲会を開催した。場所は台北・天母の洋菓子店。25年ほど前から日本人オーナーが営むケーキ屋さんの一角をお借りした。
 若者の嗜好を聞いてみたいというSさんの呼びかけで集まってくれたのは、20代から30代の男女9名。台日ハーフと台湾在住の日本人男性以外の7名は台湾人。日常的にペットボトルの日本茶を飲むことはあるが、日本茶そのものへの関心が薄い方がほとんど。
 彼らに用意したのは、フレーバー緑茶9種、フレーバーほうじ茶4種、フレーバー紅茶2種。
 まず、それぞれ「1.茶葉の香り」「2.お湯でもどした茶葉の香り」「3.お茶の香りと味」の順に味わってもらい、好き嫌いを評価してもらった。
 ある程度、台湾人に好まれると予想したものを提示したのだが…。
 緑茶については「桃」と「パイナップル」が高評価。柑橘系も人気が高かった。予想どおり「甘さ」や「酸っぱさ」が「はっきり」したものが好まれるようだ。一方「すいか」や「パッションフルーツ」のような淡い繊細な香りは評価が分かれた。やはりキーとなるのは芳香の高さ、わかりやすさだ。
 飲み方については、シロップなどの甘みを追加することも選択できるようにしようか。
 ほうじ茶については、全種類が予想を上回る人気でおどろいた。
「ベットボトルでほうじ茶を飲んだことはあるが、さっぱりしているな、という印象しかなかった。本物のほうじ茶がこんなに香ばしくてすっきりしているとは!」という感想。予想どおりではあったが、実際に喜んでもらえると自信がつく。さらに、「焼きいも」「黒糖」フレーバーなどは、「思いもつかないおいしさ!」「ミルクだしでも飲んでみたい」、「このお茶を使ったスウィーツが食べてみたい」、「焼きいものお茶と台湾の〇〇を組み合わせたら絶対ヒットしますよ!」などいろんなインスピレーションが感じられたようだ。
 その他にももらったさまざまな感想や意見をもとに、オープン時の茶葉のラインナップを決定しようとしているところだ。
 さらに、カフェでの提供の仕方を茶器も含めて考えている。

 

 

 

台北試飲会の風景 1

フレーバー緑茶9種、フレーバーほうじ茶4種、フレーバー紅茶2種を試飲してもらう。
 

 

 

 

 台湾の人のカフェでの時間の使い方、楽しみ方に合わせたメニューと空間をつくるべく、しばらく台湾のプロジェクトのことで頭がいっぱいになりそうだ。
 

 

 

 

*この連載は毎月第1・第3月曜日(月2回)の更新連載となります。次回の更新は10月1日となります。お楽しみに! 

 

 

写真/ステファン・ダントン    編集協力/田村広子、スタジオポルト

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ステファン・ダントン

1964年フランス・リヨン生まれ。リセ・テクニック・ホテリア・グルノーブル卒業。ソムリエ。1992年来日。日本茶に魅せられ、全国各地の茶産地を巡る。2005年日本茶専門店「おちゃらか」開業。目・鼻・口で愉しめるフレーバー茶を提案し、日本茶を世界のソフトドリンクにすべく奮闘中。2014年日本橋コレド室町店オープン。2015年シンガポールに「ocharaka international」設立。著書に『フレーバー茶で暮らしを変える』(文化出版局)。「おちゃらか」http://www.ocharaka.co.jp/

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